- Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004318842
作品紹介・あらすじ
岩波文庫版『失われた時を求めて』(全14冊)の完訳を達成したプルースト研究第一人者が作品の核心に迫る解説書。この不世出の大長編は、なにを、どのように語った作品なのか。全体の構成、特長、勘所を分かりやすく読み解く。魅惑の読書体験へといざない、全篇読破に挑戦する人には力強い羅針盤となるスリリングな一冊。
感想・レビュー・書評
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大学で『失われた時を求めて』を読んでから、手に取った。一昨年には読み終えていたのに、なんで感想を書かなかったのか。ぼんやりした自分よ。
出版当初から、話題になっていたけれど、とてもわかり易い入門書だと思う。私は先に講義を受けて、作品を読んで、休暇の楽しみに読んだので、おさらいとしてはすごく入りやすかった。
『失われた時を求めて』の、とても洗練された訳本も、著者は手がけていらっしゃる。そちらも持っているが、併読するとなお良いだろう。正直プルーストのこの本は、すごく長くて、取り組むのに勇気が要る。そんな時に、この本をガイドになさって、概要を知って、それで挑まれてもいいだろう。迷える旅人の良き杖だ。
全編いきなり読みがつらかったら、最初の『スワン家のほうへ』だけでも取り組まれると良い。おいおい続きが読めるはずだ。個人的には『ゴリオ爺さん』と『失われた~』は、読んでおいて良い、面白い作品だ。フランス文学の本をなにか、きっかけにと言われたらそう勧める。ましてこのような入門書があればなお。
最近の岩波新書の中でも、印象に残る本だった。一気に読んでしまうくらいには、興味深かったのだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
突然、読書のモチベーションが雲散霧消してしまった。
それを救ってくれたのが、「文學界10月号」に掲載されていた吉川先生の「見出された『失われた時を求めて』初稿」だった。
最初、ちくま文庫の井上究一郎訳を読んでいた僕は、第5巻で頓挫してしまっていた。
その時出会ったのが、立教大学の公開セミナー「新訳でプルーストを読破する」であり、吉川先生の訳だった。
お陰様で、僕もなんとかプルーストを読破することができた。
僕は、まさに吉川先生によってプルーストに招き入れられたのだ。
だが、文學界の文章を読んで、さらに本書を読み終えた今、自分が一つの無限ループに入り込んでしまっているのを見出す。
本書を読めば、必ずやまたプルーストが読みたくなる。
読みかけの高遠弘美訳、井上訳もあれば、鈴木道彦訳もある。
長い迷路のような回廊のなかへ再び迷い込まずにはいられないだろう。
側から見れば、それはまるでシーシュポスに課された罰のようにも見えるだろうが、僕にとっては、かけがえのない喜びなのだ。 -
岩波文庫での『失われた時を求めて』を読みたくなった。
まったく紐解いたことはないけど、分かりやすい文体になっているんじゃないかと期待できそう。この新書で引用される文章からはそう思える。
それくらい本作品では、あの大作の構造がうまく紹介できていると思うけど。 -
すでに吉川訳を読了した上で、本書を手に取りました。
同じ著者の『プルーストの世界を読む』よりも濃度は濃くなく、その代わり、扱っているテーマが広くなっています。「招待」の題名にふさわしい。 -
”パリの社交界を描いている”という紹介がされることがあるが、なんで現在の自分となんの関係もなさそうなパリの社交界の話なんて読む必要があるんだろうという、当然の疑問に対してちゃんと回答してくれている。”無意識的想起”と”印象”で”時を超えるもの”として”永遠”を描く、というのはわりあい納得。その他もいろいろ示唆に富んでいて、いままで読んだプルースト入門の中ではいちばん腑に落ちた。
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東2法経図・6F開架*B1/4-3/1884/K