尊厳 その歴史と意味 (岩波新書 新赤版 1870)

  • 岩波書店 (2021年3月22日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (252ページ) / ISBN・EAN: 9784004318705

作品紹介・あらすじ

「尊厳」は人権言説の中心にある哲学的な難問だ。概念分析の導入として西洋古典の歴史に分け入り、カント哲学やカトリック思想などの規範的な考察の中に、実際に尊厳が問われた独仏や米国の判決などの事実を招き入れる。なぜ捕虜を辱めてはいけないのか。なぜ死者を敬うのか。尊厳と義務をめぐる現代の啓蒙書が示す道とは。

感想・レビュー・書評

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  • 「尊厳」は、思想宗教関係なく普遍的な価値を持つと考える人が多いと思うが、そもそも「尊厳」の概念に、キリスト教などの宗教が大きく影響し、さらに尊厳について研究・主張した思想家の影響も大きいことを知った。「尊厳」は法の中でも強い存在感を発揮する。
    難しい本だったが大変興味深かった。

    私は、特にカントの「私たちの人格のなかの人間性」という概念について、さらに考察を深めたいと思った。

  • 人間の道徳は、何を根拠に訴えることができるのか。この本では、人権や道徳の基盤としての「尊厳」の歴史を紐解いたあと、カントを参照しながら「尊厳」について著者の解釈を主張する。
    とても好きな本だった。

    著者は、ヨーロッパにおける尊厳の解釈について、歴史的に4つの解釈がありうるとはじめに説明する。一つ目は、ある身分の人々が持っているとされる「地位としての尊厳」。二つ目は、あらゆるに人間が権利を主張する「本質としての尊厳」。三つ目は、人間の振る舞いの中に厳かな態度を見る「態度としての尊厳」。最後が、三つ目の尊厳から導き出される他者の尊厳に対する「敬意の表現としての尊厳」だ。
    著者は、この四つ目の尊厳の存在を、これまで見過ごされてきたものとして特に強調する。そして、道徳的な振る舞いとは、自分自身の持っている尊厳を貶めないこと、自己に対する義務であるという。

    正直、ドイツやアメリカの法律、裁判といった具体例を扱った第2章に関しては、ちょっと難しくて分からなかった。もう一度読み直す必要がある。
    ただ、この本で面白かったのは、道徳と聞くと、普通は他人のため、他人に対する態度を思い浮かべてしまうが、それとは違った考え方を出しているところだと思う。道徳的に正しいということは、「尊厳ある振る舞い」をすること。それは、他人のいるいないとかとは関係なく、自分自身の中に理由がある……、というようなことを言っているのだと思う。

    まだまだ、内容を噛み砕くことができておらず、本当に自分の理解が正しいのかも怪しいが、とにかくすごく魅力的なことを言っているような気がした。
    道徳をなぜ守らなくてはならないのか。そういった本質的なことを考える出発点となるヒントをくれる本だった。

  • 見聞きするけれど実のところよくわからない「尊厳」について考えるための手引書.著者はアメリカの政治哲学者(チャールズ・テイラーのお弟子さん).

    歴史的展開や議論の整理,アプローチの仕方など退屈しません.内容自体は高度だと思いますが,書かれる言葉は平易で身近で具体的な素材を多く扱うので読み易かったです.

  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90358231

    尊厳という現代における中核的概念が、歴史的・社会的にどのように形成されてきたのか、また、社会にどのような影響を及ぼしているのか、著者がどのように考えているかを読み解いてください。そして。「あなた」はどう考えるか?。この一歩が何よりも大事です。

    (推薦者:行政政策学類 鈴木 めぐみ 先生)

  • 尊厳と聞いて、どのようなイメージを持つだろうか。重層し、ときに現代とは反対の意味にさえ用いられた「尊厳」という言葉ををギリシャ、ローマからカント、カトリック(特にトマス・アクィナス)の思想を辿りながら解説している。
    特に現代社会において「他者の尊厳」とどのように共存していくかという「寛容」の理解・実践のためにも、本書の議論は重要だと感じた。また、東洋と西洋の尊厳観の違いなども興味深い。
    現在アリストテレスの勉強会に参加しているが、ここでの議論にも参考になりそう。

  • 日本語版への前書きにあるように、キリスト教が根本にあり、さらにカントについての批判的考察を行なっている。小人投げを禁止した行政について、投げられる人の尊厳ではなく、主催者の行政で禁止された人の尊厳を保つことなど、すこしおかしいところがある。

  •  「尊厳」をめぐる西欧の歴史をわかりやすく解説。特にカントの考え方、カトリックの考え方、ドイツの基本法の考え方の違いなど興味深かった。
     結局、著者は、尊厳の意義として第4の道「人間としての敬い」を選択する。自分を含めた人を「人間」として敬うことが尊厳とする。それこそ、カント、カトリック、ドイツの基本法の多様な尊厳概念の根底にあるとにおわせている。
     その結論はよくわかるものの、なぜ「人間としての敬い」が求められるのか。その肝心なところは、自分には読み取れなかった。ヒントは提示したよ、後は自分で考えてみて、ってことなのかもしれないが、少しモヤモヤした。

  • まあごくふつうな感じ。やっぱり役に立たない概念なのではないかと思うが、この手の話が手に入りやすい形になってるのはとてもよいことだと思う。いまどきの若手中堅の倫理学者の先生たちが名前をあげる人々が勢揃いしているので、そうした人々と国内の研究者がいったいなにを議論しているのかを一般の人に知らせるという意味もある。もたもたした哲学の味が味わえる。哲学科の2回生ぐらいのテキストにはぴったりだと思う。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1870/K

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著者プロフィール

1946年、イギリスのハーロウに生まれる。オックスフォード大学卒業後、ラジオやテレビの仕事に携わり、フリーライター、教師、ジャーナリスト、パフォーマーとしても活躍。ドイツ児童図書賞や、イギリスで児童図書に多大な貢献をした人物などに贈られる、エリナー・ファージョン賞など多くの賞を受賞。日本で紹介されている本に『きょうはみんなでクマがりだ』(以上評論社)、『モリーのすてきなひ』(フレーベル館)、『悲しい本』(あかね書房)、『ペットのきんぎょが おならをしたら……?』(徳間書店)などがある。

「2019年 『ハヤクさん一家と かしこいねこ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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