移民国家アメリカの歴史 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317449

感想・レビュー・書評

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  • 『世界史の考え方』からの流れで読む。よく見聞きする一般的なアメリカ合衆国の通史ではない。アメリカにおけるマイノリティとしてのアジア人を中核にして、アメリカ人になるとはどういうことかを示唆している。

  • 移民国家と言われる米国の歴史を、日系など、アジア系移民の視点から捉えようという試み。新鮮でした。

  • 『移民国家アメリカの歴史』貴堂嘉之、2018年、岩波書店

    f:id:ariel_1226:20201231150558j:plain

    アジア系に焦点を当てたアメリカ移民の歴史。私はアリージャンス見るかわからないけど観劇の予習や復習にもよさそう。その出来事だけでなく、それがどこからどうつながって起こり、どこへ向かっているのかを知ることができる。



    始めに来た中国系移民への差別、日系アメリカ人の第二次世界大戦時の経験、戦後の当事者の沈黙、公民権運動におけるブラックパワーとイエローパワー、「モデル・マイノリティ」というステレオタイプとの葛藤、同時多発テロ後の「愛国者法」への抗議、多様化するアジア系との連帯…



    この歴史を日系アメリカ人の人々が誰のため、何のために語り継いでいるのか、そしてどんな行動を起こしてきたのかを知ることで、自分たちがこの国で何をすべきなのかを考えさせられる本だった。



    本来の目的は試験勉強の参考書にということだったのだけど、アメリカへ渡った移民の歴史が授業でも参照した戯画などの資料付きで解説されていて、良い復習になった。

  • アジア人移民からみたアメリカの歴史

    フレッド・コレマツすごい

  • アメリカという国を「移民」という観点から覗き、建国から近代、現代へと繋がる過程の中で、彼の国は移民をどのように捉え、時には受け入れ、排除し、動員してきたかについて見事に纏めている。

    その中で果たして「移民」とは何であるのか、本当にアメリカは移民の国と言えるのか(伝統の創造)、ということは大きな学びとなった。
    (その他にも多々重要な観点はあるものの、本当に重要な文章が度々出てくるので1-2ページごとにマーカーを引いてしまい、遅々として進まなかった)

    本書は「新書」というジャンルにも関わらず、わずか250ページほどでこれだけ広範囲なテーマを扱い、尚且つ「アメリカにおけるアジア移民」という観点から、社会における差別構造がいかに作用してきたか、また建国前後におけるグローバルな人の移動を扱ったと思いきや、第二次世界大戦下における排日の取り組み、ベトナム戦争化におけるアジア難民についても取り上げるなど、その展開は多岐にわたる。
    また、特に19-20世紀でのアメリカの国勢調査の人種分類表の精緻なデータの紹介など、話のスケールの大きさの中にも随所に正確な調査に基づいた知見が伺えた。

    余談として、この本を読んでいる際、日本における外国人労働者を技能実習生として受け入れた際の劣悪な扱いについて「日本における奴隷制だ」というTweetを見て、ついドキッとしてしまった。
    アフリカからの黒人奴隷をプランテーションの主たる労働力に充てた後、中国人、日本人を同様に建国後のアメリカの産業発展へとあくまでも「自由労働者」として動員した背景と正に重なるイメージが自分の中でオーバーラップした。
    相違点は多々あるものの、過去から学び、現在を見る目として本書を通読したい。
    著者の指摘にもある通り、日本の移民政策は避けて通れず、既に多くの「外国人」は日本社会に根付いているのだから。

    黒人の人種差別について学ぼうと手に取った本の3冊目、恩師の紹介ということもあったが、果たして自分は描かれていることのどれくらいを自分が消化できているのか。
    恐らく何度も読み返すことになると思うが、その度に新しい発見があるのではと、今から楽しみでもある。

  • 資料ID:92181968
    請求記号:334.453||K
    アメリカ移民史。新刊で一般向けで読みやすい。

  • 朝日新聞20181215掲載評者: 森千香子(一橋大学准教授)
    朝日新聞20181229掲載評者: 西崎文子(東京大学教授)
    東京新聞2019310掲載
    日経新聞2021724掲載評者: 西山隆行(成蹊大学教授)

  • アメリカの移民政策における包摂と排除の歴史を知ることができた。特に,中国人移民と日本人移民の歴史を中心に分析されていた。

    あと,移民の流入を防ぐために壁を築くという発想は昔からあったということに驚いた。

  • 序章 「移民国家」アメリカの二つの顔
    第1章 アメリカはいつ「移民国家」となったのか?
    第2章 中国人移民と南北戦争・再建期
    第3章 「国民」を管理する
    第4章 日本人移民と二つの世界大戦
    第5章 アジア系アメリカ人の戦後
    終章 アジア系移民の歴史経験を語り継ぐ

    著者:貴堂嘉之(1966-、東京都、アメリカ史)

  • 2018年11月読了。

    「産業労働力創出のための巨大な包摂装置としての機能」を果たしつつ、他方で「同時に人種・民族・セクシュアリティなどにもとづく独自の「選び捨ての論理」を持って合理的選別を行い、質的・量的規制を着実に実行する排除装置」(223ページ)を担ってきたというのが、「移民国家アメリカ」であるという著者の結論からは、自由の国・アメリカから、その国の構成員たるにはいくつかの超えなければならないハードがあることを思い知らされる。

    以前から思っていたことだか、日系移民の歴史を見るにつけ、当事者達が置かれた過酷な環境に思いを致さざるを得ない。平時における劣悪な労働環境、戦時にあっては祖国である日本と生活の本拠たるアメリカとの間で板挟みになり、アイデンティティの持ちようが複雑化している。

    なお、日本の高度経済成長以降は日本人の新規アメリカ移民は漸減し、2010年には日系人はアジア系移民の7%にまでなったという(204ページ)。このことは、取りも直さず日本人が日本国内で産業労働力として包摂されることで生計を立てることが一般的になったと介されるが、他方で「国内における棄民」という現象(高齢者、児童、性的マイノリティー等、公的サービスが充分に行き渡らない)に目をやると、「どのような政治体制にあっても、政府は一定数を棄民するのではないか」と思えてならない。

    それにつけても199ページで紹介されている、戦後になって日本を訪れたダニエル・イノウエと岸信介との面談のエピソードは、「島国根性」が骨身に染み渡ったしょっぱさをこれでもかというくらいに表していると思う。

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著者プロフィール

1966年、東京生まれ。一橋大学大学院社会学研究科教授。博士(学術)。専門はアメリカ合衆国史、人種・エスニシティ・ジェンダー研究、移民研究。著書に『アメリカ合衆国史② 南北戦争の時代 19世紀』(岩波新書、2019年)、『移民国家アメリカの時代』(岩波新書、2018年)、『アメリカ合衆国と中国人移民――歴史のなかの「移民国家」アメリカ』(名古屋大学出版会、2012年)。共編著に『「ヘイト」の時代のアメリカ史――人種・民族・国籍を考える』(彩流社、2017年)、『「ヘイト」に抗するアメリカ史――マジョリティを問い直す』(彩流社、2022年)など。

「2023年 『大学生がレイシズムに向き合って考えてみた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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