作家的覚書 (岩波新書)

著者 : 高村薫
  • 岩波書店 (2017年4月21日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316565

作家的覚書 (岩波新書)の感想・レビュー・書評

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  • 高村薫さんといえば、私の中では「マークスの山」の著者。
    読んだのは20年以上前ですが、重厚な警察小説で、すっかり夢中になった記憶があります。
    後年、社会時評の分野でも活躍するとは思いませんでした。
    本作は、高村さんが主に「図書」誌上に書いた時評をまとめた時評集。
    2014年~2016年の日本で起きた出来事を、それこそ作家的な鋭い視点と洞察力で読み解いています。
    消費税率の8%への引き上げについて、「同じ国の国民でありながら、八%の消費税など痛くも痒くもない富裕層と、スーパーの片隅で見切り品やタイムサービス品をあさるほかない低所得層では、住んでいる世界がどれほど違うことか」と問題提起した上で、こう指摘します。
    「住む世界があまりに離れすぎると、互いに相手の世界が視界に届かなくなる」
    いつの時代もそうかもしれませんが、富裕層にとって貧困が不可視のものとなっています。
    「見えない」は、つまり、「ない」と同義です。
    著者は、東日本大震災から3年の節目に被災地を訪ねます。
    福島では、放射能汚染のため被災者たちが仮設住宅や他県へ移り住んでいます。
    つまり、散り散りになったということです。
    「ある時代の土地に起きた未曾有の出来事は、まず個人の身体体験になり、それが集まって共同体の体験になり、さらにその二つが共振し合うことで記憶は深く根を下ろしてゆく」
    福島にとって、震災の記憶は、果たして深く根を下ろすのでしょうか。
    返す返すも罪深いことです。
    他にも気になった時評はかなりありますが、時間がないのでまたね。

  • 自分が愚民であることを思い知らされる一冊。
    高村先生は、ごくまっとうなことしか言っていない。論理に分かりづらいところがあるわけでなく、特別な情報を振りかざしているわけでもない。でも、とっても頷いてしまうし、説得力がある。目の前の事象を冷静に見つめ、客観的に判断すると、ここで書かれていることになる。これが知性というものか。社会と時代を喝破するとはこういうことなんだ。

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