ロシア革命――破局の8か月 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316374

感想・レビュー・書評

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  •  1917年の二月革命から十月革命に至るロシアの政局を、「臨時政府」を構成した人々の動きに焦点を当てて、ドキュメント風に叙述している。ソ連時代には十把ひとからげに「反動」として否定され「忘れられた」自由主義者や穏健な社会主義者らに同情的で(他方で暴力的な民衆には冷淡)、必然性の欠如を認識しつつも、ロシアにおいて議会制民主主義が制度化されなかったことを惜しんでいるのは明らかだ。歴史学者の著作にしてはジャーナリスティックなのが若干気にはなる。

  • まず自由主義であるカデットの幹部であり、刑法学者であり、
    のちに作家として大成する同名の息子の良き父であった
    ナボコフの言葉より。(1917年)

    「大フランス革命は、全体として、固まりとして受け入れなければいけない、という見方がフランスには存在する。
    この見方は理解できるし、真っ当である。
    おそらく未来のロシアの歴史家も、100年後にはロシア革命を固まりとして受け入れることに同意するであろう。
    だが、われわれ、同時代に生きる者、-われわれ、参加者は、いますぐに歴史的展望の高みに立つわけにはいかないのだ。(略)」

    ちょうど100年前の1917年、ロシアでは二度の革命が起こりました。
    二月革命で何が起こり、どのようにして十月革命に立ち至るか?
    その八か月の叙述を通して、著者は私たちに二つの問いを立てます。

    「なぜ二月革命で生まれた臨時政府は挫折したのか」
    「なぜ十月革命で生まれたボリシェヴィキは成功したのか」

    実は私、半分正解を答えられて(!)しかも著者の最後の言葉がほぼ同じ感想だったのです。嬉しかったので下に記録しておきます。
    もしこれから読む場合、以下は読まないほうがいいかも。
    あ。もともと常識として知っているなら、問題ないですが。

    ●なぜ臨時政府は挫折したのか

    「早期に戦争を終結する」「暴力によって徹底的に民衆の要求を抑え込む」のどちらかしかなかった。
    しかし前者を選ぶには臨時政府はあまりにも西欧諸国と深く結びつき、その政治・社会制度に強く惹かれていた。
    後者を選ぶには臨時政府はあまりにも柔和であった。

    ●なぜボリシェヴィキは成功したのか

    西欧諸国の政府との関係を断ち切ってもよいと考えるほどに、
    彼らはあたらしい世界秩序の接近を確信していた。
    そして、いざ政権を獲得してからは、
    躊躇なく民衆に銃口を向けることができるだけの苛酷さを持っていた。

    ●著者の最後の言葉

    「もとより、1917年のロシアにおいて、臨時政府の弱腰が混乱をおしとどめることができなかったからといって、
    今日の世界においては銃口をとるべき選択肢たりえない。
    一方で、敵を探し、極論が力をもつ「街頭の政治」もまた、避けるにこしたことはない。
    結局のところ、1917年のロシア革命が私たちに伝えるのは単純なことである。
    ひとは互いに譲りながら、あい異なる利害を調整できる制度を粘り強くつくっていくしかないのだ。」

  • ロシアにおける革命で、なぜ臨時政府は失敗し、ボリシェヴィキは成功したのかという問題意識から、「破局の8ヵ月」を描き出す。この問いは、いまよりはるかに広大で多民族が暮らす国家だったのに、革命が分離独立を誘発するきっかけにならなかったのはなぜかという疑問と、あれほど急進的なものではなく、漸進的でよりゆるやかな共和制への移行が進まなかったのはなぜかという問いにもつながる。レーニンとトロツキーという、既存の秩序を歯牙にもかけない「子供」らによって、民衆の反乱も「底が抜けた」混乱状態も、まるごと全肯定されたのだ。

    革命を生んだのは戦争だった。第一次世界大戦という総力戦は、武器を与えられた農村出身の兵士たちを、前線だけでなく帝政政府の喉元にも放った。自己抑制も義務や権利の意識にも乏しく、ただ家長としての皇帝がいるだけだった農民にとって、二月革命は家父長的な規範さえも奪うものだった。「われわれは権力の担い手を倒しただけではなく、権力の観念そのものを倒し、滅ぼしてしまったのではなかろうか」と嘆いてみても後の祭り。「底の抜けた」ロシアでいまさら義務や責任を説いてみても、長く苦しい戦争に疲弊した彼らの耳には届かなかった。

    臨時政府の面々には同情を禁じ得ない。このまま世界革命を目指して混乱が進めばよいなどと無責任に考えず、何とか事態を収拾し秩序を取り戻そうと奔走した。戦争から簡単に離脱すればよいというのも無茶な話で、まずは軍を立て直し、結ばれた秘密協定の遵守も確約しなければ、財政援助や軍事援助を途絶えさせ、ひいては革命そのものの運命も潰えかねない。民衆は確かに、戦争継続を推進力とする臨時政府ではなく、戦争終結を唱えるレーニンらの勢力を選んだのだが、道化師のような仲介者の余計な介在がなければ、必ずしも必然の結果ではなかった。

  • SF作家ミエヴェルのロシア革命本と並行して読んだ。こちらのほうがわかりやすく簡潔で意義深かった。描き方もわりと淡白で中公新書みたいだなと思いました。ロシア革命そのものの展開をわかりやすく月ごとに追っており,対ソ干渉戦争以後の変質などは扱っていません。

    (概要)
    二月革命
    三月妥協
    四月危機(四月テーゼ)
    五月連立
    六月ウクライナ問題・デモ
    七月危機→ケレンスキー政権の成立
    八月反動→ケレンスキーら中道と独裁志向の右派軍人との対立

    結果:右派軍人側の敗北→反革命の陰謀という幻想の拡大・ソヴィエトの復調・臨時政府の権威失墜

    十月革命

  • ロシア革命。いまいち地味な革命である。(革命後100年といったきっかけがなければ手に取ることはない程度に。)100年経過して、大局的に革命を把握できるようになったが、革命の醍醐味はそこにはない。はじめにで筆者も述べている通り、革命史研究の要諦は当事者からの視点だろう。本書で、読者は二月革命から十月革命にいたる「生ける転変の過程」を味わうことができる。

    ところで、政治にはさまざまなアクターが存在しているが、特に革命では、そのアクターがごった返し、革命の結末を予測不能なものにしている。それゆえ、どうしてこういう結果になったのがという理解も困難である。本書は、二つの問いを立てる。「なぜ臨時政府は挫折したのか」と「なぜボリシェヴィキは成功したのか」である。そして、革命を丁寧に追うことでこの問いに対する答えを提示してくれる。

    本書は、エリートと民衆と二分した場合、エリートからの視点であり、彼らの苦闘を描いている。ほかの革命と比べて影が薄いのは否めないロシア革命だが、他の革命にもれずドラスティックなものであり、そこに革命の魅力があり、その魅力を伝えることに成功している点に本書の魅力もあるだろう。

  • 主に「臨時政府」を注視し、自由主義者らの立憲に向かう(挫折した)動向を追う考察。図書館本。 145

  • フランス革命と比べて、イマイチ影の薄いロシア革命。本書を読んでみて、その原因がなんとくなくわかった。

    原因その1は登場キャラの薄さだ。全然知らない人ばかり。有名どころのレーニン、トロツキー、ニコライ王などもあまり活躍しない。彼らの活躍は革命のもうちょっと後だ。

    原因その2は革命がドゥーマと呼ばれる国会と労働者団体ボルシェビキとの1対1の対決だけに終始していること。この2つに国王側や他国が絡むともっと劇的なストーリーになっただろう。

    原因その3は、王政から民主主義じゃなく、社会主義国家になってしまったこと。現代では馴染みのないシステムだけに、なぜ採用されたのが社会主義だったのか。今となってはわかりにくい。

    と、改めて地味なロシア革命であり、本当の歴史の面白さは革命後のゴタゴタなのだ。

  • 二月革命から十月革命までの8ヶ月を臨時政府の動向を中心に描いた1冊。ロシア革命史って昔読んだトロツキーのものくらいしかなかったので、臨時政府に焦点を当てたこの本からはだいぶ違った印象を受ける。短い「おわりに」においてロシア革命の破局の8ヶ月の現在性が確認される。

  • 書籍についてこういった公開の場に書くと、身近なところからクレームが入るので、読後記は控えさせていただきます。

    http://www.rockfield.net/wordpress/?p=9195

  • いままでボンヤリとしか知らなかった「臨時政府」についてこれだけまとまって読んだのは初めて。
    二月革命が成就していたら今とは全く違う世界になっていただろう。
    クラークへの迫害もスターリンの大テロルもなく、ひょっとしたら第二次大戦もなかったかも知れない。
    歴史に「もし」はないがその「もし」を考えずにはいられない。

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