近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
4.10
  • (9)
  • (5)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 140
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004316954

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 元東大全共闘代表の著者による、明治維新以降の近代科学技術政策史。

    本書では、科学技術の負の面にスポットライトを当てつつ、科学技術の果たした貢献に対して否定的な論調で150年の歩みが語られている。

    我が国における科学技術の発展は、富国化、近代化、大国化、とりわけ軍事力の整備と密接に関わってきた。国策としての先端兵器の技術導入や国防・軍備のベースとなる資源・エネルギー開発。潤沢な研究開発資金が与えられ発展してきた科学技術。著者は、その陰で農村から駆り出された職工や植民地・侵略地域の住民、漁民や農民、地方都市の市民の犠牲を強いてきた、と説いている。

    戦争に大きく加担しながらその責任を負わず、反省の弁もなく戦後復興・民主化のの担い手として転向したことを痛烈なに批判している。

    かなり左よりの論調だが、頷けることは多い。科学技術に悲観することはないと思うけれども、研究者や技術政策担当者には、本書のような形で過去を振り返り、反省することが必要なのだと思う。

  • 2018年6月13日借り出し。

  • 数多くの文献を引用しながら、明治から始まる近代日本の科学技術振興がいかに軍部に牽引されてきたかを述べている図書。軍や政府主導の科学技術振興が日本を作り上げてきたが、弱者である市民の生活がないがしろにされる問題が現在も続いていることに警鐘を鳴らしている。今の政権が原子力産業や兵器産業等で国を潤そうとしているように見えることが情けなく感じる。
    もう今の日本は人口も増えないんだし、縮小して撤退していく方針の方が市民の生活を守ることができる気がする。

  • 小生の世代では著者の名前は有名である。
    「東大全共闘議長、全国全共闘議長」。なんとカリスマ性に満ちていたことか。
    本書を読むと、日本が明治以来歩んできた道を否定するか、それとも高度成長に繋がった歴史を賞賛すべきなのかの基本的立脚点を問われる思いを持つ。
    著者の立ち位置は「リベラル」と言うよりも「革新」と言うべきか。
    現在ではやや左に寄っているようにも見え、小生の視点とも違和感がある点もあるが一読の価値がある本であると思った。

    2018年5月5日読了。

  • 明治以降の150年間の産業技術について、その負の側面を痛烈に気持ちいいぐらいバッサリと批判している。さすがこの人だという傑作だ。特に第6章「そして戦後社会」では、高度成長の裏にある公害問題について、産官学マスコミを強烈に批判している。御用学者の企業援護とそれに乗っかるマスコミ。それが次章の原子力発電につながる。この部分がハイライトと感じた。何度も読み返したい名著。

  • 広重徹『科学の社会史』に勝るとも劣らない、近代日本における科学技術の受容の仕方とその歪みを描いた書。江戸末期から現代までを新書一冊で総括するというのはかなり野心的な試みであるが、産・軍・学一体となった「科学技術総力戦体制」が出来上がっていく様子が目に浮かんでくるような構成になっている。ただ、個別の例に関しては筆者の主張に合う部分だけ取ってきたという感があるので、この本に出てきた科学者全員が戦時体制を望んでいたと考えてはならない気がする。

  • 明治以後の150年を、科学と技術という観点から見て書かれた通史。圧巻は5章以降で、戦中の戦時即応体制を作るために社会や政治経済の仕組みが総力戦体制に編成され、それが戦後の高度経済成長をも可能とした条件になったという。社会経済について1940年体制ということはすでに言われているが、科学、技術の面でそれが明らかとなっている。

  • 東2法経図・開架 B1/4-3/1695/K

  •  さすが、元東大全共闘委員長の著者の観点は鋭い。明治以来150年の文明化の日本における特殊性、それが軍事技術への関心の高さから戦争と密接に結びつき、「兵学」であったこと、それは戦後も一貫しており、朝鮮・ベトナム戦争における兵器開発、なんと原子力発電の維持までが、岸首相以来の核兵器をいつでも持てる潜在的核保有の意味を持たせ、諸外国への牽制としていることを論破していく!驚きだが、全く肯けるところ。一方、ドイツ、イタリアは脱原発を宣言したらしい。それが2011年の原発事故において、日本の科学技術体制の破綻を迎えているという認識は私自身もしっかりと持つべきだと感じた。気象、海洋研究までもが海軍の1935年の三陸沖演習における大事故の反省から本格的に進んだとは知らなかったが、成程!明治期の欧米への劣等感は森有礼文相の留学生への訓示「欧米女性との交際による雑婚の奨め」に見える、確かに荒唐無稽。

  • 山本氏の著書については高校生のころ「物理学入門」で勉強して以来だ。みすずの本は、読んでみたいと思いながら、ついに手が出なかった。そして、岩波新書。広告を見てすぐ書店に向かった。しかし、どこにもない。もう売り切れたんだろうか。書店員に確認すると、それは来月発行とのこと。ややこしい広告を出さないで。と思いつつ、1ヶ月待って手にし、すぐに読み始めた。分かりやすい。おもしろい。知っていた事実も知らなかったこともいろいろとあるが、最終的にはやはり戦争はもうかるということ。そしてそれに乗っかってもうけたいという人間がいかに多いかということ。原発についても同じこと。なんだかおかしな話だ。国は借金だらけだというのに、高価な兵器を購入しては、古くなったら処分する。造る企業もしかり。もうかるからか。そして、選挙はあんな結果になる。なんだか情けなくなる。足尾銅山や、水俣病の教訓は全く生かされていない。人間の本性は変わらないということか。しかしである。本書は売れている(たぶん一部で)。そういう意味では期待はできる。(選挙のときも一瞬期待したんだけどなあ。)こういった事実を、なんとか、子どもたちにも知らしめていきたい。最終的な判断は本人次第だが。

全11件中 1 - 10件を表示

プロフィール

1941年、大阪に生まれる。1964年東京大学理学部物理学科卒業。同大学大学院博士課程中退。現在 学校法人駿台予備学校勤務。著書『知性の叛乱』(前衛社、1969)『重力と力学的世界――古典としての古典力学』(現代数学社、1981)『熱学思想の史的展開――熱とエントロピー』(現代数学社、1987、新版、ちくま学芸文庫、全3巻、2008-2009)『古典力学の形成――ニュートンからラグランジュへ』(日本評論社、1997)『解析力学』I・II(共著、朝倉書店、1998)『磁力と重力の発見』全3巻(みすず書房、2003、パピルス賞・毎日出版文化賞・大佛次郎賞受賞、韓国語訳、2005)『一六世紀文化革命』全2巻(みすず書房、2007、韓国語訳、2010)『福島の原発事故をめぐって――いくつか学び考えたこと』(みすず書房、2011、韓国語訳、2011)『世界の見方の転換』全3巻(みすず書房、2014)ほか。

近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻 (岩波新書)のその他の作品

山本義隆の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
有効な右矢印 無効な右矢印

近代日本一五〇年――科学技術総力戦体制の破綻 (岩波新書)を本棚に登録しているひと

ツイートする