平家物語を読む: 古典文学の世界 (岩波ジュニア新書 16)

著者 :
  • 岩波書店
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  • / ISBN・EAN: 9784005000166

感想・レビュー・書評

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  • 夏休みには古典を読むことにしているが、いきなり平家物語ではハードルが高いかなと思い、まずはジュニア向けのこちらを読むことに。
    ところが大人が読んでもじゅうぶんに面白く、夢中になって何度も読み返すはめになった。
    話の壮大さと人物描写の巧みさ、それもプラス面のみでなくマイナスの面にもしっかりスポットをあてて、しかもその眼差しが温かい。
    おかげで憎まれ役の清盛が、この一冊で初めて好きになった。

    千人をはるかに超えるほど多いという平家物語の登場人物。
    その中から10人を抜粋し、原文のあとに現代語訳を載せ、更に著者なりの解釈をくわえてあって、それがとても真摯で熱く、素晴らしいものになっている。
    栄枯盛衰・諸行無常が底辺に流れているとはいえ、厳しい運命を受け入れてなおも懸命に生きようとする人々の姿に、こちらも何度胸を熱くしたことか。
    燃え尽きるその瞬間まで旺盛に生き抜くエネルギーは、現代人にこそかけているのかもしれない。

    祇王、俊寛、文覚については名前しか知らなかったのだが、ここで学ぶことに。
    そして平忠度の都落ちの場面や平知盛の最後の場面などは、まさに感動もの。
    時を超えて読み継がれる物語と言うのは、大衆的なだけでなく芸術的な要素も大きいのだなと再発見した。

    琵琶法師の語った物語だから、原文には独特のリズムがあり、やはり元の話を声に出して読みたくてたまらなくなってくる。
    読んだ後でまたこちらを再読したら、更なる面白さがあるかもしれない。

    義経の登場あたりからは、まるで「見てきたように」語れるのだが(笑)、それ以外はとんと疎かった私が、今やこんなレビューまで載せている。
    一冊の本の持てる力は大きいなぁと、そんなことにも感嘆。

    • 淳水堂さん
      こんにちは!

      平家物語いいですよねえ。
      子供の頃は軍乱物が好きだったので、
      平家物語も(もちろん子供向けですが)楽しんで読んでまし...
      こんにちは!

      平家物語いいですよねえ。
      子供の頃は軍乱物が好きだったので、
      平家物語も(もちろん子供向けですが)楽しんで読んでました!

       赤地の錦の直垂に
       唐綾威の鎧着て
       鍬形うったる甲の緒しめ…

      ううん、このリズム血が騒ぎます(笑)

      子供の頃は平家より源氏贔屓でした。
      戦場に楽器を持ち込み夜な夜な弾き語る平氏後一門を「そんなんだから滅びるんだ!」、
      ルール無用、魁上等、村は焼くし漕ぎ手は射殺す源氏には読んでるだけとしては「武家ならこれが当たり前だろう」くらいに子供の頃は思ってたんですけど、
      大人になるとと戦場で琵琶をかき鳴らす公達たちの風情と無常が感じ入られるようになりまして。

      子供の頃は古典の子供向けけっこう読んでましたが、もっとちゃんとした原典の現代語訳も読まなければだなあ。
      2016/08/15
    • nejidonさん
      淳水堂さん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      はい、これは淳水堂さんもお好きだろうなと思いましたよ。
      著者の、平家物語に...
      淳水堂さん、こんにちは♪
      コメントありがとうございます!
      はい、これは淳水堂さんもお好きだろうなと思いましたよ。
      著者の、平家物語に寄せる熱い思いが伝わってきます。ぜひぜひお薦め!
      ワタクシは、DLしたものを電子書籍で読みつつありますが、遅々として進みません(笑)
      ちょっと読んでは「う~ん、そうかぁ・・」と天を向いて味わっております。
      古来日本人は、これを繰り返し読んでは諳んじて、様々な教えを得てきたのでしょうね。

      はい、軍記物はワタクシも大好きです。
      淳水堂さんと同じく、「血が騒ぎ」ます(笑)
      源氏贔屓だったというのもうなずけますよ。
      そちらに肩入れしたものが多かったですものね。
      私は平家のファンです。生まれ変わったら楽師になりたいほど。
      (ところで、mkt99さんのところでコメントされていた「マッサン」ですが、何のことか分かりませんでした。 調べたらTVドラマだったのですね。ドラマにはとんと疎くて・・ダメだ、こりゃ・・)
      2016/08/16
  • K913
    『平家物語』は、王朝貴族社会から、中世武家社会へと大きく移り変わった時代、平家一門の人々がたどった運命を描いた語り物文学です。この本では、平清盛、知盛、祇王、俊寛、木曾義仲など10人の登場人物をとりあげ、原文にふれながら、『平家物語』の全体像と文学としての豊かさをつたえます。

    目次
    平忠盛
    祇王・仏
    俊寛
    文覚
    平清盛
    木曾義仲
    源義経
    平忠度
    平知盛

    著者等紹介
    永積安明[ナガズミヤスアキ]
    1908‐1995年。山口県に生まれる。1932年東京大学文学部国文学科卒業。神戸大学、清泉女子大学教授を歴任。神戸大学名誉教授

  • 「祇園精舎の鐘の声~」という冒頭は知っていても、本編は読んだことがないという人は多いだろう。自分もその一人で、2012年の大河ドラマ「平清盛」を見るまでは全く興味がなく、なぜ戦国時代を舞台にした大河でないのかと残念に思ったほどである。

    しかし、何気なく見ているうちに、複雑に絡み合う人間関係やHD画質を効果的に用いたリアルな表現に引き込まれ、すっかり虜になっていた。当然、原作である平家物語にも食指を伸ばすことになるのだが、まずは入門書的なものから理解を深め、ゆっくり楽しんでいこうというわけで、本書を手に取った次第である。

    本書の特徴は、平清盛、忠盛、知盛、木曾義仲など、特に重要な位置づけである10人を取り上げ、彼らの群像劇から長大な物語に触れるというもの。平家、源氏に関わらず、登場人物は皆その混沌とした時代を全力で駆け抜けた様が丁寧に解説されているため、時系列で出来事を追う方式よりも読み易く感じられた。

    既に大河の放送は最終回を終えたが、ドラマでの描かれ方を思い出し、比較しながら奥深い物語を楽しむのには、まさにうってつけの入門書。

  • 今年の大河ドラマは平清盛です。
    ふと「平家物語って、学校の授業で冒頭を暗記させられたことはあるけど、読んだことないなあ」と思って、入門編のつもりで読みました。

    平家物語の中から、平忠盛、祗王・仏、俊寛、文覚、平清盛・木曾義仲、源義経、平忠度、平知盛の10人を取り上げ、各人の人柄を伝えるとともに、文学作品としての平家物語を浮き彫りにしていく本です。

    読み進めていくと、知っているエピソードが満載でした。
    平家物語全体として読んだことが無くても、エピソード単位で読んでいました。

    「祇園精舎の鐘の声」ではじまる有名な平家物語は、「盛者必衰の理をあらわす」ものです。
    どの人物がどのように運命の上昇気流に乗り、どのように衰退していったのか、わかりやすく書かれていました。

    次は現代語訳をされた平家物語を読んでみる予定ですが、きっとこの本で確認したことが手助けしてくれると思います。

  • 古典は高校の時から好きではなかった。「古典」と聞くと虫唾が走るようになっていた私にもう一度古典を物語として接していくことを促してくれたのは高校の時の恩師である。古典の勉強を一切怠ってきた私をまだ気にかけてくれているのは低頭するばかりだ。
    毎年9月に平家物語についての発表を行っている。8月中までにフィールドワークを行い、それについて発表をしている。今年で3回目になるため、大分内容も把握してきたが、まだ肝心の物語については所々しか触れていない。話も特定の人物のことしか理解していなかった。そのため、少しでも幅を広げるために手に取ったのがジュニア新書。以前、DVDにて平家についてを鑑賞していたため、内容をより分かりやすく読み進めることが出来た。いずれは自分の生徒と読み進めていきたいと思う一冊である。「祇王・仏」について書かれているのだが、もう1人の悲劇のヒロインである「建礼門院」についても取り上げて欲しかったと思う。

  • [ 内容 ]
    『平家物語』は、王朝貴族社会から、中世武家社会へと大きく移り変わった時代、平家一門の人々がたどった運命を描いた語り物文学です。
    この本では、平清盛、知盛、祇王、俊寛、木曾義仲など10人の登場人物をとりあげ、原文にふれながら、『平家物語』の全体像と文学としての豊かさをつたえます。

    [ 目次 ]
    平忠盛
    祇王・仏
    俊寛
    文覚
    平清盛
    木曾義仲
    源義経
    平忠度
    平知盛

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    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • (2005.06.14読了)(2004.11.23購入)
    副題「古典文学の世界」
    「平家物語」は、全12巻からなる戦記文学で、成立は、平家が滅んで40年ぐらいあとということです。「平家物語」に登場する人物は千人をはるかに超えるほど多い。その中から十人を選び出し、それぞれの生き方を紹介しているのがこの本です。
    平忠盛、祗王・仏、俊寛、文覚、平清盛、木曾義仲、源義経、平忠度、平知盛の十人です。
    ところどころに、原文を入れて、その解説もしてくれるので、「平家物語」の原文の雰囲気を味わいながら、平家物語の世界に誘ってくれる。
    縮約版「平家物語」は、原文の雰囲気が全くないので、それを補ってくれるので嬉しかった。本当は、講談社学術文庫の12巻を読めればいいのだけれど、その気力は今はない。
    ●平忠盛
    清盛の父である。1131年3月に、鳥羽上皇のために得長寿院という寺院を作り、三十三間堂に一千一体の仏像を据えて献上した。上皇は喜んで、内裏の清涼殿、殿上の間に出仕することを許可した。平家はこのとき、始めて公然と貴族の仲間入りすることを許され、父祖代々にわたる宿願を達成した。藤原一族の独占に風穴を開けたことにらる。
    ●祗王・仏
    祗王も仏も白拍子の名前である。白拍子は、辞書を引くと「平安末期に起こった歌舞。また、それを業とする遊女。最初、直垂・立烏帽子に白鞘巻の刀を差した男装で今様などを歌いつつ舞ったが、のち殿上人・童児・遊僧なども舞うようになった。」とでている。男装で、歌いつつ舞を舞う人。芸能人ということ。静御前も白拍子である。
    平清盛は、祗王という白拍子を寵愛していた。仏御前という白拍子が、平清盛の別邸に押しかけ舞を舞いたいと申し出るが、祗王がいるから必要ないと断られる。祗王のとりなしで、今様を歌う。見事な歌いぶりだったので、舞わせて見ると、見事な舞だった。その結果、今まで寵愛していた祗王を追い出し、仏御前を屋敷にとどめた。
    その後も、一度捨てた祗王を呼び出して、仏御前を慰めるために舞を舞えといってきたりするので、出家してしまう。仏御前もいずれ我が身も、祗王と同じことになるとを覚り、祗王の基を訪ねて、出家してしまう。
    ●平忠度
    薩摩守忠度とも呼ばれ、無賃乗車の代名詞にされている人です。
    1183年7月25日、木曾義仲に追われて、平家は都落ちをします。平忠度は、歌人藤原俊成卿の邸に立ち寄り、勅撰和歌集を編纂するときは、一首也とも入れてくれるようにお願いし、秀歌と思われるものを百余首書き集めた巻物を託して去ります。
    後に編纂された「千載和歌集」に読人知らずとして、一首入っています。
     さざなみやしがのみやこはあれにしをむかしながらのやまざくらかな
    平忠度は、位置の谷の合戦で討ち取られてしまうのですが、討ち取ったほうは名前が分からないので、箙に結び付けてある文を解いてみたら、歌が一首書いてあり、忠度と署名があったので、忠度と判ったということです。

    著者 永積 安明
    1908年 山口県生まれ
    1932年 東京大学文学部国文科卒業
    神戸大学名誉教授

    ☆関連図書(既読)
    「義経(上)」司馬遼太郎著、文春文庫、1977.10.25
    「義経(下)」司馬遼太郎著、文春文庫、1977.10.25
    「炎環」永井路子著、文春文庫、1978.10.25
    「大塚ひかりの義経物語」大塚ひかり著、角川ソフィア文庫、2004.09.25
    「義経」宮尾登美子著、日本放送出版教会、2004.11.25
    「平家物語」高野正巳訳・百鬼丸絵、講談社青い鳥文庫、1994.04.15
    「平泉 よみがえる中世都市」斉藤利男著、岩波新書、1992.02.20
    「奥州藤原氏 平泉の栄華百年」高橋崇著、中公新書、2002.01.25
    「源義経」五味文彦著、岩波新書、2004.10.20

    (「BOOK」データベースより)amazon
    『平家物語』は、王朝貴族社会から、中世武家社会へと大きく移り変わった時代、平家一門の人々がたどった運命を描いた語り物文学です。この本では、平清盛、知盛、祇王、俊寛、木曾義仲など10人の登場人物をとりあげ、原文にふれながら、『平家物語』の全体像と文学としての豊かさをつたえます。

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著者プロフィール

1908年、山口県生まれ。1932年、東京大学文学部国文学科卒業。神戸大学教授、清泉女子大学教授などを歴任。1995年没
【主要著書】『中世文学の成立』(岩波書店、1963年)、『平家物語の構想』(岩波書店、1989年)、『軍記物語の世界』(岩波現代文庫、2002年)

「2022年 『平家物語を読む 古典文学の世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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