あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ (岩波新書 2026)

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  • 本 ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784004320265

作品紹介・あらすじ

SNS等に溢れるあいまい情報に飛びつかず、その不確実性に耐える力が輿論主義(デモクラシー)の土台となる。世論駆動のファスト政治、震災後のメディア流言、安保法制デモといった二〇一〇年代以降のメディア社会を回顧し、あいまいさに耐えられない私たちにネガティブ・リテラシー(消極的な読み書き能力)を伝授する。

感想・レビュー・書評

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  • メディアリテラシーと情報の迷路、あいまいな情報への理解と対処 - 【公式】福岡の求人広告は株式会社パコラ(2024年3月19日)
    https://x.gd/trJQ0

    「ネガティブ・リテラシーの効用―あいまい情報のメディア学―」佐藤卓己(京都大学大学院教育学研究科教授)令和6年2月29日
    外部有識者等による研究所内講演会:最近の講演会資料(1年分) : 財務総合政策研究所
    https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/lmeeting.htm

    終了した催し
    京都大学講演会 京大の知 in 広島「ネガティブ・リテラシーのすすめ -あいまい情報のメディア学」 | 京都大学(開催日2023年11月22日)
    https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/event/2023-09-13-1

    真偽不明の情報 留め置く力を 京都大大学院教授 佐藤卓己さん(63) | 中国新聞デジタル(2023/12/8会員限定コンテンツ)
    https://www.chugoku-np.co.jp/articles/-/395423

    あいまいさに耐える - 岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b649638.html
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    (yamanedoさん)本の やまね洞から

  • 私には難しかったですが、情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭でも考えることの大事さを学びました。

  • たまたま他で聞いたネガティブ・ケイパビリティにヒントを得た「ネガティブ・リテラシー」の考え方が面白いと思い読み始めた。メディア、SNSで大量の情報があふれている中で、あえて白黒といった答えを出さずに熟考する読み書き能力と言えばよいのだろうか。

    だが、ネガティブ・リテラシーの話はなかなか出てこない。筆者はかねて「世論」(popular sentiments)と「輿論」(public opinion)は分けるべきと唱えており、2009年の民主党の政権交代、11年の福島原発事故、安保法制、コロナ過などを通じて論じられている。明治のころの考え方に回帰する考え方でもあり、それは現実的ではないとの指摘・批判も筆者は受け入れつつ、輿論こそがデモクラシーの基盤であると訴え続ける。

    第一章で述べている「ファスト政治」は昨今の東京都知事選、兵庫県知事選、衆院選でも見られた現象。アメリカはずっと先を行っているのかもしれないが、日本もようやくこうなったのではなく、その地殻変動は00年代から見られていたということに気づかされる。それが「メディア流言」「デモする社会」「情動社会」「快適メディア」と各章のタイトルに沿って、時々のトピックを介して論じられる。なお、過去の論評をまとめているので同じ言い回しが2度、3度出てくる。そこで少しつまづく。

    第六章にようやくネガティブ・リテラシーの話が出てくる。「ソ・ウ・カ・ナ」(即断しない、鵜呑みにしない、偏らない、中だけ見ない)、「だ・い・じ・か・な」(誰、いつ、事実、関係、なぜ)という方法論は参考になるが、常にXで考えていては疲れるのも事実だろう。筆者が述べている「本当に求めるものは吸収し、どうでもいいものは成り行きに任せる」という表現はわかりやすい。不用意に動かない、判断しない能力をアクティブに発動するというバランス。大変かもしれないけどやってみたい。

  • 私たちはどうしても物事を「正義と悪」「正しいと間違い」といった二元論で捉えたがる。おそらく、その方が頭の中を整理しやすく、感情が安定するからだろう。しかし、この本を読んで、そんなシンプルな思考が、時に誤った判断を生むことに気づかされた。

    「あいまいさに耐える」という言葉が示すように、不確実な状況の中で即断を避け、考え続けることの大切さが本書のテーマだ。現代は情報が溢れ、瞬時の判断を求められる場面が多い。しかし、情報に流されるままに結論を急ぐことは危険であり、むしろ、迷い続けることに意味があるのではないか。

    特に印象に残ったのは、不安が人の判断を誤らせるという視点だ。戦争もまた、不安から生まれる。未知のものへの恐れ、コントロールできない状況への焦りが、極端な決断を引き起こす。では、その不安の中でどうやって平常心を保つのか?

    この本は、そんな問いを私たちに突きつける。明確な答えを示すのではなく、「どう考え続けるか」を読者に託しているのだと思う。あいまいさに耐えること。それは、現代を生き抜くために必要な力であり、私自身も身につけていきたい姿勢だと感じた。

  •  2009〜23年の著者自身の時評の再録が中心。輿論(公的意見)と世論(国民感情)を峻別し、後者優勢の「輿論の世論化」、また後者に連なるデモ万能論や即断即決「ファスト政治」に懐疑的である著者の姿勢がよく分かる。著者自身その思想の限界は認識しているようだが、なお理想は必要だとする。
     国民だけでなくメディア側の要素も指摘。「空気」に支配されたという「報道の自由度」ランキングには懐疑的で、またメディア報道とはそもそも客観報道ではなく感情報道だったと言い切る。
     書名に直結するのは第6章。ウクライナ戦争をも題材に、情報過多の現在、あいまい情報に飛びつかず不用意に発信しない「ネガティブ・リテラシー」を提唱する。

  • 考え続けること。

  • このインターネット情報社会では受け取った情報に素早く反応するのではなく、あいまいなままにしておくことで時間が経って出てきた正しい結果や結論を受け取ることが出来る。そのためには輿論と世論を改めて使い分け、感情的な世論ではなく、現実原理に基づく輿論を再度用いるべきだ。そのためにはメディアが世論ではなく輿論を責任を持って報道すべきである。みたいな話でした。初めて触れる議論が多くて、論壇の話とかいまいち掴みきれなかったけど、まぁそんな議論もあるんですねーって感じで読んだ。

  • 361.453||Sa

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著者プロフィール

佐藤卓己(さとう・たくみ):1960年生まれ。京都大学大学院教育学研究科教授。

「2023年 『ナショナリズムとセクシュアリティ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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