共生保障 〈支え合い〉の戦略 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316398

感想・レビュー・書評

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  • 364||Mi77

  • 「支える側」と「支えられている側」に分断されている社会に一石を投じる一冊。新しい「共生保障」という概念が紹介されている。
    「共生保障」とは「支える側」を支え直し、「支えられる側」に参加機会を広げようとする考え方である。具体的には、「支える側」に対して保育・介護サービスの拡充やリカレント教育の機会の拡大を、「支えられる側」にはユニバーサル就労や共生型ケアなどが考えられる。一定時間就労できる条件をさす「ベーシックワーク」やベーシックインカムなども視野に入れた補完型所得補償など、目新しい提案もなされている。そして、「支えられる側」の参加機会が拡大しない理由として、自治体の雇用部局と福祉部局の縦割り指摘している。的を射た指摘だと思う。
    そして、特に個人的に興味を持ったのが、なぜ日本の社会保障制度が国民の分断を招いているかという著者の分析である。①財政的困難、②自治体の制度構造、③中間層の解体、という3点を挙げている内容には納得した。つまり、①財政的制約⇒保険料の増加⇒低所得者への負担増大、②幼保の所管部署の違い、③低所得者の増加に伴う「支えられる側」の増加、という悪循環である。こうした悪循環を断ち切るためには税負担の増加は避けて通ることができないが、国民にはサービスを還元されている感がないため、支持率の低下を恐れる政府が増税を先送りするという、さらなる悪循環も指摘している。
    以上のような要因分析まではおもしろさを感じたが、それでは具体的にどのような政策が必要か、読んでいて理解するまでには至らなかった。「シェア金沢」や弘前市の「就職支援カレッジ」などの紹介されている事例もいくつかあるが、いずれも地方都市での取組みであり、核家族化やコミュニティの衰退が進み、地方よりも人間関係が分断さえている都市部においても同様の取組みができるか、甚だ疑問が残る。
    「共生保障」という理念は納得できるが、その理念を実現するための具体的なプロセスやその実現性については、最後まで腑に落ちなかった。

  •  既存の社会保障制度や雇用政策などの制度の対象にならない,制度の間にいる人,支えられる側の人,支える側の人に対する新しい保障の在り方を提言している。

     雇用の間口を広げるという考え方,包括的な支援の必要性について,著者の考え方に同意する部分が多かった。

     著者の示す共生保障を既に実践している地域もあり,そうした地域の実践をどのようにして社会保障制度改革等を通して制度に反映させていくかが課題となるだろう。

     共生保障を実現するためには,支援を充実させていくことになるので,増税の必要があると思う。一般的に増税に対して否定的な日本人の認識を変えられるかどうかが,鍵の一つになるように思った。

  • 麻生内閣や民主党(現民進党)の社会保障政策などに関与してきた宮本太郎氏が、重点的な政策の柱になっている「地域包括ケアシステム」「地域共生社会」などに関して、日本社会の現状や地域での実践例を紹介しながら、その考えを解説した本。「地域包括ケアシステム強化推進法」が国会で審議されている中、読むべき本として手に取りました。

    従来の「支える側」「支えられる側」という役割分担では地域社会は持続困難になりつつある。「支えられる側」の社会参加や就労参加を広げていくことが重要。「支えあい」を支えることに公的な課題を定めていくことで新たな展望が広がる〉等々が基本的な考え方として示されました。また、その実践は、「ご当地モデル」として具体化が図られる(地域の現実に対応させる)として決まった形がないことを示しました。「生活困窮者自立支援法」や「障害者自立支援法」の中身にも触れ、自立の考え方にも言及しています。

    政策形成過程の視点やどう対応するかは書かれていますが、なぜ様々な課題を抱える人たちが増えている(社会保障を必要とする人が生まれるのか)について、あまり言及されていないように感じました。対象とする人たちが浮かび上がらないと必要な支援に結びつくのだろうか、自己責任を強調し公的責任を追いやるような流れに組することになるのではないかと思いました。

    地域が様々な意味で焦点になる中、自分自身の考えや実践もしっかり確立していかなければならないと改めて強く感じました。

    多くの人たちと議論が必要な課題です。

  • 宮本太郎氏らしい作品。

    筆者は「共生社会」の定義を説明したうえで、日本で共生社会の推進が妨げられている構造的要因として
    3点を指摘した。

    そのうえで、地域社会単位ではこうした共生社会を志向した様々な好事例を列挙した上で、それが構造的なものにまで至っていないことを指摘し、政治的な争点にすらなりえていない点を踏まえたうえ今後の展望に期待している。

  • 364||Mi

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プロフィール

*2013年5月現在 中央大学法学部教授

「2018年 『福祉財政』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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