キャスターという仕事 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316367

感想・レビュー・書評

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  •  2017年後半は怒涛の日々で、本と向き合う時間がまるでなかった・・・というより本と向き合う心の余裕がなかった。そんな日々も終わり、2018年は取り戻すぞー!な気分で手にしたのがこれ。
     同業というのはおこがましいけど、放送の現場を知る人間にとって、読み応えのある内容で付箋だらけの1冊となりました。
     放送開始が平成5年のクローズアップ現代。私の入社が平成4年。報道に関わる人間としてリアルタイムで放送を見てきた。いつも泰然としてしなやかに切り込んでいく、そんな印象を持っていたけど、キャスターとして挑んだ国谷さんの強い思いを知り、その姿勢を知り、勉強になることばかりだった・・今さらだけど(笑)

    〇インタビューは自分の能力と準備の深さが試されるものであり、それがさらけ出されるもの。入念に準備して、その準備とおりインタビューしようとすると大失敗につながりかねない。実際のインタビューの場になったら、準備してきたものをすべて捨てなければならない。
    〇キャスターの役割は自分の言葉で語ること。それは個性を打ち出すことや、「個人の主観」「私見」を語るということではない。
    〇テレビ報道の3つの危うさ
    ①事実の豊かさをそぎ落としてしまう
    ②視聴者に感情の共有化、一体化を促してしまう
    ③視聴者の情緒や人々の風向きに、テレビの側が寄り添ってしまう

     なんとなくぼんやり感じていたことを言葉にしてもらえるスッキリ感・・・天童荒太さんにも感じた感覚で読了。

  • 政権にぶっこみ過ぎたことでクローズアップ現代のキャスター降板となったと巷では言われている国谷さんが、テレビの仕事に携わり始めてから、クローズアップ現代のキャスターとして番組が終わるまでを振り返った本。
    結局、現政権にだけ批判的だったというわけではなく、聞くべきことを聞くという彼女のスタンスを貫いたっていうことだけだよな。忖度せずに。
    「聞く」と「聴く」のスタンスは、キャスターだけでなく、我々も人の話をきく際には意識するべき点だと思った。

  • 著者はNHKで「クローズアップ現代」のキャスターとして
    23年間勤めた。
    その現場での経験した生の声と、スタッフ達との番組製作に奮闘する
    姿がカッコイイ。

    アナウンサーとニュースキャスターの違いって分かりにくい。
    簡単に言うと、アナウンサーは原稿どおりに正確に読み伝えること。
    一方、ニュースキャスターは話し言葉で送り手と受け手のパイプ役に
    なり、その個性が発揮できる。

    その反面、客観性の高いニュースを私見という目線が入ることで厄介なことも
    起きる。
    その厄介な事が色んな人に誤解を招いてクレームに繋がるらしい。

    その際たるものが、「出家詐欺」ねつ造放送騒動だ。

    寺院で「得度」という儀式を受けると戸籍の名義が変えられるのを悪用した
    「出家詐欺」が広がっているという報道で、「やらせ」とか「過剰演出」があったと
    クレームが付き、クローズアップ現代の汚点になってしまった。

    現場での人材育成に最適なものがこの番組にはある。
    それは、試写が二回あることだ。
    若い担当者が作成したレポートを他のスタッフと議論してダメ出しをされて、
    自分の視点との違いを知り、さらに深く突っ込んだ議論になる。
    前日に一回目、そして当日の昼に二回目の試写を行い、生放送本番に向かう。
    クローズアップ現代は試写が一番面白いと言う関係者もいる位に熱を帯びる。

    その試写2回を得て本番という流れを23年間続けてきた
    著者は改めて感じるという。

    クローズアップ現代の役割は、物事を「わかりやすく」して伝えるだけでなく、
    一見「わかりやすい」ことの裏側にある難しさ、課題の大きさを明らかにして
    視聴者に提示することだと。

  • 『キャスターという仕事』(国谷裕子)
    読むきっかけは「久米宏のラジオなんですけど」にゲスト実演していたのを拝聴してこの本の存在を知りました。
    【クローズアップ現代】は21:30〜の頃は食卓で頻繁に見ていた記憶がありましたが、19:30〜に移ってからは、まだ帰宅していることが少なく、通っていたジムのサウナで何度か見ることがある程度でした。

    当時、番組を観ていて「意外と小さな社会の問題でも拾い上げ、しっかりした意見を提示する番組だなぁ」というのが印象でした。

    この本を読んでその印象が変わったということはありませんでしたが、そういう印象を受けた番組の、キャスターである国谷裕子さんが与えていた知的で隙のなさのようなものの、背景をよく理解できました。

    では、簡単に紹介します。
    この本は国谷裕子さんが『クローズアップ現代』及びそれ以前の仕事も含めて振り返りながら「キャスターとしての国谷裕子」と「キャスターとしてのあるべき(めざすべき)姿」を綴ったもの(だけれど、メッセージは別のところにあるります。)
    そしてその切り口として用意したのは必ずしも時系列に並べられていない。『クローズアップ現代』で経験した印象に残る制作番組を、社会が流動する起点に配してその底に映し出されるものと、テレビ(メディア)のあり様を自分の私見を交えながら紹介しています。
    (オマケ)番組制作の現場のイメージも緊張感も伝わってきて、ニュース番組の見方に深みが増すようにしてくれます。


    これを読んでいて感じたのは、国谷裕子さんがここで紹介されている挫折や苦悩をすべて彼女が成長のステップしているということ。
    失敗、挫折を不運と捉えるのではなく、試練と捉える。
    (優れたリーダーたちが共通してもつ心の習慣を育んでいたこと)

    それらをもう少し具体的に、その環境も踏まえて観ていきます。
    ①制作現場のスタッフの情熱に応える。
    放送前に行われる二回のVTRリポート試写に二回とも参加して、作り手の意図や熱意を感じとり、自らのなかで視聴者に‘伝える型’のイメージ作りに早い段階から関わる。
    これは、リーダーがチームを牽引していくうえで欠かせない情熱の共有の手段。

    ②「前説」に込める思い。番組冒頭の1分半〜2分半に、現場スタッフから引くついできた情熱を、視聴者のひとりに向かって自分言葉で伝える。(何を、何故、どうやって伝えていくかを表明する重要な時間)
    この姿がチームメンバーの心に響く。絆を深め、信頼感の醸成につながる。

    ③良き支援者を巻き込む
    性格やキャラで築いた人脈ではなく、仕事を通じて、信頼で結びついた人脈は硬く強くときに厳しい。だが、彼らは必ず必要な人を必要なときに、支えてくれる。

    ここには、書くことはしなかったけれど、メディアに対する考察や、柳田邦男さんとの最後の番組で語られた若者へのメッセージ、
    隠れている「地雷」や「事情」をいろいろと考えさせられ、想像させてくれる良い本です。
    何より、国谷裕子さんの実直さがよく伝わる文章でした。

    今後の国谷裕子さんの活躍を期待します。
    2017/05/18

  • 番組の印象そのままの本。言葉使いの難しさ、表現の難しさ、決められた枠の中で番組を作ることの難しさ等々、報道の難しさに彼女は立ち向かっていき、最後まで役割を果たした。常に最善を尽くそうとする姿勢はすばらしいし、実際に番組はそうだったと思う。週に1回、年中ずっとではないとはいえ、報道番組の中でも密度の濃いものを作り続けるのは大変。
    番組の製作関係者のほとんどが男性で、男性社会だったがゆえに、社会における女性の役割や立場の変化に関して番組で取り上げる機会が少なかった点に気づいたのが降板後だった、というのは残念だがやむなしか。
    ただし彼女はあの番組の製作スタッフのうち氷山の一角。海上に見える部分でしかない。水面下の人たちの、特にプロデューサーや編責といった方々はどうなのか。そういう人たちの書いた本があれば読んでみたい。
    テレビ局で報道にかかわる人たちは絶対に読むべし。特に局アナ。自分をタレントと勘違いしている女子アナには理解できないかもしれないが。

  • NHK「クローズアップ現代」のキャスターだった国谷さんが、その23年間を振り返りまとめた本。発刊されて、すぐに購入しました。

    僕自身はほとんど番組を見たことがなく、昨年の番組終了に関わる様々な状況を見聞きすること中で、恥ずかしながら番組の存在や国谷さんのことを知りました。

    ある事象を伝えるときにテレビという媒体の特性と危うさを理解しながら、視聴者自身に伝え・考える機会を提供していくこと。疑問をそのままにせず、聞くべきことは聞き追求していくこと。わかりやすさだけを求めるのではなく、深く物事を捉えられるようにしていくこと(見えないことを伝えること)等、23年間の歩みの中で積み上げられてきたたくさんのメッセージが本には書かれています。言葉の力を信じそのことを高める努力を続けながら時代を見続けきた番組と国谷さんは、とても大切な仕事をして来られたのだなと思いました。

    不寛容な時代、危機的と言える世界と日本の中でどう生きるかが問われています。長期的に多角的に物事を捉えることに、粘り強く取り組んでいくことが大事だと感じています。この本には、読み手に具体的に考えることを促す力があると思います(番組が目指してきたことですね)

    ぜひたくさんの人に読んでほしい一冊です。

  • 実家に住んでいた頃は、
    よく見ていた番組、「クローズアップ現代」。

    キャスターの国谷さん、カッコいい女性だなあと思っていました。


    本書を読んで、相当な覚悟で挑んでいた番組だったことがよく分かりました。

    私事ですが、
    ちょうどこちらを読んだ時期、
    この先、無謀と思われる大きな仕事が待ち受けています。

    ときどき、
    「引き受けなければよかったなあ」と不安に思う時があり、そんな最中に、本書を読みました。

    勇気づけられました。

    「真正面から取り組み覚悟」

    「ひたむきに」

    「全身で」

    「真剣勝負」

    このような言葉が、私のプレッシャーを心地よいチャレンジ精神に変化させてくれました。

    また、国谷さんの「フェアへのこだわり」が強く感じられました。見習おうと思います。とても強い方です。

    真似できないかもしれませんが、真似したいです。

  • 面白い。23年間キャスターとして努めてきた著者の熱量が凄い。キャスターとは、報道とはどうあるべきか。常に自問自答し続けて、突っ走って来たのだろう。惜しむらくは一つ一つのエピソードが、単発で突っ込んでいないために没入感があまりないことか。恐らく番組を見ていた人ならばわかるのかも知れないが、、、、

  • クロ現にかけた23年間の思いを綴った本。

  • テレビが世間に与える影響力はインターネットが普及してもなお大きい。本書の中で語られる国内外の情勢を報道する者の姿勢は、報道関係者だけでなく、他の業界にも適用できると感じた。

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プロフィール

1957年大阪府出身。父親の海外勤務に伴い、幼稚園時代からアメリカ合衆国、小学校6年から中学校まで香港と日本を行き来しながら過ごす。 アメリカのブラウン大学卒業後、日本国内の外資系メーカーに就職。1981年『NHKニュース』(NHK)の英語放送の同時通訳アナウンサー、ライター、リサーチャーを務めた。1987年から『ワールドニュース』(NHK BS1)のニューヨーク総局からの駐在キャスターを担当。1988年に帰国後、NHKのニュース番組で国際コーナーを担当。1993年4月5日から『クローズアップ現代』のレギュラーキャスターを番組開始から2016年3月17日まで務める。

「2016年 『憲法という希望』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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