日本の同時代小説 (岩波新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004317463

感想・レビュー・書評

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  •  「1960代 知識人の凋落」から「2010年代 ディストピアを超えて」のように10年ごとに、当時の社会状況の中で小説がどう変ってきたかという目線で数々の小説を紹介する。
     登場する400人以上の作家の小説には大家の名作や人気作家のベストセラー作品も多く含まれるが、媚びずに容赦がない斎藤美奈子の評論は相変わらず切れ味が抜群。
     新たな視点を知り再読したくなったり、これは読みたいと思わされる小説があまりに多すぎて困った。

    #日本の同時代小説 #斎藤美奈子 #岩波新書 #読書 #読書記録 #読書記録2023

  • 最近読んでる韓国文学で多数翻訳を手掛けておられる斎藤真理子さんのお姉様ということで、初めて斎藤美奈子さんの著書を手に取った。

    読んですぐ「こんな日本文学史解説を読みたかった!」、冴え渡る分析に感銘を受けた。
    近代の文豪を「ヤワなインテリ」「ヘタレな知識人」とバッサリ断言されていることに驚き。
    と同時に、長年抱えていた自分の文学コンプレックス(名作古典とされる文豪作品群を読もうにも読み進められない)が、そもそも中央のヤワなインテリ男性の悶々とした内面に興味が無いうえ共感できなかっただけなんだ…と腑に落ちてスッキリ。コンプレックスが解消された気分に。

    文学の潮流背景の説明や作品系譜の着眼点は、今まで目にしたことのないものだったが、どの解説よりも個人的に納得できた。

    文学史の本ではあるが、自分の読書嗜好を整理し、「なぜこの傾向の本が好み(苦手)なのか」を言語化するのに役立った一冊。


  • 1960年代〜2010年代までの小説を
    時代背景ととも分析。
    近代日本文学(〜1950年代)は「ヤワなインテリ」がいつまでも悩んでいるヘタレども。
    60年代 大学進学率上昇に伴う 知識人の凋落
    70年代 公害問題等による 記録文学の時代
    80年代 バブル経済 遊園地化する純文学
    90年代 バブル崩壊後 女性作家の台頭
    00年代 9.11.リーマンショック 戦争と格差社会
    10年代 3.11以降  絶望的ディストピア
    芥川賞受賞した芸人さんのあの作品も往年の私小説に近い自虐的なタワケ自慢と貧乏自慢と一刀両断。
    市場縮小も著しく、新しい表現による小説は
    なかなか厳しい時代のようです。

  • 日本の近現代文学の案内。

  • 1960年代から2010年代までの日本の小説(純文学中心だが、昔で言う「中間小説」的なエンタメにも目配り)を、作品中心に鳥瞰した「同時代文学史」の試み。

    新書一冊のボリュームで、半世紀にわたる日本文学史を振り返るのだから、当然駆け足になる。
    個々の作品に対する言及が少ない分、斎藤美奈子のいつもの「文の芸」はあまり発揮されていない。

    それでも、前半は随所に卓見やニヤリとさせるツッコミがあり、楽しめた。

    ただ、後半になると、もう著者の息が上がってしまった感じで、たんなる作品の羅列になっている。

    とくに最後の6章は、ここだけが別の本になっているようなちぐはぐな印象。出来の悪い「震災文学論」に終わっているのだ。

    とはいえ、大変な労作ではあるし、過去半世紀の日本文学史を概観するための資料としては十分使える本だ。

  • 期待どおり面白い。
    データでいいので取り上げられている作品の一覧がほしい。

  • 秋の新刊ですぐ買ったのに積読のまま年を越してしまい、新年の読書はじめの一冊に。
    年末の読書欄近況によるとこの書き下ろしのために一年かかりきりだったという渾身の同時代文学史。作品の本質や値打ちを見抜く目は当代随一かつおもしろく読ませる筆力も天下一品の著者だけに、よく整理されており読みやすく、1960年代からの50年の小説作品を通してその時代の空気を知り、また時代ごとの社会状況から文学を知ることができる。
    この本をとっかかりに読んでみようと思える作品がぞろぞろ出てきてしまう危険な読書案内ともいえる。

  • ざっと1冊の本でまとめてくださったのがうれしい。
    もっと細かく書かれたものも読みたい。

    大好きな斎藤美奈子さんの本だが、この頃新刊キャッチ力が衰え、上野千鶴子さんが褒めておられて、え、そんな本出たんだと知った。

  •  1960年代以降の日本小説史を10年ごとに区切って紹介する。前書きにあるように明治以来の小説の歴史は中村光夫が纏めており、その続編を意識したらしい。あまりにも多くの作家が登場し、その代表作の訴えるもの、世に与えたインパクトを列挙していくが、著者の整理力には感服する。10年ごとの集約は圧巻である。60年代は知識人の凋落、70年代は記録文学の時代、80年代は遊園地化する純文学、90年代は女性作家の台頭、2000年代は戦争と格差社会、10年代はディストピア社会を超えて。考えてみればヤワなインテリが主人公の小説は60年代までは主役だったことを忘れていたほど、思えば遠くへ来たもんだの心境である!巻末には349名の登場する作家名が並ぶ。時代を反映した小説の数々は未読のものが当然ながら未だ多い。ぜひチャレンジしたい。

  • 中村光夫「日本の近代小説」「日本の現代小説」は若い頃,人に紹介されて読んだ.その後継を目指して書かれた本書.著者は56年生まれ.同時代小説は1960年台から始まる.(わたしの同時代小説は1970年代から.ブクログでもカテゴリ分けしてる.)
    目次を見るだけで内容がわかるような感じ.
    1. 1960年代 知識人の凋落
    2. 1970年代 記録文学の時代
    3. 1980年代 遊園地化する純文学
    4. 1990年代 女性作家の台頭
    5. 2000年代 戦争と格差社会
    6. 2010年代 ディストピアを超えて

    たくさんの作家と小説を紹介しているのでいささか急足だが,小説の視点からうまく時代の空気を掬い上げている.
    私が現役で読んだ小説が出てくる 1980年代から,現代小説に興味をなくす1990年代前半までの記述が懐かしい.今思えば空虚ではあるが,幸せな気分もあった.
    少なくとも小説家からみて2000年以降の日本社会はそうとうひどい.(まあ現実にも気分が悪いことは多い.)しかし著者も言う通り,「厳しい時代に,厳しい小説なんて誰も読みたくない」(p.259) . そう考えると文芸評論家でもない私が2000年以降の小説を読む無理して読む義務もないわけだ.

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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