労働組合とは何か (岩波新書 新赤版 1872)

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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318729

作品紹介・あらすじ

日本では「古臭い」「役に立たない」といわれる労働組合。しかし世界を見渡せば、労働組合が現在進行形で世界を変えようとしている。この違いの原因は、日本に「本当の労働組合」が存在しないことによる。社会を創る力を備えた労働組合とはどのようなものなのか。第一人者がその歴史と機能を解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 労働組合について調べるため、手に取る。
    どちらかと言うと専門書であり、読んでいると眠くなる。
    しかし、今まで特に考えなかった分野の知識・歴史を知り、以後何かに役に立つ事は確実に思う。

    ブラック企業やワーキングプアへの対策。そして、なんとなく会社に従っている自分に気がついた。

    著者の木下武男さんの言っている事が正しいのか判断する知識を備えていないので、今後もこの分野の書籍は気が向く事に手に取りたい。

  • 労働組合というものを胡散臭く思って育った世代としては、歴史に興味があった。どうして労働組合は力がなく、組織率が低いのか。できれば関わりたくないと若い頃は思っていたが、海外の事例を見ると、労働組合が労働者にとっていかに大切かわかってきた。
    そんな時に、ちょうど出会った本。なぜ日本の労組は組織率が低いのか、どうすれば労働者は守られるのか、ヒントになる。労働組合はやはり労働者を守るものとしてしっかりと機能させなくてはならない。そのためにはみんながその意識を共有する必要がある。

  • 労働組合の歴史と意義がよくわかった。
    労働組合の本質は、企業を超えて業界横断的に同一の労働環境と賃金水準を設定し、それを下回る条件の企業が必要な人員を雇えなくするという共通規則と集団交渉にあり、年功賃金と企業内の養成制度と終身雇用を特徴とする日本では、企業別の組合しか育たず、真のユニオニズムに基づく産業別組合は発展して来なかったが、終身雇用制度が破綻し、非正規社員が溢れる現状において、遂に、ユニオニズムの覚醒と産業別組合・一般組合の発展が求められているということ。
    個人の幸福は、個人の努力と変化する勇気にかかっているという考えに縛られていたが、ジョブ型雇用、同一価値労働同一賃金、産業別組合(または一般組合)のセットによってこれを実現するアプローチもあることが知れた(非生産的な既得権益層が生まれて跋扈するような嫌な予感もするが)

  • 書名の通り「労働組合とは何か」について、歴史の丁寧な記述と分析を交えて説明し、現代日本への提言で締める本である。

    歴史の記述は、前近代の西洋の労働者の生活の解説から始まる。正直なところ最初は冗長に感じたが、本書を読み終えた後に振り返れば、労働者の組織運動の発展のあり方を解説し、前時代的な日本の労働環境を批判する上で必要な記述であったことがわかる。
    そして舞台は近現代に移る。欧州のユニオニズムの発展と、弾圧を目的に生まれた会社組合を経て育った米国のユニオニズムの形態について解説される。
    最後に、本書の半分近いボリュームを以って、日本の労働環境とユニオニズムの歴史の解説と分析、今後への提言が示される。
    日本の労働環境の特徴は、概して言えば、前世紀の年功制と、今世紀の非正規労働の拡大である。
    徒弟制技能養成が不十分だったため、企業内技能養成制度が生まれた結果、企業は養成した労働者の離脱を防ぐため、年功制を生みだした。年功賃金は、企業ごとに属人的で、年齢や勤続が重視され、また企業の介入の余地が大きい。欧米の同一労働同一賃金の仕組みとかけ離れたこの制度が、労働者の貧困とユニオニズムの不在を招いた。また、左派労働運動が自らの政治主義により自壊し、産業別労働組合を創る機会が失われてしまった。日本の労働組合は衰退し、労使協調を是とする総評、そして連合が支配的地位に立つに至った。
    そして今世紀に入り、経済が悪化し年功性が継続できなくなると、企業は非正規雇用を拡大させ、深刻な貧困が広がった。これはまさに、同一労働同一賃金の原則もユニオニズムもない現状により悪化しているものである。日本の労働組合は、各産業の上層のみに存在し、下層労働者である非年功型のためのゼネラル・ユニオンが発達していない。
    筆者は、ここにこそ、急務であるユニオニズムの創造の機会があると説く。関西生コン支部を中心とする、国内のいくつかの労働組合の成功例を紹介し、労働者一人一人の主体性を以って、産業別団体交渉・政策制度闘争による産業構造改革を行う労働運動を提唱する。

    以上が本書の要旨である。現代の日本の過酷な労働問題 (年功制、非正規雇用) については多くの人が知るところだと思うが、労働組合とは何か、どのような歴史を持ち、どのような役割を担うべきなのかは、てんでわからないのが実情ではないだろうか。
    日本において労働組合があまり知られておらず、あるいは単なる左派運動と解されているなかで、著者もあとがきで述べている通り、こうした解説を得る手段はほとんどない。
    少しわかりにくい文章構成があったり、文献不足と感じた部分があったりはしたものの、素人でも読める、歴史と現況を俯瞰する丁寧な解説と分析がある点で本書は有用であり、労働問題に関心のある人にお薦めできる。

  • 労働組合とはなにかを歴史から学ぶ本だった印象。
    日本の労働組合が実際にどう言う動きをしているかというのはあまり書かれてなかった。残念。

  • 労働組合について無知蒙昧な私のような人間にとって格好の入門書.

    欧米における労働組合の歴史は中世のギルドから始めており,日本の運動史についても知ることができ,勉強になります.

    もっとも「?」な所が多々ありますが,あとがきによれば著者は労働組合の専門家ではないのでやむなしということでしょう.

  • この本を読むまで、労働組合について、労働者のための組織という漠然とした知識しかなく、特に日本の労働組合については、政党との癒着など負のイメージを抱いていた。

    労働者を取り巻く環境によって、様々な労働組合の形態があり、それらは労働者自らが築き上げてきたものであった。
    分析編では、個別の事例から労働組合と労働環境の関係を読み解き、労働組合の成立に必要な要素を確認した。

    特筆すべき点は、近年大きく変動してきた労働環境を踏まえ、今後労働組合がどのようになるべきか述べられていることである。日本におけるユニオニズムの不在を解消するため、労働者同士の連帯の仕方は非常に興味深い指摘だった。

  • 国際的な労働運動、労働組合の歴史、そして日本の労働組合の歴史と課題が整理できた。
    大衆運動としての労働組合運動と政治・政党の関わりの課題が認識できた。
    日本の労働者は長時間労働や休日労働の課題、非正規労働者の増加など、貧困と格差が進む中で、より良い労働環境を整えていく立場から労働組合運動を応援していきたい。

  • 労働組合の歴史から現状までわかる。産業別の労働組合は、ジョブ制や同一労働同一賃金を考える上で重要だと思う。あえてジョブ制がわかる、同一労働同一賃金のテーマにしないのは岩波書店らしいとかもしれない。

    いろいろな会社があるが、年齢給や年功序列を維持できない会社の労働組合は機能しないと感じる。また、トレンドに左右される商材を扱う会社には向かないかもしれない。スキルや経験を身につけて転職しやすくなったが、トコトンブラックな会社も増えてきた。色々なことが極端になってきたと感じる。


  • 日本の労働組合の多くは「本物の」労働組合とは程遠い労働組合もどきでした。

    それは経営者などの権力側に飼い慣らされた結果であり,そのような労働組合では真に労働者のための労働組合にはなりえません。

    でも,そもそも「本物の」労働組合とは何でしょうか。そして,そのような労働組合を日本で創るにはどのようにしたら良いのでしょうか。

    労働組合の歴史と現状分析から,その鍵を探ります。

    その際のキーワードは「競争」です。

    労働組合だけでなく,広く,コミュニティ構築を考える上でも参考になりました。

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著者プロフィール

1944年、福岡県生まれ。現在、昭和女子大学大学院生活機構学科教授。
東京理科大学工学部・法政大学社会学部を卒業し、1975年、法政大学大学院社会学専攻修士課程修了。
法政大学などで非常勤講師をつとめ、1999年、鹿児島経済大学(現、鹿児島国際大学)教授。2003年から昭和女子大学福祉社会学部教授。

「2007年 『格差社会にいどむユニオン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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