藤原定家 『明月記』の世界 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 109
レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318514

作品紹介・あらすじ

『新古今和歌集』や『小倉百人一首』の選者として知られる歌人藤原定家は、果たしてどのような日常を送っていたのか。青年期から生涯にわたって綴られた日記『明月記』を詳細に読み解くことで、宮廷での公務の心労、人間関係の軋轢、家長としての重圧と苦悩、息子たちへの思い、など、生身の定家の姿を浮かび上がらせる。

感想・レビュー・書評

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  • 藤原定家(1162~1241)が1180~1235の55カ年に渡って遺した日記『明月記』を家族、任官、荘園経営といった側面から読み解いたもの。家族に関する記述は特に充実している。筆者によると、『明月記』は多くの貴族日記と比べて私的なことを多く書き残しているため、中級公家定家の喜怒哀楽を窺うことができる。

    『明月記』を通じて筆者がたどり着いた結論は、定家=ジコチュー(自己中心的性格)。殿上での喧嘩、任官への強い関心、後鳥羽院との仲違い、息子たちへの接し方など。源平の争乱や承久の乱を目の当たりにして、「紅旗征戎吾ガ事二非ズ」とうそぶいた精神も、この端的な例に加えられるだろう。もっとも、定家の「自己中心的な性格こそが、和歌の革新をもたらした原動力であった」。

  • 老いらくの親のみる世を祈りこし 我があらましを神や承【う】けけむ
     藤原為家

     この「老いらくの親」とは、当時数えで80歳であった藤原定家のこと。父定家の存命中に、悲願であった大納言の官位を授かり、日吉神社に拝賀した折の歌という。

     息子為家の行動も記録された「明月記」は、定家が50年以上の長きに渡って記した漢文体の日記である。内容の一部は、堀田善衛「定家明月記私抄」に引用されていたが、近年、より精査された「翻刻 明月記」が刊行され、さまざまな研究が可能になったという。
    和歌で著名な定家であり、後鳥羽院との和歌の話題が多いのかと思いきや、意外にも、家族関係の記述が多いらしい。系図を確認すると、スリリングな発見もあるという。

     長命であった定家には、妻が2人、子どもは6、7人とみられるが、驚くのは息子為家への偏愛=親バカぶりである。たとえば、若くして蔵人頭に昇進した為家の来訪を、「光臨」「来臨」と敬語で記したくだりもある。

     対照的なのが、最初の妻との息子である光家についての記述である(為家は2番目の妻との子)。光家は為家よりも年長だが、「外人【うときひと】」=身内でない人間と記述され、晴れの席には、為家のみが送り出されていた。向き不向きもあったのだろうが、光家の心の傷は深かったのではないだろうか。

     任官をめぐる喜怒哀楽や、行動範囲、家計の事情など、私記でありながら、一級の史料でもある「明月記」。興味は尽きない。
    (2021年3月13日掲載)

  • 「明月記」を読み込んで、定家を含む家族との関係に重点が置かれたものだという印象。若いころは姻戚関係の記述が煩雑で嫌いでサラッと読み進めていたが、最近は文章と系図を交互に見ながらその人物の考え方や行動に影響があったのか考えるのが楽しくなった。当時を含め、古代(縄文を含めて)から近世までの日本では女性の果たす役割がすごく大きいと定家周辺の姻戚関係を見ていて、改めて感じた。いつもそうだが本を読むと興味が無限大に広がっていく。この本からは定家の生きた時代、後鳥羽天皇、新古今和歌集、百人一首、嵯峨の中院への旅・・・。時間が足りない。あと、定家が猫を飼っていたとは驚きであり、微笑ましくもあり、嫁さんが飼ったから世話をしたというんもええなぁ。どんな顔して猫をゴロゴロさせとったんやろう。(6/23記)

  • 日記『明月記』を中心に藤原定家とその周辺を歴史的に見た書。細かいところだが定家邸の変遷とか、家族についての考察など大変興味を引かれた。子の為家が関東武士宇都宮頼綱の娘を妻にしていたとか、その縁で牧の方(このころは牧尼となっている)が登場したりとか、朝幕関係を考えるうえでもなかなか面白い。もちろん後鳥羽院とか京都側のことも。
    『玉葉』はかなり研究されているが、『明月記』ももっと歴史的にちゃんと読み込んで研究すべきなのだろう。個人的には著者も取り上げきれなかったと書いている天文関係記事についてもっと知りたい。かに星雲関係は有名だが最近注目されているオーロラ記事など天文学史的にも歴史学的にも重要な記事が多そう。

  • 1200年代の京都に住んでいた貴族の生態を「名月記」から考察した面白い本だ.当時の女性は天皇の后として男の子を産むことが、自分の一族の誉れであったようだが、本書でそれを期待していたが彼女たちの肉声はなかなか出てこない.ここでは定家の行動を追っているが、男として出世を願いながら、政敵との葛藤を勝ち抜くことも重要であり、定家の行動は1200年代も今もあまり変わっていないなと感じた.このような資料が残っていること、それを読める人がいることは、日本の文化としては非常に重要だと感じた.定家が家司として仕えた九条兼実、彼のカウンターパートであった源通親.それぞれの娘が男の子を産むがどうかで親の出世が決まる世界.何か腐臭を感じるが、通親が曹洞宗の高祖 道元の父だった可能性があるとの説もあり、貴族の世界の魑魅魍魎を実感した.

  • 新古今和歌集、小倉百人一首の撰者の日常に迫る一冊。明月記を丹念に読み、ときには大胆な推測をしていて、定家とその周囲の人々の姿をありありと感じることができました。
    オーロラについての記事が取り上げられるかな?と思いましたが、それはなかったけど、いい本でした。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/536684

  • 定家をとりまく家族のことが仔細に書かれている
    鎌倉幕府との関係も。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1851/K

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