グローバル・ジャーナリズム――国際スクープの舞台裏 (岩波新書)

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著者 : 澤康臣
  • 岩波書店 (2017年3月23日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316534

グローバル・ジャーナリズム――国際スクープの舞台裏 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • パナマ文書に含まれている複雑な資金の動きや大陸間を跨ぐマフィア組織の活動などを時間をかけた調査で暴き出していく調査報道は、今や個々の報道機関や記者の枠を超えたグローバルなネットワークによって取り組まれているのだということがよく分かった。

    背景には、残念ながら個々の企業がそのような時間のかかる調査報道を支えることができなくなっているということもあるが、対象とするテーマの広がりが組織化、グローバル化し、報道する側もより幅広い取材網、専門家、ローカルのインフォーマントの協力を得なければいけない状況にあるということも、それ以上に大きな要因なのではないかと感じる。

    また、最終章で記者が問題提起しているが、プライバシーと実名報道の間のバランスに関する考え方について、日本と海外では大きな違いがあるということも、初めて認識した。

    海外では、刑事事件の関係者について原則的に実名報道であり、そのことが社会のその事件に対する認知を高めるために重要であるとのことである。

    個々の社会においてとらえられ方が異なる問題については、社会的合意を得ていくためには時間がかかると思われるが、重要な問題提起であると思う。

    いずれにしても、ジャーナリストの働き方、報道と市民の関係性といったことが変わりつつあるということを監事られ、報道機関のこれからのあり方を考えるうえで、興味深い本だった。

  • パナマ文書が報じられる裏部隊を垣間見ることができる
    スリリングな本。

  • デジタル技術の進歩を背景としたグローバリズムの進展は、ジャーナリズムの世界も劇的に変えようとしています。
    それを如実に示したのが、記憶に新しいパナマ文書のスクープでした。
    本書の第1章でも取り上げていますが、その舞台裏は実にスリリングで、この種の本としては珍しく興奮して読み耽りました。
    きっかけは、南ドイツ新聞の記者の元に届いた1通のメールでした。
    「こんにちは。私はジョン・ドウ(匿名太郎)。データに興味はあるか?」
    同紙は、2・6テラバイト、実に1150万通にも上るパナマ文書を入手することになります。
    しかし、パナマ文書には各国の有力者や関係者、さらには犯罪者が密かに設立した匿名法人が記されています。
    とても、1社では手に負えないと判断した同紙は、国際調査情報ジャーナリスト連合(ICIJ)に連絡し、調査報道プロジェクトとして展開することを提案し、受け入れられます。
    そこから各国のジャーナリストが連携・協調し、膨大な量のパナマ文書を分析する作業が始まります。
    もちろん、報道解禁までは秘密を厳重に保持しなければなりません。
    万一漏れれば、パナマ文書に記載された当事者に対策を講じられる恐れがあるからです。
    実際に、大勢のジャーナリストが関わりながら報道解禁まで一切情報が漏れなかったのは驚嘆に値します。
    報道が解禁されるや、同時多発的に各地でパナマ文書報道が火を噴き、国際スクープとして世界の注目を集めたのは周知の通り。
    本書では、アイスランドの記者がだまし討ちで、パナマ文書に記載された同国の首相をやり込める場面も出てきますが、まさに痛快そのものです。
    アゼルバイジャンなど民主主義が十分に機能していない国で国際協力して立ち向かうジャーナリストたち、ダイヤモンドを巡って暗闘するマフィアの罪を暴いたのはイタリア・アフリカ各国記者連合でした。
    報道はグローバル化し、そこに既存のメディアだけでなく各社のスター記者を集めたNPOも加わって加熱します。
    キーワードはやはり「デジタル技術」でしょう。
    現代のデジタル技術がなければ、パナマ文書をはじめとする国際スクープの数々はとても成し得なかったに違いありません。
    一方で、こうしたグローバル化する報道が、各国の地元記者によるローカルなジャーナリズムに立脚していることも明らかにされます。
    「プロの取材は結局、人間と人間のコミュニケーションによって成り立つ」
    との言葉が重く胸に響きました。

  • 自分のためのメモになります。

    政府も警察も国境を超えない、でも犯罪組織に境界線はない、だから我々記者は国境を越えて力を合わせる、そうすることにしたんだ・・。華々しいことより、地道なことが書いてあった。地味な調査取材は時間もお金もかかり、記者がお荷物扱いされることもある・・フランスの大新聞は企業の資本が入ってしまったこと、いまやNPOがメディアを運営すること、寄付金で調査取材をするメディア、ベトナムの学生の調査取材が毎年、新聞に掲載され、1面を飾ることもあること、インタビューを成功させるためには記者が「人間らしく正直に」なぜ話してほしいかを伝えること。悲しみの中にある遺族であっても厳しい状態にある企業の役員であっても。行政や裁判所がデータを出してくれないから、週に何回か電話したり、早く出していただくために何か手伝えることはあるか聞く。その場にふさわしい態度をとることの大切さ。

    意外だったのはアメリカでは被害者の情報も含め事件や裁判内容が公開されること。江川紹子いわく、報道されるのは嫌だと思う。でも個人にとっていやなことと裁判を公開しないことによる公共や社会へのマイナスと、両方を考えなくてはいけない。実際、一見、関係ない裁判内容がいろいろな調査取材に役立つのだと言う。

  • 070||Sa

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