シリア情勢 終わらない人道危機 (岩波新書 新赤版 1651)

  • 岩波書店 (2017年3月24日発売)
3.48
  • (7)
  • (4)
  • (7)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 183
感想 : 19
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (224ページ) / ISBN・EAN: 9784004316510

みんなの感想まとめ

複雑なシリア情勢を深く理解するための一助となる良書で、表面的な情報に惑わされず、実際の状況を掘り下げています。著者は、西側メディアの偏った報道に対抗し、アサド政権と反体制勢力の対立だけでは捉えきれない...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • シリア情勢
    終わらない人道危機
    著:青山 弘之
    岩波新書 新赤版 1651

    複雑怪奇な中東情勢の中でも、難解なシリア情勢の解説書

    2011年のアラブの春から、2017年のイスラーム国からの奪還までの7年間のシリア情勢を説明
    なぜ、文明の十字路を押さえていた、中東の強国である、シリアが、大量の難民を出し、多くの大国の干渉を受けなければならなかったか

    地政学的な重要地域であるシリアをとりまく様々なベクトルを解説しようとしているのが本書である。

    非常にわかりにくく、日本での認知も低い。いかに日本がこの地域に関心をはらっていないかを知ることになる。

    【第1局面】民主化
    【第2局面】政治化
    【第3局面】軍事化
    【第4局面】国際問題化
    【第5局面】アル=カーイダ化

    ■第1局面:民主化 アラブの春 2011年

     シリアにもアラブの春が波及する
     ①シリアでは地方で散発のデモが起こっただけで1万人程度の規模だった
     ②デモが、SNSでの呼びかけに必ずしも呼応していなかった
     ③活動家が海外から遠隔操作していた

    ■第2局面:政治化 アサド政権VS反体制派

     シリア内戦の反対体制派
     ①シリア国民連合 カタールドハーで米国主導で結成
     ②民主的変革諸勢力国民調整委員会 2011年ダマスカスで結成 アラブ民主主義者、マルクス主義者
     ③PYD:民主統一党 トルコPKKの元メンバ、クルド民族主義政党など

    ■第3局面:軍事化 反体制派とシリア軍との衝突 シリア内戦の始まり

     2011年8月 血のラマダン ⇒アスアド大佐が自由シリア軍を結成 軍から離反
     2012年7月 反体制派が、ダマスカス、アレッポを攻撃

    ■第4局面:国際化

     第1陣営 サウジ、カタール、トルコら「シリアの友グループ」が反体制派を支援
     第2陣営 ロシア、イラン、中国 アサド政権を支援

     両陣営とも、シリアを第1防衛ラインとしてみていた 安全保障上の国益に直結していた

     また、サウジアラビアと、レバノンをめぐって、対立していた

    ■第5局面:アル=カーイダ化 シリアがイスラム過激派の主戦場となっていく

     ①戦闘の当事者
     シリアのアル=カーイダ:ヌスラ戦線
     アル=カーイダ
     イスラーム国

     ②外国人戦闘員の潜入
     イスラム過激派
     サウジ・カタール・トルコの支援

     国内難民、国外避難民の発生

     イスラエルのシリア空爆:核設備への攻撃

     アサド政権の化学兵器使用の疑惑 ⇒ 化学兵器の使用はあったが、それがアサド政権のものか、反体制派のものかはわからなかった

     アメリカの不可解な介入 中途半端なオバマ政権とトランプ政権への交替

     アル=カーイダに対する欧米への支援から、脅威への変更

     2016年 イスラーム国のイラク石油権益への攻撃から欧米が政策を変換
     ⇒反シリアから、反イスラーム国へ
     ロシア・アメリカの穏健な反体制派支援の変化

     トルコがクルド人過激派への対抗から政策を変更 安全地帯の設定、ロシアとの妥協、反体制派への支援の見送り

     トルコ・ロシアによる、アメリカ勢力への排除 アスタナ会議 2017年1月

     イスラエル・ロシアが、シリア領空へのすみ分け、それぞれの国への攻撃を黙認

     ロシア軍主体のシリア国内への反体制組織への空爆を実施

     2017年 シリア軍が、イスラーム国よりヒムス県タドムル市を奪還
     
    ■シリアをめぐる関連国家

    ・シリア・アラブ共和国 アサド政権
      東アラブのかつての盟主 シャーム
      アサド家は、イスラム:シーア派の一派であるアラウィー派
      反米
      反イスラエル 
      親ロシア 海軍基地、空軍基地がある
      中東の活断層
      レバノンを巡って反サウジアラビア
      反サウジ+トルコ+カタール、反スンニ派

    ・ロシア
      親シリア
      シリアに海軍基地、空軍基地をもつ 地中海における拠点のひとつ

    ・トルコ 
      反シリア シリアの友グループ
      西側 NATO加盟国
      反ソ連・ロシア
      多量難民の受け入れ

    ・ヨルダン
      多量難民の受け入れ

    ・サウジアラビア 
      反シリア シリアの友グループ
      レバノン問題で反シリア

    ・カタール
      反シリア シリアの友グループ

    ・クルド
      トルコ、シリア、イラク、イランの一定地域に生息している、世界最大の国家なき民族

    ・イスラーム国
      反シリア シリアの一部を制圧、国家を建設

    ・イラク
      反シリア=親米
      石油の権益をめぐって、イスラーム国とアメリカが衝突

    ・イラン
      親シリア

    ・中国
      親シリア  

    目次
    はじめに
    第1章 シリアをめぐる地政学
    第2章 「独裁政権」の素顔
    第3章 「人権」からの逸脱
    第4章 「反体制派」のスペクトラ
    第5章 シリアの友グループの多重基準
    第6章 真の「ゲーム・チェンジャー」
    おわりに
    主な文献・資料
    表 「反体制派」による主な連合組織・合同作戦司令室
    年表
    索引

    ISBN:9784004316510
    出版社:岩波書店
    判型:新書
    ページ数:224ページ
    定価:780円(本体)
    発売日:2017年03月22日第1刷

  • 2017年時点でのシリア情勢

    ハーフィズ→バッシャール・アサド

    民主化→政治化→軍事化→国際問題化→アル・カイーダ化

    現政権=悪、反政府=善ではなく、複数の反政府組織が折り重なる(確固たる反政府組織がいない)複雑な様相

    アサド政権は倒したい、しかし中東の安全弁としてのシリアの存在も捨てがたい、そのため戦争を通して政府が弱ってくれれば良いという諸外国の考えから長期化する内戦



  • 中東において長きに亘りアサド大統領による独裁が続いてきた国、シリア。そのアサド政権が終わりを告げたのは昨年、同氏のロシア亡命という衝撃的なものであった。あまりシリアの情勢に目を向けて来たことがない私からすれば、ニュース映像で見るアサド大統領の強い姿しか知らなかったからか、ある程度のインパクトがあったことを記憶している。勿論その辺りの事情に詳しい研究者やシリアに目を向けていた方々からすると、終わりを告げる事はある程度予測の範囲内であったかもしれないが。
    シリアは正式名称シリア・アラブ共和国と言い、北にトルコ、東にイラク、南にヨルダン、西にレバノン、南西にイスラエルと国境を接する西アジアの共和制国家である。地中海にも面しており、この辺りは周辺国家からの移動における要所であるから、東西文明の十字路とよばれ、古代から栄えて来た場所である。シリアという言葉は周辺を含む「大シリア」としての地域の名称にもなっている。首都はダマスカスにあり、この国の人口は大凡二千万人程度である。大半をアラブ系の民族で構成するが、アルメニア人やクルド人などもいる他民族国家となっている。宗教的にはアラブ人の大半がイスラム教スンナ派であるが、前述のアサド大統領をはじめとする支配層はアラウィー派(シーア派の一派)となっており、少数派が多数派を支配する形が長く続いてきた。
    歴史的には交通の要衝・十字路としての位置づけから、様々な国家の支配下に置かれてきた地域であるが、ヨーロッパ植民支配からは逃れる事は出来ず、近代はフランスの委任統治領として支配された。その後各地が分離・分割を繰り返した後、第二次世界対戦後にシリア第一共和国としてフランスより独立する。更にはこの地域特有の混乱を経験し、1970年代にアサド大統領の父であるハーフィズ・アル=アサドが実権を握り、大統領に選出されると、その後の息子アサドまで続く混沌とした時代が幕を開けることになる。父アサドは政治改革や腐敗の一掃など革新的な指導者としての位置付けで、当初は期待されたが、その後独裁的に強権をふるい、反体制派を徹底的に弾圧するなど、独裁政治へと変遷していく。
    本書はそれら過程で諸外国がどの様にシリアに関わり、シリアの混迷を更に激化してきたかを綴っている。アメリカやロシア、トルコなど周辺の大国の思惑が渦巻く中で、2000年に父の急死により大統領を世襲した息子アサドが、微妙なバランスの中で、如何にして独裁政権を維持することができたかなど、本書を読むことで想像以上の混迷した状況を理解することができる。ただし、あらゆる国内外の勢力が登場し、手を組んだかと思えば、また分裂して銃を向け合うなど、中東史にありがちな「名前を覚えるのが大変」と言った状況に誰もが陥る。それがこの地域の解りづらさを助長してくると、何度も何度もページを巻き戻しては読み返すという事態になる。一度もう少し俯瞰して勉強しなおした方が良い私にとっては、常時混乱しながら読み進める事となった。
    だが結論からすれば、中東の混迷の一部を切り取ったシリアの歴史に触れ、アサド大統領が亡命するに至る状況を理解することには役立つし、要はこの手の本を読み漁ることで「慣れ」に繋がるのは間違いない。とてもシリアに旅行しようなどとは今の段階では考えないが、東西文明の十字路としての当地をいつかは訪れ、砂漠に立ちながら歴史の風を感じてみたい衝動に駆られる一冊だ。

  • 表面上で語らない良書。
    大手メディアを中心としてニュースで流れている情報がいかに都合良く(もしくは見映えのするものだけ)切り取られているかがわかる。

    シリア「内戦」とは言えない上、複雑すぎる。

    どうしたらいいかはまだわからないけど、これからの情報を判断するための一助となった。

    次はもう少しイスラム教についてを抑えたい。

  • 2025年2月時点で、アサド政権は倒れたが、それもイスラエル戦争の影響であり、さらにはイスラエルからの攻撃も続いている。詭弁により食いつくされるまで終わらないのか。

  • 近年のシリア情勢の経緯を論じる本。150ページくらいの薄めの本ではあるが、内容は複雑で、理解に時間を要するものだった。西側に肩入れしない中立的な記述。

    シリア情勢は、権威主義的なアサド政権対反体制勢力という構図では捉えられない。反体制勢力といってもなかにはヌスラ戦線やイスラーム国のようなイスラーム過激派も含まれるのが一般的であり、欧米諸国はそのうえで穏健な勢力を正当な反体制勢力と見なしているようだ。しかし、トルコやサウジアラビアなどの国はイスラーム過激派を支援しており、ロシアなどはアサド政権を支援している。

    このように、シリアに介入している欧米、ロシア、中東の国々にまとまりは全くない。それゆえ、シリア情勢は複雑化しているし、和平調停をしようにも決裂してしまうのである。

    著者がいうように、シリア国民による解決が最も理想的であると思う。とはいえ難民として国外に出ていく人がいる時点でもうめちゃくちゃだが。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/687656

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23314971

  • 2012年の、まだB.アサド政権がアラブの春に対しても安定した独裁的対応を続けていた頃に同著者が出した『混迷するシリア』の頃から5年後の刊行である。その時の、まだポストアラブの春の様子見で区切りのついていたシリア世界のようすが、短期間でまるで変わってしまった。『(正史)三国志』では魏呉蜀の激突の裏で多くの民間人が犠牲になり漢民族の総人口が激減したというが、まさにそういう民衆がわの悲惨な状況を省かずに描かれるおそろしい戦史のようである。しかもそれが、2019年の今もなお米露トルコイランイスラエルが取り囲む形で進行中なことを思うと、末恐ろしい。死者じたいでみればまだ世界大戦規模ではないかもしれないが、犠牲者のうち負傷者、難民、経済的没落者などの規模は既に大きなものになっている。
    その上でいまだにB.アサド政権が倒れていないことが、にわかに信じがたい。同著者の前作でもすでに政権のタフな政治的手腕は明らかだったが、この混沌とした状況で、イスラエルからみて脅威を感じなくなるほどに痛めつけられても、アサド政権は倒れないものだろうか。
    いわゆる「反体制派」がわの軍事部隊のさまざまな名前の表がまとまっており、『ベルセルク』や『タクティクスオウガ』などの戦記ファンタジー的ネーミングを思わせる義勇あふれる名前が並んでいる。後ろに堆く積み重なる死体の山と表裏一体の華やかさが、そこに見出された。

  • 筆者のウエブ シリア・アラブの春顛末記
    ハイジャックされた民主化

  • 私のフィールドであるイランとも関りが深いシリア。この国のことを知ろうとすれば巷に情報はあふれているが、どの情報も過度に感情的であったり、リソースが怪しかったり、偏ったりしているため、素人には情報の取捨選択が非常にむつかしいというのが悩みだった。そんな中、本著は日本語で読めるシリア情勢の鳥瞰図としてはとても優れたものであったというのが、本書を読んだ最初の感想だ(シリア研究の第一人者である著者なので、こういった言い方は不遜かもしれないが)。

    国内外の勢力が入れ代わり立ち代わり登場し、とても複雑である。そういった状況こそが、シリアを現在のシリアたらしめる要因であると考えられる。

    1冊目の入門書として、また、専門書を読むときの見取り図代わりとして、お勧めできる本である。

  • 【由来】
    ・出版を知ったのはご本人のfacebook。青山センセーなので買うことは決定してるけど、図書館にあったので、どんなもんかと。

    【期待したもの】


    【要約】


    【ノート】
    ・バッシャールについて1章割いてるし、ホワイトヘルメットも入ってる。索引と年表もある。もう、青山センセーを応援させていただくって意味でも新刊で買わなきゃ!

    【目次】

  • (2017.07.02読了)(2017.06.26借入)
    副題「終わらない人道危機」
    内戦により多くの難民が近隣諸国およびヨーロッパに流出し、また戦闘に巻き込まれて多くの市民が死傷しているシリア。いつになったら治まるのか、気になるところです。
    シリアには、パルミラをはじめとする多くの遺跡もあります。ISが、遺跡を爆破して破壊したというようなニュースを耳にすると、歴史好きとしては残念でなりません。
    ニュースで聞いていると内戦は、シリア政府と反政府勢力とイスラミックステートの三つ巴のような印象ですが、この本を読むとそんなに簡単な図式ではなさそうです。
    反政府勢力は、まとまりがなく主導権を握れるところはなさそうです。従ってアサド政権を退陣させるだけの力はなさそうです。イスラミックステートは、ロシアとトルコが協力して壊滅に追い込みそうな勢いです。
    このままだと、シリアはアサド政権の勝利で落ち着くのかと思われます。平和が訪れ、少しずつでも民主化が進んで行く事を祈りたいと思います。
    妥協を許さないイスラム過激派は、おとなしくなって欲しいものです。

    【目次】
    はじめに
    第1章 シリアをめぐる地政学
    第2章 「独裁政権」の素顔
    第3章 「人権」からの逸脱
    第4章 「反体制派」のスペクトラ
    第5章 シリアの友グループの多重基準
    第6章 真の「ゲーム・チェンジャー」
    おわりに
    主な文献・資料
    表 「反体制派」による主な連合組織・合同作戦指令室
    年表
    索引

    ●シリアの状況(ⅱ頁)
    シリア政策研究センターが2016年2月に公表した報告書によると、2015年末の段階で47万人が死亡、190万人が負傷し、総人口(2300万人)の46%に相当する1000万人強が住居を追われ、うち636万人が国内避難民となり、311万人が難民として国外に逃れ、また117万人が国外に移住したという。
    ●化学兵器の廃棄(75頁)
    2014年6月までに、申告された化学物質はすべてがノルウェーとデンマークの船舶によってイタリアへ移送された。このうち、サリン・ガス、マスタード・ガスなどの製造に使用される、危険度の高い化学物質約570トンは、廃棄設備を備えた米国籍船が公海上で廃棄し、作業は8月に完了した。一方、危険度の低い化学物質約1300トンは、フィンランド、英国、米国の工場に移送され、廃棄された。またシリア国内の化学兵器生産工場もそのすべてが破壊された。
    ●反体制派(106頁)
    シリアの友グループは、シリア内戦当初からアサド政権に退陣を求める強硬な姿勢をとってきたが、同政権を打倒し、それにとって代わり得るような有力な「反体制派」を見つけることができなかった。
    「反体制派」は、雑多で、まとまりを欠き、政治手腕に乏しかった。

    ☆関連図書(既読)
    「イスラム国の正体」国枝昌樹著、朝日新書、2015.01.30
    「ルポ難民追跡 バルカンルートを行く」坂口裕彦著、岩波新書、2016.10.20
    (2017年7月4日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    「今世紀最悪の人道危機」と言われ幾多の難民を生み出しているシリア内戦。「独裁」政権、「反体制派」、イスラーム国、そして米国、ロシア…様々な思惑が入り乱れるなか、シリアはいま「終わりの始まり」を迎えようとしている。なぜ、かくも凄惨な事態が生じたのか。複雑な中東の地政学を読み解く。

  • 非常に入り組んだシリア情勢を読み解けるかと思ったけど、想像以上に複雑ということしか分からんかった…外国の干渉が首尾一貫せず国内諸勢力をより混乱に陥れる…。

  • 新書という制約があるにせよ,記述が総論的羅列的である。具体的局面には触れられずに権力争いの紹介にとどまるので,個人的には政治そのものに興味がある人向けで,ノンフィクション・ルポタージュ的な個別局面に関

  •  アメリカが4月6日に行ったシリアへのミサイル攻撃を受けて読もうと思った次第。2017年3月発売ということでごく最近までの動きが分かります。
     アサド政権の成り立ちやアラブの春以降のシリア国内の内戦の推移、シリアを巡る外国諸国の打算的な動き等々が淡々と書かれています。
     まさに泥沼と言うべき事態が延々と続きますが、以下の描写を読んで特に絶望的な気分になりました。

    >欧米諸国の負担とイスラエルの安全保障上の脅威を必要最小限に抑え続けようとすれば、アサド政権の指導のもとでシリアが「強い国家」として復活を遂げ、政治的、軍事的な存在感を増すことは好ましくない。その一方、アサド政権が倒れて、体制転換が実現しても、シリアの安定や安全保障上の役割が維持される確実性もない。欧米諸国にとって、唯一のプラグマティックな選択肢とは、アサド政権と「反体制派」が際限のない武装闘争を続けることでシリアが「弱い国家」として存在し、彼らが期せずして欧米諸国にとって利用価値のある振る舞いをすることだけなのである。

     シリア情勢は複雑怪奇で、自分でもきちんと理解できた自信はありませんが、とりあえず次のような認識を持っています。
    ・シリア国内はアサド政権と反体制派とイスラム国による三つ巴の戦いのような様相を呈しているが、反体制派とイスラム国は共闘しているようなところもあり、西洋諸国がシリア内戦に介入する理由として「イスラム国との戦いのために反体制を支援する」というのは現実的には成り立っていない。


     シリア問題に関心があるけどこれまでの経過などがよく分からないという人は、まず『中東崩壊』(日経プレミアシリーズ)を読んで、中東全体の近年の動きの概要を掴み、この本でシリアを巡る動きの詳細を知るという方法が良いのではないかと思います。

  • 312.275||Ao

全17件中 1 - 17件を表示

著者プロフィール

青山弘之(あおやま・ひろゆき)
1968年生まれ。東京外国語大学卒業。一橋大学大学院にて博士号取得。東京外国語大学総合国際学研究院教授。1995~97、99~2001年にシリアに滞在。ダマスカス・フランス・アラブ研究所(現フランス中東研究所)共同研究員、JETROアジア経済研究所研究員などを経て現職。専門は現代東アラブ政治、思想、歴史。著書『シリア情勢』(岩波書店)、『膠着するシリア』(東京外国語大学出版会)、『ロシアとシリア』(岩波書店)などがある。またウェブサイト「シリア・アラブの春顚末記」(http://syriaarabspring.info/)を運営。

「2023年 『戦火の中のオタクたち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

青山弘之の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×