モラルの起源――実験社会科学からの問い (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316541

感想・レビュー・書評

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  • 公平さについての判断の仕組み。
    共感性にもいろいろある。
    最不遇になることを考える。
    個人,種族を優先させるか。
    不公平さを敏感に検出する人の特性。

  • キーワード:適応、群れ、共感

    本書は、人間一人ひとりが利得の最大化を目指して行動した結果、却って望ましくない状況に陥ってしまうという「集合行為問題」について、学際的な知見と事実を用いて検討している本といえる。

    人間が群れ(家族、会社などなど)を構成するのは環境に適応するためだというのは面白いと思った。他の生き物群れを作って利他的な行動をとるという事例があったのも興味深かった。

    特に印象に残ったのは「クールな利他性」という言葉。困っている他人を助けたいという気持ちには二種類あり、一つは他人を自分に重ねる自他融合的なプロセスを経る「情動的共感」。もう一つは相手の視点を自分と切り離して考える自他分離的な「認知的共感」=クールな利他性。
    クールな利他性をもつ人の方が日常生活でも他人への援助を行いやすいらしい。

    本書でも引用されていたが、マーシャルの”cool head,but warm heart.”を思い出した。
    この言葉は科学的にも適切な心構えなのだ。

  •  全172ページのうち、115ページまでタイトルにある「モラル」という言葉が出てきません。それは、実験に基づいた科学的検証にたえうる事実からモラルの起源を導こうとしているからです。
     第2章で社会性昆虫の集団意思決定の仕組みについてとしてミツバチの例を挙げ、「ミツバチの巣探し行動には、集合知(collective intelligence)が見られる」(p.29)と述べています。集合知がうまく働くには、「行動の同調」と「評価の独立性」が組み合わせられることが必要なのだということです。
     そしてヒトの場合の集合知について、音楽ダウンロードの実験を挙げて比較しています。ヒトの場合は他の人の評価に影響を受けて意志決定をする、つまり「空気を読む」ために客観的な評価とのずれが生じてしまうというのです。集合知を適切な意思決定に利用するためには、評価の独立性をいかに担保するかが重要であるということを示唆しています。
     他にもいろいろな生物学的な視点からヒトの行動について考察する事例があり、人間社会のあり方を見つめ直すきっかけになりました。
     人文社会科学は「役に立たない学問」として切り捨てられる風潮が強まっていますが、決してそうではありません。混迷を深める現代にあって、私たちはどのような社会のあり方を目指していけばいいのか、その指針を明らかにする上でむしろより重要性を増しているのです。それを改めて確信させてくれる一冊です。

  •  ヒトが人として存在しているというのは,どういうことなのか? 社会的な存在としての人は,ヒトが生き残っていくために,どんなはたらきをしてきたのか。
     「実験社会科学からの問い」という副題のある本書は,進化の過程を経て現在の社会を作っている動物の姿を通して,ヒトの進化という視点で人の社会を見直すと何が見えてくるのかを明らかにしてくれます。
     人の道徳や倫理といったことを進化の視点で見たことはなかったので,私にとっては新しい発見のある本でした。

     同類の本も出ているようです。
     
     「進化ゲーム」の話を読んでいると,国によって支配する道徳が違っていることも,うなづけます。
     今,民族間・宗教間の対立があらわになってきて,混沌とした地球の中にいるのですが,〈われわれ〉と違った道徳や倫理観を持っている社会との上手なつきあい方は,このような研究からも生まれてくるのかも知れないなと思いました。

  • 進化生物学、行動科学、心理学、脳科学、経済学といった研究から実験社会科学という手法用いて、モラルに関する問題を論じている。

    文系、理系の学問領域を横断的に研究した結果を提示しながら、最終的に、帯に書かれている【私たちの脳は、「仲間うち」超えて、平和な社会を築けるのか】という問いに対する解決策へと導いていく。とても面白く読み進めることができた。

    第5章の最後の方で述べられている“「正義」は「国境」を超えるか?”という問いは、今後の世界平和のため重要な鍵になると思う。

  • 361

  • 「生物学では、生き物を「適応」のシステムと捉える立場が主流です。」

    他者と「社会」を構成することで、生き残ってきたヒトが、「社会」に適応した個体を結果して選択して残してきた、遺伝的な形質とは何か。

    自動的に動き出す遺伝的形質が最適に働く社会のサイズと、現代の社会のサイズの違い。

    幾世代を経ないと、遺伝的形質の変化は期待できない。

    しかし、手動モードである功利主義的考え方を、意識的に取り入れることで、急激に距離が近くなってしまった社会と社会の摩擦を少なくすることができるのではないか、というのがこの本の要旨かと思う。

    年をとると、これまでの経験などからか、他者との関係性にある程度、規範意識が強くなると思う。
    しかし、同じ経験を重ねてきていない以上、それは一人ひとり違った規範になってきているのではないか。
    だとすれば、新たな関係を結ぶことは、より困難になっていくのかもしれない。

    柔軟性を持つべきとの考え方もあるであろうし、価値観の異なる他者とは、ある一定の段階からは、距離を置いてできる限り関わらない、というのもひとつの考え方かもしれない。

  • 正義や規範をどのように他者と共有していくか、様々な分野の実験を基に検証していく。

    毎日新聞今週の本棚掲載2017423
    noteまとめあり。

  • 361.4||Ka

  • 進化心理の見方を基本とした,利他性,共感,社会的ジレンマなどの理論と研究がコンパクトに紹介されている。学部1年生の(専門に分かれる前の)ゼミテキストによさそう。

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プロフィール

亀田達也(かめだ たつや)1960年生まれ。イリノイ大学大学院心理学研究科博士課程修了。Ph.D.(心理学、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校)。現在、東京大学大学院人文社会系研究科教授。著書に『合議の知を求めて―グループの意思決定』(共立出版)など。

「2015年 『「社会の決まり」はどのように決まるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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