リスクの正体――不安の時代を生き抜くために (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318361

作品紹介・あらすじ

新型コロナウイルスの脅威、相次ぐ豪雨災害、首都直下地震の恐怖……。リスク社会化した現代日本において、私たちの日常生活はさまざまな「リスク」「不安」「恐怖」に囲まれている。これらの「不安」とどう向きあっていけばよいのか。科学史・科学論の知見を縦横無尽に駆使しながら、斬新な切り口で考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 小樽商科大学附属図書館蔵書検索OPAC
    https://libopac.ih.otaru-uc.ac.jp/webopac/BB10297750

    本書は2014年秋から朝日新聞紙面に連載されてきたコラムを再編集したもの。多種多様なテーマが短い文章で書かれていて、読みやすいものの、少し前にあんなに騒がれていたのに、今は?と考えさせる1冊。

  • コラムのかき集めたものであり、期待していた学びは特になかった。

  • 「リスクの正体」というタイトルは新型コロナウィルス感染の拡大のこの時期に、関心を引きやすいけれども、これは各コラムに共通している「正体が何か、よく見ましょう」という態度を表明していて、読者に著者としての回答を提示するものではありません。

    各コラムにあげられている事件は、この5年くらいの間に起きたことで、まさしく著者が言及しているメディアがアジェンダとして取り上げたもの。例えば、post-truthをして近代から中世的なものへの揺り戻しとみてこれに警鐘を鳴らします。それはよいけれども、その先は? 著者の打ち手として考えるのは? 新聞に掲載されたコラムを集めただけのものになっていることが残念です。

  • はしがきが8ページあり、ここを読んだときには期待があった。COVID-19や地震をからめて重厚なリスク論が展開されるのだろうと。なんせ岩波新書で「リスクの正体」というタイトルだもの。ところが本文は、朝日新聞の連載らしいが、すべて4ページ完結の時事ネタのさらっとしたエッセイが最後まで続く。途中で「これ、本当に岩波が出したのか」と表紙を確認したほどだ。岩波新書までもが玉石混交となると、タイトルやはしがきだけで買ってはいけないということになる。なぜ朝日新聞出版で出さない?

  • 朝日新聞で掲載されてきたコラム「月刊安心新聞」を分野ごとに並べ直して纏めた一冊。感染症、自然災害、ネット社会、食の安全などなどリスクや安全・安心に関わる様々なテーマを取り上げている。コラム集なのでどの項目も4ページで纏まっており読みやすい。安心やリスクについて考える際に非常に役に立つ本である。高校生や大学生が時事問題を学ぶためにも大いに役立つのではないだろうか。

  • ●→引用

    ●「宙づりの日々」 「その日」が来る前に
    ●26年ぶりに日本に現れた豚コレラ 人類の環境開発とウイルスの出現
     振り返ってみれば、狂牛病、鳥インフルエンザ、また口蹄疫と、近年、世界中で家畜の伝染病が繰り返し問題になってきた。それは結局のところ、人類が環境開発によって自己の領域を拡大させ、また工業的な農業によって肉食を薦めた結果でもある。さらにグローバル化の進展が病原体の拡散を加速したことも否定できない。
    ●地震のリスク 実態に即した対策を始めるべき
    ●ヒアリ騒動を考える リスクの全体像を捉えよう
    ●未来のリスク 「不吉な未来について語ること」と首都機能移転議論
     一般に、不吉な未来について語ることを、好まない人は多い。だがそれはもしかすると、「言霊思想」の影響かもしれない。これは、かつてどこの文化圏にも見られたものだが、要するに「言葉にすると、それが現実に起こる」という信念のことである。(略)さて、この信念が共有されている社会において、未来のリスクについて語ることは、別の意味で「危ない」行為となる。なぜなら、リスクを語る者は「危険をもたらそうとしている」と見なされるからだ。もちろん、多くの日本人はそんな迷信めいたことは考えていないと自認しているだろう。それでも「縁起でもないことを言うな」と私たちが告げるとき、ある種の言霊思想的な圧力の影響下にあるとは考えられないか。だとすれば、この社会がリスクと向き合う上で、それが障害となっている可能性は否定できない。問題を意識しながら対処できず追い込まれる企業も多いが、「都合の悪いことは口に出せない」という、この思想の影響もあるかもしれない。私たちの生きるこの「近代」という時代は、科学の知によって未来を予測し、それに基づく技術によって解決してきた。その達成は目に見張るものがあった。しかし、「できること」が増えれば増えるほど、「できないこと」が目立ってくるものだ。地震は、近代の成功物語からこぼれ落ちた難問であろう。そのような厳しい現実を前にした時、近代以前から続く古い心性が、不意に頭をもたげてくることはないか。
    ●日本の「イノベーション政策」 イノベーションとは何か
     だが、社会に強いインパクトを与えるようなイノベーションの多くは不連続的な現象であって、事前の計画や設計ができる類のものではないことも分かってきた。また、真に影響力の大きいイノベーションは、以下のような物語を伴うことも多い。少数のパイオニア、時には狂信的ともいえるような情熱を持った人たちが、世間の冷たい視線にもめげず努力を続ける。そしてついに成果を世に示す日が来る。人々は驚愕し、世界が変わる―この種のストーリーは当然、計画や設計には馴染まない。
    ●老朽インフラ劣化の危険 専門知と民主的決定の「組み合わせ方」
    ●「プロのモラル」 プライドと教養の復権を
     おそらく鍵となるのは、かつての「プロ」や「職人」が持っていた「プライド」と、失われた「教養」であると考えられる。すなわち、「目先の利益」や「大人の事情」よりも、自らの仕事に対する誇りを優先させることができるか、そして自分の専門以外の事柄に対する判断力の基礎となる「生きた教養」を再構築できるかどうか、ではないか。そのために私たちにもすぐできることがある。それは利害関係を超えた「他社」に関心を持つこと、そして、その他者の良き仕事ぶりを見つけたら、素直に敬意を表明することだ。人は、理解され、尊敬されて初めて、誇りを持てる。抜本的解決は容易ではないが、できれば罰則や監視ではなく、知性と尊敬によって世界を変えていきたい。
    ●高齢ドライバーの事故 別の角度からの再点検も必要
    ●相次ぐ品質検査の不祥事 不祥事の背景
     当然ながら、ルールを守らないことは決して許されることではない。しkし、古いルールが現実と齟齬を来している時、ルールの方を改めるのが妥当な場合もある。今回の自動車のケースがそれに当たるかどうかは検討を要する。だが、形骸化したルールが放置され、皆が守らなくなると、いずれは絶対に順守しなければならない重要なルールすらも守れなくなる。オオカミ少年の話にも似ているが、規範そのものを軽視する風潮が広がることこそが、最も危険な事態である。
    ●49日も逃走できた理由は… 「まれびと」を手厚くもてなす風習?
     このような日本人の古い心性は、共同体の外部の存在=「異人」を手厚くもてなす風習とも結びついていると言われる。だとすると、この容疑者は知ってか知らずか「まれびと的存在」に自分を偽装することを選び、だからこそここまで長期にわたって逃げ続けることができたのだと、考えられないか。(略)私たちはすっかり近代化した社会に生きているつもりになっているが、何かの拍子に、集合的な古い心性が顔を出すことがある。それは、街角で鏡に映った自分を見つけた時の、ある種の戸惑いのような感覚にも似ているかもしれない。
    ●過剰なバッシングのメカニズム 阿部謹也の「世間論」
     西洋中世史を専門とする阿部謹也はかつて、日本の本質は「世間」であって、「社会」ではないと看破した。世間は歴史的な秩序であり、この国を実質的に支配している原理だと彼は徳。そこには個人の概念はなく、おのおのの「地位」だけが存在する。また法や契約よりも贈与と返礼による「互酬」の原理が優越する。そして世間自体は、人為的に変えられない、外的条件と理解されている。一方で「社会」は明治の近代化によって輸入された外来概念であり、いわば「建前」の日本を支配するが、本当の意味で信じられているわけではない、というのだ。明治以来、150年にわたって、近代国家を建設、運営してきた私たちであるが、もしかすると基礎が不安定のまま、高いビルを建設してしまったのかもしれない。そのような国は、少し強い風が吹くと、容易に揺らぐだろう。最近の過剰ともいえるバッシングは、もしかするとその兆候の一つではないだろうか。
    ●「冷戦後」の終わり 冷戦後の環境変化にうまく対応できなかった日本
     あれから30年近くが経った。振り返ってみれば冷戦の終結は、私たちの国にとっては、どうやらあまり有利ではなかったようだ。そもそも「鉄のカーテン」の存在は、西側諸国にとっては、過度な資本主義化を抑制する作用を持っていた。たとえば、今から考えれば当時の自民党、特に田中派は、開発独裁の匂いが強かったものの、地方への富の再分配を強く進めたという点で社会主義的であったし、東側の諸国ともさまざまなルートでつながりを維持していた。そのような多元的なパイプと、日本国憲法というツールを上手に使って、当時の政権は、アメリカに対して主体性を確保すべく、踏ん張っていたという側面は否定できない。当然それは米国から見れば、本音では不快であっただろうが、東側と対峙する最前線でもある日本をむげにできない状況でもあったのだ。だが、グローバル化する世界に投げ込まれてからの日本は、ゲームのルールが変わったことになかなか対応できないまま、相対的な地位を下げ続けた。

  • コラム集。あー、そんな事あったなぁって思い出すには良いけど、途中から疲れてく。勉強になったなぁーって言う実感も薄かった。

  • 1 感染症のリスク
    広がる“COVID─19”--難局をどう乗り切るか
    MERS感染拡大ーー文明が生んだ不意の一撃
    はしかの流行とワクチン接種
    二六年ぶりに日本に現れた豚コレラ

    2 自然災害と地球環境のリスク
    御嶽山の突然の噴火
    「宙づりの日々」
    繰り返す豪雨災、力ずくの治水の限界
    地震のリスクーー予知より「備え」に智恵を
    未来のリスク
    新潟県糸魚川・アスクル火災の教訓
    ヒアリ騒動を考える
    地球温暖化問題はなぜ難しいか
    地質学と「チバニアン」
    世界の水問題とバーチャル・ウォーター
    災害が多発した二〇一八年
    遅れた台風一五号の被害の把握
    日本列島と自然災害

    3 新技術とネットワーク社会
    ドローンの功罪
    「シェール革命」と中東の緊張
    人工知能と囲碁
    自動運転車の未来
    「もんじゅ」と「豊洲市場」
    広がる「ポスト真実」
    仮想通貨の理念と課題
    情報化がもたらす変化
    日本の「イノベーション政策」
    「ブロックチェーン」再考
    量子コンピューターの可能性

    4 市民生活の「安全安心」
    食のリスクとメディア
    ジャーナリズムと行政
    少年犯罪への視線
    老朽インフラ劣化の危機
    バンコク爆破テロとリスク社会
    パリ同時テロの衝撃
    「プロのモラル」
    相模原障害者施設殺傷事件から考える
    映画『シン・ゴジラ』を観て
    高齢ドライバーの事故
    豊洲市場のベンゼン騒動
    現代の「杞憂」
    テロの「恐怖」の拡散
    相次ぐ品質検査の不祥事
    高齢化社会と法医学
    裁量労働制の落とし穴
    四九日も逃走できた理由は
    自己責任論の思想

    5 時代の節目を読む
    ノーベル賞ラッシュ
    過剰なバッシングのメカニズム
    「ゆとり世代批判」の貧困
    トランプ大統領誕生が意味するもの
    新時代の教育改革
    「冷戦後」の終わり
    ICANのノーベル平和賞受賞と日本
    「失われた三〇年」の正体
    相対化するテレビの地位
    令和フィーバーに思う
    加藤典洋氏の「ねじれ」論
    研究不正ーー事実と虚構の壁が溶けたか
    「文理融合」の好奇心
    ドラマが描く五輪と国家
    「安全安心」とリスク

  • 朝日新聞の記事で読んだ記憶のあるものもかなりあったが、このようにまとめて読めるのも楽しめる.リスクという観点から「感染症のリスク」「自然災害と地球環境のリスク」「新技術とネットワーク世界」「市民生活の安全安心安心」「時代の節目を読む」と分類していたのは、読者としては捉えやすい構成だと感じた.”安全安心”は全く違う概念を似たような言葉の連続で、あたかもリスクを考慮していますよ というお題目になっている.これはいつも気になっていたが、p250で出てきたので安心した.

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著者プロフィール

東京大学工学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。三菱化学生命科学研究所、科学技術振興機構、東大・阪大特任准教授などを経て、現在、千葉大学国際教養学部教授。朝日新聞客員論説委員、阪大客員教授等を兼任。博士(工学)、専門は科学史、科学技術社会論。著書に『文明探偵の冒険――今は時代の節目なのか』(講談社現代新書/2015年)、『ブロックチェーンという世界革命』(河出書房新社/2019年)、共著に『没落する文明』(集英社新書/2012年)などがある。

「2019年 『核エネルギー大国フランス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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