ドキュメント 〈アメリカ世〉の沖縄 (岩波新書 新赤版 1921)
- 岩波書店 (2022年3月22日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004319214
作品紹介・あらすじ
戦後、沖縄はアメリカの施政権下にあり「軍事植民地」状態に置かれていた。基本的人権が保障されない中で、人々は厚く巨大な壁にどのように立ち向かったのか。琉球新報の大型企画「沖縄戦後新聞」を読み解きながら、日米琉の視点を盛り込み、さらに同時代を生きた三人の政治家の歩みを重ねてたどる〝もう一つの現代史〟。
感想・レビュー・書評
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「<アメリカ世>の「世」とは、しまくとぅばで「時代」を指す」。
サンフランシスコ講和条約で日本が主権を回復すると同時に、沖縄の日本からの分離が決定した1952年を起点とする。施政権がアメリカから日本に返還されるまでの約20年間について、米国統治下の沖縄で起きた政治的に重要な出来事を時系列順に十二の章に分けて綴る。本文約260ページ。巻末の略歴から、著者自身が沖縄で生まれて長く在沖のジャーナリストとして活動してきた人物だと知る。
戦時中に本土の楯として大きな犠牲となった沖縄だが、昭和天皇による米側への恒久的統治の提案ひとつをとっても、戦後も引き続き本土にとって「明確に「捨て」られる対象」であることに変わりはなかった。米国統治下にあって軍事拠点であることが生活よりも優先され、米兵による民間人にたいする暴行は途絶えることがなく、その罪を裁くこともできない。本書はそのような主権を奪われた現実にあって、主体性の回復、本土への復帰と基地の撤去を求めて行動をつづけた人々と過程を記録する。
情報のソースは当時の新聞報道や、沖縄をはじめ日米の政治家による回想が主となっている。序文では当時の重要な沖縄の政治家として三人の名前が挙がる。なかでも沖縄教職員会会長に始まり、初代公選主席、復帰後初の県知事を歴任した屋良朝苗氏(1902-1997)が第一の中心人物といえるだろう。各章は基本的に時間軸に沿って、本土復帰の過程として重要なポイントとなった個々の事件や運動、政治的な駆け引きなどを伝え、約20年にわたる沖縄の人々の抵抗の足跡を記す。
沖縄の本土復帰について従来の認識と大きく違っていた点がふたつあった。まずひとつは、本土復帰が日米間で早い段階からの規定路線として予定調和的に実現されたものだと考えていた。しかし本書を読むかぎり、1952年の分離以降の沖縄の人々の行動や選択いかんによっては、沖縄で永続的に米国統治がつづく可能性さえあったのではないかと想像させられる。沖縄を軍事拠点として維持しつづけたい米国だけではなく、日本政府も安全保障のために沖縄をいけにえのように差し出す方針が色濃い。終章で「<アメリカ世>を終わらせた最大の要因は、沖縄の人々の民意である」とする著者の結論は、各章で描かれる抵抗の歴史によって印象づけられる。
もうひとつは、沖縄の本土復帰をもっとシンプルに善き出来事として捉えていた点だ。実際には、施政権の返還にともなう日米間の密約を含む諸々の決定事項によって、日本の米軍施設面積の七割以上が沖縄に集中する現実が生まれ。これには、返還直後の時点で「今日の復帰は県民に引き続き差別と犠牲を強いる"沖縄処分"だ」と、本土復帰を祝福するではなく、むしろ憤りを表明する声があがっていたことを知る。
沖縄の返還は本土復帰を望む沖縄の人々によって達成されたかけがえのない成果であることを知らしめるとともに、米国統治下からあった大きな問題はいまも変わらず、返還時の決定が様々な禍根を残していることを、本書は伝える。そしてこの問題の本質は著者が末尾にて示すとおり、1970年代と1995年の少女暴行事件で沖縄撤退も検討したという米国にあるというより、米軍を引き留めつづけている日本の決定にあると思える。問題の根本は、「対米従属的日米関係の矛盾を沖縄にしわ寄せすることによって、日米関係(日米同盟)を安定させる仕組み」にある。沖縄からの視点で、そのことを説得力をもって伝えているのが本書だろう。 -
沖縄がら戦後にアメリカによる占領政策がどのようにして行われたかについて、エピソードをもとにいくつか区切って、説明したものである。それほど新しいことはないが、うまくまとまっているので、読み易いであろう。
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戦後沖縄の苦悩がよくまとまっていてわかりやすかった。
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2022年5月読了。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/771236
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2022072600557