民主主義は終わるのか――瀬戸際に立つ日本 (岩波新書 新赤版 1800)

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318002

作品紹介・あらすじ

政府与党が強大化し,政権の暴走が続いている.政治家や官僚は劣化し,従来の政治の常識が次々と覆されている.対する野党の力は弱く,国会も役割を見失ったままだ.市民的自由への抑圧も強まっている.なぜ日本政治はここまで堕ちてしまったのか.内側から崩れゆく日本の民主主義を立て直す道はどこにあるのか.警世の書.

感想・レビュー・書評

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  • 政治関係の著書を読む場合、著者がどの立場にいる人かをあらかじめ知った上で読む必要がある。

    この人は長年民主党のブレーンとして活動してきた人で、現自民政権に批判的な立場であることは容易に想像できる。

    それを踏まえた上で読んでも、決して盲目的な自民党批判ではなく論理的に、要所をとらえて批判している。

    安倍総理が国会答弁等において言葉を崩壊させているというのはまさにその通りで、問われていることに対しわざと論点を外した受け答えをしたり、空虚で実のない言葉を羅列したりということを繰り返している。

    著書では、行政府に権力が集中し、三権分立のバランスが崩れている状況を踏まえた上で、今後の提言もまとめている。いずれもおっしゃる通りなのだが、言うは易し行うは難しである。

    ここからは著書とは関係ない個人的な見解だが、このコロナ禍においても行政府はやりたい放題の政策で国民を愚弄し続けており、それに対して国民は「国会議員は国民のために働くべきなのに自分たちの利益ばかり考えている」とSNSあたりで言い続けている。しかし、そもそも国会議員が国民のために働くことが当たり前という幻想を抱いていること自体がナンセンスだと私は思っている。

    現代の日本人は「民主主義は生まれたときから当たり前のように存在する」ものであり、それがかつて民衆が血や汗を流して勝ち取った権利であることに無自覚である。なので、国民は当たり前に基本的人権を有し、そのために国会議員が奉仕すべきだ、などという幻想を抱いてしまう。しかし、国民が当たり前に基本的人権を有し、国民の代表である国会議員がそれを実現するために動くようにするためには、そのための仕組みを国民の努力で維持していく必要がある。今のように国民が政治に無関心で、受動的な立場を続けていれば、政治家はそれに味をしめて、自分たちの有利な方へ仕組みを変えていくに決まっているのだ。

    もし、民主主義を保ちたいのであれば、もっともっと自分たちの暮らしにおける政治との関わり方に関心を持ち、政治家の行動に目を光らせて、それを選挙や世論という形で大きく反映させる必要がある。「自分たちは政治とかは難しいからよくわからないので好きなことだけやる、でも政治家は自分たちのために行動してほしい」なんて虫のいい話はないのである。

    そういう意味で、こういう本を多くの人が関心を持って読んでほしいものだと切に願う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/729439

  • この本を読んで為になったのは「共闘の目的が改憲阻止、国会における改憲勢力の3分の2を打破」であることを知れたことです。
    それ以外は、単なる妄想の世界です。

    https://seisenudoku.seesaa.net/article/484865302.html

  • 戦後民主主義、いわゆる55年体制がどのように生まれ、機能し、衰退してきたのかを分かりやすく解説しており、特に第4章の政策分類と政治勢力のマトリクスは秀逸である。どこで道を誤ったのかが一目で理解できる。しかし全体的に掘り下げが浅く、政策提言としては物足りない。
    最後まで通読して感じるのは、自民党、野党ともに著しい劣化が進んだ元凶は小選挙区制の導入であると確信する。これにより自民党内の多様性が消失し、官邸の暴走を許し、「悪夢の民主党政権」の反動で政権交代への拒否反応=現状維持が選挙で最優先されるようになった。そもそも2017年に総選挙における自民党の小選挙区得票率は48%しかなく、こんな政党が75%の議席を獲得して数の力を振りかざすことを許す制度は民主主義とは相容れない。一刻も早く中選挙区制に戻すか全議席を比例代表にすべきだ。でないと政治家と国民の劣化が行きつくところまで行ってしまい、ヒトラーのような人物が国を指導する社会が間もなくやってくるだろう。市民革命を経験していない日本人に二大政党制を操るには荷が重すぎる。

  • (特集:「政治/民主主義/選挙」)

    ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00552287

  • 与野党がより真剣にやりあうために小選挙区制が導入され(椅子取りゲームの椅子が少なくなった)、これが野党にとっては不利になっていること等、不勉強で知らなかった制度的な事柄が多く勉強になった

  • 山口二郎という政治学者を知らない者はあまりいないと思うが、この人ほどネトウヨからたたかれた人もいないだろう。
    政治学者が現実の政治に入り込みすぎている点は私もどうかと思うけど、言っていることは普通にまともだと思う。

    ようは相手の質問に対して詭弁を弄したり、回答しなかったり、はぐらかしたりするっていうのは自民党政権でも安倍政権で際立った特徴である訳で、とりわけ野党や議会以外の勢力に対して一定の敬意を示さずに子供じみた喧嘩の姿勢を示してきたのは多分安倍政権の特徴なんだろう。

  • 安倍政治を一言で言えば、民主主義のルールを平然と破って恥じない政治だ、著者は民主主義に照らして安倍政治を厳しく批判し、民主主義を蘇らせるための提言もしている。

  • 「日本は、文句を言うが自分では動かない、なんちゃって民主主義」と誰かが揶揄していた。
    聞いた当時は面白い例えだと思って苦笑いしたけれど、現在は笑えなくなった。
    打開するためにはどうしたらいいのか。そのヒントを求めて本書を読んだ。
    山口氏が提示する方策に僕は概ね賛同。批判し合いながら健常な民主主義を構築しなければならないと思わされた。
    現状の日本を顧みると、論点すり替え、批判の排除や無視など、なんちゃって民主主義の次ステージに突入した感がある。

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著者プロフィール

法政大学法学部教授・行動する政治学者
1958年生まれ。東京大学法学部卒、北海道大学法学部教授、同大学院公共政策学連携研究部教授などを経て、2014年より現職。最初の著作『大蔵官僚支配の終焉』(岩波書店)により、自民党と財務省による政治・行政支配の構造・実態を暴き、1990年代から2000年代に続く政治改革の深い底流のひとつを形作る。2009年の民主党政権成立をめぐっては、小沢一郎、菅直人、仙谷由人各氏らとの交友を通じて政権交代に影響を与える。立憲主義の立場から安倍首相を痛烈に批判、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」の結成にかかわる。

「2018年 『圧倒的!リベラリズム宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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