記憶の深層 〈ひらめき〉はどこから来るのか (岩波新書 2025)

  • 岩波書店 (2024年7月22日発売)
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  • 本 ・本 (210ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004320258

作品紹介・あらすじ

試験前の一夜漬け。苦労して覚えても、終わればすぐに忘れてしまう。もっと効果的で効率的な学習方法はないのか。鍵は「記憶」にある。記憶のしくみを深く知り、上手に活かせば答えはひらめく。記憶のアウトソーシングが加速するAI時代。人間の創造性が問われる今こそ必要な、科学的エビデンスにもとづく記憶法のヒントを伝授する。

感想・レビュー・書評

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  • わざわざアタマに負荷をかけて、たくさん覚えようとするなど現代においてはナンセンスと思う若人も多かろう。でも、自分の脳の中にできるだけ多くの記憶と概念とコトバを刷り込んでおけばおくほど、世界を観る解像度が高くなる。なぜかというと、何か追加的な経験をするたびに、思念空間の中で、A地点とB地点が、こっちのサブネットとあちらのサブネットが不意に連関してスパークするようになる。それが「ひらめき」の源泉にもなるだろう。そういうふうに自分の脳細胞のネットワークに刺激を与え続ければ、おなじ80年を生きたとしてもずっと豊かな一生を送ることができるのではないだろうか。
    では、脳に残るような記銘をどうやって行うか。映像でもいい、ストーリーでもいい、連想でもいい。単なる記号の羅列を覚えきろうと足掻くより、アタマの努力を一滴加えて、メタな情報に転換することだ。

  • 「記憶は技術である」p37

    結局、新しいことがらを記憶に定着させるには、そのことがらそのものを記憶しようとするよりも、そのことがらについて「考える」ことのほうが有効なのです。 p111

    何かのことがらをインプットして覚える際には、まとめて一度にインプットするのではなく、時間をあけて分散させるほうが記憶にとって効果的なのです。 p123

    結局のところ、受け身的に他人事として答えを繰り返すよりも自分事として自ら答えを探して構成することが記憶の定着に有効なのです。 p135

    アウトプット練習には決まり切った方法はなく、創意工夫で多様な練習を活用することこそがもっとも重要なのです。 p143

  • 記憶に関するとても面白い本。
    自分の記憶力の乏しさを悲観しながら、若い頃にこの本を読んで実践していたら、今頃は・・・と思わず考えてしまう。
    記憶、あるいは脳の機能は、人はみな同じメカニズムが働いているようで、きっと世間で記憶力がいい人と言われる人は、このメカニズムをうまく使いこなすことにより効率的に記憶している人なんだと思う。
    実際に、著者は円周率10万桁を暗唱できる人の記憶術を例に「記憶することは技術である」と断言する。
    また、本書副題に「<ひらめき>はどこから来るのか>」とあるが、この答は「第5章連想の力」にある。この章がとても腹落ちする。
    現代社会はAIの時代で、記憶はまさにAIが得意とする分野。人はもう労力をかけて記憶することはせずに、AIに任せておけばよい。人間の貧弱な記憶力はAIの正確さにはるかに劣るからだと思いがちだ。
    だが、実はそうではないようだ。(ここが本書の肝)
    著者の主張は次の通りだ。
    確かに、これまでは学校、職場でより多くの知識を自分の内部に記憶として蓄えることに価値があった。そのため多くの知識を持った人が有利であった。
    しかし、個人の内部に蓄積された記憶は個人ごとに量的にも質的にも大きく異なる。これらの記憶が我々一人一人の個性を作り、さらには創造性の基礎になる。創造力というものは、ゼロの状態から突如として湧き上がってくるものではない。これまで見たもの、聞いたもの、読んだものが記憶に残り、何かのきっかけで呼び覚まされ、それが創造力となる。意識から消え去ったことも無意識の記憶として残っており、この無意識の記憶が意識的な行動や思考に影響を与えている。
    この本を読んで安心した。初老の読書人である自分は、これまで本を読んでも内容を忘れることに恐怖を感じていた。これからは、そんなことを恐れたり、労力をかけることを無駄に思ったりしない。忘れる覚悟でどんどん読書していくことが、創造力を高める源泉と考える。忘れても、記憶が曖昧でも全く問題ない。人間の脳は無限の可能性を秘めている。

  • 話があってから8年かけて書き終えた本とのこと。
    序盤で記憶が創造性の基礎であると、そこはまさにそう思う。意味を求めてしまう脳の仕組みを使って意味づけることの効用。それからそもそも気づかないと意味づけができないこと、ワーキングメモリの限界、マルチタスクの弊害、無心になるのでなく没頭することがマインドフルネスの中核であること。
    イメージを用いた記憶術、知識の構造化、復習やアウトプットの重要性。特にスムーズさの感覚がよろしくないというのは、小堀宗慶宗匠がひとり稽古のよくない理由として挙げてたのとリンク。
    忘却曲線はゼロにならず無意識の記憶にあるので、それが連想が自動的に広がることにつながってひらめくと。最後に楽しむことが大切だと結ぶ。

  • 【電子ブックへのリンク先】
    https://kinoden.kinokuniya.co.jp/hokudai/bookdetail/p/KP00111586

    ※学外から利用する場合は、以下のアドレスからご覧ください。
    SSO-ID(教職員)又はELMS-ID(学生)でログインできます。
    https://login.ezoris-hokudai.idm.oclc.org/login?url=https://kinoden.kinokuniya.co.jp/hokudai/bookdetail/p/KP00111586/

  • 2024年7月31日購入。

  • 2025年1月12日、グラビティの読書の星で紹介してる人がいた。

    「人間の記憶力は必要なのか不要なのか?
    知識の類は大抵ネット上ですぐ手に入り、最新の情報にアクセスできる。AIの進化も目まぐるしく、人間の脳の代替品としての機能が充実してきている。
    結論から言うと、単純なメモリーとしての機能としてはAIの方が遥かに優れている。ただ人間の判断力は、記憶の中に無数に散らばる断片を無意識的に呼び出し、選択することに使う。絶対では無い曖昧であるからこそ出来る人間のひらめきは、記憶の中から生まれる、というような話。
    全般的に記憶の仕組みや記憶の方法など、テクニックに近い内容が多かったかな
    #読書 」

  • 心理学等の科学的根拠をもって、記憶の仕組みを示し、「意味のあるもの」だけが記憶できる、集中することの重要性、構造化と関連付け、アウトプットの意味を明らかとし、記憶の深層に迫る一冊。すごく参考になりました。

  • 日々の学びや人への教え方に大変参考になるないようであった。連想の力を高めるため、今後も学びを続けていきたい。

  • 記憶は覚えたいものから連想出来るものを考えたり、イメージを思い浮かべる、分類すると定着しやすい。「読書とは、自分ではなく人にものを考えてもらう事だ」って言葉が心に残った。読んだ内容について考え、消化吸収しなければ意味がない。学びの際は自分事として考えなければならない。

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著者プロフィール

高橋雅延' 京都教育大学卒業、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程を学修認定退学後、1986年から同助手。1990年から京都橘女子大学講師、助教授を経て、1994年から聖心女子大学で教鞭をとり、現在、聖心女子大学教授。京都大学博士(教育学)。;主要著書:『認知と感情の心理学』(岩波書店)、『心のかたちの探求ー異型を通して普遍を知る』(東京大学出版会)、『変えてみよう! 記憶とのつきあいかた』(岩波書店)ほか多数。

「2023年 『 家族関係の闇が引き起こす「抑うつ」と、その解放』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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