ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)

著者 : 金成隆一
  • 岩波書店 (2017年2月4日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316442

ルポ トランプ王国――もう一つのアメリカを行く (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 本書では、なぜアメリカの人々がトランプ氏を支持したのか、いわゆる「ラストベルト」に住む人々の生の声を拾い上げている。本書を読むと、トランプ氏はこの「ラストベルト」を中心とした地域に住む人々の声を拾い上げて、大統領の座を射止めたのだということがわかる。

    筆者はこの「ラストベルト」を歩き、主にトランプ氏の支持者たちに会って話を聞き続ける。筆者が話を聞きたいと告げると、トランプ氏支持者たちはみな、自分の話を聞いてほしいと訴え、自分の置かれた状況を語るのだ。ユーモアに包んだ語り、悲痛な語り、過去を懐かしむ語り、現状への怒りと将来への不安の語り。

    本書に登場するトランプ氏の支持者たちは、みな気さくで親切でいい人ばかりだということに、わたしたちはすぐに気づく。そんなトランプの支持者の多くを、筆者は「明日の暮らしや子どもの将来を心配する、勤勉なアメリカ人」(本書pⅱ)と位置付ける。本書で描かれているトランプ支持者の姿は、わたしたち日本人の姿と重なるものも多いことに気づくのだ。

    その意味では、本書はトランプ大統領誕生の一端をのぞくことのできる、第一級のルポルタージュと言えるだろう。

    ただ、トランプ氏を支持したのはこのような「ラストベルト」に住む人々の大きな支持を集めたのはたしかだが、他にもエスタブリッシュ層や人種差別主義者などの「隠れトランプ支持者」も、多数存在することが指摘されている。「ラストベルト」以外にも、トランプ支持者はたくさん存在しているのだろう。本書ではそのあたりの「隠れトランプ支持者」の声や「ラストベルト」の住人以外のトランプ支持者たちの声には触れられていない。

    トランプ大統領の就任から半年以上が経った。政権に入った高官が相次いで辞任し、ロシアとの結びつきが疑われ、さらには白人至上主義団体と反対派との衝突事件では人種差別を容認するかのような発言を行うなど、いまだにトランプ氏自身の大統領としての資質に疑問符がつけられる日々だ。そんな状況の中で、「トランプ王国」はどこへ向かっていくのだろう。

    そのあたりの時事的なトピックを受けた人々の声を拾い上げる「続・トランプ王国」を期待したい。筆者は引き続き朝日新聞紙上で、「トランプ現象」に関する記事をいくつか書いているので、その期待もまた近いうちに叶えられるだろう。そう信じて続編を待ちたい。

  • タイムリーでめちゃ良い。なるほど、こういう支持層なのか、と納得。トランプと言うより、トランプが選ばれた背景を追ったルポ。トランプが選ばれるだけの問題をアメリカ社会は育み、そしていまマジョリティになってる。これは日本にも向こう10年〜20年くらいで通じる話に思う。昔の車産業、将来はIT産業だろう。

    ちなみにこの衰退したエリアではオバマも同じように製造業の復活をアピールした、サンダースも似たようなことを言ってるとのこと。テーマはミドルクラスの没落である。

  • 何故トランプが大統領に選ばれたのか。
    日本の新聞やテレビのニュースでは取り上げられることの無いアメリカの地方を回って選挙期間中に支持者にインタビューをした記録ですが読んで理由が分かったような気がします。
    自由貿易により仕事が海外に移転し、移民の安い労働力に押されて生活が苦しくなる人々の姿。アメリカンドリームは遠い過去、今は生活するのが精一杯の人々。自分たちはミドルクラスのはずが今では貧困層との瀬戸際に居ると言う危機感。
    人々の怒りや絶望が彼を大統領にさせたのだと分かりました。

    日本でも将来起こりえるのでは…と不安になりました。

  • 14州150人の人たちに丁寧にインタビューし、自由貿易による恩恵が十分でなく、より安い労働力に取って変わられ仕事を失ったり、収入が十分でなくなった人たちの不満、不安がトランプ支持につながった背景が非常に納得できた。
    全面的にトランプを支持し手弁当で活動を応援する人、差別発言等は受け入れがたいと思いつつ今までの違うことをしてくれるのではと期待する人、オバマを支持しつつも「変化」を求める人、現状の政治に期待できず一度くらいトランプに任せてみようかと思った人など、立場も想いも様々であるようだ。
    トランプのPR、人の心をつかむ振る舞い、スピーチの上手さもなるほどと思わされる。一方で発言内容のエビデンスのない点も指摘されている。
    たとえば不法移民は税金を払わず、福祉に頼っているとの意見が繰り返されたが、「半数の不法移民が所得税を払っている。買い物の消費税や、住居の固定資産税も払っている」「不法移民により払われた地方税と州税の年間合計は116億ドル」にも上るそう(p.218)。
    またオバマケアの国民皆保険制や移民の保険金についての不満についても、不法移民の多くが「保険料をはらっており、支払額は年間150億ドル」「彼ら推定310万人の支払いがなければ予算不足になる」との社会保障庁の見解も紹介されていた(p.14)。
    さらに国民全体の意見としては、「雇用や住居を奪うという理由で移民を「重荷」と見る人の割合は激減し、逆に勤勉さや才能で社会を「強化」していると捉える人は増加している」のだそう(p.135)。
    問題は当選後。これからトランプはアメリカの大統領としてどんな政治を展開していくのだろう。選挙スピーチでは具体的な方法、方策は示さず、現状のダメな点を指摘し、自分はうまくできる、と言うことで支持を得られても、実際の政治ではどう解決していくのか。選挙で終わりでなく、これからのトランプの、そしてアメリカの動向が気になる。
    インタビューの発言で非常に心に残った意見、「インターネットの影響で(略)自分の好きな情報だけを選んで見られるようになった」「そのため自分と同じ考えを持っている人としか話さなくなって、そうすると不満を持つ人同士がどんどんつながる」(p.193)という言葉、非常に納得した。

  • 結論はいらない

  • 2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプが勝利したことには非常に違和感があったため、トランプ勝利の理由を知りたかった。本書がこの気持ちに的確に答えてくれた。

    ニューヨーク、ワシントン、ロサンゼルス等の大都市圏に住む人々からアメリカ人のイメージを思い浮かべていたため、ヒラリー・クリントンが勝利すると思っていたが、本書のルポから有権者の生活実態を全米規模で考えればトランプ勝利もあり得ることが理解できた。

    アメリカの「ミドルクラス」が抱える悩み、最早アメリカンドリームを思い描けない現実が、トランプが発する心地よい演説に魅せられたトランプ支持者を生み出したようだ。
    日本でも、真面目に働いても生活が以前よりも良くなるとは言えないのが現状である。将来の日本において、トランプの様なポピュリストが政治の要職に就くことがあるのか、気になるところである。

  • 良書。米国のミドルクラスの没落について書かれているのに、日本の事のように思えて読んでしまった。

    ・製造業の減少とサービス業の増加。
    ・親世代より豊かになれない子供世代。(日本でも団塊世代vs氷河期世代の問題)
    ・親世代と同じ職業でも求められるスキル、学歴は圧倒的に高レベルな子供世代。
    そして進学の為には多額の学費負担が必要で、卒業時の借金は1000万円相当。(日本でも奨学金の返済問題)
    などなど。

  • かつてはブルーステーツ(民主党支持)呼ばれ、トランプ大統領が赤(共和党支持)く染めたラストベルト諸州を丹念に取材し、現地の人々と交流し、彼らの本音を引き出し、米国の変容を描いた好著です。トランプ支持者は一般的にはヒルビリーと呼ばれ無学で怠け者といったレッテルが貼られていますが、本書での取材からは学歴は無いものの人間味のある真面目な働き者といった印象でした。ちなみに、著者の金成氏はトランプ大統領には批判的です。

  • 決して対岸の火事ではなく、明日は我が身。

  • ラストベルト 錆びついた工業地帯
     オハイオ州マホンング郡ヤングズタウン
     かつて米国を代表する製鉄の街

    ケンタッキー州アイネズ アパラチアの貧困の代名詞

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