ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)

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  • 岩波書店
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レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316442

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、トランプ支持者への取材をベースにアメリカの現状を私たちに示してくれるような内容でした。
    ニュースなどでよく取り上げられるトランプの過激な発言や行動だけに注目するのではなく、そんなトランプが支持された背景をもっと考えなければならないなと強く感じました。
    本書の中では、「夢を失った地域は活力も失う。」(p.211)という一文が最も印象的でした。
    また、日本の将来に対しても危機感を抱いている身としては、国を少しでも良くしたいという熱い思いを持った国民が多くいるアメリカに対して、少しうらやましいなという気持ちも抱きました。

  • 迫真のルポだ。登場する一人一人は洗練されていないが、ひたむき。いわゆる頭でっかちがいない。庶民の声だ。エスタブリッシュメントを嫌い、ビジネスの手腕を評価する人々。今のアメリカに何が起きていて、トランプがなぜ勝てたか納得できた。グローバル化はアメリカをも疲弊させているのだ。

  •  差別的・攻撃的で根拠のないでまかせを平気で口にするトランプが米国大統領になってしまったことは、日本から見ていると何かの間違い(事故)みたいに思えるけれど、この本を読めば実は彼がなるべくして大統領になったということがわかります。

     かつて栄えた鉄鋼業などの重厚長大型産業が衰退し、移民が増え、企業が海外に生産拠点を移したことなどで失業者が増えたラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれる地域(ミシガン州、オハイオ州、ウイスコンシン州など)を中心に、トランプは熱烈に支持されてきたようです。トランプを支持する人たちは現状に不満を持ち、「アメリカン・ドリームは終わってしまった」、「自分たちは置き去りにされた」という思いを抱いている。エスタブリッシュメント(既得権者≒一部の富裕層)に対する彼らの反感と怒りが、トランプ勝利の原動力のようです。トランプは彼らに理想を語るのではなく、彼らの敵意を煽ることで支持を集めました。

     自由貿易と移民を悪者に仕立て、「TPPから離脱する」、「メキシコ国境に壁を作る」などのバカげているけど単純で分かりやすい主張をするトランプ。その主張に希望を託さざるを得ないごく普通の(むしろ思いやりのある誠実な)人たち。やはりアメリカは病んでいるのですね。

    “トマスの双子の兄フランク(42)が来て「この地図、ちょっと違うな」と言い、ノートに何やら描き加え始めた。メキシコ国境沿いの壁だ。「トランプが美しい壁を造るんだ」” ── トランプを応援している人たちは、こんなにも生真面目だから悲しい。

     著者は朝日新聞記者。大統領選までのおよそ一年間に約150人もの人たちにインタビューしてこの本をまとめたそうです。インタビューの結果を書いた第1~6章はどこの街でも同じような話が多く少し退屈だと感じましたが、トランプ勝利の意味を分析する第7章を読むに至って、足で稼いで積み上げられた事実の重みが説得力につながっていると感じました。

  • 筆者が実際に何度もラストベルトを中心としたアメリカへ足を運んで取材を重ねるなかでの、アメリカの分断に対する肌感覚をリアルに描いている。かつては比較的、好待遇で所謂「一般的な幸せ」を築けたブルーカラーの労働者たちが職を失い、社会に対して荒んだ眼差しを向けている。
    もちろんここに書かれたことはアメリカのほんの一部ではあるが、自分が想像していたよりも、荒んだアメリカ、ネガティブなアメリカの実情は悲惨だった。

  • 選挙中から、そしてこの本を手にするまでずっと、「なんでアメリカ人はあんな暴言ばっか吐いてる人を大統領にしちゃうんだろう?」と思っていた。
    でもこの本を読んで納得した。
    ニューヨークやロサンゼルスのような大都市以外の地域には「学校を卒業しても職が見つからない」、「仕事をしても生活が苦しい」、「ミドルクラスから落ちてしまいそうだ」、「今までの職業政治家では変わらなかった」と不満を募らせてきた市民が多く、そんな中で「仕事を奪っている移民を追い出す」、「強いアメリカを復活させる」、「献金を受け取らない自分は利益団体の言いなりにならない」と言うトランプが出てきて多くの人が支持した。
    だいたいこんな感じなのだろうと思う。
    「昔は良かった」的な人が沢山登場するけど、「石炭を使えば全てが良くなる!」なんてのは笑ってしまった。昔のアメリカは圧倒的な物量で他国より優位に立ったし、単純労働者も裕福になることができたんだろうな。それで、産業構造の変化した現代においてもその感覚を忘れることができない人が多いのかなと思った。アメリカで製造業を復活させると言ったって、アメリカ人従業員に高給払いながら作った製品じゃよっぽどの付加価値でもなけりゃ厳しいでしょ。
    結局金持ちが尊敬されるという風土が根付いてる以上、一部の金持ちが社会的に高い位置に立って、金持ちがより金持ちになるような社会を作っていくんだろうと思う。金以外に他に共通の価値観がないんだろう。
    アメリカが格差を強めていったとしても、日本は追随して欲しくない。
    トランプの今後はどうなるんだろうか。二期目はあるのか。

  • タイムリーでめちゃ良い。なるほど、こういう支持層なのか、と納得。トランプと言うより、トランプが選ばれた背景を追ったルポ。トランプが選ばれるだけの問題をアメリカ社会は育み、そしていまマジョリティになってる。これは日本にも向こう10年〜20年くらいで通じる話に思う。昔の車産業、将来はIT産業だろう。

    ちなみにこの衰退したエリアではオバマも同じように製造業の復活をアピールした、サンダースも似たようなことを言ってるとのこと。テーマはミドルクラスの没落である。

  • 落選しました。でも、なんでこんなに人気があるのかよくわかりました。日本もおんなじジャン。

  • アメリカのラストベルト地帯で、トランプを支持する中流階級の声を取材したルポ。
    ラストベルトとは、五大湖周辺の、かつて製造業等で栄えた地域。グローバル化の進展とともにブルーカラーの雇用が減り、中流層が没落した。
    取材から浮かび上がるのは、生活が今後悪くなるという不安。雇用がなく、インフラは手入れされない。年配者は余裕のあった昔を懐かしみ、若者は高い学費の返済に苦しむ。働けば悪くない暮らしができるというアメリカン・ドリームは失われている。
    雇用が無いという話の一方で、雇いたい高度な熟練機械工(p241)がいないというエピソードも印象的だった。人を育てる余裕がどこにもなくなっているのだろうか。

    今後への不安がエスタブリッシュメント(既得権益)層への不信となり、その裏返しとしてのトランプへの期待に繋がる。トランプ自身は富豪であるが、献金を受けていないため大企業の意向から自由というイメージを作ることに成功し、状況を変えてくれるという希望から支持を集めている。
    支持者は手弁当で草の根の選挙活動を行い、集会で熱狂する。ダイナーで取材を受ける人々は、よく筆者に奢ってくれるという。おそらく家族の生活や地域を心配し、友達づきあいを大事にする良い人たちなのだろうと思う。
    人々の疑問と不安のはけ口として、トランプが示している標的が自由貿易と不法移民(p216)。共通点はグローバル化と言える。もっとも世論調査によれば、移民がアメリカ社会に害だと考える人の割合は意外に少ない(p135)。広く訴えるのではなく特定層を強く引き付けている。
    第6章で民主党のサンダース候補への熱狂ぶりも取材することで、トランプ個人というよりも、アメリカ社会全体にある鬱屈をたまたま体現できたのがトランプだったのだろうという印象がある。

    取材と参与観察の違いはあるものの、[ https://booklog.jp/item/1/4000613006 ] もほぼ似た空気を伝える。また国は違うが、[ https://booklog.jp/item/1/4334043186 ]で描かれた状況とも、あまりに似ていて衝撃を受けた。

  • ブレイディみかこの「労働者階級の反乱」でイギリスのEU離脱とトランプ誕生の比較があった。その本では、どちらもナショナリズムと評価されるが、イギリスのEU離脱はそうとも言えない、という内容だった。
    私もEU離脱はナショナリズムの高まりとこれまで捉えてきていたから驚きだった。一方で、イギリスEU離脱も表面的なことしか理解していなかったから誤解していたように、トランプ誕生についても私は知識が少ないし、誤解しているのではないかと思って本書を読んだ。そもそも日本ではトランプの蔑視的発言ばかり取り上げられていて、日本の報道だけではアメリカでなぜそれだけの人がトランプを支持したという結果に至ったのか辻褄が合わない。
    ただ、本書を読んでなぜトランプが誕生してしまったのかがよく分かった。トランプが誕生したのは、アメリカに、あるいは資本主義社会に病気が発現したという実態なのかもしれない。

    途中の章でトランプとサンダースの主張が実は似ているという指摘はとても驚いた。確かに多くの人はサンダースとトランプは全く違う主張をする候補者だという認識をしているだろうが、本書を読み進むうえでトランプやアメリカの現状への認識が変わったであろうから、それを踏まえたうえで今一度トランプとサンダースの相違点についてまとめてあるのが望ましかった。

    トランプが大統領として誕生した後を描いた「トランプ王国2」も読みたい。

  • トランプの勝利は世界で驚きを持って受け止められたが、この本を読むと確かに、ラストベルト・田舎という古いアメリカが今回の勝利をもたらした。うむ、これってイギリスのブレジット派の勝利と同じ構図じゃないか。

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著者プロフィール

金成 隆一(カナリ リュウイチ)
朝日新聞編集委員
朝日新聞経済部記者。慶應義塾大学法学部卒。2000 年、朝日新聞社入社。社会部、ハーバード大学日米関係プログラム研究員などを経て2014 年から2019 年3 月までニューヨーク特派員。2018 年度のボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書『ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く』(岩波新書)、『記者、ラストベルトに住む』(朝日新聞出版)など。

「2019年 『現代アメリカ政治とメディア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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