官僚たちのアベノミクス 異形の経済政策はいかに作られたか (岩波新書 1703)

  • 岩波書店 (2018年2月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784004317036

感想・レビュー・書評

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  • アベノミックスが成功だったのか失敗だったのかは、これから検証されていくことだろうが、第二次安倍政権発足当時は日本を良くしようと火の玉になって働いていた安倍首相がよくわかった。

  • 周囲に本好きの人は多いが、N先輩はその中でも群を抜いている。
    どんな本を読まれるのかお聞きしたら、歴史から医学、財政、福祉、ノンフィクションまで、幅の広さに圧倒されてしまった。「面白そうだから読んでるだけ」と謙遜されるが、忙しい職にあっても新しい本に挑戦される姿勢は見習いたいものだ。

    N先輩からご紹介いただいた1冊。
    安倍内閣の経済政策アベノミクスは大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の3本の矢からなる。本書は、第一の矢である金融緩和が、自民党の選挙公約から日銀の政策となっていく過程を、2012年9月の自民党総裁選から翌13年3月の日銀総裁辞任まで辿ったノンフィクションだ。

    印象的なことが二つある。
    一つは、言葉の扱い方が丁寧なことだ。金融緩和して達成すべきインフレ目標を政府・日銀の共同声明としてまとめるにあたり、財務省と日銀の担当者が協議する。目標2%の明記や達成時期、日銀の説明責任といった点について言葉一つ一つ議論を重ねる。そのやり取りは、似た仕事をしている立場からみても非常にリアルだ。交渉当事者に丁寧に取材し、彼らの意図を正確に理解しなければ書けないと思う。
    二つ目は、官邸と日銀の間では結局、実質的な政策議論はされなかった点だ。首相の意思を実現しようと圧力をかける内閣府と「インフレ達成は日銀の仕事ではない」という立場に固執する日銀。もう少し日銀が政権の意図を理解し柔軟に対応していれば、もう少し官邸側が日銀の役割に配慮していれば、違う結果になったと思う。本書の守備範囲ではないが、首相の意向実現のため官邸職員が担当省庁に圧力をかける手法が常態化したことが後日、数々の疑惑を生む土壌につながったのではないかと思う。

    いずれにせよ、本書はアベノミクス自体の是非ではなく、その形成過程を記録するスタンスを貫いたことで、政策決定に携わる人間にとって優れた参考書となった。N先輩に感謝。

  • 本棚で平積みになっていたので気にはなっていましたが、アベノミクスなり経済政策にあまり興味がもてなかったので手に取っていませんでした。しかし、ブクログでフォローしている方が紹介しているのを読むと、テーマは経済政策というより政策形成過程だということ。それならばと読んでみました。おもしろかったです。政治家が旗を掲げて、官僚たちのあれこれの調整がこんなかたちで行われて、具体的な政策としてかたちづくられていくのだというところが。それにしても、かなり生々しい話が盛り込まれていてすごいなあと感心しました。どんな取材をしたのだろう。もし私が取材を受ける側なら、こんな話(特に「あのとき日銀の本音は聞いてたんだけど、交渉のカードをもっておきたいから情報握ってたんだよね」なんて話)、怖くて言えないです(自分の器の小ささをこんなところで感じることになるとは…)。

  • 2012年11月14日(野田‐安倍の党首討論)から2013年7月1日(日銀短観発表)までの期間、政治家・官僚・日銀・財界・国内外の関係者達が何を考えどういう発言をしてきたかの記録。
    アベノミクスの実現(反対意見を排除し、スピード感の強い方針決定)に、人事という飛び道具が重要なファクターとなっていることがよくわかる。
    アベノミクスをはじめとする政策の良し悪しについては、各自で考えてくださいというスタンスであるが、安倍政権の国会運営には苦言を呈している。

  • アベノミクスの形成過程がよくわかる良書。アベノミクスとはつまりは円高と株価対策であったということか。本書において成長戦略が語られないことは、極めて象徴的に思われます。

  • 【混沌からの落穂】2012年の総理就任と同時に,安倍政権の目玉政策となったアベノミクス。その政策の成立過程を追いながら,現代日本の政治システムの内側を垣間見た作品です。著者は。時事通信社で解説委員等を歴任した軽部謙介。

    これは名著。政策決定プロセスを考える上でももちろん有益ですが,特に後半に描かれる,政権と日銀の距離感に関する記述と考察が白眉です。新書というとコンパクトかつ軽めの媒体という印象も与えられてしまいがちですが,本書は日本政府の内側にぐりぐりと迫った力作だと感じました。

    〜政権がつくられるとき,その政党は特定の政策を実施しようとする。そして,その政策をつくるという意思は,首相→各閣僚→各省庁という形でおりていく。国家意思の貫徹だ。日銀はこのような政治家の意思が貫徹していくべき対象なのか。〜

    帰国に伴って久しぶりに読んだ紙の本☆5つ

  • ふむ

  • いわゆる内幕物であり、結果は知ってはいるものの、先が気になってサクサクと読めた。
    安倍自民党が圧勝してから、余勢を駆って厚労省に押し付けられた政策(GPIFのリスク資産比率の増加)もあったと知る。

    個人としては、当時、金融緩和については是非ともやるべきという意見だったが、いわばカンフル剤であり、長く続けるようなものではないと思っていた。
    その意味では、最後の方に出てくる木内審議委員の意見に近い。
    黒田総裁末期、10年やって成果が出ない政策を続けることに合理性は見当たらなかった。
    ただ、それはまた後の話である。

  • 淡々と書いてある。
    今に通じる芽がわかった。
    正体が明らかになってきてよかった。
    当初はさぞ辛い思いをした人がいたことだろう。
    完全に✖️の評価が広まって欲しい。

  • 金融政策主体のアベノミクス立ち上げ当時の具体的な経緯が描かれている。それを推進する人々の高揚感のようなものが伝わってくる。ただそれが日本社会にとって本当によかったのかどうかがはっきりするのはこれからだ。アベノミクスが日本社会にとって罪であったとしても、その罪を贖うことになるのは、アベノミクスを推進した面々でも、それにより短期的な恩恵を得た面々でもなく、いわゆる庶民、特に貧困層だろう。今後のためにも、アベノミクスがどのような経緯で始められたのかを、多くの人がきちんと知る必要があると思う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/702387

  • 例えば文中にある政策案意思決定の際リアルな記述はなぜ可能なんだろう、その場にいないはずなのに。

  • アベノミクスのスタート時期を描いたルボとしてよくまとまっている。登場人物が多すぎて把握できないが、当時の空気が思い出せる。アベノミクスが始まってから10年近く経過したが、環境が大幅に変化。円安は生活に悪影響を与えるレベルで進み、生活品の値上げニュースが毎日のように発表される。一方で収入は一向に増えない。この先どうなるのか、誰かわかる人がいれば教えてほしい。

  • 本書の続編とも言える『ドキュメント 強権の経済政策 ー官僚たちのアベノミクス2』と併せて読みたい。
    第二次安倍晋三政権が成立してから始まった目玉政策『アベノミクス』がどのようにして作られていったかを、
    詳細に書いた本。

    情報量が妙に多いので、読み通すとかなり疲れる。

    つくづく思うのは、日本は官僚主導で動く国家であり、官僚をうまく使いこなせないと政権の維持が難しいのだな、ということであった、
    官僚達がが完全に国民への分配政策よりも成長重視な人間ばかりで、そこに成長戦略を強力に打ち出した安倍政権は、実に相性が良かったという事か。

  • 真偽はわからないがコンパクトに全貌をまとめていると思う

  • ノンフィクション小説のような出来だ。基本的に、筆者のいうとおりアクター(それも政財界エリートの個々人)中心の分析・描写。よくここまで細部にわたり取材しストーリー状に上手く繋ぎ合わせたものだ、と脱帽してしまった。
    前半は凋落の日々を送る民主党政権と、その下で「裏切る」官僚たち、彼らと取引する自民党幹部。中盤以降は、アベノミクス(の「2年で名目物価上昇2%」)に抵抗する最期の砦たる日銀と、前線で戦う財務省。財務省の持ち帰った妥協を睨む内閣府や政権上層部…。本書には登場しないけど、個人的には当時の日経一面の「白から黒へ」見出しを懐かしく思い出した。後半では、陥落した日銀の次に厚労省が登場。年金基金を国債だけでなくより活発に運用せよ、と包囲攻撃される。いずれも非常にドラマチックで、何だか「シン・ゴジラ」を思い出した。
    著者は、優れた小説家にもなれるだろう。やはり、ジャーナリストによる新書というのはエンタメ的な面白さがある。
    したがって、当然ながら、政治学や経済学などの学術的な分析(制度的・構造的分析含め)を目的とする書物でない。通常は、因果関係の厳正な究明という観点から本書に価値を見い出そうとすることはなく、あくまで事実確認のための一参考資料の程度に留まるだろう。

    アベノミクスは金融政策とトリクルダウンを念頭に置いており、新自由主義的側面がある。ただし、アベノミクスには財政政策や賃上げへの国家介入などの側面もあり完全な新自由主義でもない・・・といったことを思い出しながら読んだ。

  • 経済政策のできる過程を司司への取材から追った本書。

    それはいいが、やはり新書、特に岩波新書として出すからには、学術的分析をもっと盛り込んで欲しかった。

    タイムラインログとして以上になっていないのが厳しい。

  • 【本書の概要】
    アベノミクスという異形の経済政策のうち、一丁目一番地である大胆な金融政策は、インフレターゲットをめぐる日銀と政府との熾烈な駆け引きによって作られた。
    時の権力者の専制を防ぐためには、本書のように政策形成過程を絶え間なくチェックしていくことが必要になるだろう。

    【用語】
    リフレ派:緩慢なインフレを継続させることにより、経済の安定成長を図ることを政策に取り入れようとする人々のこと。金融緩和→円安→株高→企業利益改善→賃金増加→物価上昇という波及経路を辿るり、経済が成長していく。


    【詳細】
    ①インフレターゲット2%をめぐる攻防
    安倍は、長年続くデフレの原因を貨幣現象と考えており、このデフレを解消するために、日銀に2年2%のインフレターゲットのもと大規模な金融政策を取るように指示する。
    同時に、これは日銀の責任で行うべきだということも頭にあった。インフレが達成できない場合は日銀が未達成の理由を述べ引責を取ることになる。
    一方で、日銀はデフレの原因は構造的問題にあると考えており、当然、安倍が求めた金融緩和にも反発することになる。
    2年2%のインフレターゲットの設定は、過去現在含め例を見ない。日銀の第一理念は物価の安定を通じて国民生活の向上に資することであり、2%は諦めるにしても、期日付き、ましてや2年という超短期での達成要求は到底飲み込めなかった。
    そして何より、日銀法で「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない」とする「金融政策の独立性」に抵触するのではという思いがあった。
    この問題については、安倍のブレインたちは、あくまでも手段の独立性――つまりどれぐらいの年限の国債をどのぐらい買うかという日常のオペレーションの独立性だと思っていた。
    しかし日銀は違う。インフレ目標を決めるかどうかも含めての独立性であり、どの水準に誘導すべきかも日銀の意思のみによると考えていた。
    結果、日銀と政府との交渉は難航していく。
    最終的には「期限については中期(できるだけ短く)、2%の物価安定目標については政府が、ターゲットを達成することにおいては日銀が責任を持つ」ことで妥協になった。期限についての数値目標の明記は免れたものの、だいぶ日銀が泣く格好となった。
    上記の情報は、政府と日銀との共同声明という形で国民に発信された。両者が連携を強化し、一体となって取り組んでいく姿勢を明確に示したことで、市場の期待感は高まっていった。
    日銀が具体的に行った金融政策は、金融市場調整の調査目標を、無担保コールレートからマネタリーベース(日本銀行が世の中に直接的に供給するお金のこと。具体的には、市中に出回っているお金である流通現金と日本銀行当座預金の合計値)に変更したことである。MBが年間60~70兆円に相当するベースで増加するように金融市場調整を行った。まさに異次元の金融緩和であった。

    ②アベノミクスの成果とファクトチェック
    一時期は外国から「恣意的な円の切り下げを行っている」との見方をされたこともあったが、その後他国との軋轢も生まれることなく、アベノミクスの影響で経済指標は改善されていった。
    しかし、雇用回復の大部分は非正規労働者であり、賃金は上がらず、相対的貧困率も高止まりしたままである。日銀は莫大な借金を抱え、財政赤字は拡大の一途だ。
    与党一強状態への権力の抑制のためにも、国会やメディアは政策形成過程を絶え間なくチェックしていくことが必要になってくるだろう。


    【感想】
    この本は、自民党への政権交代からアベノミクス誕生までの間において、誰がどのような立ち振る舞いをしたか網羅的に記述し、その形成過程を確認する本になっています。
    従って、アベノミクスの功罪については踏み込んでおらず、あくまで中立的な立ち位置に留まっています。
    多数の関係者の発言や行動が綿密に綴られており、筆者の取材力の凄さを感じました。同時に、中央省庁というのは多くのプレイヤーが自分達の思惑をぶつけあう戦場なのだ、と改めて実感しました。

  • 2度目の再読

  • アベノミクスが問うたのは、中銀の独立性という古くて新しい問題。安倍総理は、「私の金融政策」とまで言ったのに、いまや物価に関心を払わず知らんぷり。この尻ぬぐいを、いつか誰かがしなければ行けないときがある。

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著者プロフィール

軽部 謙介(カルベ ケンスケ)
時事通信社解説委員
1955年生まれ。早稲田大学法学部卒業。時事通信社入社。社会部、福岡支社、那覇支局、経済部、ワシントン特派員、経済部次長、ワシントン支局長、ニューヨーク総局長等を経て、現在、同社解説委員。主な著書に『日米コメ交渉』(中公新書)、『官僚たちのアベノミクス』(岩波新書)など。

「2019年 『政策をみる眼をやしなう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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