ベラスケス 宮廷のなかの革命者 (岩波新書 1721)

  • 岩波書店 (2018年5月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784004317210

みんなの感想まとめ

この作品は、ベラスケスという画家の生涯とその芸術について深く掘り下げた評伝です。著者は、ベラスケスの作品を通じて彼の独自の世界観や技術を詳細に描写し、特にその孤立した芸術性に焦点を当てています。口絵に...

感想・レビュー・書評

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  • 私が初めてベラスケスという画家を知ったのは、中野京子さんの『怖い絵 死と乙女編』でした。ベラスケスの描いた『フェリペ・プロスペロ王子』のを見て怖っ!!と思いました。そこからベラスケスとハプスブルク家に関する本を読みまくり、今に至ります。

    『ベラスケス 宮廷のなかの革命者』大髙保二郎著は、口絵にカラーで20点の絵の写真が載っています。ベラスケスの全てを知ることができるといっていいでしょう。
    まさに ー革命者ー

  • ベラスケスの生涯に表立ってのドラマ性みたいなものが希薄だからか淡々と読んでしまいましたが、着実な基礎研究にもとづいてしっかりと書かれているのだろうなあと、著者の誠実さを感じさせる評伝だと思います。そのなかで著者が自分の解釈を述べているところは、かなりベラスケスに肩入れしてとても好意的に解釈している。ほほえましいというか、ちょっと引くというか。
    淡々とした印象を感じたのは、画家の生涯のドラマ性ということもさることながら、ベラスケスとの影響関係にある芸術家があまりいないからですかね。そこは、ベラスケスの芸術の孤立性というよりは、スペインの文化の閉鎖性みたいなものを感じました。
    (後日追記)
    先日の感想文では誤解されるかもしれないので。ベラスケスの絵はとても好きです。卓越した技巧、作品から溢れ出るエネルギー。だからこそ評伝を読んでみて、期待していたドラマ性は感じられないものなんだなあ、と感じた次第です。

  • <ラス•メニーナス>
    プラド美術館最高の至宝がベラスケスによる「ラス•メニーナス」(「宮廷の侍女たち」)だ。
    この絵画を一言で言い表すと「不在の在」。

    中央に描かれる少女がマルガリータ王女。
    スペイン•ハプスブルグ家の数少ない後継者、希望の星だ。
    スペイン•ハプスブルグ家は、長年の近親結婚の結果、中々成人する者が出てこなくなっていた。
    ようやく、少女にまで育ったマルガリータを、王室がいかに慈しんだかが、この作品から伺うことができる。

    窓から差し込む光に浮かび上がる皇女。
    正しく、ドラマティックなカラヴァッジョ的構成だ。
    光が当たっているのが主役。
    その主役であるマルガリータ王女は何を見ているのか?

    王女の横でキャンバスに向かうのはベラスケスだ。
    画家は堂々と自分の肖像画を王女に並べて描いていることになる。
    こちらにはキャンバスの裏しか見せていない。
    だからそこに何が描かれているかは鑑賞者には見えない。
    この絵の主役マルガリータと画家は並んでいるので、キャンバスに描かれているのはマルガリータではない。
    では、この絵の中のキャンバスに描かれているのは何なのか?

    その答えは、ベラスケスの後ろの鏡にある。
    鏡に映っているのは、王と王妃。
    マルガリータの両親だ。
    ベラスケスが大きなキャンバスに描いていたのは王と王妃の肖像画だったのだ。
    「ラスメニーナス」に描かれているのは、ベラスケスが王と王妃の肖像画を描いているところへ、マルガリータが、お付きの者と一緒にやってきたという場面だったのだ。
    だから、マルガリータが微笑んでいる相手は、彼女の両親、王と王妃だということが分かる。

    王と王妃を画中の鏡に写して描くという破格の芸当を通じて、画家は王と同じ絵の中に収まる、という寸法だ。
    こんなアクロバティックな方法を取らない限り、一介の宮廷画家が、王と一緒に絵に収まるなどということはあり得ない。
    画家の誇らしげな表情がそのことを物語っている。
    その胸には、赤い十字架が飾られている。
    これは栄えあるサンチャゴ騎士団の印だ。
    X線分析により、この十字架は絵が完成したあとに書き加えられたことが分かっている。
    そこから、それを描き加えたのは、ベラスケスをサンチャゴ騎士団に任命した国王だ、という説がまことしやかに唱えられている。
    だが、国王が、こんなに見事に十字架を描ける筈がない。
    絵を描いた後に、サンチャゴ騎士団員に任命されたベラスケス本人が、それを自慢して描き加えたと考えるのが妥当だ。

    サンチャゴ騎士団に入団するには、多くの厳格な資格をクリアする必要がある。
    まず、貴族の家系でなければならない。
    しかし、ベラスケスの家系は、貴族ではない。
    サンチャゴ騎士団に絶対入ることの出来ない改宗ユダヤ人の家系なのだ。
    それは、詳細な調査をすれば分かった筈だ。
    にも関わらず、「貴族」の家系と認定されている。
    その家系「改竄」を認めたのは、国王自身だ、という逃した著者の見立てだ。
    だからこそ、ベラスケスは、誇りと感謝の念を以って、サンチャゴ騎士団の十字架を描き加えたのだ。
    騎士団への入団を家系「改竄」までして後押ししたのが、国王であるならば、この十字架を描き加えたのが、国王自身であったというのは、比喩としては正しい。

    どうしてこんなに高く天井が描かれているのか? ベラスケスは一体何を描きたかったのか?
    絵の中心はどこなのか?
    謎は尽きない。

    ミシェル•フーコーが「ラスメニーナス」に取り憑かれ、「物と言葉」を書いたように、パブロ•ピカソが「ラスメニーナス」に魅せられ、何枚もの模写を行ったように、この絵は、見る者を夢中にさせる何かを持っている。

    マルガリータ王女の肖像は、スペインだけではなく、ウィーンにもある。
    ウィーンは、神聖ローマ帝国=オーストリア•ハプスブルグ家の首都だ。
    スペイン•ハプスブルグ家からオーストリア•ハプスブルグ家に何枚ものマルガリータの肖像画が送られていたのだ。
    それは、定期的に送られる見合い写真の役割を果たしていた。
    その結果、マルガリータは、神聖ローマ皇帝の妃となる。
    その見合い写真(絵画)を託されたのが、国王の絶大な信頼を得ていたベラスケスだった。
    結婚相手は、神聖ローマ皇帝レオポルド一世。
    皇帝は、マルガリータの母親の実弟。
    ということは、マルガリータにとっては叔父さんだ。
    またしても、ここでも近親結婚が行われて、ハプスブルグ家は益々衰えていく。

  • ベラスケスについては絵は重々知っていたものの、その人となりについては何も知らなかった。本書は詳細に彼の生涯について描かれているが、美術批評に少し寄りすぎていて後半読み疲れしてしまった。

  • プラド美術館に行く前に読んでおくと所蔵のベラスケス作品が数倍楽しめる一冊。
    なぜウィーンにマルガリータなどベラスケスの肖像画が多くあるのかもよくわかる。
    17世紀の前半から中葉、後半に至るヨーロッパの政治情勢・国際関係の変化とも絡み合う絵画・装飾品の果たした役割もまた面白い。

  • 出自が関係するのか?確かにこの画家、当方のわずかばかりの知識の中でも「肉声」が聞こえてこない。
    ただそれは凡たる人間の考えることであって、画家にとっては絵が語っていれば基本良し、ということでしょうか。
    いやぁ、プラドには死ぬ前に一度は行ってみたい。幾つか作品を鑑賞したことがありますが、近くで見るとほんと「いい加減」に書いているようで距離を置くと信じられない程の出来になる。何度でも見たくなる数少ない画家の一人であります。

  • ベラスケスは宮廷画家だったので,どうしてもスペインハプスブルク家の歴史と切り離せないのはわかるとして,文章が読みにくく王家の人々がごちゃごちゃして,やっと読み終わった.私の思っていた本ではなかったので,少しがっかりした.

  • 本館開架(新書) [Velázquez, Diego(1599-1660)]
    http://opac.lib.saga-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB26127664

  • 東2法経図・6F開架 B1/4-3/1721/K

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著者プロフィール

大髙保二郎(おおたか・やすじろう)
香川県生まれ。マドリード・コルプルテンセ大学哲・文学部、早稲田大学文学部に学ぶ(共に大学院博士課程満期退学)。専門はスペイン美術史、バロック美術。跡見学園女子大学、上智大学、早稲田大学各教授を経て現在、早稲田大学名誉教授。近著に『スペイン 美の貌』(ありな書房)、『ゴヤ:戦争と平和』(新潮社)、『ベラスケス―宮廷のなかの革命者』(岩波新書)、『ピカソと地中海―神話的世界から《ゲルニカ》へ』(地中海学研究XLIV)、共著に『肖像画―姿とこころ』(集英社)、『堀田善衞』『スペイン美術史入門』(NHKブックス)、『もっと知りたいエル・グレコ』(東京美術)、共編・訳書に『ゴヤの手紙(上・下)』(岩波文庫)、『フランシスコ・パチェーコ著《絵画芸術》』(スペイン・ラテンアメリカ美術史研究会)など。

「2022年 『ピカソ作品集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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