新しい学力 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316282

作品紹介・あらすじ

二〇二〇年に予定されている学習指導要領の大改訂。"新しい学力観"に沿った教育現場の改革はすでに始まっている。教科の再編、アクティブ・ラーニングの導入、評価基準の変化-。大きな変化の中で、本当に求められる"真の学力"とは何だろうか?教師も親も学生も必読、"人"を育てる教育への、熱意あふれる提言の書!

感想・レビュー・書評

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  • 参考文献として読んだ。アクティブラーニングってホントに大丈夫?て感じ。

  • 教育に携わる方、子育て中の親の方は是非読んでください。

    1.この本を一言で表すと?
    ・従来の学習方法で得られる伝統的学力と問題解決力の両輪が必要であることを説いた本
    2.よかった点を 3〜5 つ
    ・一見積極的でアクティブに見える学習形態それ自体が、学習の質を保証するものではない。(p58)
    →ICT などの見せかけにつられてはいけないということだと思う。
    ・欧米風のアクティブラーニングを本格的に導入していない国々のほうがむしろ問題解決能力調査の結果に優れてい
    るという事実に注目し、浮足立たないことが肝要である。(p69)
    →現状をよくみる必要があるということ。伝統的な学習方法を全否定する必要ないということ。
    ・まずは学問を愛する趣味を作ること、これが第一である(p137)
    →非常に重要。趣味をもたせれば、勝手に楽しんで学習する。
    ・各人の個性に任せて自由で主体的な学習に期待したとしても、学習が広く深くなる保証は全くない。むしろ現実は
    その逆であることを示している。(p166)
    →「自由」とか「主体的」などの言葉には気をつけないといけない。
    ・総合的な人間力こそが、真の問題解決力であり、私の考える「新しい学力」である。(p208)
    →知情意体という言葉でまとめることができると思う。全く同感。
    2.参考にならなかった所(つっこみ所)
    ・客観的な評価方法を用意するのが困難と指摘しているが、結論の「総合的な人間力」の評価方法は示されていない
    ままではないか?
    ・5 章の実践例は他の本でも聞いたことがある内容なので、面白みがなかった。
    3.実践してみようとおもうこと
    ・子供に熱中でき趣味を持たせる
    ・新聞の内容を子どもと一緒によみ、「なぜ?」を一緒に考える
    4.みんなで議論したいこと
    ・この本に書かれている「新しい学力」で、これからの世界で生き残るには十分と思いますか?
    5.全体の感想・その他
    ・日本のこれまでの教育(伝統的な学力)については、改善の余地があるにしても大きく間違ってはいなかったと感
    じたが、ではなぜ日本の生産性は低いのか?会社の仕組み、社会制度、政策に問題があるのでは?と感じた。

  • 新学習指導要領では、文科省の望む理想の子供像は、まさにスーパー子供。
    従来の教科に加えて、英語ができて、主体的に学び、課題を発見して解決でき、プレゼンができて、プログラミングもできる・・・。
    特に小学校の先生でこれら全てを教えることのできる人、何人いるのかなと、疑問に思うし、先生もパニックじゃないかなと思っている。
    それが、この本を読むと、ざわついていた心が少し落ち着いたように思う。
    やはり、昔ながらの知識の習得は絶対的に必要だし、読み書きソロバン的な基礎学力が大事。とりわけ齊藤さんが色んな本で薦めておられる素読。私自身も十代までに繰り返し覚えたものはなかなか忘れないように思う。もっと覚えておけば良かったと後悔しているくらいである。
    これは暗記容量の増設にも役立つし、型を覚える、真似ることは、どんなことを拾得するにも必要なことなので、是非とも子供にやらせたいと常日頃から思っているが、何故か子供は親のやらせようという気配を察するのか断固拒否。
    古典ではなくポケモンの日々から、どうしたら、上手く子供が関心をもって齊藤さんの提唱する学びをしてくれるのか教えて欲しいなと思う。

  • 真に必要な「学力」とは何なのか? どうすれば身につくのか? 2020年に改訂が予定されている学習指導要領の「新しい学力」と近年否定されがちな「伝統的学力」との統合を提言する一冊だ。
    文科省が進めようとする「新しい学力」、それを身につけるのに重要とされるアクティブラーニングに潜む問題点をあぶり出している。
    総合的な学習の時間がどうなったかをみれば結論は明らかだよね。最近の教育改革の議論では、土台となる基礎学力をいかに身につけるのかを無視している。ここがポイントなのに。このあたり著者の視点には確かなものがある。
    欲を言えば、時間的制約にどう向き合うのかにも踏みこんで欲しかった。

  • 齋藤孝の考える新しい学力とは。

    誤解してはいけないことに、キチンと触れられている良書だった。
    また、どういう風に「考えて」授業を作っていくべきかも押さえられていて、優しい……。

    今までの学力観の良さを、まず忘れてはならない。
    その上でアクティブラーニングを捉えること。
    必要となる知識がなければ、それを使いこなすことなど出来ない。
    となると、如何に知識を付けながら、使いこなすまでの時間を短縮出来るかが大切になる。

    今は情報過多の社会である。
    まず、現在進行形の知識に追い付くまでにも相当の時間を要する。
    その上で、それらを使いこなす練習をするわけだから、同じ一時間の使い方が変わってくる。

    「単にプレゼンテーションやディスカッション、調べ学習を取り入れているかといった表面的なことではなく、具体的に、学習者の一人ひとりの意識が活性化する授業ができているかどうかをみていかなければならない。」

    単に楽しい、ではなく知的好奇心を与え続ける授業を行うには、教員自身の知的好奇心とそれをいかに授業にリンク?アップロード?させるかにかかっているように思う。

    「現代のビジネスの世界では、チームとしての達成が求められる。」

    これは面白い指摘で、つまりクラス力、担任がどういうチームを目指していくかに関わる。
    こうした、姿勢を作ることは難しい。

    作文の可能性については、私は違和が残る。
    作文と論文は主観と客観の点では違う。
    自分の体験をどう語るかにはもちろん客観の目も必要なわけだが、そもそも論文で扱うことは客観から始まり、それを貫いてゆく緊張感のある作業であるように思う。
    そうした、思考の枠組みを練習するためには作文と論文指導を分けないといけないように感じる。

    齋藤孝らしいエッセンスが詰め込まれていて、好きだなぁこのパーツ、と思わされることもあるが、考え違いをしてはいけない部分を的確に表している点では本当に良い一冊だった。

    今井むつみ『学びとは何か』も併せて薦めたい。
    こちらはよりアクティブラーニングに寄っている内容だが、齋藤孝の言わんとすることを捉えた上で、前向きに進めていこうとしている。

  • 総合学習はいったいどうなったのか。アクティヴラーニングになるとどう変わるのか。昔からやっている人はやっていたのではないか。それは教員の力量にかかわって来るのではないか。基礎学力はやはり必要だ。苦労をしなければ学ぶことの楽しさ、わかること、できることの喜びを感じることもできない。汗をかいて山を登り切ったからこそ美しい景色に感動することができる。しかし、しんどくても粘り強く取り組ませるためには、その先にどんないい思いが待っているのかを知らせてくれる人がいなければならない。先生が「これはすごい!」と本気で思って生徒の前に立たなければ、子どもたちはついてきてくれない。あこがれの連鎖。やはりこれが大切なのだろう。ところで、PISAの問題解決能力調査で日本は順位を落としているというが、4位とか7位とか。上にいるのは上海とかシンガポールとか香港とか韓国とか。フィンランドだって日本の少し下だし、アメリカに至ってはかなり下位にいる。そこでの教育を見習って、アクティヴラーニングを取り入れるのか?知識偏重の教育は本当に良くないのか。いろいろと考えないといけないことが山積みだ。そして行き着くところはやはり臍下丹田。強い意志が必要なんだ。肚を鍛えないと。しかし本当にこの人は同時に何冊の本を書いているのか。不思議だ。まあとりあえず岩波は買って読んだ。

  • 2020年予定の学習指導要領大改訂を前に、今、なすべき事とは? 本当に求められる〈真の学力〉とは? 学力観の潮流を大づかみに捉え、潮の変わり目を明らかにする。〈人〉を育てる教育への、熱意あふれる提言の書。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40249596

  • 積極性を持って学びに取り組める環境って大事なんだと思う。
    大学生も、楽単ばかりを意図して取っている人もどうしても多いが(自分は学費が勿体なくそんな行動は取れない…)本質的に人としての能力をあげよう、成長しようとするなら、大学という場で色々な人と関わったり何かを体験することを通じて学びを深めることが大事だと思う。

    というか、受験勉強が目的の勉強を終えた大学生にとっても、アクティブ・ラーニングは積極的に取り入れてしかるべきだと思う。

  •   

  • 学力にしても定義は様々なものであるのだが、その中でどのようなものを「学力」と定義しているのかは大きく異なるのだが、著者は新しい「学力」を定義している。その背景には2020年の「学習指導要領」の大改訂が背景としてあげられる。その大改訂の中で出てくる「学力」とはいったい何か、それを定義してどう鍛えたら良いのかを提示している。

    第一章「「新しい学力」とは何か」
    「新しい学力」には2つの定義がある。一つは「PISA型」と「問題解決型」である。前者はOECDが主体となって行われている学習到達度調査によって判明したものをもとにした、学力の在り方を表しており、後者は文部省(後の文科省)の中教審答申によって出てきたものである。その2つの異なる学力の在り方はどのようなものかを取り上げている。

    第二章「新しい学力の「落とし穴」」
    新しい学力や考え方を求めるために「ゆとり教育」が生まれ、実行に移されていったのだが、学力低下となったことにより頓挫することとなり、元の教育に戻ることとなった。もちろん学力の在り方を変える際に落とし穴が存在していることを知らしめる結果となった。

    第三章「本当に求められているものは?」
    そもそも学力はどのようなことが求められているのか、その中でビジネスや開発、発明など様々な観点でどのような人材を育てるのかを取り上げている。

    第四章「「源流」に学ぶ」
    学力の源流とは何か、そこにはルソーやデューイ、日本人の中では吉田松陰や福沢諭吉などを引き合いに出して、学力のつけ方の源を取り上げている。

    第五章「真の「問題解決能力」を鍛えよう」
    問題解決能力は仕事にしてもプライベートにしても両方において必要なことである。その問題解決をするためにどのような学力が必要なのか、その定義を紐解いている。

    学力は教育のなかで最も重要な要素であり、何と言っても社会に出て行くにあたり必要な力である。しかしその学力の在り方は学習指導要領の変更と共に変わってきており、冒頭でも述べたように2020年には大規模な改訂が行われた。そのための準備として何をすべきなのかを本書でもって示しているとも言える。

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著者プロフィール

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。教育学、身体論、コミュニケーション論を専門とする。2001年刊行の『声に出して読みたい日本語』が、シリーズ260万部のベストセラーとなる。その他著書に、『質問力』『段取り力』『コメント力』『齋藤孝の速読塾』『齋藤孝の企画塾』『やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法』『恥をかかないスピーチ力』『思考を鍛えるメモ力』『超速読力』『頭がよくなる! 要約力』『新聞力』『こども「学問のすすめ」』『定義』等がある。

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