本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784005001934
作品紹介・あらすじ
湾岸危機のさなかヨルダンのアンドルス・キャンプで日本人ボランティアが食料を手渡していました。受けとるのはイラクやクウェートから国境を越えて逃れてきた難民たち。食事配給・テント設営などの労力奉仕をとおして彼らが見たものは。日本の国際平和協力が求められるなかで、貴重な民間の活動報告。
感想・レビュー・書評
-
ヨルダンは中東•西アジアの立憲君主制の国であり、正式名称をヨルダン・ハシミト王国、ハーシム王家が統治する国だ。周囲をシリア、イラク、サウジアラビア、イスラエル、パレスチナと隣接し、国土の面積は日本の約4分の1程度、現在の人口は凡そ1000万人、その人口の4分の1にあたる250万人が首都アンマン近郊に集まる。国民の多くはイスラム教徒だが、キリスト教徒が共存する国である。この国はイスラエルと国境を接し、周辺諸国と同国が緊張関係にある事から、屡々難民の逃げ先となった経緯がある。ヨルダンも歴史的にそうした難民受け入れには積極的であり、イスラエルとは平和条約を締結しているものの、今回のパレスチナ侵攻に対しては人道主義の観点からイスラエルには反対の立場をとる。だが概ね治安の良いと言われる所以は、こうした周辺諸国との争いから一歩引いた平和的な立ち位置を維持する外交面での成果と言える。
本書は「3年B組金八先生 」やNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」の脚本で有名な脚本家の小山内美江子氏が、湾岸戦争勃発の危機に揺れる中東地域のヨルダンで難民支援にあたった経験を記した作品だ。岩波ジュニア文庫の作品という事もあり、内容は小学生でもわかる様な平易な単語を中心に描かれており、難民支援の困難さや問題点を簡潔に伝えるものとなっている。中東地域は現在でもイスラエル中心に混乱混迷を極めた状況にあるが、当時はイラクがクウェートに侵攻した事でアメリカをはじめとして、平和維持を目的とした軍の派遣が検討されていた時期にあたる。クウェートからは大量の市民がヨルダンに流れ込んでおり、イラクからも日本人をはじめ、アメリカからの攻撃を避ける為に、各国の民間人がが脱出を試みるなど、かなり緊迫した状況下にある。日本でも小泉純一郎政権が自衛隊派遣を検討しており、国内でも世論が二分され、小泉首相の「自衛隊のいるところは非戦闘地域」は今でも迷言として記憶に残る。
その様な状況で現地に赴き、ボランティア活動を行う筆者とその仲間達。混乱するキャンプでそして危険を冒しての行動には大変な勇気がいるだろうが、「カネだけ出して血を流さない日本」というイメージに一石を投じる事には大きな意義を感じる。勿論その為に法整備に多くの課題を抱えた状態で自衛隊を派遣する事には反対の姿勢も示す。筆者達のこれら活動の記録は、実際に現地にいかなければわからない、キャンプの実態がよくわかってくる。外側=先進国から見た善悪の判断基準と、そこに暮らす市民との基準のギャップ、本当に彼らが必要としているものが何か、生の声からしか解らない心実が見える。ジャーナリストがニュース報道からしか伝わらない西側の理論とは異なる真実の姿を伝える様に、そこに居なければ見えない真実が沢山ある事を本書は伝えようとしている。それも難しい背景や政治を抜きにした、感じた想いを言葉でそのまま伝える内容は、実にすんなり頭に入ってくる。未だ未だ世界的に見て、難民に対しての日本の貢献度が十分とは言い難い(それは今でもそれ程変わらない認識だ)。本書でボランティア活動に従事する彼らの言葉や行動から学ぶべきことは多い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(2005.05.25読了)(2005.03.05購入)
ヨルダン難民という題名なので、てっきりパレスチナからの難民と思っていたのだが、なんと湾岸戦争によるクウェートからの難民でした。地図を見れば分かるように、ヨルダンは、クウェートと国境を接していません。間にはイラクやサウジアラビアがあります。
難民は、クウェート人ではありません。「スーダン、バングラデシュ、スリランカ、アフガニスタン、フィリピンなどの人々でした。彼らは故国を遠く離れて、イラクやクウェートで働いていた人たちです。事の始まりは、1990年8月2日のイラクによるクウェート侵攻です。」
アメリカ、イギリス、フランスがサウジアラビアへ軍隊を派遣する中、日本は、資金援助を行いましたが、「金だけ出して人は出さず、汗も流さなければ血も流さない」と言われるので、政府は、「国連平和協力法案」を国会に提出し、自衛隊の派遣が行えるようにしようとしていました。紛争地域に入れば、軍隊に何らかの形で協力するものは、相手からすれば、敵対行為にほかなりません。自衛隊が行けば、攻撃の対象になる事は明らかです。
したがって、小山内さんは、自衛隊の派遣には反対なのですが、「賛成なら参加し、反対なら代案を出す」という母の教えに従い、自分で何ができるかを考えた結果が難民救済のボランティア活動でした。
「アガペハウス」というボランティア団体に連絡をとり行くことにします。聞いてみると旅費は自前持ちということです。航空会社の協力が得られれば、安くなることもあるそうです。息子さん、友人、知人総勢7人で行くことになり、11月26日出発。
ヨルダンに到着して聞いた説明の中に「隠れた難民」というのがありました。「石油も出ず、これといった産業もないヨルダンでは、頭脳労働者がイラクやクウェートに出てかなりのポストを手に入れて、外貨を稼いでいました。ところが、湾岸危機で大挙帰国。親戚に引き取られています。この人たちには援助はありません。」
ボランティア活動は、食事の配給、オフィスの掃除、といったところです。男性ボランティアは、テント生活。女性はホテル住まいです。
中東は、暖かいところというイメージがありますけど、冬は結構寒くなります。ボランティアの一人も、テント生活で風邪を引いてしまいました。
12月1日まで、ボランティア活動をして、12月2日は、ローマ時代の遺跡(ジェラシ)を見学し、12月3日に日本に帰国しました。
難民の人たちは、順次故国へと帰国してゆくようです。また、どこかへ働きに行くことになるのでしょうけれど。
●ヨルダン
「ヨルダンで生まれた生粋のヨルダン人は、この国の人口の約四割弱で、残り六割以上はパレスチナから逃れてきて、そのままここに住み着いた人とその家族ということです。」
(僕がヨルダンを訪れた、1978年ごろは、パレスチナ難民キャンプがあったのですが、それから10年以上たっていますので、ヨルダンに生活の拠点を築いたということなのでしょう。)
●関連図書
「石油に浮かぶ国」牟田口義郎著、中公新書、1965.08.25
著者 小山内 美江子
1930年 横浜生まれ
1948年 鶴見高等女学校卒業
1962年 シナリオ作家としてデビュー
代表作「3年B組金八先生」「翔ぶが如く」
(「BOOK」データベースより)amazon
湾岸危機のさなかヨルダンのアンドルス・キャンプで日本人ボランティアが食料を手渡していました。受けとるのはイラクやクウェートから国境を越えて逃れてきた難民たち。食事配給・テント設営などの労力奉仕をとおして彼らが見たものは。日本の国際平和協力が求められるなかで、貴重な民間の活動報告。
著者プロフィール
小山内美江子の作品
本棚登録 :
感想 :
