異端の時代――正統のかたちを求めて (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317326

感想・レビュー・書評

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  • 2018年初版の本ですが、これは名著ですね。「正統」と「異端」とは何か?について、著者の専門である宗教史・宗教社会学を軸に論じ、それを現代政治に敷衍している内容。後半の宗教史的な部分は(予備知識が薄いため)やや難解でしたが、全体を通して著者の言わんとすることは明確で、言われてみればその通りなのですが、ともすると私自身も持ってしまっている誤ったイメージ(正統と異端に対する)を正してもらった気がします。

  • 正統/異端という宗教的な概念を切り口に、ポピュリズムや御上叩きなどの現代的な問題について示唆を与えてくれる本
    神学や宗教学にこれまで馴染みがなかったので、その雰囲気を垣間見れたところも面白かった

  • 基本的にキリスト教を中心に論を進めるが、「異端たるためには、正統に取って代わるだけの信念、気概が必要」との指摘は鋭い。

    正典、教義は正統から派生するもので、正典から正統は生まれないというのも考えればその通りで、プロテスタントの基盤はむしろ危うい。諸派、原理主義が生まれるのもやむ無しと思える。

    いろいろな点で勉強になった。

  • 160-M
    閲覧新書

  • 3.3

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/711787

  • 正統と異端に関して、カトリックをベースに社会現象も含めた議論は非常に難しかったが、基本的な考え方に関して多くの切り口を備えておくことの重要性を再認識させられた.キリスト教を基に議論が展開されていたが、仏教の話も出てきて著者の目のつけ方の深さを実感した.宗教的な、特にカトリックでいう「正典」「教義」「職制」の議論は正典である聖書の成立過程を追うことで正統との関連性を解き明かしてくれた感じだ.異端がでてくるから正統が確立していくという、やや矛盾した論理は最後に述べられた次の文に集約されるのではなかろうか."日本に真正の異端が生まれ、その中から腹の据わった正統が生まれることを願いつつ、筆を擱く."

  • 異端とは?正統とは?
    考えさせられます。

  • トニ・モリスン「他者の起源」の日本語版序文の解説を読み、著者に興味が湧いたので読んでみた。

    著者のフィールドであるキリスト教史において「正統・異端」がどのように生まれ、機能しているかから始まり、ゆくゆくは現代のアメリカや社会を覆う正統なき異端の時代を、見事に読み解いている。

    「正統・異端」という宗教性を持った構図は宗教(キリスト教やイスラム教)に限定されず広く社会全体の仕組みに根差していると前置きをした上で、私たちが盲目的に信じている正統や権威を成り立たせているのは、キリスト教でいう教会や聖書(正典)にあるのではなく、背景にある信憑性構造(どこでも、いつでも、誰にでも信じられている、かのように思えるもの)であり、おおまかな限定性を持つものだからこそ、対比として明確な異端との対立構造を持っている、というのは非常に興味深かった。

    2020年11月現在、アメリカ大統領選挙では正統たりえないトランプをバイデンが僅差の末に下したが、「反対派に投じた人も含めアメリカの代表となる」と発言したバイデンに対して、アメリカにおける正統とみなされているものはわずかであるが変わりつつあるのだろうか(現在の選挙制度に対しての疑義も投げかけられている)。

    そんな中日本では何故かトランプ待望論が続いているというおかしな状況だが、著者曰く「日本ではあるべき異端は生まれず、全て政治的な問題になってしまっている」と評されている中、待望されている異端は生まれてくるのだろうか。

    抽象的な表現や固有名詞が多数出てくるので容易には読めなかったが、非常に刺激を得れたので、時折読み返したい。

  • 丸山眞男による「L正統」と「O正統」の定義をやんわり否定し、そもそも正統と異端が何であるかを論じている。丸山の定義に説得力を感じていた、自分の浅さを恥じた。

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著者プロフィール

1956年、神奈川県生まれ。国際基督教大学(ICU)学務副学長、同教授(哲学・宗教学)。専攻は神学・宗教学。著書に『アメリカ的理念の身体‐‐寛容と良心・政教分離・信教の自由をめぐる歴史的実験の軌跡』(創文社)、『反知性主義‐‐アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書)、『異端の時代‐‐正統のかたちを求めて』(岩波新書)など。

「2019年 『キリスト教でたどるアメリカ史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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