ジョブ型雇用社会とは何か: 正社員体制の矛盾と転機 (岩波新書 新赤版 1894)

著者 :
  • 岩波書店
3.97
  • (36)
  • (50)
  • (29)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 556
感想 : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318941

作品紹介・あらすじ

前著『新しい労働社会』から12年。同書が提示した「ジョブ型」という概念は広く使われるに至ったが、今や似ても似つかぬジョブ型論がはびこっている。ジョブ型とは何であるかを基礎の基礎から解説した上で、ジョブ型とメンバーシップ型の対比を用いて日本の労働問題の各論を考察。隠された真実を明らかにして、この分析枠組の切れ味を示す。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • メンバーシップ型と呼ばれる日本的雇用システムに対して、日本以外の国々では職務をベースとした雇用・処遇システムが一般的であり、それはジョブ型と呼ばれる。筆者は、その「メンバーシップ型雇用」「ジョブ型雇用」という概念の名付け親である。筆者がこの言葉を著書に書いたのは、2009年のことであり、今から10年以上前のことであるが、最近メディアでこの雇用システムの話題が取り上げられることが多い。ところが、そこで取り上げられる「ジョブ型」の概念が、筆者の提示した概念とは似つかない、事実に基づかないものであることが多く、それを正すことが、本書執筆の目的の1つであると筆者は本書中で述べている。
    「メンバーシップ型」「ジョブ型」等の雇用システムに関してのメディアでの取り上げられ方は、どちらかと言えば、ジョブ型に肩入れしたものが多いように感じる。日本企業の生産性が低いのは、ひいては、日本経済全体が振るわないのは、その雇用慣行に原因の一つがあるという主張である。
    1980-1990年代には、実は日本型雇用、それをベースとした日本型経営は世界でもてはやされた。「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」という本がベストセラーにもなった。当時の論調では、時代の変化に応じて仕事の内容は変わっていくが、欧米のジョブ型雇用ではそれに対応できず(雇用契約と異なる仕事はさせられない)、企業の中での能力開発を重視し、また、柔軟なローテーション・配置転換を通常の慣行としてきた日本企業は、そういったことに柔軟に対応できるというものであった。ただ、これは、主として製造現場での議論であったような気がする。
    ほんとうに、日本のメンバーシップ型の雇用が日本企業、ひいては、日本経済の低生産性の原因のひとつなのか、ということに対しての実証的な論文は読んだことがない。その因果関係を示したデータは見たことがないし、なぜそうなるのか、というきちんとしたロジックも見た記憶もない。それは、雇用システムだけの問題ではないのではないか。企業のガバナンスの方法や、事業開発の方法(例えばM&Aやベンチャー投資や大学・他機関との協業の巧拙など)等、日本的な「経営」システムが、トータルとしてどうなのか、という問題にような気がする。
    ただし、本書は、そこを突っ込んで考えている訳ではない。雇用システムに関しての議論の前提としての、メンバーシップ型、ジョブ型の雇用システムに対しての理解が(特に日本以外の国での標準的な雇用システムであるジョブ型に対しての理解が)正しくないために、議論そのものが成立していないことを憂いているのである。
    企業の人事や経営計画部署にいる企業スタッフの人たちや、実際に経営にあたられている方々、あるいは、日本の雇用システムに関する議論に関心をお持ちの方にとっては、非常に役に立つ雇用システムに関しての解説書だと思う。

  • 久々に書店をぶらぶら歩いて本著を購入したんですが、いま新書って1,000円以上するんですね。ページ数が多いのもあるんでしょうが、レジで軽く動揺してしまいました(笑

    さて、最近大企業でジョブ型雇用の導入が進んでいる、なんてニュースを踏まえ、勉強しておこうかな…と「ジョブ型」雇用という言葉を作った専門家たる著者の本を手に取った次第です。
    内容は、世の中にはびこる「間違いだらけのジョブ型」を糺し、本来こういうモノだよ、という説明をしてくれる1冊・・・と言うとアッサリしているのですが、本著を読み終えて感じたことは、日本の労働市場に横たわる大きくて深~い闇です。ワタシ、こんな法制下で働いてたのか。。
    説得力がありすぎるけど、同時にいきなり目の前に巨象が現れたような感覚もあって、「コレ本当なのか?」とすら思ってしまう。戦中の国家総動員体制から延々と場当たり的な対処をしてきた結果、紐はほどけないくらい絡まり、複雑怪奇なキメラが生まれ…
    ジョブ型云々以前にそもそもの土台がメチャクチャなのですが、ジョブ型雇用自身もなかなか無理があって、読んでいてスッキリしない、モヤモヤした気持ちを抱くこと必至です。
    パンドラの箱を開ける気分…は流石に言い過ぎてますが、小学校の裏庭の踏み石(ひっくり返すとダンゴムシとかいるヤツ)を持ち上げているような、そんな不安に駆られながら読み進めていました。。

    「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の何がどう違って…というのは本著で詳説されているのですが、読んでいて感じたのは、著者が「ジョブ型社会とメンバーシップ型社会を隔てる深くて暗い断絶の川」と表現したとおり。
    本当に「ジョブ型社会」に転換するのであれば、今までの日本の常識(新卒採用、人事評価、"能力"の概念、大学教育等々…)を相当転換しないといけないはずだけど、「社会の上層部になればなるほどジョブ型感覚が希薄になるという日本社会のありよう」「大企業正社員型のメンバーシップの中で育てられてきた人の思い付きで政策が進められる傾向が強まってきている」というコトで話が進んでいないご様子…。

    特にゲンナリしたのは、昨今の日本版ジョブ型雇用ブームの目的は「中高年の不当な高給を是正する」ことで、「雇用システム全体のジョブ型化を目指すつもりはなく」というくだり。
    目先の問題に小手先で対処しようとして、長期的には泥沼にハマっていく…実に日本的だなぁと思ってしまいますが、どこの国も似たようなモノなんでしょうか。

    これらを踏まえ、本当に日本企業はジョブ型雇用を推し進めていくべきなのか?
    ジョブ型雇用と言うからには「こういうコトするジョブです」がキッチリ定義されていないといけないんですが、「余白を埋める」ことが職務になっているような日本の正社員の文化でそんな定義が可能なのか?
    (「その他」や「等」の方が主業務になる悪夢が何となく浮かびます…)
    また、これからDXが進んで作業内容が変わったり、取り組むビジネス自体が変わっていく世の中で、「定義」を今キッチリ固めるコトにどこまで意味があるか…

    そうすると、雇用制度を一度リセットでもできればスッキリするんじゃないか、とも思ったのですが、著者が労働組合の位置づけについて論じた解決策は「むしろ無理にすっきりさせないことが大事」と。
    シンプルに考えればこう、というのを進めても別の切り口で事態が悪化してしまう。深く実務に根差した専門家の矜持を感じました。

    ちなみに本著の筆致、もう還暦を回られているとは思えない若さと破壊力を感じます(笑
    労働関連法令を「ザル法」と断じたり、「日本特有の善意のパワハラ」と言ったり、微妙に文中に皮肉っぽいユーモアが含まれているような。
    難しい用語もちょいちょいあるのですぐ読み終わるタイプの本ではないですが、旧来型日本企業に勤めているのであれば、一度は読んでおいては良いのでは。

  • 「ジョブ型雇用」とは近頃、よく耳にするようになったワードだが、なんとなくのイメージはもっていたもののその内実はよくわからなかった。

    本書が新書大賞2022の第6位受賞作品ということを知り、ジョブ型を深堀してみようかなと思ったこと、また年功序列・終身雇用の生粋のTheニッポンビジネスパーソンにとってはちょっとした脅威なのではないか、などと思い軽い興味も手伝って本書を手に取ってみた。

    「ジョブ型」というワード自体、著書が十年以上も前に提唱していたとは初めて知った。

    本書で「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の相違については口酸っぱくなる程、繰り返し述べられているので理解は出来た。
    「ジョブ型雇用」を平たく言えば、職務評価がヒトの評価ではなくジョブそのものの評価でありジョブに値札がついている、ということだ。

    少し注文をつけるとしたら、著者が当たり前の論理として述べられていることが私には論理が通らない箇所が散見され多少のわかりづらさがあった。
    著者の表現力の問題なのか私が理解力のなさなのか…

    また、カードル、レリバンス、アンビバレンツ、ミームなどの分かりづらいカタカナ言葉には辟易した。

  • ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違いがわかる本である。ジョブ型雇用は、特定の仕事の内容を決めて、それについて雇用する形態であり、職務遂行能力ではない、ということである。したがって職務遂行能力を査定したり、ヒラまで査定するものではない、としている。多くは間違いの理解が行われている、という。最初の部分だけ読んでも役に立つ。大学の場合は、ある科目を教えるための非常勤がジョブ型であり、その科目が無くなると職が無くなる、ということである。しかし、業績や教員歴を求めるのはおかしいことになる。

  • 日本においてジョブ型、メンバーシップ型という言葉を生み出した著者。ジョブ型社会について解説し、良くある勘違いを訂正していく一冊。新書でコンパクトにまとまっており非常にわかりやすかった。

    なんとなくジョブ型とか職務給、職能給の概念はわかっていたつもりではあったが、例えば「ジョブ型社会だと成果主義で解雇もひんぱんにありうる。」
    といった説明を、違和感なく受け入れてしまったので、著者からすると、それでは全然解っていないということであった。

    いま日本でもジョブ型雇用のブームが起き始めているが、
    あくまでも日本型のジョブ型であり、
    本質はメンバーシップを維持したお手盛りジョブ型になるだろうと言うことがよくわかります。

  • ジョブ型の誤解を正してくれた

    しかし、肝心のオチ(筆者の意見、主張、解決案、結論)が書かれず、複雑なことになっています。とだけで尻切れトンボ。
    また、著者の頭の良さや博識は見てとれるが、書き振りも嫌味っぽいところが多分にある。知識としては面白いのだが、もう少しポジションを取って書いて欲しいと感じる

  • いろいろと勉強になった。
    ジョブ型とメンバーシップ型は本来どちらが上というものではなく制度として違うものであるというだけであるが、近年はジョブ型礼賛の風潮があり、しかもそれがジョブ型の趣旨を正しく理解していない言説になっていることを問題視して著されたもの。
    ジョブ型とは採用時に職務内容を規定し、その職務を行う能力があるかどうかで採用し、ジョブをこなせているかどうかで雇用継続するか否かを判断するものであり、自動的な昇進や、先輩や上司による教育というようなものが存在しないものである。これに対してメンバーシップ型は、明確な職務の約束がなく、時間も勤務場所も会社側に白紙委任する雇用契約を締結するが、その代わり、業績悪化などによる人員解雇をできる限り回避する制度であり、明確なスキルを持たない者を仲間として受け入れてOJTにより教育していく制度であるがゆえに、副産物として、情意評価や、やる気を見せるための長時間労働や、愛のムチとしてのパワハラや、部下の人事権を持たない管理職や、正社員が全員潜在的な幹部候補生であるという奇妙な状況が生まれているとのこと。

  • ・ジョブとメンバーシップ(会員)どっちが良いとは言っていない。
     それぞれの成り立ちを、かかわる労働政策から事実ベースで解説してくれる。
     打算的なセールストークではないから信頼感あるし写実的な印象。
    ・日本の雇用システム、労働社会、労働法が絡み合っていて根深くて一筋縄ではいかないことがよくわかる。どう咀嚼するかという個人の価値観はゆだねらた恰好。
    ・一方で、それぞれの適応条件がわからず今後の方向性を見出すには至らず。
     何でもかんでも答えを求めるなということか。

    以下備忘
    ■基礎
    ・ジョブ型は成果主義ではない
     ジョブ型はアッパー層しか評価しない、ジョブありきだから。そのジョブが遂行できているかどうかチェックするだけ。例外的に経営層に近いハイエンドはジョブディスクリプションが広範かつあいまいになるので、できている/できていないの二分法では足らず、事細かに評価されるようになる。メンバーシップは末端にいたるまで能力と意欲を評価される。だから長時間労働の温床になる。

    ・ジョブ型は解雇しやすいわけではない
     解雇が自由なのはアメリカだけ。そのほかは解雇規制あり。

    ・メンバーシップ型で誰が得をしていたのか
     若者が得している。女性が1番割くっている。寿退社の短期雇用しかも補助業務。出産後はパート。

    ・労働社会においてはどの部分もほかの部分と深くかかわりあい一つの雇用システムをなしているから部分部分の改善も常に全体像を意識する必要あり。

    ・職務と人間のくっつけかた、雇用契約の性質
     ジョブに人をくっつけるか、人にジョブをくっつけるか。
     ジョブに値札がつくか、ヒトに値札つけれんから客観的な基準が必要で勤続年数や年齢となり年功になる。
     ほかの職務への異動可能性があるから解雇の正当性が低くなり長期雇用・終身雇用となる。

    ・能力評価の「能力」は訳せない。

    ■入口
    ・欠員募集か新卒一括採用か
     長期的なメンバーシップを付与するか否かの判断だから本社の人事に権限がいく。
     ド素人を鍛える必要あることが善意のパワハラの温床。

    ・差別禁止の本当の意味=合理性がない差別は禁止すべき
     合理性とはなにか、当該ジョブに最も適合するスキルを有しているかどうか
     MSはそもそもの前提がない。
     ジョブ型推奨はいいけど、本当に自由な採用を手放す覚悟あるのか、
     ジョブとの適合を合理的に説明するということだぞ。

    ■教育
     ジョブ=企業外の公的教育訓練システム
     MS=企業内教育訓練システム(徒弟制・OJT)
       教育内容よりも偏差値
       技能を身に着けているかどうかよりも訓練に耐えられる素材かどうかの官能性
     
     ・かつては職業教育を重視していた
      50~60年代 経営サイドの声も踏まえて法整備や政策推進するも教育界の反発あり、大企業はしぶしぶ企業内の養成工制度や技術校を形成。その後60年代以降は高校進学率上昇も相まって現在のかたちに至る。

     ・日本の大学:18歳主義・卒業主義・親負担主義(年功的な生活給が当たり前という前提で公的負担ではなく私的負担ひいては本人負担のネオリベラリズムへ)
    ・上級国民には縁のない公的職業訓練だけが世界標準にちかい。
    ・雇用と教育は鶏と卵、一筋縄にはいかない
    ・大学はips細胞養成機関から抜け出せるか

    ・リカレント教育
     ジョブ=初めの訓練で得たスキルとジョブでずっと食べていく、技術革新でその前提くずれた、だからリカレント
     MS=OJTが最も重要な職業訓練、ジョブではあり得ない異動でまた素人からたたき上げられる。はずだったが、うまく機能せず、働かないおじさん問題。要は公的な教育を軽視してきたツケ。教育とは下賤な職業と切り離した人格陶治の神聖な場所という虚偽意識が窺われる。

    ■定年
    ・定年は年齢差別
     解雇自由のアメリカでは定年禁止
     欧州では年金前の定年は禁止
    ・定年=mandatory retirement age
    ・65歳雇用義務なので言葉の意味でいうと定年は65歳のはず。60歳は処遇の精算時期。
    ・まだまだ働ける人材を周辺的な仕事に追いやるのは社会的な人的資源の有効活用という点で問題あり。
    ・矛盾の70歳就業機会確保措置
     本来自立しているはずのフリーランスや自発的なボランティアまで会社が面倒見る制度になった。本当に持続可能か。

    ■解雇
    ・借家契約と雇用契約
     大家がマンションたてるからといえば退去させられる。
    ・リストラ(整理解雇)が最も正当なジョブと極悪非道になるMS
     ほかに仕事あるならそれをやらせろ
    ・ジョブは能力不足で解雇し放題かというと、それはあくまで試用期間。その仕事できますといって入ってきたのにできないじゃん。
    ・日本も実は中小では解雇だらけ。大企業とちがってほかにまわせる仕事ないということもあるが貴様解雇もいっぱい。しかも金銭解決の法整備もないので泣き寝入りが大多数。例外措置の権利濫用法理が常用されていることなど、例外のうえに例外を重ねていくしかない法体系になっていおり、地位請求にとどまるが、MSだと雇用維持するけどじゃあまかせる仕事ないからね。という帰結に至って泣き寝入り。

    ■賃金
    ・年齢に合わせて上昇する生活給としての年功賃金制度
     高度経済成長期に能力の上昇によるものだと説明原理を変えたことで泥沼へ。
     引き下げる理屈がたたないから成果主義が協調されるようになり中高年の賃金上昇ストップの動きとなるも、尚も下げるのは至難のわざ。
    ・根っこにあるのは中高年問題。本音でいうと中高年の賃金が貢献に見合わない。
     本当に40代以降も能力が上がり続けると思うか。
    ・教育費や住宅費を欧州とちがって全部賃金で賄わないといけないから生活給だった。
    ・ジョブ型賃金=職務評価によるジョブ型賃金
    ・男女平等と職務評価=女性職種の賃金安くないか?→同一労賃(同一価値同一賃金)
    ・年功/生活給=1922年呉海軍で労働者が左翼思想に走らぬように→戦時中に国の制度として普及→GHQで廃止されるはずだったが労働組合が生活給を作り上げる→労組内で若年層からも疑問の声→能力主義で決着
    ・ご都合主義の成果主義
     ジョブ型ハイエンドの明確な物差しとなる職務明らかでなく恣意的でモラルダウン。失敗に終わった成果主義を今度は物差しとしてのジョブを明確にして再チャレンジしようとしているのが最近のジョブ型ではないか。雇用システムとしてジョブ型を追求するわけではなく単に中高年の不当な高給を是正したいだけ。

    ・生活給の精髄としての家族手当→社会保障としての児童手当を阻害
     家族手当にせよ生活給にせよ、その出発点は妻子を扶養する男性労働者の生活保障

    ☆昔とちがって生活できるようになったでしょ。もう豊かになったでしょ。だから生活給捨てるではいかんのか。能力ゆえに正当という既得権意識との闘いならば、成果主義の対象範囲を絞って精緻にやる方向はどうか。若年は教育システムとのつながりもあるけど、少なくとも基幹職は。

    ■労働組合
     ジョブ型の組合=賃上げのみ。従業員代表は別組織。同一職業同一産業の利益代表組織、賃上げ
     MSの組合=両方。社員による社員のための組織。企業別なので、競争条件悪化して市場を失わないように足並みそろえるための春闘。カルテル。

    ・労働は商品ではない
     アメリカの反トラスト法(独占禁止法)が労働組合に適用され摘発されていた。
     それを踏まえて適用除外のために労働は商品ではない。
     会社のメンバーだから商品扱いするのはけしからんという話ではない。

    ・日本の法制度では会社はそのメンバーである株主の所有物であり、経営者は株主の利益を最大化する、労働者は会社外部の第三者で雇用契約によって労働を提供し報酬を得る債権債務関係に過ぎないが、一般的には社員がメンバーで株主が外部の第三者という意識になっているのは「企業民主化試案」イデオロギーの遺産か。
    実定法と実体の隙間を埋めてきたのが判例。権利濫用法理という例外を常用してきた。

    ・欧州=自発的組織としての産別組合+公的な従業員代表組織
     日本=一体となっている。企業別組合のない中小は雇用関係のバランスとれていない。公的な従業員代表組織必要ではないか、けど既存の企業別組合どうなる?団体交渉の意味合い薄れる中誰も組合費払わなくなる。→組合機能と従業員代表機能に分離してはどうか。組合機能=組合費で組合員のために、外部連携もしながら団体交渉。従業員代表組織=会社費用で非正規含めて色々な折衝を。
    ※結局非正規の賃金はどっちで扱うんだ?

    ・70歳までの雇用努力義務で労使協定で対象者を限定できる。
     シニアは非組合員なのに。もう一度組合と非正規の関係を考えるべきではないか。

  • 「新しい労働社会」で提唱されたジョブ型雇用がいよいよ日本でも導入の機運が高まる中、雇用の本質的問題を改めて問い直す絶好のタイミングで出版された一冊と思う。経営者、人事担当者、人材ビジネスにかかわるすべての人は必読だ。ジョブ型はメンバーシップ型のアンチテーゼのように見えるけれど、そもそも世界では一般的な組織の在り方で、日本のメンバーシップ組織の特殊性の方が浮き彫りにされていく。(1990年代は日本のメンバーシップ型組織こそが理想と世界でもてはやされたのだが)。私たちの価値観はもちろん、児童手当等含む社会保障や社会構造のすべてがメンバーシップ型組織ありきで生成されてきた日本の社会の歴史と構造をしみじみ振り返る。自分の血肉の中にも埋め込まれているメンバーシップ型。読み進むにつれて「こんな日本の社会にジョブ型等本当に導入できるのか!?」と思いを巡らせば、「わが社はジョブ型とメンバーシップ型のハイブリット型を目指します」なんてうそぶく会社の記事がニュースで目に留まったりして。ただ言えることは、日本の雇用の本質的問題をないがしろにしたままジョブ型の導入をしたところで、それは単なるリストラの道具か研修屋を設けさせる商機で終わってしまうということだ。

    本書でも前著でも、日本の雇用問題から派生する労働関係法規やガイドラインは、いかに、本質を横に置いたなし崩し的議論で成り立ってきたかという視点が目立つ。前著ではこれがどちらかというとマスコミの扇動的報道に一般市民が振り回されてきたことへの批判的視点があったが、本書ではマスコミには触れず、政策関係者の様々な思惑の入り乱れた設計過程に鋭い目が向けられている。この10年の間にマスコミは扇動力を失い労働議論の場もSNSやネットに移ってきた時代の変化も見て取れるような気がした。

  • 題名どおり「ジョブ型雇用」について明快に解説した書籍。雇用制度には変遷があり、教育制度とも関連しているため「メンバーシップ型からジョブ型に転換すれば日本は復活する」などという単純な話ではないことが良く分かる。ジョブ型雇用に関する記事、特に礼賛系の記事は批判的に読む方が良さそうだと感じた。

全63件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

*2008.11.17現在労働政策研究・研修機構労使関係・労使コミュニケーション部門

「2013年 『福祉と労働・雇用』 で使われていた紹介文から引用しています。」

濱口桂一郎の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ヴィクトール・E...
J・モーティマー...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×