- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005000098
感想・レビュー・書評
-
優れた評伝にせよ、詩論にせよ、人や作品を紹介するということは自らを論じることに自然となっていくのだろうということを私は改めて感じた。
「自分の思いを深く掘り下げていくと、井戸を掘るように掘り下げていくと、地下を流れる共通の水脈にぶちあたるように、全体に通じる普遍性に達します。それができたとき、はじめて表現の名に値するといえましょう。」
彼女は言葉に出したことは、例えばこのような言葉は、必ず自らに厳しく課している言葉だろうと思えます。また彼女はこんなことも書いています。
「詩は感情の領分に属していて、感情の奥底から発したものでなければ他人の心に達することはできません。どんなに上手にソツなく作られていても「死んでいる詩」というのがあって、無残な屍をさらすのは、感情の耕しかたがたりず、生きた花を咲かせられなかったためでしょう。」
これは読む分には、なるほどと思うのですが、作り手にとっては、とってもとっても厳しい言葉です。もう私なんか、詩を創るのは止めようかと思ったくらいです。けれどもそのくらい厳しくなくては、詩人にはなれないのでしょう(私は素人なので自分で自分を許します(^^;)。
彼女の紹介してくれた詩は総べて素晴らしいのですが、やっぱり人には好き嫌いというのがあって、私が気に入った詩は、高橋睦郎「鳩」、坂田寛夫「練習問題」、黒田三郎「夕方の三十分」、石川逸子「風」、岸田衿子「一生おなじ歌を 歌い続けるのは」、吉野弘「生命は」、河上肇「老後無事」、永瀬清子「悲しめる友よ」でした。
そうそう、終章にひとつ、彼女は素敵な言葉を書いていました。
「 これから先、いろんなことが科学的に解明されていくでしょうが、死後の世界のことはついにわからずじまいで最後まで残るでしょう。どんな敏腕なルポライターも、あの世からのルポを送ることはできません。想像力を働かせ、それぞれが、ただふみ迷うばかりです。
でも、どうやっても、たった一つだけ、わからないことがあるというのは、考えてみれば、素敵に素敵なことではないでしょうか。」 -
詩はてんで疎くよくわからないものが大半な私ですが、こちらの本で詩の読み方、視点や視座を教えてもらった気がする。
解釈を読んだあともう一度詩を読み返した時の、腑におちる感覚が心地よく、詩の苦手な私にはとても新鮮な体験ができました。
詩の捉え方はおそらく人それぞれだと思うけれど、今の私には最適な1冊だった。
楽しみ方がもうちょっと身に付いたら詩集なんかにも手を出したい。
ちなみに好きな詩も出来てホクホク♪ -
茨木のり子さんの心に残った詩が人生の流れに沿って編まれ、彼女の熱い解説つきで読める。
岩波ジュニア新書が創刊された1979年に出版された本で、40周年を迎えた2019年には、歴代2位の人気書にランクインしたロングセラー。
https://www.iwanami.co.jp/jr40th/
茨木のり子の散文や詩は『言の葉』で結構網羅した気になっていたけど、↑のサイトのおかげで本書が毛色の違う本だということを理解し、手に取って本当に良かった。
なんだか死の恐怖にとらわれてくよくよしていたとき、本書を読んで、生まれること・生きること・死ぬことを包括的に描いた詩たちと出会い、連綿と続く「生の営み」を俯瞰的に見ることによって恐怖がすっと抜けた。詩の浄化力ってすごい。
茨木のり子さんが繰り出す詩の解説も生き生きとした活力に満ちていて、言葉自体がとても楽しい。これは何度でも折に触れて読み返したい本だと思いました。
(仏語からの翻訳詩も載っていて、原文を調べてみたのでメモ。原文と比較しても和訳が全く違和感ない、名訳でした。)
Fête - Jacques Prévert
Dans les grandes eaux de ma mère
je suis né en hiver
une nuit de février
Des mois avant
en plein printemps
il y a eu
un feu d’artifice entre mes parents
c’était le soleil de la vie
et moi déjà j’étais dedans
Ils m’ont versé le sang dans le corps
c’était le vin d’une source
et pas celui d’une cave
Et moi aussi un jour
Comme eux je m’en irai -
あまり読んだことも書いたこともなかった詩ですが、何となく惹かれて読んでみました。
茨木のり子さんが選んだ傑作ばかりが載っていて、どう読んだか、どこが良いのか、などをこれまた素晴らしい文章で教えてくれます。独特な漢字の使い方が、その言葉の意味を熟知して使っているんだなと感心させられることもありました。
読みどころを教えてもらうと、一層その詩が唯一無二の、とても力を持ったものに感じられて、読むのが面白くなってきます。
淡々と、情景描写や経験したことが書かれた後に、ふと最後の数行で、作者自身の中に入り込んでくる言葉があると、その詩は一気に飛翔して、作者の処から読み手の処へとやってきます。その瞬間、その詩がとても愛しく感じられるから不思議です。
メモしていなかったので、正確な言葉を覚えてないのですが、「人間として上等でなければ、良い詩が描けない」といったことを茨木さんが書いていました。確かに心打たれる詩を読んでいると、作者の人間性に惹かれ、私もこんな風に生きてみたいと思うことが何度もありました。
心に残った詩と、茨木さんの文章
※生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ(吉野弘)
※「その夜」から
私を横に寝かせて起こさない
重い病気が恋人のようだ。(石垣りん)
※自分の中に1人の一番厳しい教師を育てた時、教員はなれり、という気がします。
※浄化作用(カタルシス)を与えてくれるか、くれないか、そこが芸術か否かの分かれ目なのです。
この他、特に好きだった詩は、
石垣りんさんのものと、
新しい刃 安西均
助言 ラングストン・ヒューズ(木島 始訳)
などがありました。
詩が好きな人はもちろん楽しめますし、私のようにあまり触れてこなかった人は特に、詩を読む面白さを知ることができる、かなりの良書だと思います。この本に出会えて良かったです。 -
詩、単体で「好き」と思うものと、茨木のり子さんの鑑賞により「おお、そうか」と思うものと。生まれて/恋唄/生きるじたばた/峠/別れ、という章の編み方も良い。
また十年後に読みたい。 -
高等学校とかで「国語」の時間に習う(?)詩というものがあるのですが、さて、どう読めばいいのでしょう。そんな疑問がわいたときに手にとられるのがいいのではないでしょうか。
40年前に教室で高校生相手にすすめた本です。読み直して、古びてなさに感心しました。率直で、正直な茨木のり子さんが、ここにもいます。
ブログにも書きました。覗いていただけると嬉しい。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202111030000/ -
詩をじっくりと味わいつつ解説もあるので、詩を読みたいけど読み方とか、、という人には良い。
本来正解の読み方とうはないが、想像力を膨らませていくのも練習がいるので著者の解説と一緒に詩をよめるこの本はいいのではないか。
ジュニア新書だけあって学生でも読みやすいと思うし、社会人も読める。 -
素晴らしい本でした。
私の中では石垣りんの「くらし」が白眉の一編でした。
詩のことはよくわからないからという理由であまり触れてこなかった。
けれどこの本の中にある詩に一つひとつ触れ、解説を読む。
少しだけわかったような気がする。詩にもう少し触れてみようかなと思う。
私は宇多田ヒカルの歌詞が好きなのだけれど、(特にFantome以降)彼女の詩のどの部分に惹かれているのか、言葉のチョイスなのか、その飛躍なのか、とか自分なりに理解出来るかもしれない。
音楽が好きなのでたくさんの詩に触れてきた、とも言えるのだ。
歌詞も詩だと仮定する。私の世界はこれから途方もなく広がる。
姪っ子柄中学生になったら、高校生になったら渡してあげたい。読むか読まないかは本人にお任せするけれど。 -
詩を読みたいと思い購入。もっとじっくり読みたい。
私も中学生の時に、この新書を読み、黒田三郎さんに一番ひかれました。なので、私のブクログの本棚にも、黒田三郎さん...
私も中学生の時に、この新書を読み、黒田三郎さんに一番ひかれました。なので、私のブクログの本棚にも、黒田三郎さんの詩集があります。
「紙風船」
落ちてきたら
今度は
もっと高く
もっともっと高く
何度でも打ち...
「紙風船」
落ちてきたら
今度は
もっと高く
もっともっと高く
何度でも打ち上げよう
美しい
願いごとのように
小学生の教科書にはこの詩が載ってました。
まことさんの本棚に
今から出かけます。
ありがとうございます。