バルセロナで豆腐屋になった 定年後の「一身二生」奮闘記 (岩波新書 新赤版 2051)
- 岩波書店 (2025年1月20日発売)
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感想 : 36件
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Amazon.co.jp ・本 (254ページ) / ISBN・EAN: 9784004320517
作品紹介・あらすじ
元朝日新聞の記者が定年後、バルセロナで豆腐店を開業した。修業の日々、異国での苦労、新しい出会いと交流、ヨーロッパから見た日本の姿──ジャーナリストならではの洞察力で、「蛮勇」のカミさんと二人三脚の日々を綴った小気味よいエッセイ。一身にして二生を経る──人生後半の新たな挑戦をめざす全てのひとに贈ります。
感想・レビュー・書評
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新聞記者が、定年後にバルセロナへ移住、豆腐屋を起業、となると、第一印象は、「なぜ?」でしかない。著者は謙遜しているが、開業準備のプロセスは起業のセオリーに沿って、綿密かつ計画的、理性的だと思う。よって、第二の人生を謳歌しよう、というノンフィクションではなく、起業のすすめ、のように感じた。
ただ、著者が、この経験によって「宝物のような10年」を手にしたことは、ただうらやましい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新聞記者や雑誌編集者の仕事を60歳で定年退職してから、第2の人生としてバルセロナで豆腐屋になった話。雑誌編集で欧州の美術担当になり、取材で訪れたスペインのバルセロナが気に入って移住を決めた著者。現地に美味しい豆腐が売っていないことから、豆腐を作って売ることにした。
著者はまず日本で豆腐屋で修業させてもらう。油揚げやがんもどきの作り方も習い、中古の機械を買い集めた。次はスペインの居住及び労働ビザ申請、法人設立の手続きである。読むだけでもとても面倒そうだが、それだけでなく日本の住宅を売り、全財産をユーロに変えてスペインの銀行に移すことで退路を断ったそうだ。子どもたちは独立しており、奥さんと二人での移住だ。
現地で店舗を借り改装し、機械を船で運び、豆腐だけでなく日本の弁当や納豆や日本食品まで売るように準備する。それぞれのステップがとても大変で、言葉もままならず、困難を極める。
それでも、開店できたら商売はそこそこ回っていく。10周年を迎えるころ、奥さんが病気になり、商売を継承し帰国することに。2回目の継承でうまくいき、いまでもバルセロナで商売は拡大している。
退職後は日本でのんびりと暮らす選択肢もあると思うが、外国で新しいことに挑戦する姿勢には頭が下がる。失敗したら(その可能性のほうが高い)、老後の資金もなくなってしまうのに。でも人生は一度きりなので、やりたいことができるうちが花なのだ。著者はもともと物書きだったこともあり、さすがに文章も読みやすく、うまい。日本での生活が穏やかなものであることを心から願っている。 -
audible130冊目。
バルセロナで豆腐屋になろうという発想も行動力もさることながら、それが若者の「一旗あげてやろう」感覚ではなく、「一身ニ生」の挑戦だというところがすごい。
ただ行き当たりばったりにやるのではきっとうまくいかないこと。
地域性や文化の違いもしっかり考え、いろいろな人との交流があってからこそなし得ること。 -
一身二生。今が人生で一番若い時。やりたいことは躊躇せずやるのがいいと思う
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「一身二生」。違う人生を二度生きるという意味で使っているらしい。長寿命となった現代、いい人生を過ごした人が、定年後、二匹目のドジョウを狙っての、成功話かと思ったら、そうでもなく新聞記者らしいルポみたいなお話でした。バター圏とオリーブオイル圏とか、焼き餃子は、主人が食べ残しの水餃子を、使用人が焼いて食べたのが始まりとか、そんなトリビアもあっておもしろく読んだ。
「蛮勇の子」のツレアイの話が、ツライ読後感を残す。
・流水不濁 忙人不老 これから「三生」が始まるのかも。 -
記者を定年退職してバルセロナで豆腐屋になるという、何とも無謀とも思える挑戦を、井上ひさしさんの「一身にして二生を経る」という言葉のとおり、異国の地で奮闘しながら挑戦する姿に心を打たれた。
ある程度豆腐の技術が元々あるのかと思いきや、豆腐の修行を始めたのも退職後であり、預金をすべてスペインの銀行に預けたり、初めて豆腐屋を開くため何百万円もするような機械や道具を揃えて、スペインに送るという…。
自分ならそんな大胆なことは到底出来ないし勇気もない。読みながらも、本当にそんなに老後の金を注ぎ込んで大丈夫なの?と突っ込みを入れたくなりながらも、その行動力や前向きな姿勢には恐れ入ってしまった。
開業後も、ボイラー問題やコロナ禍、プラスチック規制問題など、様々な困難に遭いながらも、その山を乗り越えていく姿は、自分も簡単に諦めてはいけないと勇気をもらった。
また、様々な困難に遭っても周りの方々のサポートに恵まれ、それは、作者夫婦の人柄のお陰なのだなと感じた。
最後に、これは作者の奮闘記であるが、夫婦二人三脚の印なんだなと思い、少し切なくも心温まる思いになった。 -
第1章: 一身にして二生を経る
- 退職と新たな道: 定年退職を控えた著者は、姉の言葉を受けて後悔のない人生を生きる決意を固める。退職前日まで仕事を続け、退職当日は会社の送別会で感謝の意を表する。
- 豆腐屋への志: 退職後の生活は自由で、豆腐屋になることを考え始める。著者は一身一生の生き方を否定せず、若い世代に技術を伝えたいと思いつつも、自身は異なる道を歩みたいと感じる。
- 言葉の意味: 「後ろ髪を引かれる思い」という表現を用いて、自身の未練を語る。執着を残さずバルセロナへ行くことを望む。
第2章: 失敗したって、たいしたことはないよ
- 豆腐製造の過程: 豆腐作りの工程が詳細に描写され、鈴木さんと淳一さんの協力を得ながら、木綿豆腐の製造に取り組む。技術や機械の使い方を学び、実際の作業を通じて経験を積む。
- 豆腐屋の忙しさ: 作業場の様子や、豆腐が完成するまでの手順が具体的に説明され、職人の技術や労力が強調されている。
第3章: 不況のどん底こそ起業のチャンス
- 修業の成果: 三カ月の修業を終え、豆腐屋の開業に向けた準備を進める。スペインでの労働居住許可や営業許可の取得が重要なステップであることが述べられる。
- 法律事務所の協力: バルセロナでの法人設立に向け、法律事務所と連携し、必要な書類を整える。法人名の決定や資本金についての議論も含まれる。
第4章: 崖っぷちに舞い降りた天使たち
- 機械の導入: 日本からの豆腐製造設備の調達が進み、実際に機械が稼働する様子が描かれる。新型機械の使い方や設置の過程が詳細に説明され、製造に関する知識が深まる。
- 豆腐の試作: 設備が整い、実際に豆腐を作る試作が行われ、満足のいく出来栄えが報告される。
第6章: 我が家はバルセロナ市の文化財
- 豆腐の需要: バルセロナでの豆腐の需要が増え、地元の人々に受け入れられる様子が描かれる。特にアジア食材店との取引が重要な要素として挙げられる。
- 文化的な交流: 豆腐が地元の文化に溶け込んでいく様子や、異文化交流の重要性が強調されている。
第12章: コロナ禍の影響
- パンデミックの影響: 新型コロナウイルスの影響で、豆腐屋の売上が減少するが、地域のニーズに応じた商品展開で回復を試みる。外出禁止令が解除される過程も描かれる。
第14章: 事業の継承
- 経営の引き継ぎ: 経営の全権を他者に委任し、新しい経営者が豆腐屋を受け継ぐ様子が描かれる。新しい経営者が現れ、事業が継続されることに対する期待感が示される。
結論
本書では、著者の人生の転機や豆腐屋としての挑戦が詳細に描かれており、雇用や文化の重要性、また困難を乗り越える姿勢が強調されている。豆腐作りを通じて得た知識や経験が、地域社会にどのように貢献するかが主題となっている。 -
記者定年後にバルセロナで豆腐屋を開業した著者のお話。様々な準備、苦労、難局を乗り越えていく様子はよくわかった。著者の人生、好きなように過ごされることが一番。それを踏まえた上で、自分がその周囲の人だったらと考えると・・例えば最初の町内会、会長も務められ盛り上がってきたところでじゃあ
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【選書No】060
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人生の後半から全く違う人生を送るのもなんて愉快な生き方なんだろうと思います。勇気と行動力が素晴らしいです。
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定年後にバルセロナに行き、豆腐屋になる。
しかし、その何年も前にバルセロナに行くことは決めていて、準備もしていた。
M&Aで売却している。 -
人生二山、定年退職後バルセロナで豆腐屋になる夢を叶えた奮闘記。
著者だけでなくバルセロナです起業した人々の紹介も興味深く、何よりカミさんなる夫人のバイタリティに感心した。 -
もう一度人生をやり直せるとしたら何をしようか、誰でも妄想することはあると思うけど、意志と行動力で、いつでも新しい人生を生きることは可能なんだと勇気付けられた。異国の地で新しい仕事をはじめる、しかも定年後に。無謀なことのように思えるけど、筆者の行動力で実現していく。それが猛烈な努力というふうには感じられず(きっと大変なことはあったと思うが)、楽しく課題を乗り越えていく様子が良かった。自分も新しい人生を生きられる気分にさせてくれる。
バルセロナに行く時は是非立ち寄りたい。 -
定年退職後の第2の人生。筆者のバイタリティに感嘆。あこがれの街であこがれの仕事。
定年後の起業、実際のところ成功者より失敗者のが多いのだろう。 -
まさに「生きる力」を感じさせてもらった。
