生きるための図書館: 一人ひとりのために (岩波新書 新赤版 1783)
- 岩波書店 (2019年6月21日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004317838
作品紹介・あらすじ
子どもにも,大人にも図書館は多様な場であり,図書館員は本の魅力を伝える.各地での新しい動き,学校図書館の試み等とともに未来への可能性を,六〇年以上図書館に携わり九〇歳を超えた今も発言を続ける著者が語る.
感想・レビュー・書評
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再読。
卒寿を過ぎた著者が優しい語り口で語る図書館の役割と課題。
公立図書館設立の歴史なども紹介し、未来に向けて何が必要かを考える。
図書館とは何のためにあるのか。
専門知識のない人にも分かるように、非常に分かりやすく教えてくれる。
言われてみればなるほどの、頷くことだらけの内容だ。
第一章:地域の図書館を訪ねて
第二章:子どもたちに本を
第三章:新しい図書館像を創る
『コラム:図書館をめぐる、さまざまな団体』
第四章:災害から学んだこと
『コラム:図書館学の五法則』
第五章:一人ひとり、みんなのために
第六章:人と本とをつなぐ仕事
それぞれの章の最後に課題点を掲げ、次の章でそれを考えるという大変流れの良い構成。
石井桃子さんの「子どもの図書館」の出版が1966年。
1950年初めて「図書館法」が制定され、戦前の「国家のための図書館」から「国民のための図書館」に180度方向転換して15年以上経ったときの話だ。
大変な話題をよんだ本だったというが、公費で本を買い、みんなで分け合うという発想そのものが定着しなかったという。
そんな風潮の中で熱意をもって取り組んできたひとたちの紹介がいくつもあり脱帽である。
その先駆者的存在が石井桃子さんだ。
行政の役割を問われそうだが、子どもたちが本を自由に手にする環境をつくり、子どもと本とを結びつける人を育てることに力を尽くしてほしいという。
単なるハコモノではない。価値を知ってほしいという強い願いがある。
読書とは、効果を数値化できるものではないからだ。
というのは、行政的な「割り切り」により資料や人的資源への投入費用が削減され続けているという実態があるから。
目に見える効果を測定できないのは「ムダ」と切り捨てる現代社会を見るようでもある。
本とは、それを人と結びつける仕事をする人を必要とするもの。
良き水先案内人を得てひとは良書にめぐり会う。
そこで得た情報や知識を活用し、自立して生きる方向にすすむ。
そのひとたちの努力で、地域も自治体も活力を生んでいく。
そういう長い時間のかかる仕事を育てるのが、国や自治体の役割なのだ。
もうひとつ。子どもに本を読めという前に、まずは大人が読むこと。図書館イコール文学ではないこともね。
災害時にあって、自らも被災しながら一日も早い図書館サービス再会をと尽力した話も。
図書館員たちの高い職業意識と、ボランティアの力に支えられてのことだ。
「シリアの秘密図書館」や「戦地の図書館」でも明らかにされたことがある。
非常時にあってこそ、ひとは潤いや知性を求めるものだ。
一人ひとり、そしてみんなが生きるための図書館。
私たちは[図書館は成長する有機体である]ことを理解し、良い読者であり続けたい。
失ってから気がつくなどということがないように。
図書館の存在意義を知るのに格好の一冊。本好きの皆さんにお勧めです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
映画「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を見て、「未来をつくる図書館」でそのNYPLを更に知り、そこから、では日本は?と思い手に取った。
著者は日本の学校図書館の運営にも深く関わった著者が公立図書館の設立と振興の歴史、それを支援した人々、活動などを紹介している。
NYPLの活動が日本人にとって図書館というイメージの枠を外れて飛び出している感が強いのに対し、日本の図書館の活動は確かに地味に見えるが、NYPLと同様に地域に寄り添い、その助けとなる図書館を目指してきたことが同じであることはわかった。
こちらも改めて、日本の図書館も色々取り組みをしているのだなという発見と驚きだった。
ただ、子どもと読書の結びつきに重きが置かれているので、子どもと大人も含めた市民一般に対して支援する取り組みについてももっと語って欲しかった。 -
読書離れが進んでいると耳にするが、このようなタイトルの本が認知して広まると良いな、と思った一方、文章が真面目で堅すぎるため、途中で読むの辞めちゃう人もいるのでは?
全部の章、箇所がガチガチに説明されてるため、良いことがたくさん書かれても、ポイントがどこかが読みとりづらい。
新書は心に響く箇所がどこかのページにはあると読んでいたが、タイトルと内容から響く箇所があまりなかった。
面白くない。 -
図書館にはお世話になっている。
学生のころ毎日のように通って本を読みまくったのはいい思い出だ。
図書館法や今の図書館の課題について書かれているが、気になったのは、最近話題によく上がる司書の勤務形態が異常に不安定であることについてはあまりページがさかれていない。あと業務委託についても。
結局は働く人の環境のような気もするのだが、そこのあたりをどう考えているんだろう。もう運営側ではないからこうならざるを得ないのかな。
誰向けの本なんだろう。これ。 -
自分の知らない世界の宝探しをしているみたいで昔から図書館が好きだった。
それと同じ感覚を持ったのはインターネットを始めた時。
「図書館が家の中に出来た!」と狂喜乱舞しました。
インターネットの世界は便利だけど図書館通いは今でもやっぱり続けている。
「検索する」という点においてはネットに勝るものはないですが「本との出会いを楽しむ」という点では図書館の方が圧倒的に面白い。
ネット社会の広がりだけでなく活字離れと言われる現在多くの書店がつぶれていっています。
ノー図書館 ノーライフ
図書館がんばれ! -
私自身は司書さんにお世話になったことはなく、よくわからないなと思いました。が、レポートを提出するのに、この本を読めとアドバイスしてくれるなら、ぜひ居て欲しい。
子供の本も多すぎて何を読めばいいかわからなかった。これも司書さんを活用したらよかったのかしら。
でも言葉の発達を促す本とか、賢くなる本、読解力がつく本って言ったら教えてくれたのかな。
あと、筆者の嫌いなTSUTAYA図書館は結構いいです。やっぱり利用しやすいって大事。 -
図書館は人と本を繋ぐ……その「手助け」が司書。この考えが広まればいいと思った。本はいいぞ。
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図書館の歴史等が著者の視点をもって書かれている。
ざっと把握するには良いと思った。
子どもや教育、つまり学校的な見解は色々書かれているが、社会人一般という兼ね合いは相対的にあまり書かれてない印象。あえていえば、司書がどう働きかけるか、図書館がどうとなるが、おそらく行政サービス=税金投入があるため、なかなかそこは見出しづらいのだろうとも思う。
期待値は社会と図書館の兼ね合いだったので、そこを期待しすぎると厳しいかも。
とはいえ、著者はもっとやれることや図書館の可能性を産まんとしているはずで、そういう意味ではもっとやりたいなあと。 -
2020.06.22
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1950年代から、図書館学を修め、図書館にかかわり続けてきた、レジェンド司書さんによる本。
私は『書店ガール』で初めて知った、家庭文庫運動のことも出てくる。
図書館を巡る60年近い歳月の中で、各地に図書館が作られたり、司書の養成課程ができたりと、成果も少なくない。
でも、出版不況や、世の中の不景気、図書館の予算削減など、明るい話ばかりでない。
一章が災害と図書館の関わりに費やされている。
建物や本の傷みを修復する話ばかりかと思ったら、そうではない。
アーカイブとして、災害の資料を残していく役割があるという。
これにははっとさせられた。
保存して、活用する。
それは、次の世代の役目だよ、と言われた気がしたからだ。
それにしても、押し付けるのではなく、人が、自分が求めている本を見つける手助けをする。
読者が本に出会うことを待つ。
大事なことだと思うのだけど、どうやってこれを実現するのだろう。
それがわかる本があればなあ。 -
第1章 地域の図書館を訪ねて
第2章 子どもたちに本を
第3章 新しい図書館像を創る
第4章 災害から学んだこと
第5章 一人ひとり、みんなのために
第6章 人と本とをつなぐ仕事
竹内悊(1927-、東京、図書館学) -
長年図書館学に携わり人材育成に尽力してきた筆者が、戦後間もない頃からの公立図書館を紐解き、その原動力となった文庫運動や特に子どもに本を届けることの専門性、学校図書館での取り組みなどを現場の視点で語る。
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子どもの本の選び方、渡し方について特に考えさせられた…と言っても、それは別に業務のためではなく、家庭内での話なんだけれども。
3.11のときは被災地の図書館支援はできていなかったのだけれども、今後MLAKが被災したときに動ける人でありたい、と改めて思った。
いま読んでる洋書(「米国人一家、おいしい東京を食べ尽くす 」の原書)読み終わったら、ランガナタン読もうかな…kindle出てるんだろうか。 -
日本の図書館の今。
非正規職員についてや、指定管理制度についてももう少し語ってほしかった。 -
2019年7月7日に紹介されました!