人口の中国史――先史時代から19世紀まで (岩波新書)

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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318439

作品紹介・あらすじ

一八世紀に突如起こった人口の爆発的増加は、中国を知るための鍵である。それはなぜ、どのように起き、今まで続いてきたのか。文明の始源からの歴史がもたらしたさまざまな条件と、大変化のメカニズムを明らかにし、現在、そして未来までも人口史から読み解く。ヒトの生態を羅針盤にゆく、中国四千年のタイム・トラベル。

感想・レビュー・書評

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  • 個々の時代の深掘りや人物ベースで歴史を知るのは食傷気味で、千年二千年のレンジで歴史を通観し、そのダイナミズムを感じたい!そんな思いに応えようとする好著です。資本主義以前の国富は版図の大小ではなく、人口の多寡であるという視点で、歴代王朝の租税制度を軸に変遷を論じた前半は中国史の基本をおさらいできて面白かった。中国の人口爆発については18世紀に始まりますが、本編はそのプロローグでした。19世紀以降にみせる等比級数的な人口増加の分析は次巻に乞期待です。

  • 「人口の中国史」として先史時代から19世紀までを通史的に扱ってはいるものの、主眼はむしろ、諸史料の人口統計としての批判的吟味と18世紀に生じた人口爆発の分析であり、当然のことながら通史的な部分よりも後者の方が圧倒的に面白い。参考文献リストあり。

  • 「人口」という視点から見る中国史。人口から読み解く簡略な概説・通史にもなっていて良い。戸口統計は国家が把握できた数字で実際の数字ではないという基本を軸にその統計の背後にあるものを読み解いていく。中国史を「合散離集」のサイクルで捉えるのも面白い。本書が最も力を入れているのは18世紀の人口爆発がなぜ起きたのか、という点。従来は地丁銀による人頭税廃止が原因とされていたこの人口爆発について、丁寧に分析しなおして他の背景を探っていく。筆者は20世紀以降についても稿を改めて考察したいとしており、次巻が楽しみである。

  • 副題にあるとおり本巻であつかうのは19世紀なかばまでで、それより後は続巻で論じられる。古い時代であっても文書による記録がしっかり残っているあたりはさすが中国で、そうした公式記録を使って分析を進める。もちろん時代が古いほど信頼性には留保がつくし、時の王朝がしっかり支配できていた範囲などにより人口統計の範囲はかんたんに伸び縮みする(その点、あとがきで触れられている、著者の娘さんが提案したタイトル「ゴムゴム中国人口史」は秀逸)。数十年違う時点の統計をくらべるだけで、ありえないような人口の増減があったりするが、それは本当に人が増えたり減ったりしている訳ではなくて、人口統計の範囲に人が出入りしているだけのことなのだ。要は統計にノイズが多いのである。本書の分析も、いきおいどのようなノイズが人口統計に含まれているかを解きほぐすことに終始してしまっている感がある。

    それでも清代ともなると統計も多少しっかりしてきて、さらにはそれまでダラダラと増減を繰り返していた中国の人口も爆発的な増加トレンドに乗る。その人口急増の要因につき、新大陸原産の作物(とうもろこし、じゃがいも等)とする説に対して著者は懐疑的である。山間部で漢民族が行ってきた焼き畑式の農法は必ずしもサステイナブルではないから、と言うのである。確かに無理な栽培が土壌流出を引き起こした事例なども挙げられるが、とうもろこしなど今でも中国の主要作物であるし、雲南省の鉱業もとうもろこしなどによる食料供給によりはじめて可能になったのだと言うのだから、素直に考えればやっぱり食料じゃないの、と思う。一方、著者の主張としては女児間引きの風習(溺女)がおさまって人口の再生産力が高まったことなどを要因に挙げるが、それも食糧増産があってこそではないかとも考えられる。まあ、いろいろ考えを巡らす余白があるとは言える。

  • 序 章 人口史に何を聴くのか
    第一章 人口史の始まりーー先史時代から紀元後二世紀まで
    第二章 人口のうねりーー二世紀から一四世紀前半まで
    第三章 人口統計の転換ーー 一四世紀後半から一八世紀まで
    第四章 人口急増の始まりーー 一八世紀
    第五章 人口爆発はなぜ起きたのかーー歴史人口学的な視点から
    第六章 人口と叛乱ーー 一九世紀
    終 章 現代中国人口史のための序章

  • 人口の動向という観点から中国史を考えたことがなかっただけに非常に新鮮で刺激的だった。考えてみれば国家を運営していくためには税金徴収、調達できる兵力・労働力の計算に当たっては重要な項目であるわけで、秦の時代だけではなく、夏殷周の時代から記録があって当然だったのだ!遼については記録が紛失しているということであるが、人口よりむしろ戸数そして丁数(男の人数)が重要な概念だったということも理解できる。18世紀半ばごろに人口爆発が起こったという理由も中国でかつて行われてきた女乳児の間引き(溺女)が抑制されたこと、また生産力のアップ、戦乱のなかったことなど、面白かった。また周辺の先住民族が取り込まれて行って人口が増えていくという動きも当然大きい。各時代の中国人口が想定以上に多い(例えば後漢後期の140年ADに約5000万人、隋には約6000万人)ことも、「白髪三千丈」という用語が大げさでないことに連想できて面白かった。戦国時代、三国志時代、隋統一までの南北朝時代その他の戦乱の死者の数、食糧不足、産み控えなど人口に大きく影響したことは当然だが、それだけ悲惨な人生が多かったという重い事実でもあるわけだ。康熙帝の名君であることは人口把握に力を入れたということからも窺えた。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/533437

  • 人口に焦点が当てられている本を読むのは初めてかな、誰がどうしたといった血湧き肉躍る系の話は少なく数字の出し方とかの話が多いのでちょっと退屈になりがちだけど、中国史もおさらいできてよかった。人口が歴史の流れに与える影響も大きい。
    中国史を合散離集のサイクルとしてとらえ、さらに先史、隋・唐まで、元朝まで、それ以降とステージに分けることで理解しやすくしている。
    溺女の風習など知らないこともあったし、それが18世紀の人口急増を説明する仮説の中で大きなキーになってることも。

  •  先史からを対象とするが、主題は18世紀の人口爆発以降だろう。その理由として、人口統計の徹底や新大陸原産の作物の普及も一応挙げはするが、貨幣経済の浸透と女児間引き(溺女)抑制を主要因とする。四川や雲南など個別地域での人口急増には移民流入も原因だが、これとて貨幣経済普及による社会の流動化があるのではないか。そして「謀生」単身男性の増加は、白蓮教、太平天国、回民戦争などの叛乱増加につながる。
     先史以来の人口統計を豊富に使っているが、そのためか、ミクロに入り込み読みにくいと感じる箇所もあった。

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著者プロフィール

1957年東京都生まれ。東京大学文学部卒業。現在、立教大学教授。著書に『森と緑の中国史』『ペストと村』『シナ海域 シン気楼王国の興亡』『貨幣の条件』『死体は誰のものか』『人口の中国史』ほか。本シリーズ編集委員で、第9巻『海と帝国』を執筆。

「2021年 『中国の歴史12 日本にとって中国とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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