ルポ 不法移民――アメリカ国境を越えた男たち (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316862

作品紹介・あらすじ

「不法移民の強制送還」を唱えるトランプ政権のアメリカには、一一三〇万もの不法移民が存在する。しかし、彼らはどんな人間なのか?その答えを知るために著者は二年間、彼らとともに働いた-強制送還される危険性におびえながら、母国への仕送りのため路上で仕事を探し、劣悪な環境でも逞しく生きる不法移民の素顔。

感想・レビュー・書評

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  • 調査対象の中に入り込んで
    そこでの実体験や得た情報などを
    解析する社会学の方法を用いてこの本が書かれました。
    著者は 日本人ですが 約二年間 
    不法移民の人達が 仕事を得る場所に 行き そして共に仕事をしたり 語らったそうです。

    ルポなので 
    こんな事が起こったとか 
    彼らはこんな事を語ったとかが 書かれていました。

    最後の章は きちんと考察して まとめてありましたが 報告書みたいで 硬い文章でした。

    この本を読んでみて
    現在のアメリカの不法移民の 一握りの様子がわかりました。
    どこもそうですが 悪い人も(ドラックの常習とか)いるし 良い人もいます。
    生活が苦しいから 仕方なしに 国境を越えて 働きにきたけど なかなかまとまって 稼げず アパートの家賃も払えなくなって 路上生活に・・・
    そうなると 国に残してきた家族との連絡も途切れてしまい・・・
    不法だから 暴力を受けたとしても(移民の人が悪い事したのではなくただ単に意味もなく受ける事もあるようです)
    アメリカの警察は守ってくれないし・・・・
    病気や怪我もできないし・・・

    なんか やるせないですね。

    そうそう 移民は 陸からだと思っていましたが
    最近は 空路からも増えてるそうです。

    となると 島国の日本も アメリカの後をいつも追っかけているので 同じ様な問題に向かう事になるのかしら??

    考えさせられる 内容でしたね。

  • トランプを大統領に選び、排外主義が高まるアメリカで不法移民の一員となって働くことで、不法移民と呼ばれる人たちの実像に迫るルポ

  • 田中研之輔氏による著作。
    2017年11月21日第1刷発行。
    著者は1976年12月8日生まれ。博士(社会学)、
    東京都中野区出身。
    一橋大学大学院社会学研究科社会学専攻博士課程単位取得退学
    2016年「都市下位文化集団の相互行為に関する社会学的研究スケートボーダーの都市エスノグラフィー」で一橋大学博士(社会学)。
    審査員町村敬志、小林多寿子、中澤篤史
    以上のような経歴の著者。
    高校、大学学部はどこの出身かまでは明示されていない。
    ネットでも色々発言されており、色々経歴を示しているだけに違和感を覚えた。
    エスノグラフィーに関して色々解説されていた。
    ただ読後はいわゆるルポタージュであるという感想。
    学術論文では無いのだから当然かもしれない。
    ただルポ以上にはなっていないと思う。
    また細かい点ではあるが、本書が出たのは2017年。
    実際に著者がバークレー周辺で日雇い労働者達と
    一緒に仕事をしたのは2006年~2008年の事なのだ。
    もちろん、当時の事の記録という意味でも意義はあるし、今に通じるものがあるのは間違いない。
    ただ一見読んでいるといつの出来事なのか、年次や月日が全く記載されていない。
    その意味でルポにすらなりきれていないのではないか。
    年次の記述が無ければいつのものかわからない。
    これでは資料として使うことは出来ない。
    2006年~2008年のいつのものかすら分からない。
    当時はブッシュJr大統領でオバマ大統領ですらない。
    やはり情報の鮮度としては落ちているし、今のトランプ政権の政策に関して疑問を投げかけてもちょっとどうなんだと思う。
    その意味で本書は致命的な問題を抱えていると言わざるを得ない。
    肝心要の所がボケている。
    (それは著者の経歴もそうだが)
    あと黒人の雇い主や黒人の青年に日雇い労働者が
    襲われるパターンが何箇所が記述があった。
    やはりアメリカで黒人への偏見や差別は決して解消されることはあるまい。
    自分より弱い立場への者への態度が悪辣な者が
    まともであることは決して無い。
    こんな実態を読んでいると橘玲氏の著作に黒人の知能に関して厳しい事を指摘する箇所があり、それに納得せざるを得ない。

    印象に残った点を列挙してみる
    私はこれまでのエスノグラファーとしての経験則から、
    集団のボスが出てくるまでは、身勝手な行動はしないと決めていた。
    最初の出会い方や関わり方がその後の関係性に影響を及ぼすし、集団の規律がわからない段階で闇雲に動くことは極めて不自然な動きとなることを学んでいたからだ。
    男たちは自分たちの労働力を安売りはしない。
    雇い主が最低賃金にも満たない時給を提示しても、
    男たちはそんな金額では働かない。
    男たちが時給15ドル前後の金額を提示する。
    その後、互いが了承する金額に交渉していく。
    男たちにとっては、それも交渉のプロセスとして折り込み済の事だ。
    時給で両者が折り合いをつけた場合に、八割の確率で仕事の交渉は成立する。
    残り二割というのは、仕事先の場所である。
    仕事先への移動時間は、時給に含まれない。
    短時間の仕事であれば、仕事をおえてハースト通りに戻ってきてもう一つ仕事を得ようと考えている。

    日雇い労働者としての心構え(フェルナンド)
    ただ何もせずに待っていてはいけない。
    レンタカー会社の車やそれらしき車が来たら、
    運転手の目を見て、合図を送る。
    車のスピードが弱まったら、こっちのものだ。
    このやり取りが大事だ。仕事を手に入れたければ
    コツをおさえて、アグレッシブにやる。
    やり過ぎても駄目だ。でしゃばって、一つの仕事を取ったところで仲間から自己中心的だと思われたら価値は暴落だ。

    仕事を待つことが仕事だと吐露させるほどまでに
    この路上で仕事を得るのは容易ではない。

    職種は、引っ越しの手伝い、個人宅の庭掃除や屋根掃除、家具の配置変え、建設現場の補助、コンクリート粉砕作業、これらの仕事はとくに怪我などがなければ、誰でも問題なく作業に従事できる類のものだ。
    賃金の相場は、時給10ドルから15ドルである。
    しかし、なにせ仕事を得るチャンスが限られている。

    路上で仕事を待っている時間も労働に換算すると、
    実質的な時給は、1.2ドル前後になった。
    日雇い労働者の平均収入は、月3万円前後である。
    彼らは仕送りをするために、アメリカに入国した。
    だが、家族を支えることができず、家族との関係が断ち切れていく。

    企業が違法労働者を雇用した場合は、違法の程度にもよるが、違反者一人につき、最高で1万1000ドルの罰金が科せられる。
    雇い主に悪意や故意があるという場合は、最高六ヶ月の禁固刑を言い渡す刑事責任を追求されることもある。
    就労ビザやサポート権利の剥奪もあり、企業にとっては
    大きなリスクである。
    そうであるがゆえに、日雇い労働現場に、大手企業の雇い主が現れることはない。
    ピックアップトラックに会社名が
    記載されている場合であっても、小規模な会社か個人で事業を営んでいる雇い主である。
    それ以外、大半の雇い主は企業や個人事業主ではない、清掃や引っ越し、塗装など、自宅のメンテナンスに人手を借りたい住民たちだ。

  • アメリカでは自分がのうのうと生活している間に、その日その日を生きるために、また家族に仕送りをするために必死で働いている移民がたくさんいる。不満なく過ごせている現状に感謝しながら大切に過ごしたいと思った。

  • 信州大学の所蔵はこちらです☆
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB24914260

  • 「不法移民」は悪い奴らか??

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=B17113

  • エスノグラフィーの方法を使って、バークレーの日雇い労働者のたまり場で不法移民とともに仕事を待ちながら、彼らの生き方に迫っていく。アメリカと中米との賃金格差、安い労働力を気楽に求めるアメリカ人、仕送りをしなくなっていき本国の家族とも疎遠になっていく不法移民、彼らのコミュニティ内部での生きる知恵と掟のようなもの、など、広く報道されているものから内部に接近してわかることまで、幅広く記述している。彼らを支えるNGOの存在感の高さや、そういったNGOへの政府の依存など、不法移民とアメリカ社会の関係性の複雑さなども目配りしている。

    書かれているとおり、不法移民といっても様々で、この本に取り上げられているのはほんの一部に過ぎない。親に連れられて幼いころに来た不法移民など、義務教育を受けていて実はほとんどアメリカ人だ。また、日雇いはほぼ男性の世界で、女性の不法移民はあまり取り上げられることはない。

    ところでいつも不思議なのだが、不法移民の数というのはどのように数えるのだろう。ピュー・リサーチ・センターの統計が引かれているが、これがどの程度実態を反映しているのか。

  • エスノグラファーという言葉を初めて知りました。仕事待ちをする不法移民のことを知りたいので同じく仕事待ちを体験してみる。もっともな手法でありながら調査にかかる時間と彼らに近しい人になっていくセンスとちょっとした勇気が必要であるがゆえに、ルポが興味深いものになっていると思いました。文中に出てくる1ドルのタコスを食べてみたい。

  • アメリカが移民国家であることの国家的な寛容さと自信を取り戻す日は来るのだろうか

    人々の生活環境が平等ではないのは、社会の仕組みがそれを強固なものとして構造化し続けているからに過ぎない。社会が作る現実は、多くの場合、認識の虚構からなるものであり、その絡まりを解きほぐすことに意義がある

  • 東2法経図・開架 B1/4-3/1686/K

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著者プロフィール

1976年生まれ。法政大学キャリアデザイン学部教授。博士(社会学)。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめ、2008年に帰国。専攻は社会学、ライフキャリア論。著書に『先生は教えてくれない大学のトリセツ』(ちくまプリマー新書)、『ルポ 不法移民』(岩波新書)、『覚醒せよ、わが身体。』(ハーベスト社)、『丼家の経営』(法律文化社)、『都市に刻む軌跡』(新曜社)、『走らないトヨタ』(法律文化社)他多数。訳書に『ボディ&ソウル』(新曜社)、『ストリートのコード』(ハーベスト社)。株式会社ゲイト社外顧問。

「2019年 『教授だから知っている大学入試のトリセツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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