ビジネスと人権 人を大切にしない社会を変える (岩波新書 新赤版 2052)

  • 岩波書店 (2025年2月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (270ページ) / ISBN・EAN: 9784004320524

作品紹介・あらすじ

人を人とも思わないやり方で搾取し蹂躙する社会が国内外の企業活動で生じている。企業は国際人権基準を尊重する責任を負い、国家には人権を保護する義務があり、人権侵害には救済が求められる。私たち一人一人が国連の「指導原則」が示す「ビジネスと人権」の発想を知り、企業風土や社会を変えるための一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 企業がレピュテーションリスクを気にし始め、それまでのサプライチェーンリスクに輪をかけて、原料調達先の調査に躍起になっている。但し、ノウハウに関する内容だから、回答不可の場合も多く、不完全を許容せざるを得ないため「基本的にポーズ」である。

    更に言うなら、そもそもトップが正義感や哲学を持って実行しているのではなく「事なかれ主義」でやっている事に対し、興醒めする。そんな会社ばかりではないと思いたいが、企業は常に利益を求めるもの。最近になってこうした動きが出てくるのは、哲学がない事の証左でもある。

    しかし、一方では、そうした「評判に敏感」で、たとえ建前だとしても企業行動が変わっていく事は資本主義の可能性を示す良い面でもある。ESG投資の効力は不明だが、強引にでも資本を善良な方向に導いていくチャンスだ。

    で、ビジネスと人権。それは建前としての関係性にならざるを得ないが、それでも良いから、どんどんポーズを取っていこうというのが私見だ。本書は穿った見方はせずに、その実態を解説する。

    ー 英国でも、2015年に有名な「現代奴隷法」が成立した。「現代奴隷」とは、児童労働、人身取引、強制労働その他、搾取的労働の被害にあっている人々だ。英国で活動する企業のサプライチェーン上で「現代奴隷」が酷使されているという問題意識に基づき、NGOなどの社会運動の働きかけを受けて法律が成立した。英国で活動する全世界の売上高が3600万ポンドを超える企業に対し、現代奴隷をなくすための方針や取り組みに関する情報開示を求める法律であり、英国で活動する外国企業も対象となる。同様の現代奴隷法はオーストラリアでも制定された。EUは2014年、域内の従業員500人以上の企業に対し、環境(E)、社会(S人権を含む)、ガバナンス(G)といった非財務情報の開示を求める非財務情報開示指令を採択し、これを受けてEUのすべての国が人権の取り組みを含む非財務情報の開示を企業に求める法律を制定した。2023年、非財務情報開示指令は、気候変動も含めた、開示義務をより明確かつ厳格にした企業サステナビリティ報告指令(CSRD)に置き換えられた。

    貧困国や強制労働を強いられる自治区だけの話ではなく、日本においても人権を無視したブラック企業は労働者を「現代奴隷」として扱っている。自らの欲望のために他者を蹂躙して、幸福が得られるだろうか。もっと強欲を下品なものとして、社会的に軽蔑する仕組みを埋め込むべきだ。

  • めちゃくちゃ大事なことが書かれた新書。
    雇用する人と雇用される人は勿論、すべての人に読んでもらいたい。

    日本社会で私たちが感じる生きづらさは、実は私たち一人一人が当然に保障されるべき人権が守られていないことにある。
    過労死、職場のハラスメント、非正規雇用に対する劣悪な待遇、女性やマイノリティなどの社会的弱者への差別や偏見、ヘイトスピーチを煽るような本の出版、ネット上の誹謗中傷を放置しているプラットフォーム事業者──等々、私たちの人権に対する負の影響に企業は深く関わっている。
    日本にはこうした様々な人権課題があるが、実はそれがそもそも「人権」の問題だと認識されていない。
    人権とは「特別なこと」「おおげさなこと」あるいは「特殊なクレーマーが騒いでいること」と矮小化され、多くの人の人権がないがしろにされてきた。

    私たち一人一人が「ビジネスと人権」の発想を知って、これを企業風土や社会を変えるための有効なツールとして効果的に活用すれば、勇気を出して声を上げた人の思いを大きな変化につなげられるのではないか、と著者は述べている。

  • なんかまだ国連からの指示とか出されるとちょっとウッとなってしまうとか人権とかちょっと〜って人にうまくビジネス的に有利になるにはという切り口で語ってくれているんだけど、ビジネスに媚びすぎじゃない?!という気持ちにも。人権問題の変化はここ数年すさまじいので、スタンダードというよりは常にアップデートくらいの気持ちで食らいついていかないと損をすることになるはわかるが、それは人間として当たり前のことをしているだけでビジネスのためとかじゃないんだよ。

  • ピア・サポーターズOさんのおすすめ本です。
    「人は人生の大部分を、家や学校、職場で過ごします。ですから、その環境の質は私たちの身体的および精神的健康に影響を与えます。そして、人生を楽しみたいと思うなら、それを可能にする場所を選ぶべきでしょう。でも、そのような場所がない、あるいは皆が収まるほど場所が不十分だったら、どうすればよいのでしょうか。それなら、不適切な環境にあるものを変えったほうがよいのでしょうかね。」

    最新の所在はOPACを確認してください。
    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    http://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/BB00619400

  • ビジネスと人権まわりのアップデートに

    なかなか手厳しいというか、もう先進国とは言えないようなレベル感

  • 私たちが働いて手に入れるものは、どこの誰が作り、どれだけの犠牲の上に成り立っているのかを人権という視点からうかがい知れる書である。
    理想としていること
    企業や国が国際人権基準を守り、不平等や搾取をなくすことで「人を大切にする社会」を実現しようと謳う。
    本著は国連「ビジネスと人権」指導原則を参照し、「人権尊重」を前提として企業活動や国家の政策を設計すべきだと強調している。そして、「弱い立場の人が置き去りにされない」ことや、「人権侵害がビジネス利益のために正当化されない」ことを強く問題視し国や社会と個人へ問いを投げかけている。
    実際の社会・ビジネスにおいては「経済合理性」と「人権尊重」のバランスが困難であること、すべての人に配慮できる制度設計や法整備、企業責任の実現には多くの課題があると現実的な視点で述べられている。
    さて、私たちは多くの国を跨ぎ、連携し、サービスやシステム、商品やあらゆる分野でその恩恵を享受している。現代(2025)においても、あらゆる企業で業界を調べると人権を無視した現象が見当たるだろう。国も企業も努力はしているが、やはり制度に問題があるのか、社会構造に問題があるのか、人間という種に問題があるのかこの手の話題は尽きることは無い。
    子どもの商品を低賃金労働者の子どもが作っている話もざらにある。Aiにも人権ではなく環境への問題など悪影響が起きている。私たちは人権を守り、働きやすい環境で働くという軸で厚生労働省も指導をしている。だが、今日でも日本中でも世界中でも人権問題は起きている。
    法務省人権擁護局において、直近(2025)、令和6年(2024~2025年)に新規に救済手続が開始された人権侵犯事件のうち、労働権関係の事案が約18.6%を占め、人権侵犯全体の中で最多の割合となっているのが示されている。
    その中には、労働現場でのパワーハラスメントや労働条件の不適切さが人権侵害として頻繁に問題が起きていることを示し本著が主張する根拠の支えとなっている。
    やはり、制度、教育も重要だがパワハラが起きる現場は個人や会社組織全体に問題があるのは必至だ。
    あなたを守れるのはあなた自身だけである。会社は所詮、会社でしか無いので別のヤバイ会社と遭遇したら別の会社へ行けば良い。そして、時に人権問題で多いのは、自分が嫌だなと思う人物には、自分自身がその嫌な人になり得る素質を持っており、そうなる可能性を思った時点で自身にも自戒する必要もあることを私もあなたも忘れてはならない。
    これまでも今もこれからも続く社会として意識と視点と思索を巡らす良書であると言えよう。

  • 335.15||It

  • 335-I
    進路・小論文コーナー

  •  国内外を問わない企業活動で、人を人とも思わないやり方で搾取し、蹂躙する社会が蔓延っている。企業は国際人権基準を尊重する責任を負い、国家には人権を保護する義務があり、人権侵害には救済が求められる。私たち1人1人が国連の「指導原則」に則った「ビジネスと人権」をどれくらい理解できているだろうか。本書は、正直難しい、しかし通読することでビジネスと人権の課題が環境や自然環境保護の課題も含めて広範に広がっていることが理解できる。
     1948年の国連総会で「世界人権宣言」として採択された。世界人権宣言は、第1条で「全ての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である」、第2条も通じて、全ての人が生まれながらにして平等に人権を有することを明確に宣言した上で、人権カタログを列挙している。にもかかわらず、世界を覆う武力紛争や、気候危機、貧富の格差、排外主義、差別や性暴力といった問題には多くのビジネスが加担していることを縦横に検証する。世界でグローバル化したサプライチェーンによる低年齢・低賃金労働者の人権課題を表面化する。また、日本で起きているビジネスと人権についても詳らかにする。終章では「社会は変えられる」として、具体的取り組みを紹介する。企業には「責任」ではなく「義務」をと提起する。ビジネスと人権に関するからくりを明らかにし、多くの人(企業内部の人を含め)が意思をもってそれぞれ声を上げ、「ビジネスと人権」の理論を使えば、企業行動を大きく変え、「国」さえ動かし、理不尽な現実を変えることができると断言し、我々は無力ではないと励ます。未来を創造する主導権は私たち1人1人にあると確信するとする。理不尽に思うことを飲み込まず、声を出し、声を上げ、発信してくことの重要性を再確認した。

  • 335/イ

  • 【本学OPACへのリンク☟】

    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/728690

  • 現代においては、ビジネスは人権を無視しては成立しないことを国際法などをベースに説明した本です。一方で、まだまだ人権とビジネスの両立は発展途上で、よりよくしていく努力が必要であるというメッセージが強く込められています。

  • ふむ

  • 東2法経図・6F開架:B1/4-3/2052/K

  • 「国連が、企業に対して、人権を守るようにしろというお達しがあった。そのお達しは云々で、企業はがんばらないといけない。」
    そんな話が続くだけで、単純におもしろくない。

  • 日本だけでなく、海外も含め非常に多彩で広範囲な内容なので、すぐに把握するのは難しいかもしれない。労働者の搾取だけでなく企業によるジェンダーの問題までとりあげているからである。これを契機として問題を考えていくことはできると思う。

  • 配架場所・貸出状況はこちらからご確認ください。
    https://www.cku.ac.jp/CARIN/CARINOPACLINK.HTM?AL=01437078

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著者プロフィール

弁護士(ミモザの森法律事務所),国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ副理事長

「2023年 『ジェンダー法研究 第10号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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