詩のこころを読む (岩波ジュニア新書)

著者 :
  • 岩波書店
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本棚登録 : 749
レビュー : 101
  • Amazon.co.jp ・本 (231ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005000098

感想・レビュー・書評

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  • 優れた評伝にせよ、詩論にせよ、人や作品を紹介するということは自らを論じることに自然となっていくのだろうということを私は改めて感じた。

    「自分の思いを深く掘り下げていくと、井戸を掘るように掘り下げていくと、地下を流れる共通の水脈にぶちあたるように、全体に通じる普遍性に達します。それができたとき、はじめて表現の名に値するといえましょう。」

    彼女は言葉に出したことは、例えばこのような言葉は、必ず自らに厳しく課している言葉だろうと思えます。また彼女はこんなことも書いています。

    「詩は感情の領分に属していて、感情の奥底から発したものでなければ他人の心に達することはできません。どんなに上手にソツなく作られていても「死んでいる詩」というのがあって、無残な屍をさらすのは、感情の耕しかたがたりず、生きた花を咲かせられなかったためでしょう。」

    これは読む分には、なるほどと思うのですが、作り手にとっては、とってもとっても厳しい言葉です。もう私なんか、詩を創るのは止めようかと思ったくらいです。けれどもそのくらい厳しくなくては、詩人にはなれないのでしょう(私は素人なので自分で自分を許します(^^;)。

    彼女の紹介してくれた詩は総べて素晴らしいのですが、やっぱり人には好き嫌いというのがあって、私が気に入った詩は、高橋睦郎「鳩」、坂田寛夫「練習問題」、黒田三郎「夕方の三十分」、石川逸子「風」、岸田衿子「一生おなじ歌を 歌い続けるのは」、吉野弘「生命は」、河上肇「老後無事」、永瀬清子「悲しめる友よ」でした。

    そうそう、終章にひとつ、彼女は素敵な言葉を書いていました。

    「 これから先、いろんなことが科学的に解明されていくでしょうが、死後の世界のことはついにわからずじまいで最後まで残るでしょう。どんな敏腕なルポライターも、あの世からのルポを送ることはできません。想像力を働かせ、それぞれが、ただふみ迷うばかりです。
     でも、どうやっても、たった一つだけ、わからないことがあるというのは、考えてみれば、素敵に素敵なことではないでしょうか。」

  • 詩。
    教科書に載っていた詩は勉強のためというイメージで苦手でした。
    それから何十年が経ち、素敵な感性の人に出合い茨木のり子を知り、詩の素晴らしさを今更ながら知りはじめました。
    やさしかったり、いとおしかったり、今の悩みがちっぽけだったり、寂しくなったり、楽しくなったり、思い出したり。
    詩って不思議なもの。
    いろんな詩を探していけるから、これから楽しみです。

    • 9nanokaさん
      詩集、ありがとうございました。やっぱり茨木のり子はいいなぁと思いました。
      詩集は言葉足らずなので、その時の自分によって補える意味が変わって...
      詩集、ありがとうございました。やっぱり茨木のり子はいいなぁと思いました。
      詩集は言葉足らずなので、その時の自分によって補える意味が変わってきますよね。それが面白いと思います(^^)
      私もこの本を読んでお気に入りを探したいと思います。
      2015/02/05
  • またとない本。大切なものに出会ってしまった。愛蔵書だよ。嬉しい。人間を過つことなく見つめることができ、背骨がしゃっきっとした。

    茨木のり子さんの文章が美しい。日本語が美しい。視点がしなやか。構成もまた素晴らしい。茨木さんが語ると、その詩が何倍にも輝く。これはすごい。文学について余計な解説が加えられることは多いが、茨木さんの場合はさらに重層的な詩作に昇華している。

    ラングストン・ヒューズ「忠告」
    吉野弘「生命は」
    金子光晴「寂しさの歌」
    濱口國雄「便所掃除」
    安水稔和「君はかわいいと」

  • おもに中高生を対象にした岩波ジュニア新書は現在613冊刊行されていますが(2009年2月現在)、その9冊目に当たるのがこの本です。名著です。詩人茨木のり子が忘れがたいよい詩をセレクトし、その魅力を語ります。ここには彼女じしんの詩はひとつも出てきません。この本の趣旨を彼女は次のように書いています。

    「あらためて私の好きな詩を、ためつすがめつ眺めてみよう、なぜ好きか、なぜ良いか、なぜ私のたからものなのか、それをできるだけ検証してみよう、大事なコレクションのよってきたるところを、情熱こめてるる語ろう」・・・「はじめに」より

    そこに紹介されている詩の素晴らしさについては、また別に記したいところです。名著である所以は彼女のしなやかでていねいな言葉にこそあります。誠実な自己省察に貫かれた芯のある言葉にこそあります。詩人の言葉がこれほどまでに素敵であるとは! 私は時に急いで本を読み進めようとすることがあります。茨木のり子の文章は、そんな私の姿勢をおだやかに叱り飛ばしてくれているようです。

    日常生活の時間とは全くちがう文学的な時の流れというものが確かにあると思います。そのことを私は忘れていました。そのことを忘れていた自分に気づいたことをうれしく思います。私は同じページを何度も読み直しました。こころにつきささるフレーズを口ずさんでもみました。すると彼女の打つ読点までが意味をもって立ち上がってくるように感じました。言葉の力というものは実際あるものなのですね。新鮮な驚きを与えてくれる本です。

    「…汚いものでも十分詩になり、詩語という特別なものは何もなく、ふだんの言葉が昇格するだけで、詩の美しさは結局それを書いた人間が上等かどうかが、極秘の鍵をにぎっている…」

    うーむ。政治家に聞かせてやりたいことばです。

  • 茨木のり子さん、好きです。
    数多くの詩に触れてきたであろう著者が選び抜いた詩と、そこに添えられた愛情に満ち溢れた解説。
    手元に置いて、繰り返し読みたい一冊です。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「愛情に満ち溢れた解説。」
      詩の紹介って、「詩」が判っている以上に、「詩」や「言葉」を信じている人だからこそ!だと思いましたよ。
      「愛情に満ち溢れた解説。」
      詩の紹介って、「詩」が判っている以上に、「詩」や「言葉」を信じている人だからこそ!だと思いましたよ。
      2012/11/27
    • なおこさん
      nyancomaruさん。そうですね。茨木のり子さんの言葉を読むとピリッと背筋が伸びます。
      nyancomaruさん。そうですね。茨木のり子さんの言葉を読むとピリッと背筋が伸びます。
      2012/12/04
  • 何度も何度も折に連れて読み返していきたい本。
    昔から好きだった詩もあった。
    なんとなく読み流していた一節に深い意味があったり、ハッとさせられる解釈にうならされた。
    詩というのは本当に深くて、読めば読むほどいいものだと思う。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「読めば読むほどいいものだと思う」
      切り詰められた言葉と言葉の間を想像するからでしょうね!
      「読めば読むほどいいものだと思う」
      切り詰められた言葉と言葉の間を想像するからでしょうね!
      2012/09/13
  • 10代の頃から、1年に1度読み直している、大事な本です。
    自分の価値観にものすごく影響していると思います。

    離陸の瞬間を持っていない詩は、詩ではない。
    そう思います、私も。

  • 私は詩を読むのが苦手なのですが、この本で紹介されている詩はどれも豊かで広がりをもって受け取ることができました。
    具体と抽象がつながるような、指先から宇宙まで広がるような、今が過去にも未来にも開けていくような、不思議な感触でした。
    詩そのものの素晴らしさと、ガイドしてくださった茨木のり子さんの存在と。どちらも味わえる贅沢な一冊でした。

  • アマゾンで詩で検索すると上位にくる。戦後詩人によるジュニア向け詩の入門書。とてもやわらかく現代の日本詩を紹介してくれる。

    <印象的な箇所のまとめ>
    ・恋は本能的、一過性のもの。愛はもっと意志的で持続的なもの。「恋」と「愛」という言葉は近藤されて同義語のように使われているが、詩人たちはそれをかなり注意深く扱う。
    ・自分の思いを深く深く掘り下げていくと、地下を流れる共通の水脈にぶちあたるように、全体に通じる普遍性に達する。それができたとき、はじめて表現の名に値するといえる。
    ・もし本当に教育の名に値するものがあるとすれば、それは自分で自分を教育できたとき。教育とは誰かが手とり足とりやって呉れる者と思って、私たちはいたって受動的だが、もっと能動的なもの。自分の中に一人の一番きびしい教師を育てえたとき、教育はなれり。

  • 読売新聞で、生物心理学者の岡ノ谷一夫さんという方が、好きな人ができるたびにあげてしまった本だ、と紹介していて、なんだかすてきだ、と思い購入。
    読売新聞 読書委員が選ぶ「夏休みの一冊」
    http://www.yomiuri.co.jp/life/book/feature/CO018231/20150810-OYT8T50081.html
    最終閲覧日2015/08/23

    茨木さんの好きな詩をあげて、その味わいを紹介してくれている。

    「くるあさごとに」「一生おなじ歌を 歌い続けるのは」岸田衿子、「海で」川崎洋、が良かったな。
    わからない詩はほんとうにわからないので、解説してもらうのも悪くないかも、と初めて思えた。
    人間的には、石垣りんが気になる。
    「言葉が離陸の瞬間を持っていないものは、詩とはいえません。」(P128)
    「……日本の詩歌はこれまで……「怒」の部門が非常に弱く……」(P159)
    「浄化作用(カタルシス)を与えてくれるか、くれないか、そこが芸術か否かの分れ目なのです。」(P195)

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プロフィール

作詩:詩人。大阪生まれ。1953年、川崎洋と同人誌『櫂』を創刊。戦後の現代詩をリードする。代表作「わたしが一番きれいだったとき」の他、詩集『対話』『見えない配達夫』『鎮魂歌』など。

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