現代社会はどこに向かうか――高原の見晴らしを切り開くこと (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317227

感想・レビュー・書評

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  • 見田宗介氏(1937年~)は、現代社会論、比較社会学を専攻する社会学者。真木悠介の筆名でも多数の著書がある。東大の著者のゼミは抜群の人気を誇り、その出身者には、大澤真幸、宮台真司、小熊英二、上田紀行といった、現代日本を代表する思想家・社会学者がいるのだという。
    本書は、初出2011年の序章のほか、いくつかの著作、学会やシンポジウムでの講演内容に加え、本書のための書下ろしをまとめたものである。私はこれまで見田氏(真木氏)の著作に縁がなかったのだが、本書の題名と上述のような構成から、著者のこれまでの論考のエッセンスがまとめられたもの、即ち「集大成」と考え、手に取った。
    本書の論旨は以下のように明快である。
    ◆人間は、地球という有限な環境下に生きる限り、生物学でいう「ロジスティック曲線」から逃れることはできない。人間はこれまで、原始社会<定常期>から、カール・ヤスパースのいう「軸の時代」(古代ギリシャで哲学が生まれ、仏教や儒教が生まれ、キリスト教の基となる古代ユダヤ教の目覚ましい発展があった時代)<過渡期>を経て、文明化による人口増加<爆発期>を経験してきたが、近代はその<爆発期>の最終局面だったのであり、現代はその後に訪れる<過渡期>、即ち未来社会<定常期>への入り口にある。
    ◆それは、人間は、「軸の時代」以降、貨幣経済と都市社会の勃興を前に、世界の“無限性”を生きる思想を追求し確立してきた(その究極の姿が資本主義であろう)が、現代において、グローバル化が極限まで進み、環境的にも資源的にも、人間の生きる世界の“有限性”を生きる思想を確立しなければならなくなった、ということである。
    ◆そして、その思想とは、経済成長を追求しない、生きることの目的を未来に求めない、他者との交歓と自然との交感によって「生のリアリティ」を取り戻すことである。
    ◆その思想は、シンプル化、ナチュラル化、素朴化、ボーダーレス化、シェア化、脱商品化、脱市場経済化という現象として現れつつあり、価値観調査における若い世代の幸福感の増大のような結果も併せると、新たな世界が広がりつつあると言えるのかも知れない。
    これは社会学者・広井良典氏のいう「定常型社会」と共通するものであるが、私はこの思想に深く共感を覚えるし、人類の進むべき方向はこれしかないと考えている。しかし、現実に目を転じると、政治家は「一億総活躍社会」などとぶち上げて「経済成長」を錦の御旗にし、少なからぬ人々が「経済成長」の呪縛に捉われたままである。現在の課題と進むべき方向が明らかな今、どのようにしてそれを実現するのかにこそ、人類は知恵を絞る必要があるのだと思う。我々に残された時間は多くはない。
    (2018年9月了)

  • 日本人の意識の大きな変化として,①近代家父長制家族の解体,②生活満足度の増大,結社闘争性の鎮静,③魔術的なるものの再生 を挙げている.地球という限られた空間に住む現代人は,未来を失っているとも述べている.これらの事象はp122-123に上手く集約されていると感じた.曰く「日本の青年たちの価値の感覚が,シンプル化,素朴化,ナチュラル化という方向に動いていること,フランスの急速に増大している"非常に幸福"な青年たちの幸福の内容を充たしているのが,他社との交歓と自然との交感とを基調とする,"幸福の原層"の素直な解放であるということは,環境容量のこれ以上の拡大を必要としない方向で,無数の"単純な至福"たちの一斉に開花する高原として実現するという方向で,生きはじめているように思われる.」これからの生き方の指針として,肯定的であること,多様であること,現在を楽しむということ の3つ,それぞれ英語ではpositive, diverse, consummatory.考えさせられた.

  • 難しい。

  • 新たな時代には新たな生きる指針を、という趣旨ながら、目指すべきはユートピア…みたいな話になってしまっているし、ロジックの飛躍や、深掘りが足りないと感じることが多々あり、少しがっかり。30年前と現在の30代の志向の比較は面白かった。

  • 見田宗介は社会学専攻の一部のタイプに人気がある。
    宮台真司よりは文化人類学的で、
    中沢新一より計量データをきちんと扱う。

    まぁ、僕の好きな先生です。
    その新刊なんですが、これは少し物足りなさを感じる。

    内容としてはサブタイトル(省略してしまってますが)の
    「高原の見晴らしを切り開くこと」のために本書は書かれています。
    高原とは爆発的増加を経て増加の踊り場に来た我々人類の
    グラフに現れた台地のことです。

    意識調査の経年比較から、この踊り場において
    1、家族システムの解体 2、保守化 3、魔術的なものの復活
    を確認したうえで、合理化圧力の弱体化を
    引き出すあたりの手つきはさすがである。

    ただ、結論的なものに行くにあたって
    口当たりのいいものにまとめてしまっているような感覚を受ける。
    互いに求められること、生活そのものが喜びであるようなこと、
    それ自体が求められるのはなんの違和感もないが、それならずっとそうだったはずです。
    ここに至って導かれるべきは経済が
    それらをビルトインした時の姿の構想ではないかと思う。

    まぁ、でもファンとしては高齢なので新刊もないかと思ってたところに
    (すでに全集の刊行も始まってる)今、の地点から書いてもらえたのは嬉しいんだよね。


    >>
    西ヨーロッパ、北ヨーロッパを中心とする高度産業社会において、経済成長を完了した「高原期」に入った最初の三〇年位の間に、青年たちの幸福感は明確にかつ大幅に増大している。(p.57)
    <<

    NHK放送文化研究所の「日本人の意識」調査を見たあとで
    「世界価値観調査」から多国籍間の比較を行う。
    社会問題などは変わらず取りざたされていても総体としてみれば
    幸福感の上昇は認めるべき事実と言って差し支えない。

    >>
    予言書からキリスト教に至る宗教は、未来へ未来へと向かう精神、現在生きていることの「意味」を、未来にある「目的」の内に求めるという精神において、この近代に向かう局面を主導してきた。(p.96)
    <<

    苦しい時はこの啓示が救いになったが
    幸福になってしまえばどうなのか、というのが本稿。
    また、これまでの基幹的な考えとして宗教を引いているが
    同時に宗教が救いにならないという視点でもある。

  • 見田さん流石にかっこいいこと言うなあ、ポジティブで漸進的だなあという本。
    福祉は衝動である、とか欲望の相乗性とか。
    存在することの祝福にたいする感動能力の解放とか。

  • こう見せられると、資本杉は、トートロジカルに、自らを測ることのできる「ものさし」だったのではと考えさせられる。さらにその目盛りは、自由に拡張伸縮できるかのような。

  • 現代社会はどこに向かうか―高原の見晴らしを切り開くこと
    脱高度成長期の精神変容―近代の矛盾の「解凍」
    ヨーロッパとアメリカの青年の変化
    ダニエルの問いの円環―歴史の二つの曲がり角
    生きるリアリティの解体と再生
    ロジスティック曲線について
    高原の見晴らしを切り開くこと
    世界を変える二つの方法

    著者:見田宗介(1937-、東京、社会学)

  • 2011年「定本 見田宗介著作集」第一巻『現代社会の理論』、あるいは2016年「現代思想」総特集『見田宗介=真木悠介』で一度ならず二度までも触れていた論でした。たぶん、前もそう感じたと思いますが、捉えている視野の大きさと視点の能天気さが今回も。そこが社会学ピーターパン(勝手に命名)、見田宗介節の真骨頂かも。

  • 希望が持てる本であった。現代社会は歴史的に着実に進化している。マルクスが唱えた予言は資本主義が発展すれば、共産主義に移行するというものであったが、その予言が当たりそうである。ただし自由と民主主義があればとの前提だが。ただ、その予言がうまくいかなかったのは、1.否定主義(とりあえず妥当)、2.全体主義(三位一体という錯覚)、3.手段主義(終わりよければすべてよし)、が二十世紀を賭けた革命の破綻の構造だそうだ。「憎しみは人間を破綻に導く、最も強力な感情である」と、その通りである。この失敗を繰り返さないために、1.肯定的であること、2.多様であること、3.現在を楽しむ、これを統合したイメージが「胚芽をつくる」ということらしい。データも示され、説得力のある、明るい展望が開ける本であった。

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著者プロフィール

1937年生まれ。社会学者。東京大学名誉教授。著書に『まなざしの地獄』『現代社会の理論』『自我の起原』『社会学入門』など。『定本 見田宗 介著作集』で2012年毎日出版文化賞受賞。東大の見田ゼミは常に見田信奉者で満席だった。

「2017年 『〈わたし〉と〈みんな〉の社会学 THINKING「O」014号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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