詩のこころを読む (岩波ジュニア新書)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005000098

感想・レビュー・書評

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  • 優れた評伝にせよ、詩論にせよ、人や作品を紹介するということは自らを論じることに自然となっていくのだろうということを私は改めて感じた。

    「自分の思いを深く掘り下げていくと、井戸を掘るように掘り下げていくと、地下を流れる共通の水脈にぶちあたるように、全体に通じる普遍性に達します。それができたとき、はじめて表現の名に値するといえましょう。」

    彼女は言葉に出したことは、例えばこのような言葉は、必ず自らに厳しく課している言葉だろうと思えます。また彼女はこんなことも書いています。

    「詩は感情の領分に属していて、感情の奥底から発したものでなければ他人の心に達することはできません。どんなに上手にソツなく作られていても「死んでいる詩」というのがあって、無残な屍をさらすのは、感情の耕しかたがたりず、生きた花を咲かせられなかったためでしょう。」

    これは読む分には、なるほどと思うのですが、作り手にとっては、とってもとっても厳しい言葉です。もう私なんか、詩を創るのは止めようかと思ったくらいです。けれどもそのくらい厳しくなくては、詩人にはなれないのでしょう(私は素人なので自分で自分を許します(^^;)。

    彼女の紹介してくれた詩は総べて素晴らしいのですが、やっぱり人には好き嫌いというのがあって、私が気に入った詩は、高橋睦郎「鳩」、坂田寛夫「練習問題」、黒田三郎「夕方の三十分」、石川逸子「風」、岸田衿子「一生おなじ歌を 歌い続けるのは」、吉野弘「生命は」、河上肇「老後無事」、永瀬清子「悲しめる友よ」でした。

    そうそう、終章にひとつ、彼女は素敵な言葉を書いていました。

    「 これから先、いろんなことが科学的に解明されていくでしょうが、死後の世界のことはついにわからずじまいで最後まで残るでしょう。どんな敏腕なルポライターも、あの世からのルポを送ることはできません。想像力を働かせ、それぞれが、ただふみ迷うばかりです。
     でも、どうやっても、たった一つだけ、わからないことがあるというのは、考えてみれば、素敵に素敵なことではないでしょうか。」

  •  高等学校とかで「国語」の時間に習う(?)詩というものがあるのですが、さて、どう読めばいいのでしょう。そんな疑問がわいたときに手にとられるのがいいのではないでしょうか。
     40年前に教室で高校生相手にすすめた本です。読み直して、古びてなさに感心しました。率直で、正直な茨木のり子さんが、ここにもいます。
     ブログにも書きました。覗いていただけると嬉しい。
      https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202111030000/

  • 詩は、感情や感性のもの。
    散文は論理を積み重ねていきますが、
    そうやって分析することができないものを、
    詩人は、詩として表現する。

    だから、
    読んでみて浮かぶ感想ははっきりした言葉にならず、
    大かたは、
    「ああっ」
    だとか
    「はああっ」
    だとか、
    「そうなんだよ!」
    だとかの感嘆や納得の気持ちが多い。

    あるいは、詩は自分の内部に埋もれている感覚や感情や記憶を
    呼び起こすトリガーになったりもするでしょう。

    詩でこそ開いていける、というところがある。
    社会に対してだってそうだし、
    人間理解だってそうだし、
    世の中そのものだって、過去や未来や宇宙にだってそうなんだなと
    今回、本書を読んでそう思いました。

    繊細だけれど力強くもあり、
    まあるくなってそうで、とがってもいる。
    体内を流れる血であり、流れ出た血でもある。

    何を書いているかはっきりはからないから苦手、という人は多くいそうです。
    僕だって、ずっとそうでした。
    言葉の遊戯、言葉のパズル、言葉のコラージュなんだろう、
    と決めつけたこともあります。
    そういった面は、技術としてあるのでしょうが、
    詩が発現してくる源に目を凝らしてみると、
    また考えが改まります。

    本書は、著者・茨木のり子さんの解きほぐし方が、
    丁寧だし、いろいろと察してもいるし、
    大事に詩を扱っているし、
    言葉がわかりやすいしで、
    詩にひたる経験がしたい! 
    という人にはうってつけの本でした。

  • 詩はむかしから苦手で、ツルツルと読んでどう解釈したらいいのか、いつも分からずじまいだった。

    子どもが産まれて、工藤直子さんとか、岸田衿子さんの詩や絵本に接する機会があり、おふたりの世界が大好きになった。特に、詩は黙読するより、音読したり、読んでもらうのがいい。
    小学校で、読み聞かせをした時、時間が余ったので詩を読んだら、子どもたちが目をキラキラさせて聴いてくれたのが忘れられない。

    茨城のり子さんによるさまざまなテーマの詩を取り上げた本書、特に濱口國雄の「便所掃除」は衝撃だった。詩は何も美しいものばかりじゃなくて、こんな生々しい、ある意味グロテスクなものもあるのかと、ハッとさせられた。

    戦争をうたった石川逸子さんの「風」も、ウクライナで戦争が起きている今読むと、共感が深い。
    「わけもわからず、憎んでもいないよその国の人々と殺し合いの羽目に至るよりは、ぐうたらでも、ちんたらでも、なまけものでも卑怯者でも、そのほうがはるかにましです」

    「寂しさの釣り出し」に合わないように気をつけて生きよう。

  • 仮名遣いが優しく、言葉選びにそつがない
    短く凝縮された、時に難解な詩を自分なりにでも読み解くことができる教養や感性を身に付けたいものだと思う

  • 友人と、お互いに一冊ずつ本を選んでそれを読み込もう、という遊びをやることになり、その友人の推薦もあって、僕は本書を読むことに。


    読む前は、「詩というと書く方も読む方もセンス勝負みたいなところがあるけど、この本はそんな詩をどうやらロジックで解析してくれるみたいだぞ」と思っていたが、それは勘違いだった。


    本書は、著者が選んだ詩を紹介しつつ、そこに自身の感想を添えていくという、極めてオーソドックスな詩の紹介本。


    ざっくりと著名な詩人の作品に触れたい人にはいいかもしれない。

  •  先日読んだ鈴木敏夫(スタジオジブリ)の著書の中で紹介されていたもの。

     鈴木が宮崎駿・高畑勲コンビと知り合って間もないころ、2人の教養に追いついて対等に会話できるようになりたい一心から、彼らの愛読書を片っ端から濫読したという。そのうちの一冊がこれで、高畑勲が愛する本の一つだとか。
     1979年刊で、私が買ったものは2010年の第70刷。ロングセラーなのである。

     詩人茨木のり子が、若い読者(岩波ジュニア新書の主要読者層である10代後半)に向けて自分の愛する詩の数々を紹介し、そのどこが素晴らしいのかを綴っていく本。詩の味わい方入門であり、名詩ガイドでもあるのだが、教科書的な無味乾燥や「上から目線」とは無縁である。文章も平明。
     セレクトされている詩の大半は戦後日本の詩であり、若者にとってもとくに身構えずに読めるものばかりだろう。

     あたりまえだが、著者による地の文自体が詩的香気に満ちたものなので、上質の詩集を読むように味わうことができる。

     私が傍線を引いた一節を挙げる。

    《詩は感情の領分に属していて、感情の奥底から発したものでなければ他人の心に達することはできません。どんなに上手にソツなく作られていても「死んでいる詩」というのがあって、無惨な屍をさらすのは、感情の耕しかたが足らず、生きた花を咲かせられなかったためでしょう。》

    《汚いものでも十分詩になり、詩語という特別のものは何もなく、ふだんの言葉が昇格するだけで、詩の美しさは結局それを書いた人間が上等かどうかが、極秘の鍵を握っているらしい……そんなこともいろいろ教えられます。(濱口國雄の詩「便所掃除」に触れて)》

  • 詩。
    教科書に載っていた詩は勉強のためというイメージで苦手でした。
    それから何十年が経ち、素敵な感性の人に出合い茨木のり子を知り、詩の素晴らしさを今更ながら知りはじめました。
    やさしかったり、いとおしかったり、今の悩みがちっぽけだったり、寂しくなったり、楽しくなったり、思い出したり。
    詩って不思議なもの。
    いろんな詩を探していけるから、これから楽しみです。

    • 9nanokaさん
      詩集、ありがとうございました。やっぱり茨木のり子はいいなぁと思いました。
      詩集は言葉足らずなので、その時の自分によって補える意味が変わって...
      詩集、ありがとうございました。やっぱり茨木のり子はいいなぁと思いました。
      詩集は言葉足らずなので、その時の自分によって補える意味が変わってきますよね。それが面白いと思います(^^)
      私もこの本を読んでお気に入りを探したいと思います。
      2015/02/05
  • またとない本。大切なものに出会ってしまった。愛蔵書だよ。嬉しい。人間を過つことなく見つめることができ、背骨がしゃっきっとした。

    茨木のり子さんの文章が美しい。日本語が美しい。視点がしなやか。構成もまた素晴らしい。茨木さんが語ると、その詩が何倍にも輝く。これはすごい。文学について余計な解説が加えられることは多いが、茨木さんの場合はさらに重層的な詩作に昇華している。

    ラングストン・ヒューズ「忠告」
    吉野弘「生命は」
    金子光晴「寂しさの歌」
    濱口國雄「便所掃除」
    安水稔和「君はかわいいと」

  • 茨木のり子さん、好きです。
    数多くの詩に触れてきたであろう著者が選び抜いた詩と、そこに添えられた愛情に満ち溢れた解説。
    手元に置いて、繰り返し読みたい一冊です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「愛情に満ち溢れた解説。」
      詩の紹介って、「詩」が判っている以上に、「詩」や「言葉」を信じている人だからこそ!だと思いましたよ。
      「愛情に満ち溢れた解説。」
      詩の紹介って、「詩」が判っている以上に、「詩」や「言葉」を信じている人だからこそ!だと思いましたよ。
      2012/11/27
    • なおこさん
      nyancomaruさん。そうですね。茨木のり子さんの言葉を読むとピリッと背筋が伸びます。
      nyancomaruさん。そうですね。茨木のり子さんの言葉を読むとピリッと背筋が伸びます。
      2012/12/04
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著者プロフィール

1926年、大阪生まれ。詩人、エッセイスト。1950年代より詩作を始め、53年に川崎洋とともに同人雑誌「櫂」を創刊。日本を代表する現代詩人として活躍。76年から韓国語を学び始め、韓国現代詩の紹介に尽力した。90年に本書『韓国現代詩選』を発表し、読売文学賞を受賞。2006年死去。著書として『対話』『見えない配達夫』『鎮魂歌』『倚りかからず』『歳月』などの詩集、『詩のこころを読む』『ハングルへの旅』などのエッセイ集がある。

「2022年 『韓国現代詩選〈新版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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