最澄と徳一 仏教史上最大の対決 (岩波新書 新赤版 1899)

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感想 : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004318996

作品紹介・あらすじ

これは問答か、謗法(ルビ:ほうぼう)か。平安時代初期、天台宗の最澄と法相宗の徳一が交わした批判の応酬は、仏教史上まれにみる規模におよぶ。相容れない立場の二人が、五年間にわたる濃密な対話を続けたのはなぜだったのか。彼らは何をどのように語り合ったのか。「真実」を求める論争を解きほぐして描く、仏教史の新たな見取り図。

感想・レビュー・書評

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  •  著者は花園大学文学部教授.専門は.電子テキスト研究・文字=キャラクターの一般理論・仏教思想研究(特に唯識思想・仏教論理学等).


     コンピューターに入力・表示できる文字は,現在では格段に増えている.ごく初期のコンピューターでは,英語のアルファベットと数字,空白,句読点など(アスキーコードと呼ばれる128種類)が使えた.次の時代は,日本において,半角カナが使用できるようになって,日本語人にとっては,コンピューターからのプリントアウトの可読性が増えたが,後々,英語版のOSと衝突することが多かった.

     その後,2バイト(=16ビット)で文字を識別する文字セットが使用可能になり,65536個の漢字などが使用できるようになった.しかし主要部分以外の漢字は,コンピューターのメーカーごとに違っており,IBM漢字セット,富士通漢字セット,NEC漢字セットなどなど(たぶん漢字セットの正式名称ではない)が存在し,漢字を含むデータをメーカー間で移行するには,漢字のコンバーターが必要であった.また「半角アルファベット:A」と「全角アルファベット:A」,「半角カタカナ:ア」と「全角カタカナ:ア」,「半角記号:@」と「全角記号:@」が混在するなど,日本語に今までは無かった混乱を引き起こすこととなった.

     最近では,ユニコードが採用され,日本語をはじめとして,ほとんどの世界の文字が,コンピューターで使用できるようになっている.

     著者の師茂樹さんは,このあたりの,文字コードや電子テキストの研究をされているのだと思っていたのですが,この仏教についての本を読んで,仏教の研究もされていることを知ったのでした.

     著者は「はじめに」で,仏教思想の概略をまとめている.
    1.インドでの仏教主流派(部派).仏陀は一人であり,修行者は阿羅漢をめざす.
    2.インドでの大乗派.仏陀は複数存在し,信者は仏陀となることをめざす.
    3.中国の唯識派.五姓各別.個々人の性質により修行方法はさまざま.日本では法相宗.
    4.中国の一乗派.誰でも仏陀になれる.日本では天台宗
    これには,同じ花園大学所属の佐々木閑さんの
    0.インドでの釈迦の仏教.
    も加えたいところだ.

     個人的には,法相宗の五姓各別が好ましい.実際にそのような範疇(五姓)に該当する人がいるかどうかは別として,論理的に,仏陀になる素質を3種に分けるだけでなく,素質を複数持つ可能性,素質を全く持たない可能性,をも検討していこうとする態度が非常に好ましい.「救われるかどうかの非常時だ」という切羽詰まった状況にあっても「こんな可能性も検討すべきだよ」という余裕は持っていたいと思う.

     そして,著者は最澄・徳一論争を「一乗派対三乗派」という単純化した二項対立的な構図でとらえるべきではないと,説く.複雑なものを単純化して捉えようとすることは,「知的な(そしておそらくは倫理的な)怠慢である」と.

     とはいうものの,著者はこの後の,第1章と第2章で徳一と最澄の人物像を詳細に紹介し,第3章と第4章で仏教内部における考え方のバラエティーを紹介してくれる.さらに第5章では,そのバラエティーが「仏教史」のなかでどのように表現されているかを検討する.

     著者は終章で,丸山真男の言った「雑居性」という概念を用いて,最澄・徳一論争をはじめとする日本における論争に,新しい視点を与えようとしている.弁証法を用いることにより論争の結果として新しい単一の真理に到達するのでなく,論争によって「雑居性」が増し,いよいよ現実が複雑化していくことを楽しんでいるようだ.

     アカデミックな仏教学,信仰告白ではない仏教学の典型を教えていただいた気がする.


    2022.02

  • 書かれている内容は難しい。使われている漢字すら難しい。仏教関連の固有名詞だからしょうがないけど。でも最澄と徳一の論争の背景はもとより、資料の量からして最澄側の分量が多くなってしまうとはいえ、お互いの論の組み立て方や思想を形作った事柄が整理されてわかりやすく記述されている。(と言っても中身がどこまで理解できたかは怪しい)

    最澄と徳一の論争もさることながら第五章の最後から終章に書かれた筆者の「論争」そのものに対する捉え方や歴史の使用方法に対しての考え方、さらには本書で説明されている因明(読んでいて新鮮な考え方だと感じた)などの研究エリアに対する考え方など、本書そのものをめぐるメタな視点についての記述に知的好奇心を刺激された。

  • 2021年10月24日購入。

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/1899/K

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000054439

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著者プロフィール

花園大学文学部教授 専攻=仏教学、人文情報学
『論理と歴史──東アジア仏教論理学の形成と展開』(ナカニシヤ出版、2015年)、『『大乗五蘊論』を読む』(春秋社、2015年)

「2020年 『療法としての歴史〈知〉 いまを診る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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