シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』 (岩波新書 新赤版 1989)

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  • / ISBN・EAN: 9784004319894

作品紹介・あらすじ

『赤毛のアン』『若草物語』『リンバロストの乙女』『あしながおじさん』などの少女小説に描かれる、強く生きる女性主人公の物語はいつ、どのように生まれ、展開していったのか。英国の古典的名作『ジェイン・エア』が与えた衝撃と、そこから始まる脱シンデレラ物語の作品群を読み解き、現代における物語の意味を問う。

感想・レビュー・書評

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  • 廣野 由美子(人間・環境学研究科 人間・環境学専攻芸術文化講座) | 京都大学 教育研究活動データベース
    https://kdb.iimc.kyoto-u.ac.jp/profile/ja.b763a45224d5c2f9.html

    巻頭対談 いしいしんじ + 青羽 悠 進行●廣野由美子 - 京都大学広報誌『紅萠』
    https://www.kyoto-u.ac.jp/kurenai/201910/taidan/index.html

    シンデレラはどこへ行ったのか - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b631514.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ベスト 『シンデレラはどこへ行ったのか』 | 教文館ナルニア国
      https://x.gd/NGChU
      ベスト 『シンデレラはどこへ行ったのか』 | 教文館ナルニア国
      https://x.gd/NGChU
      2024/01/16
  • 「ジェイン・エア」を源泉として、それに続く女性作家たちは、「若草物語」「赤毛のアン」など、困難を教育で克服し、「シンデレラ」などの童話のように他力本願でない、自分の道を自分で切り開く物語を生み出した、と言う。

    ”いつか王子様が”・・「シンデレラ」「白雪姫」「眠り姫」、これらは童話という文化遺産として受け継がれ、大人の小説にも取り入れられ、それゆえ、今日においても「他力本願」な傾向は受け継がれてしまう。フェミニズム、男女共生など外側からの変革が声高に言われるのは、逆に社会がそうでないからで、「外側」を変えるのは女性が羽ばたく必須条件だが、劣らず重要なのは「内側」からの自立志向である。

    御伽はなしや児童文学は子供向けの読物として軽くみられがちだが、文学は影響力が大きく、未来へと続く子供への影響大である。もっと再評価されるべき領域だという。

    19世紀終わりから20世紀初頭ころ、「少女の試練の物語」が生まれた。「若草物語」1868-69.「少女レベッカ」1903、「赤毛のアン」1908、「リンバロストの乙女」1909、「あしながおじさん」1912などである。これらは孤児などの逆境にあっても多くは「教育」を自ら欲し身につけることで自分の道を開く少女の物語だ。この源泉をたどると「ジェイン・エア」1847にたどりつくという。これらの物語の作者は、自身で道を切り開き、それを小説にした。ブロンテのイギリスよりはアメリカで花開いた。

    また最近のディズニー映画にも少し変化がみられ、2015年の「シンデレラ」、2014年の「マレフィセント(原作眠れる森の姫)」、2013年の「アナと雪の女王(雪の女王)」などは、いくぶん原作に手が加えられ、100%受け身ではない要素が加わっているとする。

    ただ、「ジェイン・エア」がアメリカで花開いた、とするアメリカの状況説明のところが、『コロンブスがアメリカを「発見」したとき、初めて西洋の歴史のなかに登場するアメリカは、それ以前の文化伝統をもたない』と記されている。これにがくっとしてしまった。

    アメリカ文学は、旧大陸の文学、主に英文学を元にして発展し、他の国のように民間伝承や詩歌から始まっていないと続く。

    「発見」ときちんとかぎかっこをつけて表現したのだから、ひとこと ”先住民の神話などには関心を持たなかった” とか入れて欲しかったなと思った。


    2023.9.20第1刷 図書館

    メモ 読んでないのをよんでみたくなった
    〇イギリスに根を下ろしたシンデレラストーリー
    「パミラ」1740サミュエル・リチャードソン 書簡体
    「ウェイクフィールドの牧師」1766オリヴァー・ゴールドスミス
    「エヴェリーナ」1778フランシス・バーニー
    「エメリーン」1788シャーロット・スミス

    〇ジェイン・オースティン1775-817
    イギリス小説をロマン主義からリアリズムへと方向づけた作家
    「分別と多感」1811
    「高慢と偏見」1813
    「マンスフィールド・パーク」1814
    「エマ」1815
    「説得」1818
    「ノーサンガー・アビー」1818 流行小説のパロディ

    〇ブロンテ姉妹
    「ジェイン・エア」1847シャーロット・ブロンテ1816-1855
    「嵐が丘」1847エミリー・ブロンテ1818-1848
    「アグネス・グレイ」1847、アン・ブロンテ1820-1849
    「ワイルドフェル・ホールの住人」1848アン・ブロンテ

    〇アメリカへ渡った「ジェイン・エア」の娘たち
    「若草物語」1868-69ルイーザ・メイ・オルコット1832-1888
    「リンバストロの乙女」1909ジーン・ストラットン・ポーター1863- 森林湿地帯の自然とロマンスを結びつけるのが特色 1924映画化
    「少女レベッカ」1903ケイト・ダグラス・ウィギン1856-1923
    「少女パレアナ」1913エレナ・ポーター1868-1920
    「あしながおじさん」1912ジーン・ウェブスター1876-1916

    〇自分らしさと強さの肯定~「ジェイン・エア」からの飛躍
    「赤毛のアン」1908ルーシー・モード・モンゴメリー1874-1942

    〇ジェイン・エアからの変容
    ・ジョージ・エリオット1819-1880
     「フロス河の水車場」1860
     「サイラス・マーナー」1861
     「ミドルマーチ」1871-72
    ・フランシス・ホジソン・バーネット1849-1924
     「小公子」1886
     「小公女」1905
     「秘密の花園」1911

    〇ルーマ・ゴッデン1907-1998
     「チャイニーズ・パズル」1936
     「貴婦人と一角獣」1938
     「黒水仙」1939 ベストセラー映画化1947
     「河」1946 映画化1951

      児童文学
     「人形の家」1947
     「ねずみ女房」1951
     「ディゴダイ」1972 ジプシーについての若者向け小説 キジィという題でBBCドラマ化

      自身のダンス学校経営の経験から
     「木曜日の子どもたち」1984 
    木曜日の子どもとは、幼いうちから音楽やバレエなどを習い自立の道を歩む子供をさす。少年・少女のジェンダーを超えた「ジェイン・エア」の改変物語と捉えられる。
    また、果たせなかった夢を娘に託す母の物語であり、
    プリマバレリーナになる夢をかなえられなかった母はその夢を、娘クリスタルに託して生きている。自分には恵まれなかった機会をありったけ自分の娘に与えたならば、きっと娘は成功するだろうという妄想。母となったジェイン・エアがいかに我が子を育てるかという物語が含まれている、とも解釈できる。

     「ナイチンゲールの歌を聞いて」1992(邦題「トゥシューズ」)

  • いつか王子様が・・・のシンデレラの寓話から、
    自ら行動を起こす少女が主人公の少女小説へ。
    そのきっかけは「ジェイン・エア」だった。
    序 『ジェイン・エア』から少女小説へ
    第1章 脱シンデレラ物語の原型
    第2章 アメリカへ渡った「ジェイン・エア」の娘たち
    第3章 カナダで誕生した不滅の少女小説
    第4章 イギリスでの変転とその後の「ジェイン・エア」
    終章 変わりゆく物語
    ・あとがき
    参考文献有り。

    世界中に異本がある「シンデレラ」の起源と伝播による変容。
    イギリスの感傷小説に、ゴシック小説にも「シンデレラ」は
    影響を与えた。
    そこに登場した「ジェイン・エア」は「シンデレラ」とは
    真逆の主人公の物語。孤児の彼女は自ら行動し、
    経験とキャリアを積み、波乱の人生を歩む。
    対等なパートナーを得、そして更にその先へ。
    「ジェイン・エア」はアメリカの女性たちに受け入れられる。
    開拓精神と相通じる自己解放は、オルコット、ポーター、
    ウェブスターたちに行動力のある少女たちの物語を描かせる。
    カナダでは、モンゴメリが赤毛のアンのシリーズを執筆。
    「ジェイン・エア」のちのイギリスではジョージ・エリオット。
    アメリカとイギリスを行き来したバーネット。
    そしてゴッデンの、シンデレラ型とジェイン・エア型が
    入り混じった家族の葛藤の物語が登場する。
    現代のディズニー映画でもプリンセスたちは変容している。
    小学生時代に愛読し、現在も思い返したように読んでる作品が、
    多く登場していたのも楽しかったし、
    我が道を恐れずに歩む主人公たちの行動する姿には、
    「ジェイン・エア」が影響を与えていることも、
    新たな発見となりました。
    それぞれの作品の内容が分かり易く要約され、未読の
    「リンバロストの乙女」と「木曜日の子どもたち」は
    読みたくなってしまいました。

  • 著者も」序章で「ジェイン・エア」や他のいわゆる少女小説といわれている名作群がなければ今の自分はなかったと述べているが、(私は普通の読者にすぎないが)全く同感である。自分もまた親とこれらの文学作品に育てられたと思っている。まだ児童書の中でヤングアダルトという分野がさほどはっきりと意識されていなかったころだがまさに「ジェイン」は私にとって思春期に多大な影響を受けた作品のひとつで、繰り返し読んだ記憶がある。(河出の世界文学全集で)今回著者がとりあげている作品はどれも大好きで、ゴッデンの「木曜日の子どもたち(バレエダンサー)」の解釈には考えさせられる部分が多かった。再読しようと思う。「ジェイン」も新訳で読もう。

  • ジェイン・エアを少女小説の元祖として、その系譜に連なるアメリカとカナダ、英国の少女小説を紹介する評論。
    美しくて心優しい少女(元々は身分も高い)が周囲のいじめに耐え、若く美しく身分の高い男性に見初められて結婚するというシンデレラ的な従来の少女向け物語に対して、貧しくて美しくもない少女が勉学によって自立し、自分を理解してくれる対等なパートナーと結婚する『ジェイン・エア』は当時としては画期的な物語であり、世界的に大きな影響力を持ったことが分かる。その後『ジェイン・エア』に影響されて数多くの少女小説が生まれた。
    本作では、その代表作として『若草物語』『リンバロストの乙女』『あしながおじさん』『赤毛のアン』を紹介する。

    少女たちが受け身ではなく自ら道を切り開いていく物語は確かに魅力的だ。ただ、いつも結婚という結末になることには不満も感じる。仕事をすることが出来ても結婚しなければ一人前として認められなかったのであろう当時の社会的な圧力を想像すると、まだまだ真に女性が自立ができているとはいえないのではないだろうか(『若草物語』のオルコットも読者や出版社からの圧力でジョーを結婚させざるを得なかった不満を述べていたが)。そういう意味で、少女小説をテーマにするのなら、古き良き少女小説だけでなくもうちょっと新しい少女小説も取り上げてほしかったと思う。
    あと、『あしながおじさん』は現代の感覚で見ると大分気持ち悪くて。学校に行くためのお金を孤児の少女に援助していたおじさんが、少女に恋するようになってあらゆる手段を使って少女と結婚する話…って、そこにエンパワメントされる女子は今の時代いないんじゃないだろうか。
    あと4章で取り上げた『木曜日の子どもたち』については、著者の思い入れが入りすぎているようで、本筋とも少し外れるし、うーんと思いました。

  • シンデレラからジェーン・エア
    女の幸せってまだまだこれから変わっていくのかも

    ジェーン・エアを読んだのは中学生の時。
    本を握る手のひらがゾワゾワするほど物語に引き込まれたのは初めての経験だった
    今も大好きな小説

  • ジェイン・エアを読んだ少女たちに与えた衝撃が、世界で赤毛のアン、若草物語、あしながおじさんなどの名作少女小説が生まれる素地となった。
    取り上げられた小説が大好きなものばかりだったので、とても興味深く読んだ。

  • ディズニープリンセスも、現在のヒロインは自らの能力で未来を切り開くタイプが多い。「いつか王子様が」と受け身ではない。見た目も口が大きくなり、どんどん前に出る女性像になっている。
    このヒロインの原形を「ジェイン・エア」にとる。面白いのはジェインの末裔は本国イギリスではなく、新大陸に渡ったこと。代表例は「赤毛のアン」ということになる。なるほどね。

  • 個人的には著者の『批評理論入門』にだいぶお世話になった。
    そういう経緯があるので、本書を読んでみた。
    近代英語文学の中の女性像の変遷を主題とする本。
    びっくりするほど読みやすい。

    取り上げる物語の原型は二つ。
    一つはシンデレラ。
    言うまでもなく、美しく従順で淑やかな女性が、苦難の末、社会的に高位の男性に見初められ、結婚により階級上昇する物語。
    18世紀の大人向けの小説の中にさえ、この影響がみられる作品があるとのことだった。

    このシンデレラ型の物語を超えようとするものが現れる。
    それがシャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』を祖型とするものだという。
    器量に恵まれてもおらず、親が死んだり、無関心だったりして「見捨てられた」子どもが、強烈な自立心により学問にはげみ、精神的にも成長し、やがて成功を収めるというパターンである。

    イギリスではこのパターンに当初あまり反応がなく、むしろ新大陸アメリカ、カナダで、ジェイン型の物語が書き続けられていったのだそうだ。
    『若草物語』のジョー、『リンバロストの乙女』、『あしながおじさん』『赤毛のアン』。

    本書では、これらの小説のストーリーが丁寧に復習され、脱シンデレラ物語であることが確認されていくので、取り上げられている本を読んだことがなくても、それほど不自由しない。
    『若草物語』など、私は子どもの頃よく読んでいたので、そうだった、とか、そんなだったっけ、と、ちょっと懐かしい気持ちになりながら読んだ。

    今でも学力はその人の社会的・経済的自立に影響があると思うが、廣野さんの引用から、この当時の女性が学問に期待する熱量の違いが感じられる。
    と同時に、彼女たちの、体を壊しかねない頑張りぶりに痛々しい思いを感じることさえもある。

    4章以降は、ジェイン・エアにダイレクトにつながる作品が見られないイギリスの、19世紀末から20世紀前半での展開を紹介していた。
    ルーマー・ゴッデン『木曜日の子どもたち』が中心に取り上げられる。
    ジェイン型の女性が毒母になってしまうという、原形の変形、反転が分析されていて、このあたりが本書の中で最も興味深いところだった。
    自分の夢を娘のクリスタルに押し付け、バレリーナの道を歩ませるペニー夫人。
    末の男の子のデューンは、音楽とバレエの才能に恵まれていながら、母から見向きもされない。
    姉のクリスタルは驕慢に育ち、デューンをいじめたりもする。
    弟は父(影が薄い!)と周囲の人物に助けられ、才能を開花させ、世に出ていく。
    この辺りはむしろシンデレラ・ボーイの物語。
    一方、姉のクリスタルは、バレエが校での厳しい競争や手痛い失恋などを経て、次第に精神的に成長していく。
    まったく読んだこともない作品だが、こんな風に二つの型が変形して組合されていくさまがよくわかり、とても興味深かった。

    最後にディズニーの実写版のプリンセスの変容なども分析されていて、それも面白い。

  • シンドロームという言葉には、あまり良いイメージを受けないが、ジェイン・エアが衝撃作であることが印象深く残る。

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著者プロフィール

廣野 由美子 (ひろの・ゆみこ):一九五八年生まれ。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授。京都大学文学部(独文学専攻)卒業。神戸大学大学院文化学研究科博士課程(英文学専攻)単位取得退学。学術博士。専門はイギリス小説。著書に、『批評理論入門』(中公新書)、『小説読解入門』(中公新書)、『深読みジェイン・オースティン』(NHKブックス)、『謎解き「嵐が丘」』(松籟社)、『ミステリーの人間学』(岩波新書)など。

「2023年 『変容するシェイクスピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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