英語独習法 (岩波新書 新赤版 1860)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318606

作品紹介・あらすじ

英語の達人をめざすなら、類義語との違い、構文や文脈、共起語などの知識に支えられた高い語彙力が不可欠だ。記憶や学習のしくみを考えれば、多読や多聴は語彙力向上には向かない。語彙全体をシステムとして考え、日本語と英語の違いを自分で探究するのが合理的な勉強法なのだ。オンラインのコーパスや辞書を利用する実践的方法を紹介。

感想・レビュー・書評

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  •  自慢ではないが、つい最近英検1級に合格した。以前TOEICでは935点をとったこともある。そして本当に全く自慢ではないことに、たいして英語が話せない。「読む書く聞く」はそこそこできても、「話す」がそれらに比べて格段に落ちるのだ。プレゼンや商談など、予めパターンが決まったやり取りならできるが、雑談となると言いたいことが瞬時に表現できず相槌を打つことしかできなかったりする。やはり日常的に英語を話すことが要求されるような環境が必要なのかな、と思っていたのだが、本書はまさに eye-opener だった。実地経験云々ではない。要は僕にまだ物事を英語で考えるだけの「スキーマ」が備わっていないのだ。

     本書が挙げている「英語で考えられない理由」は僕にかなりの点で当てはまる。英単語は覚えたが、テキスト内での使用のされかたや、類語とのコロケーションの違いにあまり注意を払ってこなかった。また、抽象的な語彙は比較的豊富に蓄積したものの、本書が日常英語で最も重要だと指摘する「様態を表す動詞+前置詞」を、抽象度が低く重要でないものとして軽んじていた。英語を話すには、日本語を逐語訳するのでなく、文全体で何を言いたいのかをまず考えること、さらにその際に動詞を軸にすることが重要だという。僕は英語のそれぞれの動詞のニュアンスの違いの習得をおろそかにしていたため、半世紀弱の付き合いである「日本語のスキーマ」を脳から追いやることが出来ずにいる、ということらしい。

     ではどうすれば良いのか。本書で強く推奨されているコーパスなどのオンラインツールの使用はかなり気が滅入る作業だが、少しやってみると確かに面白い。文全体で何が言われており、その中でその単語がどのような働きをしているのか、どのような文脈で使われているのかを他の単語と比較する。発達心理学を専門にする著者によれば、これは幼児が母語を習得する manner と同じなのだという。

     また、ライティングが得意な自分としては、スピーキングの土台にライティングがある(曲がりなりにも文を作ることが大事)というのが救いに思えた。さらに、大人になって会話の関心の対象となる事象に関する知識が豊富な方が英語が上達する可能性があるというのも、もはや初老に差し掛かろうという自分には福音だ。

     一番面白いと思ったのは、生後10ヶ月くらいまでの赤ん坊は母語にない発音でも聞き分けられるが、その後1歳くらいまでに急速にその能力を失っていくということ。まさに「タブラ・ラサ」として生まれた人間は、何も書き込まれない余白を不必要なものとして削ぎ落としながら成長していくのだ。

  • 四半世紀前に本書と出会っていれば、ワタシの英語も今よりずっと高いレベルにあったんじゃないか。いやいや、まだ遅くはない。本書で紹介されていたSkELLなど、知ったその日から毎日のように使う気力があるじゃないか。
    英語学習に関してちょっと力が湧いてきた。

  • ある程度、文法がわかったらやはり肝になるのは語彙力。それも、スキーマという語彙のもつイメージや使われ方などについて気をつけながら学習することで、英語がこなれたものになっていく。
    具体的にサイトの使い方なども含めた情報が書かれており、何度も何度も見ながらやってみることで身につくのだろうと思う。
    頭でっかちな学習ではなく、生きた言葉としての学習は一生続く。

  • 英語の勉強方法について記されている。

    英語をマスター(使える)ようになる画期的な方法について書かれていると思ったが、語学とは、日本語と同様に深く難しいものだとおもった。
    目標設定によっても変わる部分もあるのかもしれないが、筆者が一番大切にしている『スキーマ』を理解することは、簡単にマスターできる、ものではない。
    表面的に単語・構文を暗記するではなく、単語(幅広い意味・類義語→日本語(英語)独習法)が五技能のなかでも一番大切だと教えてもらった。

    まさに、勉強ではなく『独習』で、語学勉強の奥深さを改めて痛感したが、この年からでも少しづつに勉強しようと思う。
    しかしながら、語学できな人にとっては難しい領域だった。

  • 非ネイティブが英語を学ぶとはどういうことかが、少し見えてきた気がする。

    この本ではスキーマ(私的イメージでは、系統立った知識の塊)を、氷山モデルの見えない部分に当てはめて解説をしている。

    非ネイティブが第二言語を使いこなすまでには、そもそもどの程度スキーマが出来上がっているかも関わってくる。
    言葉を類推するためには、文脈を把握する力や既習知識の多寡に依存するからだ。

    けれど、母語として日本語が身についているからこそ、たとえば可算、不可算なものの見分け方や、冠詞、前置詞の使い方に混乱する。

    また単に意味で言葉を選ぶと、用いる場面にふさわしくない言葉を選択してしまうこともある。

    これは、すごく分かる。
    だから多読!と思うのだけど、筆者は多読したから語学力が上がるわけではないと言う。

    要は、一つの単語からスキーマを作っていくこと。
    例としてコーパスを使って、同じような意味の別の単語との用いられ方の違いを身につけていくことを薦めている。

    記憶しただけではダメで、使えるようにするためには、一つの文章や映画をしっかり深めること。

    だから四技能についても、同じだけの時間をかけることにあまり意味を見出さない。
    スピーキングやリスニングは、同じスピードでの理解を求めるため、まずはリーディングとライティングに力を注ぎ、語彙を蓄積することが肝要と言う。

    歌って踊って楽しい英語から、学習する英語への架橋は確かに難しそうだ。
    けど、ことば、として考えた時に、なんでそう使うのか?どう見えるのか?を知ることは結構楽しい。

    楽してではなく、合理的に楽しみながら勉強する。

    なるほどなぁと思った一冊。
    でも、スピーキング、リスニング重視の人からの反論も聞いてみたいところ。

  • 表題は『英語独学習』とあるが、母語以外のあらゆる言語を学習する時に参考になる情報が詰め込まれた内容になっている。
    本書によく登場する言葉に「スキーマ」がある。その説明部分を一部抜粋して掲載する。
    〜〜〜
    スキーマというのは、認知心理学の鍵概念で、一言でいえば、ある事柄についての枠組みとなる知識である。
    スキーマは「知識のシステム」ともいうべきものだが、多くの場合、もっていることを意識することがない。母語についてもっている知識もスキーマの一つで、ほとんどが意識されない。
    〜〜〜
    このスキーマは、母語のものと、学習している言語のものでは、異なるものなのだ。その違いを理解した上で学習のアプローチを考え実行する必要がある。ただ、スキーマは意識されず、言語化することも難しいもの。故に本書では、スキーマにあたる部分を丁寧に説明をしてくれている。その部分についていえば、認知心理学を学んでいる人は読み飛ばしてもいいかもしれない。
    本書には、著者が考える学習時に活用するツールや、参考文献も掲載されているので、先にそのURLを確認してから本書を読みすすめれば、自分でもPC操作をしながら読みすすめることもできる。

  • 本書においては英語という科目を題材にしつつ、学習においては「スキーマ」、すなわちその分野における独特の頭の使い方があることを説く。
    勉強をしていると、はじめの方は結構手探りで進んでいる感じがする一方で、とあるタイミングから視界が開けたようにわかるようになることがあるが、これは自分の中にスキーマが形成されたときに起こることなのだと思う。
    理解力があればどんな学問もはやく吸収できるものと思っていたが、これは個別具体的な理解力というよりも、その学問のフレームワークレベル(すなわち相当程度抽象的なレベル)での理解力に依存しているものと思われる。

    最初に記載した通り、本書は英語にフォーカスしてスキーマを説明し、”生きた英語”の身に着け方を説いているものではあるが、この考え方はより一般にあらゆる学問に適用できる考え方だと思った。

    どんなことでも、大枠のレベルでの理解をしようとしなければ小手先の理解に終始してしまうし、自由自在に扱えるまで何かを学ぶためにはこういった理解と慣れが不可欠であると実感した。

  • メンタルモデル的な(逐語訳的でなく、ネイティブの時空間のイメージを追跡することを重視するような)英語論は、遅くとも1990s後半には既に主流になり始めていたし、その教育的な成果物は、大西泰斗『一億人の英文法』その他の刊行物で、いまや十分広い範囲に普及してきている。

    しかしでは、実際に英語学習者が英語のメンタルモデルをどうやって実地のリーディングやリスニングで出会っていくのか、出会ったそばからそのメンタルモデルの日英の差に印象深く感心できるのか……その具体的手法については、その理論それ自体と比べて、あまり本格的に語られてこなかったと思う。

    今井さんの本書の取り組み、特にSkELL, COCA, WordNetなど(基本無料の)英語Webサービスを用いた学習法は、メンタルモデル的な発想の理解を座学で終わらせず、その先で具体的に手を動かして経験できるような学びの場を提供してくれている。

    自分はこの本を読む前から、おおむね似たようなことをオンラインの語源辞書や英英辞書を通じてやってきた。それで幾ばくかは、今井さんのおっしゃるような英語的スキーマについて、中高生の頃よりはずっとマシな理解を得つつあると思う。それでも今やっているそれらの学習法より、今井さんのやり方の方が安く済むし、資料の鮮度は保証されている。また、特定の辞書系出版物(当然、有料であることが多い)の良し悪しという、あまり本質的でない論争的戯れに巻き込まれづらい点もよい。

    初手の調べ物として提案されているSkELLに特定の語句を入れるだけで、ネイティブかつpoliteな例文が沢山得られるのは本当に素晴らしい。オックスフォードコロケーション辞典や、研究社の『英和活用大辞典』CD-ROM等電子版がなくとも、共起表現やニュアンス学習を無料でやれるようになったというのは、素晴らしいことだ。

    また、英語学習産業の一部の誤解を科学的にときほぐすくだり(特に第7章以降)もよかった。今井さんは、ご自身の専門である認知科学と言語のlearning/studying (認知発達としての学習と、教育としての学習にまたがるメカニズム)の見地から、以下のことを主張していた。

    (1)重要なのは(漫然とした)多読多聴ではない。あくまで主眼はことばのスキーマに訴える学習プロセスに向けること。
    (2)スキーマに狙いを定めた学習のために、まず語彙力に関わるスキーマを磨く学習回路を得ること(類語・共起表現の調べ学習はこの段階の演習例として示されている)。
    (3)その上で、
    (3a)繰り返し読みこなしてきたことにより理解の深まった文章に対するさらなる【熟読】、
    (3b)マルチモーダルな手がかりが詰まった映像コンテンツの【熟見】、
    (3c)そして慌てず語彙を動員してゆける【熟書】
    これらの3つを地道にこなすこと

    ……を強調したのは、(自分含めて)未だに英語学習に迷い続けている人間にとって、いい話だったと思う。

    特に【熟見】に関して、「最初に日本語字幕を採用して良い理由」を「後づけバイアスを防ぐため」と論じた下りは膝を打った。手元に円盤で持っている『ゴッドファーザー』等の映画や、Netflixの映画を英語字幕にこだわって見ていたこともあったが、「覚えたくなるくらい好きな映画を、日本語字幕でいいから繰り返し見聞きする」に立ち戻ってみようと思った。 

    ▼数少ない難点(難癖に近い)

    第3章,第6章ほか、全編にわたって、生きた言語の「頻度」が大事であることは十分に強調されているが、その「頻度」に着目して編纂されてきた「コーパス」が、私たちの言語活動にとっていかなる位置付けをもったコンテンツなのかということについて、ちょっと言葉が足りてないまま、コーパス推しになっているようにも読めた。

    コーパスは使われる頻度により形作られるものであり、概念先行ではないから活きた言語の理解として良いのだ、という話が、本当はもっと強調されてもいいはずなのだが……本書ではそこまで強調されてはいない。しかし、それらは当然の前提の一部して置かれている。p.053,p.082に出てくる6つの要素は、おそらく(確認していないけれども)ほかの今井さんの新書で、既に論じられているのだろうか。

    ▼巻末の「探究実践篇」について
    ところで、本書のリクツ部分は、p.196で一旦終わる。p.197以降の実践編からは、類語・共起表現が英語学習のスキーマとどんな関係にあるかの実感を深めてゆくためのドリル課題集になっている。これらは、落ち着いた場所でじっくり取り込んだ方がいい。

    「わかる」と「こなせる」は違う、ということについては、最近IT系の技術課題について躓く時に思い返すことでもあり、そういう点からも耳が痛い(目が痛い?)本だった。「わかる」の楽しさは否定しなくてよいから、最終的には「こなせる」から「できてる程度」を見ていきましょうね……。

  • # 内容
    著者は認知科学の研究者で、人間、とくに子どもが言語を習得するメカニズムを研究してきた方だ。

    この本は、英語の合理的な学習法を提案するとともに、その「理由としくみ」を説明している。
    理由としくみまで説明するのは、読者自身が発展、応用できるようにするため。

    本書は、仕事の場でアウトプットできるレベルを目標としている。
    また、よくある英語学習の勘違い(多読や多聴、発音について)についても説明している。

    本書が提案する英語学習の大まかな流れは、語彙力を鍛える→スキーマを構築する→アウトプット、である。

    # 感想
    まず、楽に学べないことを知る。「片手間の勉強で、プロフェッショナルレベルの英語を習得することは無理」
    その上で、英語学習の道しるべを示してくれる。そこを歩くのは自分。厳しいようであるが、「楽しみながら英語の達人になろう」と寄り添ってもくれる。
    檄を飛ばされた気分だ。自分も頑張ろうと思った。

    スキーマの強固さについては、自分自身にも日本語で心当たりがある。存在と書くとき誤って在から書き始めたり、静の字を争から書き始めてしまったり。忘れた頃にまた間違えてしまう。母語でこれなんだから、外国語でも強い影響を持つんだろうな、と。

    レビュー#2

  • 面白かった!
    著者が本書のターゲットとして考えているような英語上級者は全く目指していませんが(苦笑)、単純に読み物として楽しめました(笑)。
    母語が違えば、認知も違う、従って、表現方法が違う、という説明は、とても納得です。

    「『スターリーがルチってる』のはどっち?」の実験は特に印象に残りました。
    (日本語の動詞は方向を含むことが多い一方で、英語の動詞は一般的に状態(動き方)のみを表現して、方向性は前置詞の併用で表現する)

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著者プロフィール

慶應義塾大学環境情報学部教授。専門は発達心理学、認知科学。著書に、『ことばと思考』『学びとは何か』(岩波新書)、『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマー新書)、『言葉をおぼえるしくみ』(ちくま学芸文庫)などがある。

「2020年 『親子で育てる ことば力と思考力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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