ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316442

感想・レビュー・書評

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  • 筆者が実際に何度もラストベルトを中心としたアメリカへ足を運んで取材を重ねるなかでの、アメリカの分断に対する肌感覚をリアルに描いている。かつては比較的、好待遇で所謂「一般的な幸せ」を築けたブルーカラーの労働者たちが職を失い、社会に対して荒んだ眼差しを向けている。
    もちろんここに書かれたことはアメリカのほんの一部ではあるが、自分が想像していたよりも、荒んだアメリカ、ネガティブなアメリカの実情は悲惨だった。

  • 選挙中から、そしてこの本を手にするまでずっと、「なんでアメリカ人はあんな暴言ばっか吐いてる人を大統領にしちゃうんだろう?」と思っていた。
    でもこの本を読んで納得した。
    ニューヨークやロサンゼルスのような大都市以外の地域には「学校を卒業しても職が見つからない」、「仕事をしても生活が苦しい」、「ミドルクラスから落ちてしまいそうだ」、「今までの職業政治家では変わらなかった」と不満を募らせてきた市民が多く、そんな中で「仕事を奪っている移民を追い出す」、「強いアメリカを復活させる」、「献金を受け取らない自分は利益団体の言いなりにならない」と言うトランプが出てきて多くの人が支持した。
    だいたいこんな感じなのだろうと思う。
    「昔は良かった」的な人が沢山登場するけど、「石炭を使えば全てが良くなる!」なんてのは笑ってしまった。昔のアメリカは圧倒的な物量で他国より優位に立ったし、単純労働者も裕福になることができたんだろうな。それで、産業構造の変化した現代においてもその感覚を忘れることができない人が多いのかなと思った。アメリカで製造業を復活させると言ったって、アメリカ人従業員に高給払いながら作った製品じゃよっぽどの付加価値でもなけりゃ厳しいでしょ。
    結局金持ちが尊敬されるという風土が根付いてる以上、一部の金持ちが社会的に高い位置に立って、金持ちがより金持ちになるような社会を作っていくんだろうと思う。金以外に他に共通の価値観がないんだろう。
    アメリカが格差を強めていったとしても、日本は追随して欲しくない。
    トランプの今後はどうなるんだろうか。二期目はあるのか。

  • 本書では、なぜアメリカの人々がトランプ氏を支持したのか、いわゆる「ラストベルト」に住む人々の生の声を拾い上げている。本書を読むと、トランプ氏はこの「ラストベルト」を中心とした地域に住む人々の声を拾い上げて、大統領の座を射止めたのだということがわかる。

    筆者はこの「ラストベルト」を歩き、主にトランプ氏の支持者たちに会って話を聞き続ける。筆者が話を聞きたいと告げると、トランプ氏支持者たちはみな、自分の話を聞いてほしいと訴え、自分の置かれた状況を語るのだ。ユーモアに包んだ語り、悲痛な語り、過去を懐かしむ語り、現状への怒りと将来への不安の語り。

    本書に登場するトランプ氏の支持者たちは、みな気さくで親切でいい人ばかりだということに、わたしたちはすぐに気づく。そんなトランプの支持者の多くを、筆者は「明日の暮らしや子どもの将来を心配する、勤勉なアメリカ人」(本書pⅱ)と位置付ける。本書で描かれているトランプ支持者の姿は、わたしたち日本人の姿と重なるものも多いことに気づくのだ。

    その意味では、本書はトランプ大統領誕生の一端をのぞくことのできる、第一級のルポルタージュと言えるだろう。

    ただ、トランプ氏を支持したのはこのような「ラストベルト」に住む人々の大きな支持を集めたのはたしかだが、他にもエスタブリッシュ層や人種差別主義者などの「隠れトランプ支持者」も、多数存在することが指摘されている。「ラストベルト」以外にも、トランプ支持者はたくさん存在しているのだろう。本書ではそのあたりの「隠れトランプ支持者」の声や「ラストベルト」の住人以外のトランプ支持者たちの声には触れられていない。

    トランプ大統領の就任から半年以上が経った。政権に入った高官が相次いで辞任し、ロシアとの結びつきが疑われ、さらには白人至上主義団体と反対派との衝突事件では人種差別を容認するかのような発言を行うなど、いまだにトランプ氏自身の大統領としての資質に疑問符がつけられる日々だ。そんな状況の中で、「トランプ王国」はどこへ向かっていくのだろう。

    そのあたりの時事的なトピックを受けた人々の声を拾い上げる「続・トランプ王国」を期待したい。筆者は引き続き朝日新聞紙上で、「トランプ現象」に関する記事をいくつか書いているので、その期待もまた近いうちに叶えられるだろう。そう信じて続編を待ちたい。

  • タイムリーでめちゃ良い。なるほど、こういう支持層なのか、と納得。トランプと言うより、トランプが選ばれた背景を追ったルポ。トランプが選ばれるだけの問題をアメリカ社会は育み、そしていまマジョリティになってる。これは日本にも向こう10年〜20年くらいで通じる話に思う。昔の車産業、将来はIT産業だろう。

    ちなみにこの衰退したエリアではオバマも同じように製造業の復活をアピールした、サンダースも似たようなことを言ってるとのこと。テーマはミドルクラスの没落である。

  • イギリスのEU離脱もしかり、世界はグローバル化してるように見えてだんだん反グローバリズムが進んでいるように感じました

  • 大方の予想に反して大統領選に勝利したトランプ氏。その原動力となった、忘れられた人々を追ったレポ。日本の新聞社記者でありながら、このように草の根の声を丹念に拾い集めたことは、何とも素晴らしい。
    ニューヨークタイムズに代表される上から目線の報道、それを基にした日本のマスコミ報道では、決して窺い知れない世界があった。嘘に固められ、他人を貶めるような演説を批判しても、何もわかっていなかったのだ。
    しかしトランプ氏では、いや他の候補でも、忘れられた人々を救うことはできないと思うと、何とも悲しいことだ。

  • 何故トランプが大統領に選ばれたのか。
    日本の新聞やテレビのニュースでは取り上げられることの無いアメリカの地方を回って選挙期間中に支持者にインタビューをした記録ですが読んで理由が分かったような気がします。
    自由貿易により仕事が海外に移転し、移民の安い労働力に押されて生活が苦しくなる人々の姿。アメリカンドリームは遠い過去、今は生活するのが精一杯の人々。自分たちはミドルクラスのはずが今では貧困層との瀬戸際に居ると言う危機感。
    人々の怒りや絶望が彼を大統領にさせたのだと分かりました。

    日本でも将来起こりえるのでは…と不安になりました。

  • 14州150人の人たちに丁寧にインタビューし、自由貿易による恩恵が十分でなく、より安い労働力に取って変わられ仕事を失ったり、収入が十分でなくなった人たちの不満、不安がトランプ支持につながった背景が非常に納得できた。
    全面的にトランプを支持し手弁当で活動を応援する人、差別発言等は受け入れがたいと思いつつ今までの違うことをしてくれるのではと期待する人、オバマを支持しつつも「変化」を求める人、現状の政治に期待できず一度くらいトランプに任せてみようかと思った人など、立場も想いも様々であるようだ。
    トランプのPR、人の心をつかむ振る舞い、スピーチの上手さもなるほどと思わされる。一方で発言内容のエビデンスのない点も指摘されている。
    たとえば不法移民は税金を払わず、福祉に頼っているとの意見が繰り返されたが、「半数の不法移民が所得税を払っている。買い物の消費税や、住居の固定資産税も払っている」「不法移民により払われた地方税と州税の年間合計は116億ドル」にも上るそう(p.218)。
    またオバマケアの国民皆保険制や移民の保険金についての不満についても、不法移民の多くが「保険料をはらっており、支払額は年間150億ドル」「彼ら推定310万人の支払いがなければ予算不足になる」との社会保障庁の見解も紹介されていた(p.14)。
    さらに国民全体の意見としては、「雇用や住居を奪うという理由で移民を「重荷」と見る人の割合は激減し、逆に勤勉さや才能で社会を「強化」していると捉える人は増加している」のだそう(p.135)。
    問題は当選後。これからトランプはアメリカの大統領としてどんな政治を展開していくのだろう。選挙スピーチでは具体的な方法、方策は示さず、現状のダメな点を指摘し、自分はうまくできる、と言うことで支持を得られても、実際の政治ではどう解決していくのか。選挙で終わりでなく、これからのトランプの、そしてアメリカの動向が気になる。
    インタビューの発言で非常に心に残った意見、「インターネットの影響で(略)自分の好きな情報だけを選んで見られるようになった」「そのため自分と同じ考えを持っている人としか話さなくなって、そうすると不満を持つ人同士がどんどんつながる」(p.193)という言葉、非常に納得した。

  • 結論はいらない

  • 2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプが勝利したことには非常に違和感があったため、トランプ勝利の理由を知りたかった。本書がこの気持ちに的確に答えてくれた。

    ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス等の大都市圏に住む人々からアメリカ人のイメージを思い浮かべていたため、ヒラリー・クリントンが勝利すると思っていたが、本書のルポから有権者の生活実態を全米規模で考えればトランプ勝利もあり得ることが理解できた。

    アメリカの「ミドルクラス」が抱える悩み、最早アメリカンドリームを思い描けない現実が、トランプが発する心地よい演説に魅せられたトランプ支持者を生み出したようだ。
    日本でも、真面目に働いても生活が以前よりも良くなるとは言えないのが現状である。将来の日本において、トランプの様なポピュリストが政治の要職に就くことがあるのか、気になるところである。

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