密着 最高裁のしごと――野暮で真摯な事件簿 (岩波新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316299

感想・レビュー・書評

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  • 最高裁判所を取材対象にしてきた著者が、一般にはほとんど縁がない最高裁についてわかりやすく説明した解説書。
    まず、親子関係不存在確認訴訟から解き明かしてくれる。何やら小難しい言葉だが何のことはない、子供が夫の子か不倫相手の子か、という裁判。
    このような身近な事件も扱うと、最高裁を身近に引き寄せてくれる。
    一方、最高裁が、下級裁判所(地裁・高裁)と全く違ってユニークなのは、「評議の秘密」の縛りが緩和されること。確かに、裁判結果を掲載した新聞に、各裁判官の意見が載っている。
    そして、最高裁が他の裁判所と違う大きな点は、「憲法の番人」であり、最大の武器は「違憲審査権」であると。

    しかし、それらがどの程度有効に機能するのかな~。裁判所も国家機関の一つだからね・・・

  • ■学んだこと:現地取材の重要性
    ■アクション内容:現地に行って情報をとる

    我が子と思いきや、赤の他人だったの章は、とても面白く、また考えさせられる内容だった。

    親子その本質は、血のつながりか、育てた日々か。

    DNA鑑定されたら、科学的に親子が分かっているわけだから、法律も変わっていくと思ったら、そう一筋縄ではいかない。確かに考えてみたら、そうだよなと。

    「あなたの子どもじゃない、なんて言われても、一度でも抱き上げたら、情は移ります。それなのに離婚して、しかも『血がつながってない』という理由で子どもとさえ離れ離れになるなんて、つらすぎます」。写真を撮った時のエピソードなども交えながら、何度も何度も「つらい」という言葉を繰り返しました。

    北海道まで行き、直接本人に会い話まで聞きにいっているからこそ、行き着く考察。

    親子って何かという事を考えさせられると共に、法律とは、憲法とは、何かについても深く考えさせられた。これは、良本です。

  • 普段ニュースでしか意識しない最高裁だが、人の下に法があるのではなく、法の下に人がいて、それに一番従順なのが最高裁だという。例えば婚姻後の男女はどちらか片方の性を名乗るという法がある限り、男女別姓は合法だという判決を出すのはかなり難しいらしい。ジェンダー論や少子化対策を早急に進めるには婚姻後の男女別姓を認めるべきだと私は思うが、最高裁は裁判に持ち込む前に立法権を司る国会で民意を汲んだ審議を十分にすべきだという。

  • 民法では、結婚中にできた子の父は夫と推定される。
    結婚中に他の男性との間に子どもができ、その後その男性と再婚した。DNA鑑定で親子関係は確認が取れている。
    妻が子どもの戸籍上の父を、血縁上の父にするよう訴えたが、最高裁判所はこれを退けた。


    市民感覚を反映させるため、裁判員制度が導入された。
    強盗、強姦の常習犯が、女子大生の家に忍び込み、殺害した上に証拠隠滅のため放火する事件があった。
    裁判員はその常習性、残虐性を加味し、一般的な量刑を超える、懲役15年の判決としたが、控訴の結果相場通りの10年の刑で確定した。最高裁判所もこの判決を支持した。

    結果だけをヘッドラインで見ると、最高裁判所とはなんと時代遅れ、時代の情勢を理解しようとしない組織のように見える。

    しかし実際には最高裁判所の裁判官は各員がコメントをしており、その内容は時代や技術と法律の枠組みの中で、公平かつ時代にあった判断をする蓄積であることが見えてくる。

  • 新聞記者が最高裁判所への取材から、その機能や裁判官の仕事、判決の背景にある裁判官の立場や、時々難しくなる判決文などをわかりやすく解説している。

    特に裁判員制度で出された判決が最高裁で覆された事例において、法の番人としての最高裁判所裁判官の立場や考え方から、なぜ覆されたかの説明が細かくされている。一見「世間の良心」と解離があるのではと思わされる事例でも、そこには明確な根拠があり、それでも杓子定規に法律・過去の事例に当てはめるだけでなく課題を投げ掛けるなど、三権分立とも関係してくる裁判所の考え方が説明されている。

    そういえば裁判員制度、最近あまり耳にしなくなった気がする。結構な高い確率で回ってくるはずだが、私の周囲ではいまだに経験した人がいない。

  • 民事編と刑事編に分かれて構成されており、最高裁がどういった過程で判決を下していくのか読み応えがあった。特に刑事編では裁判員制度が導入されて民意を取り入れることの意義や変遷までも書かれていて、自分だったらどのように考えるか悩ましい事件を取り上げていた。被害者に同調して感情的になる面もあるが、整合性や合理性を無くしてはならない。最高裁のしごとが素人ながら知れてよかった。何より浮世離れした人たちのイメージがあったが、そのイメージも良い意味で変わった。いろいろ考えさせられる本は面白い。

  • 最高裁判所の判決書には、裁判官の個別意見が書いてあって、それが意外に面白かったりするのだが、この本を読んで改めてそう思った。面白いと言っては不謹慎だが、個別意見を読むと、それを書いた裁判官に少し親しみが湧く。2017年2月5日付け読売新聞書評欄。

  • 親子関係の確認、夫婦別姓、死刑をめぐる量刑の問題について、最高裁の判例を見ながら、最高裁の仕組みや具体的な仕事などを、親しみやすい筆致で解説していく。最高裁に関する最初歩の入門書としては悪くないかもしれない。

  • 最高裁を取材担当にしていた毎日新聞の記者の方が、普通の人にはイメージのつきづらい「最高裁で何が起きているか」についてわかりやすくまとめた本。面白くていい本。

    以下、メモ。
    ・下級審は事実審。最高裁は法律審。最高裁は、「憲法に違反していないか」という観点で下級審の判断を検証
     → 違憲審査権
    ・最高裁の裁判官は15名。通常の事象は5名からなる小法廷で取扱う
    ・憲法はその他の法律とは全く次元が違う
     憲法 → 国家権力を制限する
     法律一般 → 国が国民を制限する
    ・下級審では、裁判官は民事か刑事かの専門性を持つのが一般的
    ・性犯罪や傷害致死などを市民が裁くと、厳罰化される傾向

  • 著者の川名壮志さん、これから『ポスト池上彰』として引っ張りだこになるんじゃないかな。

    めちゃくちゃ理解しやすくて且つ面白い!

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