あいまいさに耐える ネガティブ・リテラシーのすすめ (岩波新書 2026)
- 岩波書店 (2024年8月22日発売)


- 本 ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784004320265
作品紹介・あらすじ
SNS等に溢れるあいまい情報に飛びつかず、その不確実性に耐える力が輿論主義(デモクラシー)の土台となる。世論駆動のファスト政治、震災後のメディア流言、安保法制デモといった二〇一〇年代以降のメディア社会を回顧し、あいまいさに耐えられない私たちにネガティブ・リテラシー(消極的な読み書き能力)を伝授する。
感想・レビュー・書評
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私には難しかったですが、情報を鵜呑みにするのではなく、自分の頭でも考えることの大事さを学びました。
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私たちはどうしても物事を「正義と悪」「正しいと間違い」といった二元論で捉えたがる。おそらく、その方が頭の中を整理しやすく、感情が安定するからだろう。しかし、この本を読んで、そんなシンプルな思考が、時に誤った判断を生むことに気づかされた。
「あいまいさに耐える」という言葉が示すように、不確実な状況の中で即断を避け、考え続けることの大切さが本書のテーマだ。現代は情報が溢れ、瞬時の判断を求められる場面が多い。しかし、情報に流されるままに結論を急ぐことは危険であり、むしろ、迷い続けることに意味があるのではないか。
特に印象に残ったのは、不安が人の判断を誤らせるという視点だ。戦争もまた、不安から生まれる。未知のものへの恐れ、コントロールできない状況への焦りが、極端な決断を引き起こす。では、その不安の中でどうやって平常心を保つのか?
この本は、そんな問いを私たちに突きつける。明確な答えを示すのではなく、「どう考え続けるか」を読者に託しているのだと思う。あいまいさに耐えること。それは、現代を生き抜くために必要な力であり、私自身も身につけていきたい姿勢だと感じた。 -
2009〜23年の著者自身の時評の再録が中心。輿論(公的意見)と世論(国民感情)を峻別し、後者優勢の「輿論の世論化」、また後者に連なるデモ万能論や即断即決「ファスト政治」に懐疑的である著者の姿勢がよく分かる。著者自身その思想の限界は認識しているようだが、なお理想は必要だとする。
国民だけでなくメディア側の要素も指摘。「空気」に支配されたという「報道の自由度」ランキングには懐疑的で、またメディア報道とはそもそも客観報道ではなく感情報道だったと言い切る。
書名に直結するのは第6章。ウクライナ戦争をも題材に、情報過多の現在、あいまい情報に飛びつかず不用意に発信しない「ネガティブ・リテラシー」を提唱する。 -
考え続けること。
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このインターネット情報社会では受け取った情報に素早く反応するのではなく、あいまいなままにしておくことで時間が経って出てきた正しい結果や結論を受け取ることが出来る。そのためには輿論と世論を改めて使い分け、感情的な世論ではなく、現実原理に基づく輿論を再度用いるべきだ。そのためにはメディアが世論ではなく輿論を責任を持って報道すべきである。みたいな話でした。初めて触れる議論が多くて、論壇の話とかいまいち掴みきれなかったけど、まぁそんな議論もあるんですねーって感じで読んだ。
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