平成時代 (岩波新書)

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  • 岩波書店 (2019年5月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (284ページ) / ISBN・EAN: 9784004317777

作品紹介・あらすじ

平成の三〇年は「壮大な失敗」だった.「失敗」を全分野で総括することからしか展望は描けない.経済,政治,社会,文化で果たして何がおきたのか.社会学者吉見俊哉が「ポスト戦後社会」の先の空虚な現実を総括する.

みんなの感想まとめ

平成の30年間は、経済、政治、社会、文化の各分野での「壮大な失敗」として位置づけられています。著者は、グローバル社会やネット社会に取り残された日本企業の苦境、政権交代の不安定さ、格差の拡大、さらには大...

感想・レビュー・書評

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  • 平成時代(吉見俊哉/岩波新書)

    回顧録ではなくグローバル化とネット社会化という変容の中で、失敗としての平成を分析。人口縮減、経済停滞、社会の分断、政治の空回り。世界を俯瞰しながら著者はこの困難は70年代からの結果とし、ご破産には決してならないと断言。令和への指針ともなる良書と思います。

    以下、詳細な内容です。

    著者は本書を「失敗の時代」の検証書と位置づけ、「失敗」と「ショック」の視点から平成を読み解きます。平成という元号に時代性を認めつつ、それが単に天皇の在位による区分ではなく、冷戦終結からグローバル化・ネット社会化へと揺れる世界史的転換期と重なることに意味を見出しています。

    1. 経済:企業国家の没落
    バブル景気の過熱と崩壊――金融政策の誤りがバブルを生み、それが崩壊した後、日本企業は未来を見誤り、失敗を繰り返すことになりました。銀行の破綻や家電産業の凋落が象徴的事例です 。

    2. 政治:改革の幻想とポピュリズム
    「改革」を掲げた政治の試みは、日本新党の台頭、小選挙区制導入、小泉構造改革に見られるような改革への期待を招いたものの、根本的な制度変革には至らず、ポピュリズムや政治主導に依存する状況が続きました。民主党政権の失敗や官邸主導政治の台頭などがその典型です 。


    3. 社会:ショックと構造の裂け目
    本書では、平成を象徴する「四つのショック」を節目に、社会構造の変容を描きます。

    * バブル崩壊(1989年)
    * 阪神淡路大震災とオウム事件(1995年)
    * アメリカ同時多発テロ(2001年)
    * 東日本大震災と福島原発事故(2011年)


    これらは外的・内的な衝撃として、日本社会を根底から揺さぶり、「連続と非連続が絡み合う」時代を生みだしました 。また、平成期における代表的な自然災害が、日本の安全神話を崩し、「災後」という新たな時代区分を提示しました  。

    さらに、震災や事件だけでなく、少子高齢化・格差拡大・人口減少といった社会の内発的要因もショックとして位置づけられ、社会構造そのものが変容していく様を論じています  。

    「不均等な衰退」―地方の衰退と、東京への一極集中が続きながらも、社会全体が停滞していく未来図が描かれているのも印象的です  。

    ⒋ 文化:ネット社会の到来

    環境化と自閉化:インターネットが多様なコミュニケーションの場から、同質性と排除が強まる閉鎖的空間へと逆転し、社会構造に影響を与えていることが指摘されています  。

    ⒌なぜ日本だけ「失敗」したのか?

    日本が「平成の失敗」として経験した現象(経済の停滞、社会の分断、情報化への戸惑いなど)は、他の先進国ではすでにグローバル化・ネット社会到来の前段階で経験していたと著者は認識しています。

    理由は

    1. 日本の高度成長モデルが特殊で、崩壊も遅れた

    * 戦後日本は「輸出主導・終身雇用・年功序列・系列企業」という独特な産業構造と社会制度で急成長。
    * そのため80年代末まで「アメリカ型資本主義の副作用」(格差拡大、産業空洞化、労働の流動化)をほとんど経験せずに済んだ。
    * 他国が70〜80年代にすでに直面していた産業再編や社会保障危機を、日本はバブル期まで回避できた。


    2. グローバル化とIT化の波が一気に来た

    * 他国は70年代から段階的にグローバル化と情報化を進め、経済・制度を順応させていた。
    * 日本は90年代初頭のバブル崩壊と同時に、この二つの波が急に押し寄せた。
    * つまり「順応期間がなく、一度に二重の衝撃を受けた」ため、政策も社会も対応が遅れた。


    3. 社会・文化面でも変化がワンテンポ遅れた

    * 他国ではすでに「大衆社会の終わり」「個人化・多様化」が進み、政治や文化の構造が変わっていた。
    * 日本は昭和末期まで「均質で中流意識の強い社会」が続き、消費文化も画一的だった。
    * 平成に入って急に格差や人口減少、デジタル情報社会の現実に直面し、変化を受け入れる準備が整っていなかった。

    このため吉見は、平成の日本を「他国が先に通過した変化を、遅れてかつ急激に経験した社会」と位置づけています。
    結果、日本は「ゆっくり適応する猶予」を持てず、制度改革や社会意識の更新が後手に回ったと分析しています。


    結論:失敗から学ぶ力として

    著者が描くのは、単なるネガティブな「失敗の博物館」ではなく、そこから教訓を学び取る思考の装置です。平成に起きた失敗やショックを直視し、それを未来へ繋ぐ思索こそが、令和以降を「失われた半世紀」にはしないための基盤であると強調します 。





  • 日本の平成30年は失敗の歴史だった。のっけから強烈なメッセージを発する著者。そして、その失敗の具体例があげられる。

    グローバル社会、ネット社会に乗り遅れた日本企業たち。特に金融や家電業界では縮小、倒産が連鎖した。政治の世界では政権交代を繰り返しつつも、結局は与党一極集中と極端なポピュリズムだけが生き残った。さらに大企業と正社員に富が集中し、拡大する格差社会とそれに伴う少子化。そして、2つの大震災。

    こうしてながめてみると、たしかに平成はろくでもない時代だった。が、それなら平成後のネクスト安倍政権や東京オリンピック、消費増税などに希望があるのかと問われると、心もとない。

    批判的な眼で見れば、どんな時代だって、失敗は目立つという楽観的な考えもあるだろう。「あの頃はよかった」と繰り返し発するより、大事なのはこの失敗を次の成功につなげることだと、著者は平成時代を総括する。

  • 平成の30年を「壮大な失敗の歴史」と捉え、経済、政治、災害、文化、オリンピック、基地問題、人口問題等を取り上げ論じる。希望のかけらもない、ただ失敗の渦巻く時代であったと位置付けている。果たして本当にそうなのか?確かに、ポジティブな要素を見つけようにも、見つけられない・・。私たちはこれらの壮大な失敗から何かを学んで、未来に活かすことができるのだろうか。その展望について知りたくなる。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/724397

  • 平成の30年間、日本は坂道を転落した
    1.現在の日本の低迷 GDPのシェアは18%→6%へ(1/3へ)
     世界的視野で捉える
    2.日本の失敗の本質 トータルの総括が出来ていない
     =国債累増により先送り
     高度成長期の体制・制度の改廃が不可欠
     ①グローバル化 内向き・鎖国
     ②デジタル化 ファックス
     ③バブル崩壊
     ④人口減少・高齢化
     ⑤財政逼迫

  • 平成の30年をひとくくりにすると「失敗の時代」という著者の結論は否定できないだけに、笑えない結果である。企業経営、国民経済、そして政治的にも。4つの失敗が➀バブル崩壊、②阪神大震災、③2001年のNYテロ事件、④東日本大震災と福島原発事故がこの時代「日本が壊れていく時代」を象徴する言葉であることは間違いない。そして社会的にも幼女連続殺人の宮崎勤、オウム真理教、酒鬼薔薇聖斗事件なども失敗の時代を増幅するような出来事として書かれており、失敗の一環とのがりを感じざるを得ない。なお企業経営の失敗の中で、山一證券、東芝、シャープなどの事例にはあまりにも衝撃的だった。アルゴリズムによるフィルターバブルの時代がますます断絶の時代を深めていることは救いのない暗澹たる気持ちにさせられた。

  • 問題を先送りにして、適当な対策も失敗し、その失敗を学ぶことなくまた失敗を繰り返す。いまのわたしたちは、失敗を繰り返さないようにその失敗に向き合うということが今までに成功した大きな例がないために、失敗を繰り返す失敗をまた選んでしまっている。どうせ良くならない、と言って失敗を見つめるより無邪気に他のことで楽しいことをする。それこそが平成の残した最悪の失敗のように思う。

  • 平成時代を振り返る時代論みたいな作品。
    筆者の問題提起はとても重要だと思う。つまり、失敗に対して真摯な態度で非難、分析したうえで今後に生かしていくというものであり、平成時代を世界情勢・社会変動への対応に失敗した時代として振り返るのは大事。

    ただ、分析内容は実証分析に耐えるものでもないし、ちまたの言説の域を出ないと思う。

  • 「平成」という時代は“失敗の連続”であり、1997年の山一証券自主廃業、2011年の福島第一原発事故が発生する中、アイデンティティの虚構化が進むなど、失敗の範囲は個人の領域にまで拡がりました。本書では、このような平成の失敗を総括することによって、新たな展望を描くことを目指します。
    (社会・人間科学コース M2)

  • まず1章で、世界の財界のことも、日本の財界のことも、私があまりに無知であることに呆れた。特に製造業のことが。
    政治や社会、文化についての章は、知識としては知っていても、それが何を意味するのか、という記述は私を内省へと導く。

    失敗からしか学べない。
    危機からしか変われない。
    著者の姿勢は、読む者を暗澹たる気持ちにさせるが、ここから強靱な思索が営めるかどうかが今、問われている。

  • 平成ってこんなに暗かったかなぁ?

  • はじめに 「平成」という失敗―「失われた三〇年」とは何か
    第1章 没落する企業国家―銀行の失敗 家電の失敗
    第2章 ポスト戦後政治の幻滅―「改革」というポピュリズム
    第3章 ショックのなかで変容する日本―社会の連続と非連続
    第4章 虚構化するアイデンティティ―「アメリカニッポン」のゆくえ
    おわりに 世界史のなかの「平成時代」―失われる半世紀への序曲

    著者:吉見俊哉(1957-、東京都、社会学)

  • 非常によくまとまっていて読みやすい、やはり平成は失敗の時代であった

  • 平成本の中でも、厳しめの平成評。

  • 【一九八九年から二〇一九年までの「平成」の三〇年間は、一言でいえば「失敗の時代」だった】(文中より引用)

    タイトルずばり,平成とはいかなる時代だったのかを詳述した作品。特にその時代の「失敗」に焦点を当て,ポスト平成に求められるものとは何かにつき検討を重ねていきます。著者は,『トランプのアメリカに住む』等の著作で知られる吉見俊哉。

    かなり厳しい平成評であるため,著者があとがきで記しているように読んでいてかなり気分が重くなりました。しかしその厳しさ故に勉強となる教訓についても多く触れられており,平成以後を考える上で大変参考になる一冊だと思います。

    平成本は数多く発売されていますが☆5つ

  • 平成という一区切りの中で構造的に発生した失敗を俯瞰する試み。

  • 210.77||Yo

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1777/K

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著者プロフィール

吉見 俊哉(よしみ・しゅんや):1957年生まれ。東京大学大学院情報学環教授。同大学副学長、大学総合教育研究センター長などを歴任。社会学、都市論、メディア論などを主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。著書に『都市のドラマトゥルギー』(河出文庫)、『大学とは何か』(岩波新書)、『知的創造の条件』(筑摩選書)、『五輪と戦後』(河出書房新社)、『東京裏返し』(集英社新書)、『東京復興ならず』(中公新書)ほか多数。

「2023年 『敗者としての東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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