中原中也――沈黙の音楽 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316732

感想・レビュー・書評

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  • 中原中也の詩を味わうというよりも、著者があとがきで書いているように、詩がどのようにできてきたか、ということを説明している。
     中也の詩を味わうのであれば別に詩集を読めばいいので、中也の詩についてより知りたい人向けのものである。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/686247

  • 『新編中原中也全集』の編纂に携わった筆者であるからこそ可能になったことだと思われるが、最近発見された手帖や草稿なども丁寧に追いかけながら、中原中也の詩の世界を説き明かしてくれている。

    といって、過度に学究的になるのではなく、同じく詩人でもある筆者自身が、彼がその言葉を選んだ理由、詩集の初稿から最終稿に至る校正の中で改行や段下げといったひとつ一つのことに手を入れていった理由を、詩人・中原中也の心の襞に分け入って共感を持って語っているというかたちが、読んでいて非常に心地よかった。

    彼の心の中に常にあった、虚無の空間をも感じさせるような不安が、彼の詩の中に空や雪といった情景として描かれている。そしてそれらは、決して純粋無垢なものではなく、「汚れつちまつた」ものであるという認識が、とても悲しみを誘う。本書は、片方で彼自身の人生を辿りながら、もう一方で彼の詩の創作過程を辿り、それらを撚り合わせることで、そのような彼の詩の世界を、とても実感を持って受け取ることができた。

    本書のもう一つの特徴が、彼の詩を「歌」という切り口で捉えているというところだ。中原中也が諸井三郎などの当時の音楽家や音楽集団と早い時期から親交を持っていたというのは、本書ではじめて知った。

    彼の詩が持っている韻律は、音楽的な歌や古来の和歌の世界と親和性を持っているように思えるが、本書ではそういった点にとどまらず、彼の詩の中に現れるオノマトペや擬態語なども踏まえつつ、無音ではためく上空の旗のような、音のない音の世界まで描いているものだということに言及している。この指摘は、彼自身の心の世界とも重なって、彼の詩をより豊かに味わうことのできる、とても良い示唆であると感じた。

    本書を読み終わって、改めて彼の作品を読み返してみたいと思った。

  • ふむ

  • 第3章までのドライブ感が、第4章以降ぐっと落ちる。これはたぶん、著者がいちばん書きたかったことを書こうとして、書ききれなかったということではないかと推測する。
    つまりは、いちばん書きたかったことを、未だ十分に著者が消化できていなかったということなのだろうと思われる。
    前半がいい感じだっただけに、後半の空中分解しそうなところでかろうじて止まっているように感じられる部分は、まだ改訂して描かれる時を待っているのであろう。その際には、決して文芸評論にはならない記述を期待したい。

  • すごい。 一人の詩人が、一つの詩が、立ち上がる過程をこれほどまでに浮かび上がらせるとは・・・

  • 東2法経図・開架 B1/4-3/1673/K

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著者プロフィール

詩人。1947年奈良に生まれ大阪で育つ。同志社大学文学部哲学科中退。
ミシガン州立オークランド大学客員研究員、東京藝術大学大学院音楽研究科音楽文芸非常勤講師を歴任。
詩集に『蜂蜜採り』(書肆山田、第22回高見順賞)、『明日』(思潮社、第20回萩原朔太郎賞)など。
評論・エッセイ集に『中原中也』(筑摩書房、第10回サントリー学芸賞)、『アジア海道紀行』(みすず書房、第54回読売文学賞)、『やわらかく、壊れる』(みすず書房)、『雨過ぎて雲破れるところ』(みすず書房)、『旅に溺れる』(岩波書店)、『瓦礫の下から唄が聴こえる』(みすず書房)、『東北を聴く―民謡の原点を訪ねて』『中原中也―沈黙の音楽』(ともに岩波新書)など。『新編中原中也全集』全6巻(角川書店)責任編集委員。
最新刊に、共著『大正=歴史の踊り場とは何か── 現代の起点を探る』(講談社選書メチエ)、詩集『鏡の上を走りながら』(思潮社)、英訳詩集『Sky Navigation Homeward』(Dedalus Press)。
第1回大岡信賞受賞。

「2020年 『猫には負ける』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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