地域衰退 (岩波新書 新赤版 1864)

  • 岩波書店 (2021年1月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784004318644

作品紹介・あらすじ

なぜいつまで経っても地方に「景気回復の温かい風」は届かないのか。長野県須坂市、同県王滝村、群馬県南牧村などの事例を通して、製造業、リゾート、建設業等、基盤産業の衰退後に地域が辿ってきた「衰退のプロセス」を詳細に検証。国の「規模の経済」に基づいた政策誘導が逆に危機を深刻化させている実態を明らかにする。

みんなの感想まとめ

地方の衰退とその背景を深く掘り下げた本作は、地域経済の現状を鋭く分析しています。著者は、若者の雇用環境の改善を人口動態の変化に起因すると厳しく指摘し、地方の雇用創出の重要性を強調しています。また、地域...

感想・レビュー・書評

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  • 著者は、若者の雇用環境が改善された点について、「アベノミクスの成果とは言えず、単に人口動態で若者人口が減ったからに過ぎない」と厳しい。一理あるとは思うが「地方の若者の働き口といっても医療・福祉が多く、今後、地方の後期高齢者が減少し始めると、それに合わせて、これらの仕事は確実に減ってしまうから、そうなる前に新たな働き口を作っておかなければならない」という指摘は良い。

  • ぺティ・クラークの法則 1次→2次→3次産業構造への移行
    サービス経済化 大消費地が正義 サービスはストックできない、移動できない。
    企業内分業体制が地方の「発展なき成長」に寄与してしまった。
    地方には単純労働をさせて、大都市には高付加価値を付与するものを残した。
    地方の兼業農家は景気の調整弁であった。
    兼業農家が死滅した後に派遣労働者で労働力を補ったという感想。
    基幹産業が衰退した地域は衰退せざるを得ない。
    「地域外に生産物を移出し、地域外から所得を得る基盤産業が衰退した地域は、衰退することが避けられない。」p89
    資本主義システムが人、富の集まる場所にさらに人、富を呼び込むようにできている限りは、東京や大都市一極集中は経済合理主義的に正しい。そのため、今の地方衰退は時代の流れであり、それが間違っている、是正すべきだというなら、地方に対して相当なインセンティブが必要である。それができないのなら、地方衰退は社会システムの変化の過程と歴史が証明する日がくるかもしれない。いい大学に入り、いい会社に入ることが正義の世の中なら仕方がない。いい大学もいい会社も大都市にしかないのだから。

  • 読書ノートあり

  • ふむ

  • 良い本だなと思った、というのは覚えているが、それ以上が抜けてしまっている。

  • 背ラベル:601.1-ミ

  • 資本主義の理論では当然視されていた規模の拡大、規模の集積化が、地域経済の衰退の原因になっているのでは無いかと問題提起をおこなっている。

  • <目次>
    第1章  地域はどれくらい衰退したか
    第2章  衰退のメカニズム
    第3章  衰退の「臨界点」
    第4章  「規模の経済」的政策対応の問題点
    第5章  地域衰退をどう食い止めるか

    <内容>
    第1~4章は日本の地域経済・政治を冷静に緻密に分析する。第2章の長野県須坂市、岐阜県王滝村、第3章の群馬県南牧村などの生々しい例も。ただ第5章がやや薄い。具体例(成功例)が少ないということか、日本の地方経済、政治の立て直しはかなり難しいのだろう。そもそも民主主義や資本主義がすでになじまない状態になっているのかもしれない。

  • 地域衰退。
    客観的に論じ、
    精神論でなく分析的にこの先を見据える著書だと思い、
    購読。

    また、事例としている地域が、
    著者の故郷であるという長野県の市町村であり、
    私の記憶にも符合するものがあった。

    2つの点で思考を深くした。
    1.
    地域の企業がいなくなると、地域経済は落ち込む。
    しかし、だからと言って
    「誘致しよう」と傾倒するのは違う、と言いたい。
    これまで、「○○城下町」に胡坐をかき、
    その企業に依存して、リスクヘッジを持たなかったから、
    その地域は「衰退」したのだ。
    企業は、ある土地固有の資源に基づいていない限り、
    どこでも生きていける存在と考えるべきだ。
    地域固有の資源に根差した、根を張った産業でなくては、
    その地域を永続的に支える産業にはならない。


    2.「衰退」という表現は正しいのか。
    本書への批判となるが、私は大事な問題提起だと考える。
    果たして、今地域で起きているのは「衰退」なのか?

    これまで私はいくつもの地域政策に関する本を読んだり、
    実際の地域をいくつも見てきた中で、
    人口減少や「過疎化」を、「衰退」と捉えることが間違いだと考えている。
    人口減少は単なる変化であり、ある意味必然なのだ。

    日本の可住地面積は主要な先進国に比べて小さく、したがって人口密度は高い。
    「なぜ人口が減ってきたのか」といえば、
    今の社会システムは今の人口規模と人口増に適していないから、
    人口の方がシステムに合った姿に変化していくということなのだ。

    その調整局面が今であり、シン・ニホン(安宅和人 著)によれば、
    人口減少はおそらく2100年くらいまで続き、日本の人口は4,000~5,000万人まで減る。

    だから人口減少は、別に悲劇でも何でもない。
    ついつい人間は、特に日本人は、そうしたことを「衰退」「下り坂」などと、ネガティブに捉えるが、
    環境・社会システムに対して、人口が適正な規模へキャリブレーションされつつある局面にすぎないのだ。
    むしろ、青天井でいつまでも増えていくことの方が不自然でおかしいし、恐ろしい。
    適正な揺り戻しの開始という人類史上初の、歓迎すべき歴史的な局面に、我々は立ち会っているのだ。このことを光栄に思う。

    だから、今考えるべきは、その変化にあった社会のあり方に変えていくことだ。
    具体的には、インフラとその維持更新費用は、
    明らかにこれからの人口に見合わないものであるから、
    これらは身の丈に合った形に変えないといけない。

    本書の「総括」の要素は良い。
    例えば、リゾート開発や企業城下町などへの依存、
    人口や入込客への希望的観測など。
    しかし、総括の方向性が誤りだ。
    つまり今の状況を「衰退」と捉えているということは、
    これまでの人口増時代のやり方を肯定しているということであり、
    総括として矛盾することになる。

    私が考える適切な総括としては、
    「人口増だけを至上とし、それが永続的に続くと盲信して、
     持続不可能な財政・地域経済の構造にしてしまったので、間違いだった」
    とシンプルに述べればよい。
    そして、今起きている変化については、
    「現状の環境や経済規模に見合う適切なサイズに
     人口が調整されつつある局面なので、
     それに見合ったサイズに社会インフラや制度を見直す必要がある」
    という方向性で、今起きつつある新しい動きを助長すべきだ。

  • 地域衰退について、いくつかの側面から考察し、提言を行っている。

    ただ、全体としてさまざまな資料をもとにした現状分析に終始している感がある。著者の主張をより強調した方がよかったのではないか。

  • 予想した内容。

  • ケンミンショーやポツンと一軒家など人気テレビ番組で地方の良さをアピールしているが、本書を読むと地域コミュニティの衰退がよく分かる。
    中でも面白かったのは、土木業と介護労働者の話。自治体が公共事業を土木業者へ発注する際には、事業者を資本規模に合わせてランク付けする。同じく、案件もランク付けされており、事業者は自社のランクに合った案件しか受注できない。例えば、海峡大橋の建設はランクAの業者しか受注出来ないが、河川の堤防工事はランクCの業者しか受注出来ない。このランク付けにより、地元業者の受注機会が保証され、ひいては地元経済の活性化と雇用創出に寄与してきた。しかし、高齢化が加速化する中では自治体の予算は公共事業から民生費へシフトしており、地元の土木業も立ち行かなくなっている。土木業以外の基盤産業が無ければ、労働者は雇用機会を求めて地域外へ行くため、地域経済はますます弱体化する。
    一方で、高齢化により介護・福祉関係の有効求人倍率は増加傾向にある。つまり、今の日本の地域は、基盤産業が無く働き手がますます減少すると同時に、高齢化に対応するため介護労働者の需要は増大している。もちろん、高齢者の介護は重要ではあるが、介護は基盤産業にはなり得ず、地域の弱体化を食い止めることが出来ない。
    地域における産業創出の重要性について、上記の様な背景も踏まえて理解でき、非常に興味深い本だった。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1864/K

  • 地域産業が衰退し、人口が減っていくのはどういうことかをデータをもとに解説。少子化の時代になり、人口減はどこの自治体でも起こっていることだろう。しかし、その実態はそれぞれ事情が異なることも見える。公共サービスやエネルギーなど、地産地消型を目指すのが人口減でも必要な施策なのではないかと思えた。これからは地方自治の時代なのではないだろうか。

  • 観光産業などの人の往来を前提とした産業ではなく、小規模の林業、小規模の水力発電事業などにより雇用を地方に生み、地域の衰退を食い止めるという著者の主張。

    埼玉県内にも医師の数がゼロの自治体があるとは驚いた。

  • あまり理解しないまま、とりあえず読了。

    ・農業は大規模化してもその分機械が必要になる。n倍の面積を耕作するにはn倍の機械が必要。なので大規模化には向いていない。
    ・農業も林業も小規模化を目指すべき。
    ・企業城下町は人口の増減、街の発展がその企業の経営に大きく左右される。
    ・リゾートで一発当てようと思ってもことごとく失敗してあとには巨額の負債が残っている。特にコロナ禍では観光系は厳しい。
    ・地方にも各種業種が揃って、東京の企業とやり取りすることなく地元で完結するような経済が望ましい。

    あまり真剣に読んでないので、読み取れたことと、筆者の主張に齟齬があるかもしれないけど印象的だったのはこのへん。

    で、疑問。

    ・日本全体で人口減なのに小規模農家は実家可能か?人が減ってるのに?人が減って規模を大きくしないならとれ高が減るのでは?
    ・地方ほど男女格差が大きく、教育格差も大きい。地方にも多様な業種があればそのあたりは徐々に解消していくのかもしれないけど、解消していくスピードより人口流出のスピードの方がはるかに早いだろう。

    『スモール イズ ビューティフル』からの引用で、
    『人間というものは、小さな、理解の届く集団の中でこそ人間でありうるのである。』p.128が最も胸に響いた一文だった。

  • ・地域経済の成長を牽引するのは、地域外に移出され、当該地域に所得をもたらす基盤産業であるという移出ベース理論に立つ。
    ・有効求人倍率が高いのは、地域衰退の指標でもある。
    ・製造業事業者の減少が人口減に直結していない傾向もある→事業所サービスの存在
    ・日本全体の行政投資額に占める国の割合は2割程度。自治体に実施してもらうための誘導策が地総債。
    ・国による地方単独事業の誘発は各地方に存在する建設業者の経営に寄与したが、自治体の財政を悪化かせた。公債費が増大する中で、自治体は公共事業費を削減。
    ・事業所サービス業は大都市圏に偏在する。農業的地域では個人消費と一般政府への最終消費支出の依存が強い。
    ・地方では公共サービス業(医療・介護)に特化していく傾向。背景には高齢者に対する社会保障給付。
    ・公共サービスの中でも医療や教育が成り立ちにくくなるほど人口減少が進んだ状態は、地域衰退が止まらなくなる臨界点であると言える。
    ・サービス業の占める割合が大きい自治体は財政力が高い傾向。
    ・農業、林業、市町村合併、大規模化政策は成果をあげていない。
    ・対策
     ①医療政策 医療サービスの維持 診療報酬
     ②政策誘導の廃止
     ③新たな産業作り 小水力発電
      事業所サービス事業者の育成と地産地消
      中小企業者のIT投資 移入代替

  • 地域外からお金を引っ張ることができる移出型の企業が無くなると地域は衰退する。基盤産業の衰退。

    日本は第三次産業が主要産業でありサービス経済化している。
    地域は、移出型サービスである事務所サービス業が発展する首都圏大都市と、高齢化の進展に伴う社会保障給付の増加を背景とする医療介護を中心とした公共サービス業に特化するそれ以外の地域に二極化している。後者は衰退が避けられない。

    「地域外に生産物を移出し、地域外から所得を得る基盤産業が衰退した地域は、衰退することが避けられない。」p89


    地域衰退の原因を論じる本は様々ありますが、本著はシンプルなストーリーかつ説得的な分析で原因を示しており、興味深く読めました。
    提案部分では、需要変動のリスクが低く、安定的な需要が見込める移出型産業を地域に興す必要性と、
    移入していた事業所サービス業の地産地消化の必要性を述べている。
    そしてその具体的な道筋は安易にコンサルタントに投げるのではなく、地域の人たちが考えて作っていくべきだとも。

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著者プロフィール

宮﨑 雅人(みやざき・まさと):1978年生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程単位取得退学。博士(経済学)。現在、埼玉大学学術院教授。専門は、財政学・地方財政論。著書に『自治体行動の政治経済学』(慶應義塾大学出版会、2018年)、『収縮経済下の公共政策』(四方理人・田中聡一郎との共編著、慶應義塾大学出版会、2018年)、『地域衰退』(岩波新書、2021年)など。

「2025年 『地域戦略の考え方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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