読書会という幸福 (岩波新書 新赤版 1932)

  • 岩波書店 (2022年6月21日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (252ページ) / ISBN・EAN: 9784004319320

作品紹介・あらすじ

ありふれた日常の中で、読書という行為がどれほどの豊かな時間を与えてくれることか。三十年以上、全員が同じ作品を読んできて語り合う会に途切れることなく参加してきた著者が、その「魂の交流の場」への想いを味わい深い文章で綴る名エッセイ。読書会の作法やさまざまな形式の紹介、潜入ルポ、読書会記録や課題本リストも。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の向井さんは若い頃から約30年同じ読書会に参加し続けているとのこと。

    家で課題の本を読み終え、自分の考えや感情がまだ言葉になりきっていない「いわば半熟状態のまま」読書会に臨むという。そして他のメンバーと意見を交換するうち自分の思いに言葉が与えられ「話し合いが終わるころには、作品を何倍にも味わえたことに気づく。」一冊の作品を読む度に、この体験がずっと続いていることに驚かされる。

    著者の思い。
    「文学を媒介にすれば人生のどんな話題でも語り合える。物語に登場するどれほどの悪人も善人も、自分のなかに少しずつは存在しているし、どれほど昔の話でも、登場人物たちの微妙な心情は現代のわたしたちとまったく変わらないからだ。そうした普遍性があるからこそ、本について語り合うことは、人生について語り合うことでもあるのだ。」

    • yyさん
      koalaj さん☆彡

      こんにちは。
      これ、いいですね。

      読んだ本のレビューをブクログに書くのも
      この本の内容に通じるものが...
      koalaj さん☆彡

      こんにちは。
      これ、いいですね。

      読んだ本のレビューをブクログに書くのも
      この本の内容に通じるものがあるかも、って思いました。
      読み終えてから文字にすることで、もう一回読書を楽しめるみたいな。
      そして、同じ本を読んだ人のレビューを読んで
      気づかなかったことに気づかされたり、ね。

      「本について語り合うことは人生について語り合うこと」
      なるほどぉ。
      表現が、かっこいい!

      2022/10/01
    • koalajさん
      yyさん、こんばんは。

      そう、おっしゃる通り!
      私もブクログもある意味「読書会」のようだな、とこの本を読んで感じました。ほかの方の感想をみ...
      yyさん、こんばんは。

      そう、おっしゃる通り!
      私もブクログもある意味「読書会」のようだな、とこの本を読んで感じました。ほかの方の感想をみて自分が気づかなかった視点があるのだな、と知ったり。

      著者の向井さん。読書会で誰かが「この部分でこう思った」と発言をすると、サッと皆が該当のその頁をめくる、その瞬間が好きだ!とのこと。自分は通り過ぎてしまった所を改めて味わう、読書会の醍醐味なんでしょうね。
      2022/10/01
  • 本書のレビューを書く前に、とても情けない身の上話をさせていただく。
    私は2年前に社内読書会を立ち上げて、月に3回のペースでスケジュールを組んでいるが、参加者が集まらない。そしてメンバーが定着しない。ドタキャンする人もいる。いつも最低4人集めるようにしているが、予定通り開催できるのは2回に1回程度。いろいろな人に声をかけて、宣伝メールも送るのだが、無視されることも多い。自分よりずっと下の後輩社員にすら、無視される。職場の中で、わざと私に聞こえるように「読書会?そんなもの出て意味あるの?飲みに行かない?」「読書会って、意識高い系を狙ったねずみ講なんでしょ?」と大声で話す輩もいる。

    もともと神経は図太いタイプなのだが、さすがにこのような日常が続くと、なんだか気が落ち込んでくるものである。そんな自分を何とか奮い立たせるために手に取った一冊。筆者は35年も続いている読書会に、29年間通われたそうだ。そしてご自身も司書として働きながら、若者たちの読書会を主宰されている。それだけ長ければメンバーの入れ替わりも激しいだろうと思いきや、固定メンバーが多いらしい。

    てっきり読書会の運営ノウハウや新規メンバーの増やし方が書かれているのかと思ったが、普段参加されている読書会でのやり取りや、筆者ご自身の「人生の振り返り」を綴った内容であった。ただし、ページをめくるにつれて、静かに、そして丁寧に、年月をかけて積み重ねてきた筆者の人間的な魅力が、じわじわと伝わってきた。「本について語り合うことは、人生について語り合うこと」という筆者の決め台詞に、私は一気に引き込まれてしまった。個人的には、何十年も続けている茶道に続いて綴った『日々是好日』を読んだ時のような感覚である。

    「去る者追わず」「誰彼むやみに誘わず」「大事な想いを人に話したいが、分かりあえる少人数だけでいい」という、筆者の読書会に対する距離感は一見中途半端に見えるが、程よく心地よいものでもある。筆者にとって読書会とは、大事な箱入り娘のような存在なのだろうか。

    「急用ができた」「仕事が忙しくて読む暇がない」「1人で読むほうがいい」などなど、読書会に参加しない(本を読まない)言い訳は、いくらでも作ることができる。その小さな積み重ねによって、読書会から足が遠ざかる。そんな振る舞いが、不思議と他のメンバーにも伝播するので、会員が1人1人と減っていく。会費は無料だが、事前に時間をかけて本を読んでこないといけない読書会より、お金をかけてでも、同世代の若者と飲み会やデートに行く方が魅力的なのかも知れない。そんな風に感じるお年頃であってもしょうがないのだ。そして、一生読書会に来ないかもしれないし、数年経ってある時、ふと戻ってくることもありうる。

    名著を読んで、自らの言葉で感想を述べるだけなのに、新たな発見と感動がある。そして家族のように人生かけて付き合う仲間がいて、本当にうらやましい。30年も継続するわけである。

    それに比べて、毎回参加者の人数を見てクヨクヨしている自分なんて、吹けば飛ぶような、チョロい人間である。周りがどんな噂をしようと、奇異の目で私を見る奴がいるだろうと関係ない。これまで1回でも参加してくれた社員に感謝しつつ、私は読書会の看板を掲げ続けていく。

    若手社員たちが、読書会に興味を持ってもらえず、リピート参加してもらえなくとも、長い人生のどこかで、ふと「読書会やっていたな。まだやっているのかな。」と思い出す瞬間があると信じて、細く長く、灯を消さずにいるつもりだ。読書会を辞めたくなったときには、この本を再読すれば良い。

    そして私が老後になって、読書会を継続しようと躍起になっていた記憶を、酒の肴にできるくらいには、日々粘り強く開催していこう。

    • Manideさん
      Sintolaさん、こんばんは。

      読書会続けられているんですね〜
      素晴らしいと思います。
      以前も取り組みのお話をされていたのを記憶しており...
      Sintolaさん、こんばんは。

      読書会続けられているんですね〜
      素晴らしいと思います。
      以前も取り組みのお話をされていたのを記憶しておりますが、なかなか大変ですね。

      読書会は参加したことないですが、本が好きなだけでは難しいんですかね。基本は、本を紹介したり、本に関する会話をしたりするわけですよね。面白そうですけどね。

      月3回開催はすごいな〜と思いましたが、参加する人からするとハードル高いかもしれないですね。1度でも行かないと、行きづらくなってしまうとか。

      いままでも試行錯誤を繰り返されているんでしょうが、ぜひ、よい方向に進んでいくといいですね。
      2023/09/06
    • Sintolaさん
      Manideさん
      コメントありがとうございます。
      以前「読書会の教科書」でもコメント頂いておりました。
      おひとりでゆっくり本を読まれるのが好...
      Manideさん
      コメントありがとうございます。
      以前「読書会の教科書」でもコメント頂いておりました。
      おひとりでゆっくり本を読まれるのが好きな方や、単純に人見知りな方もいらっしゃるようです。見知らぬ方がいらっしゃる場所へ参加することに緊張されているのだと思います。活動内容を定期的に配信するなど、こまめなPRが必要ですね。月3回というのは、候補日を3日事前周知しているという意味です。実際に人が集まって開催できるのは、1回(ごくたまに2回)というところです。参加回数が最も多い方でも、全開催回数の半分以下ですから、強制は決してしていないつもりです(汗)。
      貴重な時間を割いて参加してくださる方には、感謝しかありません。開催が実現しただけで、私は幸福を噛みしめていますが、やっぱり参加者の方に満足いただけるよう、心の中はいつも真剣勝負で臨んでいます。
      2023/09/09
    • Manideさん
      Sintolaさん、こんにちは。

      そうですよね。そういう取り組みすごいな〜と思ってます。

      弓道もされて、ランニングもされて、いろいろなこ...
      Sintolaさん、こんにちは。

      そうですよね。そういう取り組みすごいな〜と思ってます。

      弓道もされて、ランニングもされて、いろいろなことに前向きに取り込んでらして、素晴らしいですね。

      他業種交流会の要素を取り込んだ読書会の企画になった際は、ぜひお声がけください(^^)
      応援しております。
      2023/09/09
  • 翻訳家、図書館司書を務める著者が、自身の経験をもとに、人生に救いをもたらしてくれた読書会の魅力について語る。

    本書では、読書会の形式や初参加の読書会の潜入記録、学校司書として開催した読書会について最初に少し語られるが、半分以上は著者が30年近く参加している読書会での読書記録で、その合間に読書会で知り合った方との思い出や読書会における翻訳家あるある、翻訳の恩師との思い出などがさしはさまれる。

    以前に読んだ『読書会の教室』は、読書会を気軽に楽しむためのアイディア集といった感じだったが、本書は、著者が「読書会」がブームになる以前から参加してきたうえに、翻訳家、学校司書という、いわば本のプロのような方だから、思い入れや取り組み姿勢が半端ではない。
    さらに、内気だった自分がいかに読書や読書会によって救われたのかを、自身の家庭環境や本を読まない夫との微妙な距離感と絡めて赤裸々に告白するので、読書会ってどんなだろう、と気軽に手に取った人にはハードルが高いかもしれない。
    ただ、『読書会の教室』が読書会を運営している立場からの話が多かったのに対し、本書は学校司書として開催するものを除き、参加者としての立場から読書会について語っている点、読書会そのものというより、取り上げられた作品を参加者はどう読みといたのか、といった、作品そのものの面白さを取り上げている点で、本好きには楽しめる内容である。
    また、朗読を取り入れたものや輪読形式など、『読書会の教室』では取り上げられていなかった読書会も紹介されていて興味深かった。

    本書の中でページ数は少なかったが、司書として関わった読書会についてのくだりが私には一番印象に残った。
    読書会の参加者は、社会人なら基本的には本が好きな人ばかり、しかも社会に出ると自分の意見を発することが求められるので、人見知りはあっても話ができる人が多いと思う。しかし学校での読書会となると話は全然違う。
    読書会委員として強制的に参加させられ、ほとんど話ができなかった生徒が吐き捨てるように言った「あいつら、こえーよ」という言葉が、著者のみならず私にもずきんと胸に来た。
    「一冊の本を読んで、自分の心に響く一節をうまく切り取ってきて、何がどう心に響いたのかを言葉にするには、ある程度の読書量と人生経験が必要」だという著者の言葉には、これから読書会を開催する身として思わず考えさせられてしまう。

    私はレビューを書くのにいつも四苦八苦しているが、自分の気持ちをうまく言葉にできたな、と思う時はとてもうれしいし、想いの伝わるレビューを読むと自分の読書熱が高まる。
    押しつけがましくないけれど、読書の魅力を伝えられる楽しい読書会が開催できればいいな、と思う。

  • 内面性を外に発信することが、どれだけその人の魂の救いとなるか。

    このブクログで感想を書き合うのも一種の読書会なのかもしれません。

  • (2025/04/06 2h)

    読書会を主催するにあたって読んだ3冊目の本。
    翻訳する側から見た読書、コラムの読書会についてなど興味深く読んだ。
    巻末の課題本リストもありがたい。

  • 自分自身も素晴らしい読書会の場と出会えて、本を味わう幸福感にとても共感した。

    翻訳家ならではの視点も面白かった。

    自分自身、アメリカ文学を専攻していた大学時代、今のような気持ちで本を読めておらず、読書には人生経験が必要というのも納得できた。

  • 著者は、大好きな『プリズン・ブック・クラブ』の訳者さん。
    訳者さんご自身も長年読書会に参加してらした方だとは…嬉しい。
    ご自身の所属(?)会以外の読書会潜入記も楽しいし、濃密なエッセイも浸るように読んだ。
    特に嬉しかったのが、『失われた時を求めて』の読書会記録。
    この大作の読書会を開く気力は正直ないのだけど、記録のおかげで私も参加気分が味わえた。
    みんなで読んだぞ!という気持ちで、失われた〜の未読の残りを読もう…。

  • 内容についてはまるで知らず、ブックオフで見つけた本。いい本に出会えました。「読書の神様」がいらっしゃるのなら、感謝します。
    本書をざっくり紹介するなら、読書で得られる幸福感を教えてくれる本、文学、特に難解な長編が読みたくなる本、そしてすぐにでも読書会に出席したくなる本です。

    著者の向井和美さんは翻訳家兼某中高一貫校の図書館司書。そして「全員が同じ作品を読んできて語り合う会に、30年近く途切れることなく参加してきた」実績を持ちます。
    本書の構成は①読書会の醍醐味、作法と効用②読書会潜入記③図書館司書として学校で主催する読書会③読書会で取り上げてきた本とその読みどころ④翻訳家が中心となって参加する読書会の特徴⑤読書会記録の効用。ひとことで言えば読書会の魅力が凝縮された1冊になっています。

    読書会の醍醐味は①どんな難解で長い作品であっても「みんなが判走してくれる」ので、「つらいページ」も乗り切れられる②文学を通してなら普段口にしない話題であっても語り合える。例えば「8月の光」を通して「差別とは何か」について議論できる③本の感想や意見を人前で話せるようになれる。人の意見を聞くうちに感想を言語化できるようになるため④同じ本を読んできた参加者の意見から、「思いもよらなかった視点を与えてもらえる⑤参加者の人間性を垣間見られること。本書はそんな読書会の醍醐味を課題本の紹介を通して記述します。
    「POP1280」(ジム・トンプソン)は「登場人物のだれひとり好きになれないけれど、作品としてはきわめておもしろい」。「蜘蛛女のキス」(マヌエル・ブイグ)は「女だと思っていた人物が実はオネエ言葉のゲイだとわかってびっくりした」。「ハックルベリー・フィンの冒けん」(マーク・トウェイン)は「死と距離の近さ、黒人奴隷や貧乏白人の立ち位置、そして差別の多重構造」。「チボー家の人々」(ロジェ・デュ・ガール)は「本を読むとは、まさにこういうことだ。ページを開いて文字を追っているときはもちろん、横断歩道を渡っているときも、風呂に入っているときも、登場人物たちの姿がつねに頭のなかにある」。「崩れゆく絆」(チアヌ・アチェべ)は「わたしは今回、価値観とはなにかということをすごく考えさせられました。『野蛮な伝統』を文明化すればそれでいいのか、と。これはとても普遍的なテーマだと思います」。こんな具合に著者や読書会の参加者の言葉で、読むにはある程度エネルギーが要る作品が紹介されてゆきます。

    本書は読書会を成功させるテクニカルな面も紹介しています。その中で「課題本をリスペクトする」というアドバイスは良いと思いました。「課題本の選び方」も参考になります。
    また、本書はエッセイとしても面白い本です。著者の翻訳の師匠は東江一紀さん(故人。『犬の力』など)。「目にも耳にも美しい文章を書くべし」「代名詞はなるべく使わず訳すべし」というアドバイスは翻訳だけでなく、文章を書く上で役に立ちそうです。「泣ける本」という言い方が嫌いな著者が、生徒から「泣ける本ありますか?」と尋ねられれば「どんなふうに泣きたいの?」と相手の要望を聞き、4、5冊泣ける本を挙げて「良い司書」ぶりを発揮するというくだりは笑ってしまいました。

    本書の帯には「わたしがこれまで人を殺さずにいられたのは、本があったから、そして読書会があったからだと言っても良いかもしれない」。バイアスがかけられてしまうような帯ですが、本書を読むと著者がリスペクトすべき読書家であり、司書であり、翻訳者であることが認識できます。「本について語りながら、実のところわたしたち自身の人生を語り合ってきたのではないかと思う」。本書を読み終えて、本当にそう思いました。
    今、たまらなく読みたくなった本は「崩れゆく絆」「チボー家の人々」「レ・ミゼラブル」。明日、ブックオフに行こうかな。



  • 読書会の魅力を語るエッセイ。普段行っている読書会を始め、さまざまな形式の読書会について紹介している。

    本書のテーマは「本を語ることは人生を語ること」。読書し終わってまとまり切らない半熟状態な思いを読書会という場で語り合うことで、自身の考えが整理されたり、思いもよらない視点に出会えたりする。また、意見を聞いて言いたいことが湧き上がり、自身の体験も交えて話したくなってくる。そうして、思いは形となり、知っている人/初めての人と繋がりができていく。

    1人で読書するのもいいけど、読書会に参加して語り合う読書も他にはない魅力があることを教えてくれる。

  • 読書会精分は薄めな印象。翻訳に関する言及は興味深かった。

  • 読書会、高校以来参加していない。コロナの影響もあって外出しないでいたら、不意に読書会に参加したくなった。オンライン読書会も花盛りだし、じゃあこんな案内書読んでいるより、ぱっと参加しちゃえばいいのに。ところが、開催時間には、たいてい家族がいる。夕食の遅い我が家では、みんなが集まりだす頃、夕餉を取り、やっとお風呂に入る。参加はなかなか厳しそうな塩梅である。

    それならば、いっそ自分で何かできないかと暗中模索の今。この本が気になって読んでみた。読書会の豊穣さ、楽しさも、本当にたっぷり語られている。紙上読書会さながら、著者様にとって、一人で読む時間も楽しく、他人様と読む時間も楽しいことがよくわかる。特に、長編、海外の翻訳作品との向き合い方などは、本当に参考になる。巻末の読了リストもコピーしておきたい。個人で読んでも集団で読んでも、読み応えはあるだろう。

    しかしながら、私はきっと、この本を読む事は、多分もうない。著者様の『何か』が、決定的に合わないのだ。お仕事ぶりは立派なのであろうし、実際この本も内容は魅力的。だから星4なのだけれど…。失礼ながら、

    「それは言わずにいらしたら良かったのに…。」

    と思う部分があって、気に障った。御本人に責があることというより、私と合わないだけ。読書会の詳細や、長編の海外文学と向き合った読書記録としては、どなたにもおすすめできる良書である。

    やっぱり一人で読もうか。読書会、なんとかしてみるか。悩ましいところであった。

  • コロナ禍の中で友人とzoomで一つの本を一緒に読む、という体験から読書会に興味を持ち、晶文社「読書会の教室」を読んで、ますます、もっとやってみたいモードが高まっているタイミングでの岩波新書。題名も「読書会の幸福」ってホンワカムード。でも中身は超ハード。のっけから子供時代が両親の不仲で地獄だった話。文体も柔らかくて、しかも読書会の体験記や読書会の運営のノウハウや、読む前にこちらが期待していた構成もちゃんと盛り込まれているのですが、そういう気軽さを覆いつくす、本と人生の熱い物語。著者の人生。なにせ「もしかしたら、わたしがこれまで人を殺さずにいられたのは、本があったから、そして読書会があったからだと言ってよいかもしれない」ですから。読書会の数少ない男性メンバーのTさんのエピソードは、まるで短編小説のようだし、現在のパートナーとの関係もそこまで書く?ということをスルッと紛れ込ませてくるし…恩師や父親の最期の話もグッときます。まさに生きることは文学を読むこと、読んだ文学について人と語らうことは生き延びること、という文学の力を感じました。まさに章のタイトルになっている「文学に生かされて」の迫力。著者にとっての「読書会の幸福」は「読書会に生かされて」という意味なのだと合点しました。この著者、やさしい文体でも結構、凶暴です。カズオ・イシグロ「日の名残り」で丸谷才一の誤読にも噛みついているし…それにしても巻末についている1987年からの読書リストの豊饒さよ。文中に出てくる「ぼくはこのほとんどを読まずに死ぬのか…」このつぶやきは自分のつぶやきでもあります。

  • 昨年から不定期ではあるが読書会に参加するようになったこともあり、共感する部分が多々あった。
    初めて読書会に参加した時のことが思い起こされた。以前は本を読んで「終わり」であったが、読書会で人と語り合うことで、作品への理解も深まり、何より本の話ができるという楽しさを知った。
    東江氏との師弟関係か書かれた箇所も印象深い。東江氏の訳本は(たぶん)未読だが、読んでみたくなった。

    「はじめに」に書かれているこの部分。まさにその通り。
    「本を開いてページをめくれば、はるかかなたの時代から登場人物たちがやってきて、するりとわたしの心のなかにはいりこむ。そして彼らはいっときそこに棲みついて、パリの街角を闊歩し、かなわぬ恋に苦悩し、夢を抱き挫折する。その姿をわたしは最後まで見届けたあと、ゆっくり本を閉じる。本を一冊読み終えるたびに、人生を十年ほど余計に生きたような気持ちになる。わたしはもう何百年生きてきたことだろう。」
    本を読むっていいよね。

  • プリズン・ブック・クラブの翻訳もされている、向井和美さんのエッセイ。読書会に三十年以上参加されていて、読書会の魅力を語っている。うんうん、分かる分かる!という内容で、やっぱり読書会って良いなあと思える。「読書会を成功させるヒント」も参考になる。

  • 長年読書会に参加してきた翻訳者である筆者によるエッセイ。作品論あり、読書論、読書会論ありの、多彩な内容となっていて飽きさせない。チョイスされている本は、ともすれば「高尚」と揶揄されかねないような、文学畑の本たちです。本を通じて人とつながること、本を通じれば、人と繋がり合うことができる幸せが、存分に語られている。

  • 面白かった。私は(実際に費やしている時間はともかく)研究が主と言えるような生活を送っている。そんな私が何かを読んだり書いたりする中では、人との対話や議論はミスをなくす、批判にさらすといった副次的な機能しか持たないと考えがちなのである。
    一方で、議論や対話は何のためにするのだろうか。私はもう十数年以上、この疑問を抱いて(これも費やしている時間はともかく)人とのかかわりの中で主な課題として向き合っているつもりである。
    本書は、翻訳を生業とする著者が、読書会を通じて出逢った本について著した書評集?随筆集?といった本である。本書を通して、何かをテーマに、あるいは思い付きを語り、議論や対話をしていくことの意味が一つ見つかった。コラム的に読書会、読書そのものを楽しく意義あるものにするためのヒントも著してあり、考え事や仕事について本を通して学んだとき、本について人と話すとき注意すべき点の参考にできる良著である。
    そして、積みっぱなしの古典小説がたくさん紹介されていた。早く小説たちを読み、人と話したくなってきた。

  • 高校時代、51pの写真にある図書室に通っていた記憶が蘇る。

    過去、著者の向井和美先生からは、高校以来、様々な文学書をすすめられたが、深沢七郎以外、ほとんど読み終えてないのであった。不肖の教え子です。

  • 感想
    同じ体験を共有する。同じことを考える。違う意見を持つ。だけどそれが良い。そういう考えはなかった。ここだけは譲れない。一冊の広がり。

  • 著者が読書にのめり込んだきっかけが冷たい家庭にあった、というバックグラウンドはハード。読書会が救いになったことが手に取るようにわかる。途中、読書会の話、というよりわたしと文学みたいな話になって、タイトルに比して…と思ったがそこも含めて味わい深い。おかげでコンスタン「アドルフ」読んでしまいした。また翻訳家だらけの読書会、密度濃いだろうなあと思いを馳せる。課題本があるタイプもないタイプも、どちらの読書会にも通う身としては、なぜ自分が読書会に足繁く通うのか、なにが自分をひきつけるのか、本をはさんで誰かと語り合いたいのだ、という思いをこれほどまでの深く、バラエティに富んだ表現で提示してくれて、まさに幸福な読書だった。◆課題本を読むタイプの読書会を楽しむ作法、①できるだけ欠席しない②課題本は必ず読み終える③ほかの人の意見を否定しない④課題本をリスペクトする⑤ひとりで喋りすぎない⑥雑談をしすぎない、と。なるほど。◆ときおり、これは自分のためだけに書かれたのではないかと思う本に出会うことがある。そんなとき、人は胸の奥にしまっていた経験を語らずにはいられなくなるものだp.viii◆本について語りながら、実のところわたしたち自身の人生を語り合ってきたのではないかと思うp.ix◆一冊の本をだれかと分かち合い、感動を共有したいというこの気持ちこそ、まさに読書会の神髄ではないか。p.131◆「テヘランで〜」の著者は言う。「どんなことがあっても、フィクションを現実の複製と見なすようなまねをして、フィクションを貶めてはならない。私たちがフィクションの中に求めるのは、現実ではなくむしろ真実があらわになる瞬間である」p.221-222

  • 新聞の書評を読んで興味がわき手に取った新書です。

    冒頭、「わたしの両親は、けんかばかりしている夫婦だった…..」から始まり「わたしがこれまで人を殺さずにいられたのは…..」という文章を読んで、この本はどんな展開になるのだろうと少し心配になってしまいました。

    でも、読み進めると好感を持てるようになりました。著者の30年に及ぶ読書会での活動や、本をとおして人とつながる熱い想いが、丁寧に語られています。また、翻訳家である著者が翻訳家視点での読書を語る部分は、今まで気づかなかったことを教えもらい、新鮮な気持ちで読みました。

    本書は古典文学を中心に、200冊近くの本を取り上げています。読んだことがない作品が大半です。全部読みたくなりますが、無理かな?

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著者プロフィール

向井和美(むかい・かずみ):翻訳者。早稲田大学第一文学部卒。訳書に『哲学の女王たち』(晶文社)、『プリズン・ブック・クラブ』『アウシュヴィッツの歯科医』(紀伊國屋書店)など。また、学校図書館司書として生徒たちの読書会を助け、自らも30年以上にわたり読書会に参加し続けた経験を『読書会という幸福』(岩波新書、2022)で綴っている。

「2023年 『はじめてのフェミニズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

向井和美の作品

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