地域衰退 (岩波新書 新赤版 1864)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 14
  • Amazon.co.jp ・本 (185ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318644

作品紹介・あらすじ

なぜいつまで経っても地方に「景気回復の温かい風」は届かないのか。長野県須坂市、同県王滝村、群馬県南牧村などの事例を通して、製造業、リゾート、建設業等、基盤産業の衰退後に地域が辿ってきた「衰退のプロセス」を詳細に検証。国の「規模の経済」に基づいた政策誘導が逆に危機を深刻化させている実態を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • <目次>
    第1章  地域はどれくらい衰退したか
    第2章  衰退のメカニズム
    第3章  衰退の「臨界点」
    第4章  「規模の経済」的政策対応の問題点
    第5章  地域衰退をどう食い止めるか

    <内容>
    第1~4章は日本の地域経済・政治を冷静に緻密に分析する。第2章の長野県須坂市、岐阜県王滝村、第3章の群馬県南牧村などの生々しい例も。ただ第5章がやや薄い。具体例(成功例)が少ないということか、日本の地方経済、政治の立て直しはかなり難しいのだろう。そもそも民主主義や資本主義がすでになじまない状態になっているのかもしれない。

  • 地域衰退。
    客観的に論じ、
    精神論でなく分析的にこの先を見据える著書だと思い、
    購読。

    また、事例としている地域が、
    著者の故郷であるという長野県の市町村であり、
    私の記憶にも符合するものがあった。

    2つの点で思考を深くした。
    1.
    地域の企業がいなくなると、地域経済は落ち込む。
    しかし、だからと言って
    「誘致しよう」と傾倒するのは違う、と言いたい。
    これまで、「○○城下町」に胡坐をかき、
    その企業に依存して、リスクヘッジを持たなかったから、
    その地域は「衰退」したのだ。
    企業は、ある土地固有の資源に基づいていない限り、
    どこでも生きていける存在と考えるべきだ。
    地域固有の資源に根差した、根を張った産業でなくては、
    その地域を永続的に支える産業にはならない。


    2.「衰退」という表現は正しいのか。
    本書への批判となるが、私は大事な問題提起だと考える。
    果たして、今地域で起きているのは「衰退」なのか?

    これまで私はいくつもの地域政策に関する本を読んだり、
    実際の地域をいくつも見てきた中で、
    人口減少や「過疎化」を、「衰退」と捉えることが間違いだと考えている。
    人口減少は単なる変化であり、ある意味必然なのだ。

    日本の可住地面積は主要な先進国に比べて小さく、したがって人口密度は高い。
    「なぜ人口が減ってきたのか」といえば、
    今の社会システムは今の人口規模と人口増に適していないから、
    人口の方がシステムに合った姿に変化していくということなのだ。

    その調整局面が今であり、シン・ニホン(安宅和人 著)によれば、
    人口減少はおそらく2100年くらいまで続き、日本の人口は4,000~5,000万人まで減る。

    だから人口減少は、別に悲劇でも何でもない。
    ついつい人間は、特に日本人は、そうしたことを「衰退」「下り坂」などと、ネガティブに捉えるが、
    環境・社会システムに対して、人口が適正な規模へキャリブレーションされつつある局面にすぎないのだ。
    むしろ、青天井でいつまでも増えていくことの方が不自然でおかしいし、恐ろしい。
    適正な揺り戻しの開始という人類史上初の、歓迎すべき歴史的な局面に、我々は立ち会っているのだ。このことを光栄に思う。

    だから、今考えるべきは、その変化にあった社会のあり方に変えていくことだ。
    具体的には、インフラとその維持更新費用は、
    明らかにこれからの人口に見合わないものであるから、
    これらは身の丈に合った形に変えないといけない。

    本書の「総括」の要素は良い。
    例えば、リゾート開発や企業城下町などへの依存、
    人口や入込客への希望的観測など。
    しかし、総括の方向性が誤りだ。
    つまり今の状況を「衰退」と捉えているということは、
    これまでの人口増時代のやり方を肯定しているということであり、
    総括として矛盾することになる。

    私が考える適切な総括としては、
    「人口増だけを至上とし、それが永続的に続くと盲信して、
     持続不可能な財政・地域経済の構造にしてしまったので、間違いだった」
    とシンプルに述べればよい。
    そして、今起きている変化については、
    「現状の環境や経済規模に見合う適切なサイズに
     人口が調整されつつある局面なので、
     それに見合ったサイズに社会インフラや制度を見直す必要がある」
    という方向性で、今起きつつある新しい動きを助長すべきだ。

  • 地域衰退について、いくつかの側面から考察し、提言を行っている。

    ただ、全体としてさまざまな資料をもとにした現状分析に終始している感がある。著者の主張をより強調した方がよかったのではないか。

  • 予想した内容。

  • ケンミンショーやポツンと一軒家など人気テレビ番組で地方の良さをアピールしているが、本書を読むと地域コミュニティの衰退がよく分かる。
    中でも面白かったのは、土木業と介護労働者の話。自治体が公共事業を土木業者へ発注する際には、事業者を資本規模に合わせてランク付けする。同じく、案件もランク付けされており、事業者は自社のランクに合った案件しか受注できない。例えば、海峡大橋の建設はランクAの業者しか受注出来ないが、河川の堤防工事はランクCの業者しか受注出来ない。このランク付けにより、地元業者の受注機会が保証され、ひいては地元経済の活性化と雇用創出に寄与してきた。しかし、高齢化が加速化する中では自治体の予算は公共事業から民生費へシフトしており、地元の土木業も立ち行かなくなっている。土木業以外の基盤産業が無ければ、労働者は雇用機会を求めて地域外へ行くため、地域経済はますます弱体化する。
    一方で、高齢化により介護・福祉関係の有効求人倍率は増加傾向にある。つまり、今の日本の地域は、基盤産業が無く働き手がますます減少すると同時に、高齢化に対応するため介護労働者の需要は増大している。もちろん、高齢者の介護は重要ではあるが、介護は基盤産業にはなり得ず、地域の弱体化を食い止めることが出来ない。
    地域における産業創出の重要性について、上記の様な背景も踏まえて理解でき、非常に興味深い本だった。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1864/K

  • 地域産業が衰退し、人口が減っていくのはどういうことかをデータをもとに解説。少子化の時代になり、人口減はどこの自治体でも起こっていることだろう。しかし、その実態はそれぞれ事情が異なることも見える。公共サービスやエネルギーなど、地産地消型を目指すのが人口減でも必要な施策なのではないかと思えた。これからは地方自治の時代なのではないだろうか。

  • 観光産業などの人の往来を前提とした産業ではなく、小規模の林業、小規模の水力発電事業などにより雇用を地方に生み、地域の衰退を食い止めるという著者の主張。

    埼玉県内にも医師の数がゼロの自治体があるとは驚いた。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/537267

  • あまり理解しないまま、とりあえず読了。

    ・農業は大規模化してもその分機械が必要になる。n倍の面積を耕作するにはn倍の機械が必要。なので大規模化には向いていない。
    ・農業も林業も小規模化を目指すべき。
    ・企業城下町は人口の増減、街の発展がその企業の経営に大きく左右される。
    ・リゾートで一発当てようと思ってもことごとく失敗してあとには巨額の負債が残っている。特にコロナ禍では観光系は厳しい。
    ・地方にも各種業種が揃って、東京の企業とやり取りすることなく地元で完結するような経済が望ましい。

    あまり真剣に読んでないので、読み取れたことと、筆者の主張に齟齬があるかもしれないけど印象的だったのはこのへん。

    で、疑問。

    ・日本全体で人口減なのに小規模農家は実家可能か?人が減ってるのに?人が減って規模を大きくしないならとれ高が減るのでは?
    ・地方ほど男女格差が大きく、教育格差も大きい。地方にも多様な業種があればそのあたりは徐々に解消していくのかもしれないけど、解消していくスピードより人口流出のスピードの方がはるかに早いだろう。

    『スモール イズ ビューティフル』からの引用で、
    『人間というものは、小さな、理解の届く集団の中でこそ人間でありうるのである。』p.128が最も胸に響いた一文だった。

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