平成の終焉 退位と天皇・皇后 (岩波新書 1763)

  • 岩波書店 (2019年3月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (262ページ) / ISBN・EAN: 9784004317630

作品紹介・あらすじ

平成とは天皇制の新たなスタイルが確立された時代だった。日本中をくまなく訪ね歩き、自らの思いを国民に直接語りかけてきた天皇明仁と皇后美智子。二人が生み出した「平成流」は退位後も受け継がれていくのか。皇太子(妃)時代からの足跡を丹念にたどり、「象徴」と国民との奇妙な政治的関係性を問い直す。

みんなの感想まとめ

天皇制の新たなスタイルを確立した平成の天皇皇后の歩みを追い、その歴史的意義や今後の展望を探る作品です。明仁上皇と美智子上皇后は、国民との距離を縮める姿勢を貫き、特に被災地への訪問などで多くの人々に寄り...

感想・レビュー・書評

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  • 平成の天皇皇后両陛下は、全国津々浦々を巡り、マイホーム主義を体現し、被災地では自ら膝をついて被災者を労われた。
    この「国民と目線を合わせる」姿勢は、右派からは反発を買った。
    しかし、結果として国民の皇室への敬意は高まった。その過程で美智子妃が果たした役割はおそろしく大きい。
    一方で、国民がより天皇制にロックオンされたとも言える。

    令和の両陛下は、平成の陛下の「仁や慈悲」よりは、「自然、環境」がキーワードに見える。全国の行幸よりも登山を愛される。

    また、天皇の常に一歩後ろを歩く「日本の女性の鏡」として絶大な人気を誇った美智子妃との対比で、雅子妃は天皇陛下とごく自然に並んで歩かれる。また心身の不調もお隠しにならない。それはむしろ、現代の女性からは歓迎されるイメージかもしれない。

    平成から令和に向けて天皇のあり方はどう変わるのか。リベラルに愛される存在か、それとも国防的ナショナリズム?に利用される存在に至るのか。

    、、、と言った考察が、やや私の雑な要約によるざっくり本書の後半。

    一方、前半の「おことば」考察は、率直に言って私としてはなかなか理解はしても同意は難しい内容だった。いろいろあるが、一言で言って、この「なになにに触れられていない」の類の批判は、時間と字数の制限がある声明においてはあまり意味のないことに思えるからだ。

    ともあれ、右派による「時代錯誤な神聖視」を拒絶しているのはむしろ平成、令和の両陛下ご自身である、とのスタンスは例えば片山杜秀氏などともある意味共通するように見える。
    同時に、平成の陛下の宮中祭祀を通じた国体護持への確固たる意思が、令和にも受け継がれるか、といった点は著者ならではの関心事と言えそうだ。

    いろいろ意見はありつつも、「総じて」これだけ国民の尊崇を集める天皇陛下という存在は一体我々の国にとってなんなのかということについて、私自身は尽きせぬ興味を持っており、その意味では参考文献の一つとして読むべき一冊であった。

  • 【「おことば」は日本国憲法で主権者と定められている国民が、同じく憲法で象徴と定められている天皇の務めについて、いかに議論してこなかったかをかえって浮き彫りにしました】(文中より引用)

    父である昭和天皇の時代とは異なるスタイルで、平成の皇室と天皇のあり方を形作った明仁上皇と美智子上皇后。その二人の歩みを丹念に追いながら、平成皇室の意味合いと今後の展望について詳説した作品です。著者は、『昭和天皇』、『大正天皇』といった作品を世に送り出してきた原武史。

    「旅」ということを一つの主軸にしながら、お二人の歩みとその歴史的意味を記しているのですが、これまで知らなかった事実が数々明らかにされており大変勉強になりました。著者自身による推測にとどまる側面があることは確かなのですが、今後あり得る議論の一助になる好著かと。

    amazonでは低評価も目立ちましたが☆5つ

  • 2019年4月30日、明仁が退位した。続く即位関連行事は、いわゆる「新元号フィーバー」とも言うべき熱気に包まれ、日本中がお祭り騒ぎの様相を呈したことは記憶に新しい。

    しかし、その渦中で私の胸に浮かんだのは、どこか醒めた思いだった。
    ――この人の人生は、結局のところ父親の“後始末”だったのではないか。

    太平洋戦争における責任が昭和天皇にあることは、議論の余地があるにせよ、少なくとも完全に免責されるものではないだろう。にもかかわらず、その責任は曖昧なまま処理された。そこには、占領政策を進めるダグラス・マッカーサーの政治的判断が大きく影響していた。

    さらに、天皇制維持のために沖縄の扱いを巡る発言があったとされる史料などを踏まえれば、戦後の皇室が背負うことになった歴史的な重みは、決して軽いものではない。

    そうした経緯を、明仁自身がどのように受け止めていたのか。おそらく彼は、「象徴天皇」としての在り方を模索し続けたのだろう。天皇制を維持しながら、なおかつ国民から遊離しない存在であるために。

    本書は、その試行錯誤の過程をたどり、「憲法が定める象徴天皇とは何か」を具体的なかたちで提示している。

    そこで示される定義は明快だ。
    一つは「国民の安寧と幸せを祈ること」。
    もう一つは「人々の傍らに立ち、声に耳を傾け、思いに寄り添うこと」である。

    前者については、特に異論はない。祈るという行為は誰にでも許されているし、宗教的祭祀を担う存在としての天皇にとって、それはむしろ本分とも言えるだろう。

    問題は後者である。

    戦地慰霊や災害見舞いといった「寄り添い」の行為は、多くの人にとっては象徴天皇の重要な役割として肯定的に受け止められてきた。一方で、それを“過剰な演出”や“制度的な善意の押しつけ”と感じる視点も、確かに存在する。

    公的行為である以上、そこには税金が使われる。誰かにとっては励ましであっても、別の誰かにとっては距離を置きたい関わりであるかもしれない。

    結局のところ、「象徴」とは何か、どこまでが望まれる関与なのか――その答えは一枚岩ではない。

    本書が提示しているのは、完成された理想像というよりも、「象徴天皇」という制度がいかに繊細なバランスの上に成り立っているか、という事実そのものなのかもしれない。

  • いまの上皇・上皇妃の皇太子時代からの言動をもとに、天皇・皇后のあり方を考察した本。原武史さんらしい視点も織り交ぜてつつ、地方紙も含めて資料を細かく調べながら全体図を描いてくれます。

    昭和天皇と異なり、膝をついて国民と接するスタイルとそれに対する反発、美智子妃の一歩後ろを歩くスタイルとその美しさに感動する市井の人々、リベラル・保守の両面が内包されたなかで、漸進的な改革を進めてこられた姿がわかります。その半面で当時の天皇の思いを受けた対策を長らく放置してきた政治とのコントラストも浮かび上がり、それらがすべて詰まったのが、退位であったと理解しました。

    令和の天皇は山登りが趣味で、皇后は元外務省のキャリアです。当然、令和のスタイルも確立されるのでしょう。それは環境により配慮した資本主義の行き過ぎを見直す、同時に女性の活躍は当然のことという、日本の国柄の変化の方向性を示唆するものであるように感じます。

    最後に出てくる、原武史さんと宮内庁のやりとりには、学者としての矜持を感じさらに他の著作も読んでみたいと感じた次第です。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/721032

  • 敗戦を跨いだ昭和天皇から引継ぎ、新憲法の元で初めて即位した天皇明仁。即位前の昭和期から、皇后美智子と共にした全国への行幸啓から始まる。その振る舞いの細部に、新憲法下での国民一人一人との「国体」の創出の取り組みを見出す本書。「平成」の天皇は如何にして自らを規定してきたか。現代日本を考えるための必読書。

  • ふむ

  • 様々な抵抗を受けながら、「平成流」を貫いた天皇明仁と美智子皇后の歩みを振り返る。
    皇太子時代に、学生と憲法問題で突っ込んだ議論をした経験があったとは・・・
    行幸啓の多さが人々との触れ合いの多さとなり、「平成流」の基となった。なるほど。
    さてポスト平成はどのような皇室になるのであろうか。

  • 近現代史の泰斗である作者による天皇制論。
    現上皇陛下が昭和に変わる天皇像を提示し、国民広範からの支持を得た。

    しかし、退位発言が政治権力を超越する恐れ(日本国憲法に抵触する可能性アリ)やナショナリズムの高揚するための手段として用いられた可能性もある。

    なかなか興味深かった。

  • 平成の天皇(現上皇)と皇后(現上皇后)のあり様と、現天皇・皇后のあり様を比較して平成とその後の時代(令和)を考察。日本国憲法下で自ら退位を希望した現上皇の皇太子以降の行動から見る象徴としての天皇のあり方。ある意味決まりはないのかもしれない。天皇としてどうあるべきか、歴史とこれからを踏まえての退位への「おことば」だったのだろう。新しい令和の天皇像は、新しい天皇が皇后とともに考え築いていくしかないのだ。

  •  天皇としてのアキヒトは、自らが「象徴としての務め」を果たすことが難しくなったから退位したい、と述べた。ならば、彼の言う「象徴としての務め」とはいかなるものだったのか? を、皇太子時代から長いスパンで追いかけた一冊。
     
     本書が指摘するポイントは3つ。①アキヒトは、皇太子時代からミチコのリードで福祉関連施設等への訪問を積み重ねる中で、クリスチャンでもあったミチコが実践してきた、膝をつき、目線を低くした「対話」という交流を積み重ねてきた。それは、「対話」それ自体に困難を抱えていた昭和天皇ヒロヒトとの差異を強く意識させるものだった。即位後の「祈りの旅」でのスタイルは、こうした皇太子時代からの経験を踏まえたものだった。 ②アキヒトは在位30年間を通じて一貫して皇室祭祀に熱心に取り組んできたほか、日本国内をくまなくまわり、全都道府県を各2回ずつ視察している(御所には巨大な日本地図が掛けられており、訪問した市町村にはピンが付けられているという)。つまりアキヒトは、「象徴としての務め」を積極的に解釈し、自ら拡大させてきた。そうした作業を通じて、国民ひとりひとりと天皇・皇后とが結びつく内面化された「国体」を作り上げてきた(その結果、「天皇制廃絶」という声は著しく小さくなった)。③ナルヒトは、海や島、人びととの「対話」にこだわった父とは違い、「山」に好んで登っている。これは役割分担とも言えるし、ミチコとマサコのキャラクターの差異とも言える。だが、「言葉の人」でもあったミチコがアキヒトと作り上げてきた平成的な「国体」の継続は、ナルヒト=マサコの組み合わせでは困難で、むしろフミヒト=キコ夫妻の方が両親の活動を受け継ごうとしている気味合いがある。

     一読して、やはり「物事には信頼できる専門家が必要だ」という感を強くする。著者の『可視化された帝国』は刊行後すぐに読んだが、その時の印象では、先行する多木浩二『天皇の肖像』、タカシ・フジタニ『天皇のページェント』に比べて、それほどのインパクトは感じなかった。しかし、以後ずっと一つのテーマを追い続けたことが、今回の著者の「活躍」につながっている。学者のあり方として、いろいろなことを考えさせられる。

      

  • 平成天皇が象徴天皇の役割として述べた2点「国民の安寧と幸せのために祈ること」「時として人々の傍らに立ち、耳を傾け、思いに寄り添うこと」。さらっと聞き流してしまいそうな点に大きな意味があることを初めて気づかされた。「祈り」とは宮中祭祀つまり天照大神に対するもの!そしていわゆる行幸。これらはいずれも憲法が天皇の国事行為として定めているものとは異なる!改めて天皇という存在の宗教的・歴史的な意味を考え直さざるをえなかった。美智子皇后が平成天皇の上回る影響力の大きさであったことへの右派勢力の抵抗、雅子皇后がむしろそれを糺すかもしれないとの逆転的予測も面白い。平成天皇の生真面目さが逆にユーモア・笑いを感じさせない重い天皇になっていたこと、大正天皇が最も人間らしい親しみに満ちた存在だった!などと興味深い。しかし、平成天皇夫妻が会わなかった人々。外国人、ホームレス(上野公園)の排除は衝撃的な出来事だ。令和天皇が平成の後をどのように継いでいくのか。そしてその後の秋篠宮の時代は!?興味は尽きない。

  • 原武史さんの本を読むのは『皇后考』に続き2冊目。
    私自身は皇太子と秋篠宮の間の年頃で今上天皇のことは長らく「皇太子」として認識していた世代。
    振り返ってみれば、天皇制のことについてなど深く考えたことはなかったな…と気付く。
    世間は明日で「平成最後の日」と、やたら感傷ムードだけど
    あんまり度が過ぎていてなんだか怖い。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1763/K

  • 19/04/12。
    4/30読了。宮内庁が著者を名指しで批判したことがあったそうな。

  • 288.4||Ha

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著者プロフィール

1962年生まれ。早稻田大学政治経済学部卒業,東京大学大学院博士課程中退。放送大学教授,明治学院大学名誉教授。専攻は日本政治思想史。98年『「民都」大阪対「帝都」東京──思想としての関西私鉄』(講談社選書メチエ)でサントリー学芸賞、2001年『大正天皇』(朝日選書)で毎日出版文化賞、08年『滝山コミューン一九七四』(講談社)で講談社ノンフィクション賞、『昭和天皇』(岩波新書)で司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『皇后考』(講談社学術文庫)、『平成の終焉』(岩波新書)などがある。

「2023年 『地形の思想史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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