ルポ トランプ王国 もう一つのアメリカを行く (岩波新書 新赤版 1644)
- 岩波書店 (2017年2月6日発売)
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感想 : 85件
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784004316442
みんなの感想まとめ
アメリカの現状を深く掘り下げ、トランプ支持者の声に耳を傾ける本書は、彼らが抱える不満や希望をリアルに伝えています。過去の栄光を取り戻せず、置き去りにされたと感じる人々が、トランプの単純明快な主張に共鳴...
感想・レビュー・書評
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自由貿易と、グローバリゼーションによる、作業の空洞化と、地方の衰退、これこそが、アメリカの病理であり現実である。
アメリカも緩やかな経済成長を続けている。ただし、白人の高卒以下の層についてはそうではない。死亡率も年々高まっている。
本書は、トランプの選挙活動を通じて、アメリカの現実を浮き彫りにする。本書は、トランプを指弾するものではなく、トランプを通じて、今のアメリカを映し出してみるものです。
・都市部はトランプを拒絶したのだ。
・多くは明日の暮らしや子どもの将来を心配する、勤勉なアメリカ人だった。そこには、普段の取材では見えない、見ていない、もう一つのアメリカ、「トランプ王国」が広がっていた。
・もう一つのアメリカ。
・前回の共和党候補が負けて、今回トランプが勝った州は6つある。具体的には、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン、ミシガン、アイオワ、フロリダの6州である。
・フロリダ以外の5州は、五大湖周辺の通称「ラストベルト」(さびついた工業地帯、ラストというのは金属のさびのこと)と呼ばれるエリアに、全体もしくは、部分的に含まれるのだ
気になったのは以下です。
・トランプの演説、身振りが大きく、ラフな言葉遣いの演説に支持者は聞き入り、笑い、歓喜に沸く。使っている英語も簡単だ。なるほど、「小学生レベルの英語」と言われている通りだ。
・自分のことを「天才」「本当に頭がいい」「いい人」と真顔で繰り返すが、多くの人は、「また、トランプが言っている」と軽く受け流し、不思議なくらいイヤミになっていない。政治家としては、イヤミにならないことは強い。
・サイレント・マジョリティ(声なき多数派)は、トランプを支持する
・彼は、ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)で批判されることを恐れていない
・普通の政治家に任せていては、国は破綻する。問題をありのままに、恐れることなく指摘するトランプが大統領になれば、国を立て直してくれるわ
・人間は仕事がなきゃ幸せになれない。日本人もおなじだろ
・政治家は長生きするから、簡単に「年金の受給年齢を引き上げる」という。それが許せない。でも、トランプは違う。立候補の会見で、社会保障を守ると言ったんだ。
・オバマ大統領も、ヒラリーにも、「あなたに必要なことを、私はあなた以上に知っている」という姿勢を感じる。私はそれが大嫌いです。
・「こつこつ働いて、やっと家を買うことができましたよ。中古ですけどね。女房は喜んでくれています」
・「私が指導者に求めていることはシンプルです。まじめに働き、ルールを守って暮らし、他人に尊敬の念をもって接する。そうすれば、誰もが公正な賃金が得られて公正な暮らしが実現できる社会です。ビジネス界でやってきたトランプに期待したいのです」
・この国には企業経営者のマインドでかじ取りする指導者が必要だ。アメリカも日本も世界も、大きなキャッシュ・レジスターだ。そこに入っているカネしか使うべきでない。そのルールが守られていない。平気で借金を増やす大統領が続いている。それをとめないといけない。企業経営だって、借金ばかりじゃ倒産するだろう。彼には、企業と同じようにアメリカを経営してほしいね。
・不法移民や働かない連中の生活費の勘定を払わされていることに、実はみんな気づいていた。問題だと知っていたけれど、自分たちに余裕があり、暮らしぶりに特段の影響もなかった頃は放置していた。
・ところが、収入が目に見えて落ち始め、もう元の暮らしには戻れないとわかり始めた頃、多くのミドルクラスが、もう他人の勘定までは払えない、と訴えるようになった。もう十分だ。フェアにやってくれ。限界に達しようとしている時に、トランプが登場した。
・トランプは自分のカネで選挙運動している。当選後、特定業界の言いなりになるような政治家とはわけが違う。
・トランプは受諾演説でこう強調した。「毎朝、私は全米で出会った、これまでなおざりにされ、無視され、見捨てられてきた人々の声を届けようと決心している。私はリストラされた工場労働者や、最悪で不公平な自由貿易で破壊された街々を訪問してきた。彼らはみな「忘れられた人々」です。必死に働いているのに、その子をは誰にも、聞いてもらえない人々です。私はあなたたちの声です」
・みんな起こっているのは、雇用の喪失が主な原因と思う。共和党も民主党もどっちも、グローバル化への対応で失敗した。アメリカの勤労者を陥れたのよ。
・オレたちアメリカ人は、給料から社会保障費も税金も払う。不法移民は何でも負担を逃れる。母国にドルで送金すれば、何倍もの価値になるから、安くても働く。ここで生まれ育ったアメリカ人が、この競争に勝てるわけはない。
・ついえたアメリカン・ドリーム。私が「アメリカン・ドリームを実現できそうですか?」と聞くと、多くのトランプ支持者は力なく首を横に振った。
・アメリカン・ドリームとはそもそも何だろう。誰にとっても生活がより良く、より豊かな、より充実なものとなり、各人がその能力ないし達成に応じて機会を得ることができるような土地の夢。出自はどうであれ、まじめに働いて、節約して暮らせば、親の世代より豊かな暮らしを手に入れられる。今日より明日の暮らしは良くなるという夢だ。
・いま新しい技術者を募集しているが、集まらない。応募者はくるが、水準に達していないんだ。「いい仕事がない」と嘆く労働者は多かったが、「求める人材がいない」という声ははじめてであった。「雇用を取り戻す」と言い切ったトランプが大統領になっても、かつてのような時代はもどってこないだろう。
結論
・私が出会ったトランプ支持者とは、このように日本のどこにでもいるような、普通の過程のお父さんや職探しになやむ若者たちだった。
・グローバル化と技術革新が明日の雇用にどんな影響を及ぼすのかなんてわからない。労働者の権利を守るはずの労働組合も弱体化し、組織率も下がるばかり。政党が労働者の権利保護を唱える声も小さくなっている。アメリカン・ドリームを信じるには現実が厳しすぎ、立身出世物語にもすっかり現実味がなくなった。
・グローバル化する現代社会において、アメリカの異変は対岸の火事ではない。先進国における、ミドルクラスの行方、再配分のあり方などを当事者として考えていきたい。
目次
はじめに
記者が歩いた「トランプ王国」
プロローグ 本命はトランプ
第1章 「前代未聞」が起きた労働者の街
第2章 オレも、やっぱりトランプにしたよ
第3章 地方で暮らす若者たち
第4章 没落するミドルクラス
第5章 「時代遅れ」と笑われて
第6章 もう一つの大旋風
第7章 アメリカン・ドリームの終焉
エピローグ 大陸の真ん中の勝利
おわりに
付録 CNN出口調査の結果(抄録)
ISBN:9784004316442
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:880円(本体)
発売日:2017年02月03日 第1刷発行詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ルポトランプ王国」金成隆一著、岩波新書、2017.02.03
265p ¥929 C0231 (2024.07.23読了)(2024.07.19借入)
副題「もう一つのアメリカを行く」
アメリカの前の大統領選挙で、現職のトランプさんがバイデンさんに敗れて一度大統領を辞めた。普通現職が強いはずなのに敗れてしまったわけですから、再度大統領に立候補するとは考えにくいのですが、どういうわけか、また立候補しようとしています。
トランプさんに対する根強い支持というのは何なのか、その一端でも知りたいと思って、前から気になっていたこの本を借りてきました。
かつて豊かだったアメリカが、自らが進めたグローバル化のおかげで製造業が海外へ行ってしまい製造業で栄えた地域はさびれてしまっています。トランプさんは、かつての繁栄を取り戻すと夢をみさせてくれたので、その夢に乗ってみたのでしょうね。石油や石炭を掘って、製造業を国内に戻したら国際競争力はなくなるわけですから海外との貿易はやめて、国内だけで閉じこもるしかなくなるので、現実的ではなくなるはずなのですが、夢だからそんな現実的なことは構っちゃいられませんね。
●とてもいい人(7頁)
「私はとてもいい人です。私のことを嫌いな人まで、私を指示するんです。私が本当に有能だからです。私は賢くて、信じられないほどステキな企業を育ててきました」
(企業はもうかっていないので、税金は払っていないとか。)
●大づかみのメッセージに共鳴(13頁)
支持者に共通するのは、トランプの主張の実現可能性や、政策の細かい点など気にせず、大づかみのメッセージに共鳴していることだ。
事実誤認や誇張も多い。
●彼は金をもっている(58頁)
「彼はカネも豪邸も飛行機もゴルフ場も何でも持っている。これ以上稼いでも意味がないだろう。彼は愛国心からヒト仕事やろうとしてくれている」
「トランプは自分のカネで選挙運動をしている。当選後、特定業界の言いなりになるような政治家とはわけが違う」
(裁判で命ぜられた罰金が払えなくて値切ったり、選挙用にカンパされた資金を流用しているとか)
●仕事を生みだす大統領(83頁)
「仕事が得られないのは、仕事がないからですよ。中国やメキシコが私たちの仕事を取っているのです。みんなが私たちの仕事を奪っているのです」
「私は、神が創造した中で、仕事を生み出す最も素晴らしい大統領になります。私は、雇用を中国やメキシコ、日本から取り戻します」
「アメリカに薬物と犯罪が持ち込まれています」
●「白人のマイノリティー化」(174頁)
全人口に占める白人の割合は、1965年は84%と圧倒的な多数派だったが、2015年は約62%まで減少した。さらに30年後の2045年には約50%にまで減少すると予想されている。
●得票総数はヒラリー・クリントンの勝(232頁)
アメリカの大統領選は間接選挙制を採用し、得票総数で勝敗を決めない。州ごとに割り当てられた計538人の選挙人を照射総取り方式(2州をのぞく)で積み上げ、過半数270人以上を取れば勝利となる。トランプは今回、この選挙人獲得レースで勝ったが、実は総得票数ではクリントンに286万票の差を付けられていた。
●共和党は保護貿易へ(238頁)
共和党は従来、経営者や富裕層の支持者が多く、自由貿易路線を推し進め、国内政策では「小さな政府」を原則としてきた。ところが今回は、共和党のトランプが民主党のクリントンやオバマを自由貿易推進派として攻撃する「逆転」が起きた。その結果、ブルーカラー労働者が民主党を離れ、トランプ指示に流れ込んだ。
【目次】
はじめに
プロローグ 本命はトランプ
第1章 「前代未聞」が起きた労働者の街
第2章 オレも、やっぱりトランプにしたよ
第3章 地方で暮らす若者たち
第4章 没落するミドルクラス
第5章 「時代遅れ」と笑われて
第6章 もう一つの大旋風
第7章 アメリカン・ドリームの終焉
エピローグ 大陸の真ん中の勝利
おわりに
〔付録〕CNN出口調査の結果(抄録)
☆関連図書(既読)
「ルポ貧困大国アメリカ」堤未果著、岩波新書、2008.01.22
「ローティ『偶然性・アイロニー・連帯』」朱喜哲著、NHK出版、2024.02.01
(アマゾンより)
なぜトランプなのか? ニューヨークではわからない。アパラチア山脈を越え、地方に足を踏み入れると状況が一変した。明日の暮らしを心配する、勤勉なアメリカ人たちの声を聴く。そこには普段は見えない、見ていない、もう一つのアメリカが広がっていた。朝日新聞の人気デジタル連載「トランプ王国を行く」をもとに、緊急出版!
本書「おわりに」より――
過去1年間のトランプ支持者の取材者リストを見返してみる。
トラック運転手、喫茶店員、電気技師、元製鉄所作業員、道路作業員、溶接工、食肉加工場作業員、ホテル客室清掃員、元国境警備兵、トレーラーハウス管理人、看護師、建設作業員、元家電製造ラインの従業員、郵便配達人――。
集会やバーなどで声をかけて取材した支持者は、数えてみると14州で約150人になっていた。本書に登場するのは、地方で暮らす普通のアメリカ人ばかり。彼らとの会話を振り返ると、日々の暮らしのために必死に働いている人、働いてきた人が多いことに気付く。
記者の取材を受けるのは初めてと言う人ばかり。彼らから見れば、私は海外メディアに過ぎない。それでも「オレに意見を求めてくれるのか」「長く話を聞いてくれてありがとう」と喜んでくれた。しばらくして、わかった。自分の声など誰も聞いていない。自分の暮らしぶりに誰も関心がない。あきらめに近い思いを持っている人たちが多かった。
私は、トランプではなく、問題だらけのトランプを支持してしまう現代アメリカに興味があった。あんな変な候補を支持する人は何を考えているのか? どんな暮らしぶりで、日本人の私にどんな話をするのか? 日本からトランプのニュースを見ている人もきっと首をかしげているに違いない。であれば特派員の仕事になるかもしれない、と考えた。 -
本書は、トランプ支持者への取材をベースにアメリカの現状を私たちに示してくれるような内容でした。
ニュースなどでよく取り上げられるトランプの過激な発言や行動だけに注目するのではなく、そんなトランプが支持された背景をもっと考えなければならないなと強く感じました。
本書の中では、「夢を失った地域は活力も失う。」(p.211)という一文が最も印象的でした。
また、日本の将来に対しても危機感を抱いている身としては、国を少しでも良くしたいという熱い思いを持った国民が多くいるアメリカに対して、少しうらやましいなという気持ちも抱きました。 -
差別的・攻撃的で根拠のないでまかせを平気で口にするトランプが米国大統領になってしまったことは、日本から見ていると何かの間違い(事故)みたいに思えるけれど、この本を読めば実は彼がなるべくして大統領になったということがわかります。
かつて栄えた鉄鋼業などの重厚長大型産業が衰退し、移民が増え、企業が海外に生産拠点を移したことなどで失業者が増えたラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれる地域(ミシガン州、オハイオ州、ウイスコンシン州など)を中心に、トランプは熱烈に支持されてきたようです。トランプを支持する人たちは現状に不満を持ち、「アメリカン・ドリームは終わってしまった」、「自分たちは置き去りにされた」という思いを抱いている。エスタブリッシュメント(既得権者≒一部の富裕層)に対する彼らの反感と怒りが、トランプ勝利の原動力のようです。トランプは彼らに理想を語るのではなく、彼らの敵意を煽ることで支持を集めました。
自由貿易と移民を悪者に仕立て、「TPPから離脱する」、「メキシコ国境に壁を作る」などのバカげているけど単純で分かりやすい主張をするトランプ。その主張に希望を託さざるを得ないごく普通の(むしろ思いやりのある誠実な)人たち。やはりアメリカは病んでいるのですね。
“トマスの双子の兄フランク(42)が来て「この地図、ちょっと違うな」と言い、ノートに何やら描き加え始めた。メキシコ国境沿いの壁だ。「トランプが美しい壁を造るんだ」” ── トランプを応援している人たちは、こんなにも生真面目だから悲しい。
著者は朝日新聞記者。大統領選までのおよそ一年間に約150人もの人たちにインタビューしてこの本をまとめたそうです。インタビューの結果を書いた第1~6章はどこの街でも同じような話が多く少し退屈だと感じましたが、トランプ勝利の意味を分析する第7章を読むに至って、足で稼いで積み上げられた事実の重みが説得力につながっていると感じました。 -
2016年のトランプ就任直前のアメリカを取材。
2024年の3度目のトランプ大統領選挙直前に読んだが、この本に書かれているアメリカの姿は8年前とほとんど変わらないように思う。一点、トランプが大統領になって言ったとおりにならず支持者の怒りが爆発するのではないかという予測だけは大きく外れた。今もアメリカのトランプ支持者は多いままだ。
そして、この光景は日本など多くの国の今にも当てはまるのではないか。真面目に働いてさえいれば得られたかつての生活が成り立たなくなった。「それは〇〇のせいだ。今までの政治家ではできなかったが、俺なら変えられる」 私達はそんな声に注意しなければならない。 -
迫真のルポだ。登場する一人一人は洗練されていないが、ひたむき。いわゆる頭でっかちがいない。庶民の声だ。エスタブリッシュメントを嫌い、ビジネスの手腕を評価する人々。今のアメリカに何が起きていて、トランプがなぜ勝てたか納得できた。グローバル化はアメリカをも疲弊させているのだ。
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*内容に触れているけど、内容に触れて興を削ぐような本ではないのでネタバレ仕様にはしていません。
THクックの『蜘蛛の巣のなかへ』を読んでいて、ふっと読んでみたくなった本。
朝日新聞のニューヨーク特派員である著者が、その舞台(アパラチア)の地域や近接するいわゆるラストベルト地帯に住む人々に2016年のアメリカ大統領選挙の時のインタビューをまとめたもの。
ただ、正直言うとインタビューの内容は、ちょっと期待外れだった感がなきにしもあらず。
というのも、第2章の冒頭でブルース・スプリングスティーンの「ヤングスタウン」が紹介されるのだが、そういったスプリングスティーンやジョン・メレンキャンプ等、アメリカのスモールタウンソングを歌うミュージシャンに親しんできた自分みたいなのからすると想像した範囲内のことが多かったからだと思う。
「トランプ現象」なんて言われだした頃、その震源地が「ラストベルト」と言われるエリアだというのは日本のニュースでも伝えられていた。それを知ってしまえば、そういったスモールタウンソングの歌詞を思い出し、おぼろげにでもイメージ出来たのだ。
そんなわけで、ラストベルトやアパラチアについて書かれた5章までは面白いのは面白いのだが、興味という点でちょっとイマイチ。
でも、サンダース候補について書かれた6章、アメリカンドリームの終わり(?)について書かれた7章はとても興味深く読んだ。
サンダース候補の日本での報道はトランプさんとヒラリー・クリントンに比べると少なかったとはいえ、それでもその偏屈な面白さは十分に伝わっていたように思う。
「こういう人って、今の日本の政治家にいる?」、「あ、強いて言えば、橋下徹?(異論反論そーと―あるだろうけどw)」
「ただ、橋下さんだと、(サンダースみたいな)ついクスっとしちゃう可笑し味がないんだよなぁー」なんて(笑)
サンダース候補と付き合いが長いという地元の新聞社のアキ・ソガ編集長によれば、“いつも機嫌が悪い、おじいさんのイメージ”だとかで、まさにTVの演説通りの人なんだなーと感心したり、呆れたり。
そのサンダース候補を支持している(た)人によれば、サンダース候補が“「週40時間働いている人が貧困に陥るべきではない」と言っているのを聞いて、これだ。この人を応援しようと思った”とのことで、そんなの聞いたら日本人の自分でも応援したくなるw
というか、今の日本の政治家や役人で(に限らず経済人、あるいは一般の人でも)それをそう言える人、どれだけいるんだろう?
もちろん、そこには、たんなる自己満足の感情論だけで無責任に働き方改革と旗を振っている人たちは含まれない。
そんなわけでサンダース候補の章はかなり面白かったのだが、1章しか割かれてなくて残念だった。
次いで終章である7章、これはいろいろ示唆に富んでいて相当考えさせられる。
まず、大統領選挙の討論会の前、トランプ陣営は支持者にヒラリー・クリントンを具体的にどんな風に悪口言えばいいか?をアンケートしていたというのには、大笑いしてしまった。
もはや、「勝てるわけねーよ、ヒラリー・クリントン」という感じw
ヒラリー・クリントンって、関係ない日本の自分から見ても金持ち臭プンプンで憤懣やるかたないって感じだったから。そういう層(既得権益層)に反感を持っていた人からしたら、そのアンケートはさぞ溜飲が下がったろうなぁーw
ま、金持ち臭プンプンで辟易といえばトランプさんはそれ以上なわけで、支持者がそれに文句言わないのは不思議なんだけどさ(もしかして、そここそがトランプさんのご人徳?爆)。
ていうか、その手法。選挙への関心がやたら低い日本も、もしかしたらそんな風に選挙を盛り上げたらいいんじゃない?なんて(笑)
日々生活していれば、要望や言い分は誰しもあるわけで。候補者がそれを巧みにすくい上げて他の候補者と論戦したり、あてこすりし合ったら、みんなたちまち選挙に関心を持つと思うけど。
あ、でも、今の日本の政治家は、投票に行かない層が投票に行かないからこそ自分(自党)が安定した票を得られると知っているから、そんなことさせるわけないか?w
「分断はよくない!」とか、もっともらしいこと言ってさ(笑)
ていうか、マスコミもよく「(アメリカの)分断が進んだ」って言っているけど、そぉ~お?
暴力事件等が起きているのは事実だけど、でもそれは昔からあったことで、ある意味それこそが良くも悪くもアメリカだったりするんじゃないのかな?
そもそも分断したらしたで、政治家が外に「民主主義の敵」を作って、たちまち団結。戦争をすることで国民のガス抜きしてきたのがアメリカじゃん(笑)
それはともかく、選挙をエンターティンメントとして庶民を楽しませて支持を集めるという点で、トランプさんは一枚上手だったということか。
ていうか、先週の相撲のアメリカ大統領杯贈呈の時の心底嬉しそうな顔が示しているように、実は(自分に歓声をおくる)観衆を楽しませることが大好きな人、ということにすぎなかったりして?w
次いで一番考えさせられたこと、それは7章の表題にもなっている、アメリカンドリームの終焉だ。
つまり、P244にあるように“「高校を卒業すればミドルクラスになれた」という時代は、もはや特定の時期に、特定の国に起きた奇跡と捉えた方がよさそうだ。「雇用を取り戻す」と言い切ったトランプが大統領になっても、かつてのような時代は戻ってこないだろう”ということだ(なのだろう)。
ただ、著者は直接そうは書いていないが、それは「終焉」というよりは「変化」なのだろう。
つまり、書かれているように、“先進国で食べていける技能が、より高度になるだけでなく、技術革新に合わせて変わっていく以上、いわゆる「スキルギャップ(技能の差)」の問題にはどの先進国も直面している”ということで。
今や「アメリカンドリーム(注:著者は昔のアメリカのミドルクラスの豊かな暮らしという意味で使っている)」は、高校を卒業しただけでは叶えられない時代へと変わった、ということなのだろう。
日本でいうなら、それは大卒や大企業にあたるのかどうかそれはわからない。ただ、いずれにしても、毎日会社に行って仕事をして退社時間になったら帰るみたいな、言ってみればサザエさんの家のお父さんたちのようには暮らせないと思った方がよいということか。
著者は、さらに哲学者のローティという人の“世界経済は(略)どこの国とも共同体を作ることなど考えていない国際的上流階級によって、間もなく所有・支配されるだろう”という文章を紹介している。
“所有・支配”といっても、もちろんそれをするのは民主主義こそが為政者にとって一番都合のいい統治システムだとわかっている現代人たちがそれをするのだから、独裁や圧政といった、いわゆるディストピアがやってくるわけではないだろう。
ただ、今も多かれ少なかれそうであるように、日々の生活のため、あるいはちょっと便利のため、死ぬまで月々費用を徴収され続ける生活。さらには、払う費用やちょっと便利のために生活や自由が次第に圧迫されていく、そんな生活。
そんな生活のための膨らみ続けるそれらの費用を払うため、庶民はあくせく働かなきゃならなくなっていく……、って、あれ?それって、今と全然変わんないじゃん!?(笑)
ただ、それはアメリカだからで
。人がどんどん少なくなっていくこの日本では将来的に働く場所がなくなっている可能性もあるわけで…
以下は蛇足。
トランプさんというと「国境に美しい壁を作る」だけど、いつも不思議に思うのはなんで日本のマスコミはそれを悪いこととして報道するのだろう。
TV報道を見るかぎり、国境には今でも有刺鉄線やフェンスなのの壁があるようだ。
ただ、それは国境である以上普通のことで、トランプさんが「壁を作る」というのは今の有刺鉄線や壁では国境が守られていない現状があるからだ。
壁や有刺鉄線の柵は今でもあるわけだ。トランプさんの言う「美しい壁」wは反対だけど、今あるものはOKというのは、つまり“国境を勝手に入れる壁や柵はいいけど、トランプの壁だと入れないから駄目”ということなんだろうか?
ていうか、そもそもトランプさんが問題にしているのは、(あくまでタテマエの上は)勝手に入ってくる“不法な”移民のことだ。
その“不法な移民”を防ぐための壁について、政敵であるアメリカの民主党が反対するのはともかく。また、トランプさんにコケにされるから反トランプになっているアメリカのマスコミが反対するならともかく、日本のマスコミや評論家、エコノミストが反対するのは意味が分からない。
こないだもテレビ朝日だったかで、「国境の壁はなんの解決につながらない」とか言っていたけど、もし半島の某国から日本に難民が大挙してやってきてもそんなことを言うつもりなんだろうか?
もっとも、日本の場合、国境は海なんで。確かに「壁はなんの解決につながらない」とは思うけど(笑)
もうひとつ蛇足。
テレビのニュースでトランプさんが勝つと予想と言ってたんだったか、次期大統領と決まった直後に勝利した納得出来る理由を言ったんだかどっちかは忘れたけど、なるほどなーと感心させられたのはフジテレビの風間氏と木村太郎氏だった。
あくまで自分が見ていた範囲なので他にもいるとは思うが、その風間氏が出ていたユアタイムはユニークで面白いニュース番組だったなーと思う。
テレビのニュースというと、最近は取り澄ましたカッコばっかりつけるばかりで中身は全然ないものばかりになってしまったけど、あの番組出ていたレギュラー陣(もちろん司会の女性タレントも含む)から出てくる話に興味深いものが多かった。
変なバッシングのせいかすぐに終番になってしまったが、視聴者にチャンネルを変えられないよう視聴者が好みそうなニュースだけ選んで流している●HKを見るたんび、何で日本にはまともなニュース番組がないんだろう?と不思議に思う。 -
筆者が実際に何度もラストベルトを中心としたアメリカへ足を運んで取材を重ねるなかでの、アメリカの分断に対する肌感覚をリアルに描いている。かつては比較的、好待遇で所謂「一般的な幸せ」を築けたブルーカラーの労働者たちが職を失い、社会に対して荒んだ眼差しを向けている。
もちろんここに書かれたことはアメリカのほんの一部ではあるが、自分が想像していたよりも、荒んだアメリカ、ネガティブなアメリカの実情は悲惨だった。 -
選挙中から、そしてこの本を手にするまでずっと、「なんでアメリカ人はあんな暴言ばっか吐いてる人を大統領にしちゃうんだろう?」と思っていた。
でもこの本を読んで納得した。
ニューヨークやロサンゼルスのような大都市以外の地域には「学校を卒業しても職が見つからない」、「仕事をしても生活が苦しい」、「ミドルクラスから落ちてしまいそうだ」、「今までの職業政治家では変わらなかった」と不満を募らせてきた市民が多く、そんな中で「仕事を奪っている移民を追い出す」、「強いアメリカを復活させる」、「献金を受け取らない自分は利益団体の言いなりにならない」と言うトランプが出てきて多くの人が支持した。
だいたいこんな感じなのだろうと思う。
「昔は良かった」的な人が沢山登場するけど、「石炭を使えば全てが良くなる!」なんてのは笑ってしまった。昔のアメリカは圧倒的な物量で他国より優位に立ったし、単純労働者も裕福になることができたんだろうな。それで、産業構造の変化した現代においてもその感覚を忘れることができない人が多いのかなと思った。アメリカで製造業を復活させると言ったって、アメリカ人従業員に高給払いながら作った製品じゃよっぽどの付加価値でもなけりゃ厳しいでしょ。
結局金持ちが尊敬されるという風土が根付いてる以上、一部の金持ちが社会的に高い位置に立って、金持ちがより金持ちになるような社会を作っていくんだろうと思う。金以外に他に共通の価値観がないんだろう。
アメリカが格差を強めていったとしても、日本は追随して欲しくない。
トランプの今後はどうなるんだろうか。二期目はあるのか。 -
タイムリーでめちゃ良い。なるほど、こういう支持層なのか、と納得。トランプと言うより、トランプが選ばれた背景を追ったルポ。トランプが選ばれるだけの問題をアメリカ社会は育み、そしていまマジョリティになってる。これは日本にも向こう10年〜20年くらいで通じる話に思う。昔の車産業、将来はIT産業だろう。
ちなみにこの衰退したエリアではオバマも同じように製造業の復活をアピールした、サンダースも似たようなことを言ってるとのこと。テーマはミドルクラスの没落である。
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約10年前のアメリカ大統領選挙に伴い、当時のトランプ支持者へのインタビュールポ。
当時もトランプはアメリカ第一主義を唱えていたが、それは今も同じ。
当時も今もトランプ支持者の属性はそう変わらないのではないかな。
ミドルクラスから貧困層へ落ちるの恐れる人々。
現状のままではなく変化を求める人々。
インタビューを読んでいると、普通の人々がそれまでと鞍替えをしてトランプ支持者となっている。それくらい魅力的に見えたのだろう。
経営者と出身いうのも良かったんだろうな。政治家もしくは政治屋というのに辟易していたのだろう。
既得権益にとらわれない、政治素人に任せたい人々がそれだけ掘り起こされたということか。
あれから10年たった現在。今もまた同じ事が全世界で起こっている気がする。 -
読んでいると悲しくてしかたがない。
p.45
「私が指導者に求めていることはシンプルです。まじめに働き、ルールを守って暮らし、他人に尊敬の念を持って接する。そうすれば誰もが公正な賃金を得られて公正な暮らしが実現できる社会です。ビジネス界でやってきたトランプに期待したいのです」
p.58
「彼はカネも豪邸も飛行機もゴルフ場も何でも持っている。これ以上稼いでも意味がないだろう。彼は愛国心からひと仕事やろうとしてくれている」
p.147
「ジョンソン大統領のおかげで、アイネズは「アパラチアの貧困」の代名詞のような街になったんですよ。まあ貧困であることは、今も変わりませんが」
p.148
「突然の大統領の訪問に、私たち住人は面食らっていたんです。実は当時の私たちは、自分たちが貧しいとは思っていなかった。現金収入は多くなかったけど、食べるものは栽培できるし、足りないものは近所で交換しあっていた。みんな同じような生活水準で、言ってみればegalitarian societyだった。比較する富裕層もいないし、貧困とは思っていなかった」
p.152
「このあたりでは、ついに水まで飲めなくなった。役場からは毎週のように、10分間は沸騰させてから飲むようにと警告が出る。この国の問題は、ペンタゴン(軍需産業)にはとめどなくカネが流れるのに、庶民の暮らしに直結するインフラ整備には回らない。この街の水処理施設は65年前のもので、改修されていないため、ついに水が危なくて飲めなくなった。いいかい、高校にも裁判所にも公の水飲み場がないんだよ。水が飲めない街で、いったい誰が暮らしたいと思うんだろうね」 -
2025/10/13
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2016年に書かれた本です。
今から8年前のトランプとヒラリーの大統領選挙のときのルポです。
8年経って、この本に書かれていることは変わらず、むしろ悪化しているのかと思いました。
トランプが大統領だった4年間、そのあとのバイデンの4年間、二人の大統領ともに、アメリカの中間層にとっては無力だったのでしょう。
それでもまたトランプが大統領候補になっていることは不思議な感じです。
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ニューヨークやワシントン、ロサンゼルスだけがアメリカではない。その通り。シカゴをみてもそう思った。
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トランプ関連書籍を読み始めてこれが4冊目になりますが、これまでの3冊と比較すると圧倒的に質が高いと感じました(その他の3冊の書評については私のレビューをご参照ください)。大統領選挙の1年ほど前からトランプ候補の支持者が多い地域への足で稼いだ生情報、非常に参考になりました。日本のテレビだけを見ていると、トランプを支持している女性なんて1人もいないかのような報道ぶりでしたが、現実は米国女性の41%はトランプを支持している。しかも本書に登場するトランプ支持者の女性は、変人でもなんでもなく、実直に働いてきた人々、という印象を受けました。より正確には「トランプ」という個人が支持されているわけではなく、これまでの既存政治家、エスタブリッシュメントへの反感がいかに大きいか、自分自身の生活をなんとかしてくれ、という強い思いを本書から感じました。
本書の最後にも著者が問いかけていますが、これは米国の民主主義の終わりの始まりなのでしょうか。この問いは本当に難しく、トランプ政権の誕生は行きすぎた資本主義に対する民主主義の逆襲という見方もできるわけですが、その結果として選ばれたトランプが民主主義を弱体化させるかもしれない、という皮肉な結果も十分ありうるわけです。つまり民主主義的な手続きを経て、民主主義を衰退させる指導者が選ばれてしまった、という可能性です。日本の将来を考える際にも非常に示唆が多い良書だと思います。 -
トランプがアメリカにムーブメントを起こした過程を、トランプの支持者がいるエリアに入り込んで取材をしながら生の声を届けている。
指示者の感情や背景を押さえながら、臨場感を持って書いているので、次に次にと引き込まれるように読んでしまった。著者の文章技術に脱帽。
アメリカで問題になってる不満は、日本など他の先進国でも同じ現象ではないだろうか。一生懸命目の前の仕事に働いていれば、そこそこの生活を堪能できた時代から変わってしまっている。
所々にも出てくるように、情報技術に基づく職業は確かに利益を生み出す業界であるけれども、雇用や街、生活を作り出す点では、製造業は違っていて、には違う指標が必要だ。
一方、サンダースについて。彼も、結局、現場の人々の生活や社会行動には課題認識を持っている。ただその伝え方がトランプとは異なっていたと言うだけだろうか。
ソガ氏(サンダース)のコメント:
昔は多くの人がテレビで同じ情報を得ていたが、最近は自分の情報を選り好んで、自分と同じ意見の人としか話さないから、不満を持つ人同士がどんどんつながるようになった。 -
先入観を持たず現地で聞き取りを行うジャーナリズムを感じさせる一冊。グローバリズムによって経済状況が向上したのは、先進国の上流階級と途上国の中間層であり、没落したミドルクラスのエスタブリッシュメントに対する反感をうまく集めたのがトランプ。高卒でもミドルクラスになれたという状況が例外的なものだったということを踏まえ、アメリカという共同体をどう維持するかは引き続きの課題といえる。
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新聞社のニューヨーク駐在記者がトランプ支持者が多いラストベルトやアパラチアを歩く。出会った人たちの声から見えてくるアメリカの今、そして大統領選の結果。
これからもこういう時間をかけて生の声を集める取材が必要だと思う。 -
トランプさんを支持する人はどういう理由かを迫った書籍です。
現地の人の訴えが分かるため、貴重な本です。
ラストベルトの人々の訴えは日本と全く同じだと思い、危機感を感じます。
基本的には、移民問題による雇用の減少がテーマとなっております。著者は統計データに基づき、トランプへの疑問や反対意見も挙げてますが、賛同できるところとできないところがありました。ですが、そこも含めて良いです。
私は、この本の反対意見も踏まえた上でトランプさんを支持しています。
この本で取材に応じておる現地の人々が、日本人より人情が溢れている感じがして、凄い好感を持てました。
現地の人の声で、「テレビが伝えるアメリカはエスタブリッシュメントばかりだ」「映画で見るアメリカはニューヨークやロサンゼルスばかりだ」という言葉には、確かにそうだと胸を打たれました。移民問題や人種差別問題が多く取り上げられ、少しずつ改善はしていってますが、裏では忘れ去られた白人の人々が貧困になっていることは見向きもされません。
あと、アメリカ国民の政治への関心がとても強いです。私の周りでは選挙に行かなきゃだめだとという考えを持っている人は多いですが、政治についての関心は他国と比べて本当に低いと思います。テレビやネットを見てなんとなく投票するでなく、国の命運をかけているという自覚を持ち、できる限り勉強をして投票をしてほしいです。
もしアメリカに行く機会があれば、この本で登場をした人々の街を旅行して地域貢献をしたいです。
著者プロフィール
金成隆一の作品
