トマス・アクィナス――理性と神秘 (岩波新書)

著者 :
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本棚登録 : 116
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316916

作品紹介・あらすじ

西洋中世において最大の神学者であり哲学者でもあるトマス・アクィナス(一二二五頃‐一二七四)。難解なイメージに尻込みすることなく『神学大全』に触れてみれば、我々の心に訴えかけてくる魅力的な言葉が詰まっていることに気づく。生き生きとしたトマス哲学の根本精神の秘密を、理性と神秘の相互関係に着目して読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • アリストテレスとアウグスティヌスを結び付けたと理解されているスコラ哲学の大家トマス。やはり難しい本だった。経験と理性に基づき、「神の啓示」を認めないキリスト教の世界観と両立しないように思われるアリストテレスの哲学(倫理学)に洗礼を受けさせたようなものとの著者の説明が適切な譬えのようで、面白い。しかし、「神が降ってきて人間との積極的な交流を求めている」との考えはトマスという人が思っていたよりはプロテスタンティズムとは遠い存在でないことは解ったように思う。しかし理性と信仰を対立的に捉えるのではなく、絶妙な仕方で統合されているとのこと。理性で神を認識できるのか!とのテーマは重要な論点だと思うので、安易に賛成できないとの警戒心で最後まで読んだ。「希望のない、信仰のないキリスト自身」との表現はドキッとさせられるが、完全な存在であるキリストには不完全な在り方は必要がないからとの説明を見て、理解した。いずれにしても論理先行の考えの人のようだ。

  • キリスト教と言っても長い歴史の中で変遷がある。
    その中での積み重ねを知ることは今でも十分に意味のあることだろう。

    トマスは中世の神学者として活躍した人物である。
    宗教改革などをしたわけでもないし、黎明期になにかを決定づけたわけではない。
    しかし、それでもなお彼の主著である「神学大全」は偉大な達成である。
    本書はそれを中心に、どのようにトマスがキリスト教を整理しようとしたか確認する。

    親鸞の教行信証の時でもそうであったが、
    大きな遺産に対して敬意を払いながら発展的に展開する時の
    「引用」および「編集」というのは現在よりも輝きをもった手法に見える。
    テクノロジーはどうもこれらに手垢のついた印象を与えてしまう。
    アカデミズムも本来はそうした手法を尊ぶものだが、時代につれて変遷はするだろう。

    それはさておき、キリスト教に
    ギリシャ哲学を接続していく流れはなかなか読ませるものがあり、
    「善き生きる」ことを率直に肯定する教義へとつながっていくのは
    キリスト教に対する認識を少し改めるところがあったように思う。

    あるひとつの教義からプリズムように生み出される解釈は
    宗教というものの多様性、および豊かさを感じさせてくれる。



    >>
    キリスト教の修道者が性的快楽から距離を置いた純潔な在り方をするのは、性的事柄が醜いことであったり、善からぬことであったり、価値のないことであったりするからではない。正反対だ。善いものであり、価値あるものであるからこそ、それを犠牲にしてまで神にすべてを捧げて生きるところに意味が見出されているのである。(p.97)
    <<

    なるほどね。

    >>
    キリスト教の思想史とは、単に、イエス・キリストによって与えられた「答え」を歪めることなくありのままにそのまま受け継いでいくようなものではありえなかった。キリストによって与えられたのは、「答え」というよりは、むしろ、「神秘」だったからである。(p.229)
    <<

    前半はむしろ神秘主義者であるよりも人間理性や自由意志が強く打ち出されている一方で
    キリスト教の根っこに神秘そのものが埋め込まれているというのはとても面白い。

    なぜ私が生まれたのかということを考えるのを代替させてしまうような「神秘」だろう。

  • 中世スコラ哲学の大御所、トマス・アクィナスの入門書。アリストテレス主義者として知られるトマスの、思想のポイントを、いくつか説明していますが、素晴らしい。トマスが素晴らしいのか、著者の山本さんがすばらしいのかわかりませんが、読ませます。
    そして、神学大全読みたくなります。

    多少キリスト教の知識と、アリストテレス哲学の知識があった方が良いですが、基本的には古き良き新書らしい概説、そして道標といった本です。こういった新書が減ってきて辛い。

  • 東2法経図・開架 B1/4-3/1691/K 

  • トマスという人物は中世キリスト教の支配する思想の中でアリストテレスの合理性を結合させた開明的な人物という印象に改められた(というか歴史に一行以上には知らなかった)。また、凄まじい大著である神学大全ですらトマスの全著書の7分の1であるに過ぎず、アリストテレスや旧新約聖書への注釈、様々な同時代人との対論を残しており、40代で亡くなったことを考えると歴史的な知の巨人であったことがわかる。が、現代から彼の思想を見る意義は、著者がいろいろとこの新書の中で述べているが、アリストテレスの合理性とキリスト教の神秘性を合わせただけでなく、昇華させたところに意義はあるように見えるが、それ以上のところは私には理解できなかっただけかもしれない。

  • 本自体はきっと良質で,文章も丁寧で情熱と信頼性のバランスも取れており,トマス・アクィナス入門というなかなか他にない価値を有しているんだろうと思います。しかし自分の先入観?が邪魔してどうしても入り込めませんでした。「よい」ってなに? 「前向きに生きていく」とか「徳」とか「より適切に」とか何の注釈もなく当然のように使ってるけどそれってなに? やっぱり宗教の枠組みの中で信仰を守るため単にストーリーを作ってるだけじゃないの? などと思ってしまい入り込めないというのが現時点の僕の人間レベルでの素直な感想です。

  • 久しぶりに世界観を揺さぶるほどのすごい本に出会った。トマス・アクィナス、半端ない。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京大学准教授。専門はキリスト教・ユダヤ教・イスラム教の比較神学
的・比較哲学的研究︒著書に『トマス・アクィナスにおける人格の存在論』(知泉書館、二〇一三年)。『トマス・アクィナス―肯定の哲学』(慶應義塾大学出版会、二〇一四年)等。

「2017年 『nyx 第4号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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