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本 ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784004316848
感想・レビュー・書評
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『江戸問答』を読んだからにはと、こちらは図書館で借りて読んだ。
なんでも重ねたり、折りたたんだり、開いたり、合わせたり……とにかく編集・アレンジがたくみな日本文化を多面的に論じた対談。
なにせ、神と仏と儒をごたまぜにし、時と場合によって使い分けてしまう文化というのはよほど独特である。
悪くいえばいいかげん。
こうした特質を今も多くの人が持ち合わせているにはいるのだけど、欧米をスタンダードにしすぎているせいか、裏目裏目にしか出ていない気がする。読みながらそう思った。
例えばこんな一節が刺さった。
松岡「かつて内村鑑三が日本は大きすぎてはダメだ、ボーダーランド・ステート(境界国家)であるべきだと書いていましたが、そのボーダーを線状的なものではなく、幅のあるものに、さらに動的なものにしていくのがいい。また、浄土真宗の清沢満之は日本人は二項同体を学ぶべきで、国家としてはミニマル・ポシブル(最小限の可能性)に徹したほうがいいと言った。ぼくもこれに近い」
もっとも今は事実上合衆国の植民地だから、境界国家であることが難しくなっているわけだけれど。ともあれこんなちっぽけな国が、他国にばかり良い顔をし、でもなぜか近隣の韓国や中国はこの期に及んでまだ見下しているところを、さらには自国民までをも見下しているところを見ると、恥ずかしくて仕方がない。明治維新以来の体たらく。
グローバル資本主義とか言いながら空回りし、かえってただ無意味なナショナリズムを増長しているように見える。
もうひとつ、なぜだかわからないが、何度読んでも好きなエピソードがある。
というのは、江戸の研究者である田中優子氏が江戸と出会ったきっかけが、小説家でフランス文学に造詣が深い石川淳の、江戸にまつわるエッセイだったという話。
本書でも言及されていた『普賢』という小説。高校の頃に読んでなんのことかさっぱりだった。読み直す機会がやってきたようだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
松岡正剛のことは、2003年に中公文庫から出た『遊学1』『遊学2』を手にとって知った。その後は彼の運営していたサイトの千夜千冊をときどき読んでいたが、いつしか離れてしまった。自分自身の専門分野をそれなりに深く知るようになると、それについていい加減なことを言っている彼の書くものにつきあいきれなくなった。
彼の訃報のあと、岩波新書から今月(2024年10月)、田中優子との共著『昭和問答』が出た。「好評『日本問答』『江戸問答』に続く第三弾」と岩波書店のサイトにあり、ならまず第一弾を読んでみようと本書を図書館で取り寄せた。
お二人なりの危機感から企画された対談のようで、「世界のどこも経験したことのない急激な人口減少と高齢化、震災と温暖化災害に同時に見舞われる日本」(pp339-340)のリーダーたちに向け、「日本にあったはずの方法、しくみ、それを支えていた理念」(p340)を伝えたい、という思いがある(った)らしい。だが、話が大きすぎて、あっちへ行き、こっちに戻り、という感じで、とてもおおまかで雑な論が展開されていく。松岡のいう「編集」や「デュアル」という用語が多用され、編集工学という学問? を提唱していた彼としては当然のことなのかもしれないが、所々で、詳しく知りたかったら自分が主催するイシス編集学校に入学してね、と宣伝を挟んでくるので、この本はもしかしてただの広告なのでは? と思ってしまった。松岡正剛亡きあと、学校はどうなったのかな、と思って検索して見たら、なんと田中優子さんが現在の学長ではないか。やっぱりこの本も今月出た第三弾の『昭和問答』もただの広告なのではないか、との疑念を拭いきれない。ということで、私は、第一弾だけのおつきあいにとどめます。 -
読みながら
引っ掛かりながら
調べながら
考えながら
しばし、
休息しながら
読み進めていった
知的な好奇心が
これでもか と 思われるほど
揺さぶられるのが
うれしい
田中優子さんが
これまでの日本の歴史は
誰が何をしたか、誰が勝ったか、誰が何を作ったか
の 主語の歴史である。
名を持たぬ人々の営みは埋もれ、彼らによって作られた無数のアート(優れた技術で生み出されたもの)も語られない。しかし「おおもと」は、その中にある。
の 視点から繰り出される
「日本のこれまで」と
「日本のこれから」は
まことに 興味深い「問答」に
なっている
ぜひ、続編を読みたいものだ -
日本学者2名による日本についての問答、また日本への問答。多くのテーマにより喧々諤々の話し合い。田中優子さんは法政大学の総長としてテレビに和服姿で出ていることが多いが、その背景として祖母が京都の遊女だったという、そこから来ているのだ。天皇がなぜ着物を着ないのかが不思議との意見は、その通りで、日本的なものの象徴である天皇ご一家に和服を着てもらうことは重要だろうと思う。松岡氏もまた京都の呉服屋の出で日本の古い伝統を知り尽くしているように感じる。2人が「国家」という言葉を、おそらく明治の福沢か徳富蘇峰民あたりがStateの略語を造ったのだろうと思って調べてみると、何と聖徳太子の17条憲法に登場するので驚き、そして中右記や平家物語にもあることから衝撃だという場面は面白かった。しかし、秀頼が方広寺の鐘に「国家安康」の銘を刻んだという話も有った!田中氏が中国は漢字そのものに霊力、日本は発音に霊力があると考える!という。成程、気がつかなかったが、確かにそう思う節はいろいろ感じる。
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2024年10月3日購入。
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松岡 おおもと
田中 やつし
石牟礼道子 -
読書会の予習として。松岡正剛の対談は初です。相変わらずの超絶博覧強記。それについていく法政大学総長もさすが。いくつかの概念を提示されるのですが、それらが動的な概念だからか、イマイチピンと来ないのも相変わらず。若い頃イシス編集学校を受講しようと思って結局実行しなかったのだが、やっとけばよかったと思わされた。今からでも遅くはないんだろうけどやり切れる自信がない。
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210-T
閲覧新書 -
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/704976
著者プロフィール
田中優子の作品





