科学の考え方・学び方 (岩波ジュニア新書 272)

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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005002726

感想・レビュー・書評

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  • 良書 科学と倫理の関係を、青少年に分かりやすく解説した書です。

    阪神淡路大震災、オウム真理教、もんじゅ。科学そのものは万能ではなく、私たちが意外にもろい基盤の上に生きていることを、これらの事件がはっきり示していたからです。
    科学の使い方を誤れば、人を平気で殺し、はては、人類を滅ぼしてしまいかねないことに人々は気がついています。
    未来は「科学の知」にかかっている。
    一つ一つの問題を、あらゆる角度から検討する必要があります。

    気になったことは以下です。

    ・研究者には大まかに分けて、2通りのタイプがある。
     「微分型」:問題の詳細を突き詰めて考え、すぐれたテクニックで解決していくタイプです。
     「積分型」:問題をより広い観点から見渡して、進むべき方向や全体の整合性を考えるタイプです。
     微分型は、虫の目、積分型は、鳥の目といえるかもしれません。

    ・自然科学には、2つの方法があります。
     帰納的方法:現象や対象そのものに興味をもって観測・観察・実験しそこから共通性や規則性を発見していく方法
     演繹的方法:基本的な原理や法則を推論し、具体的な現象や対象に適用してそれを理解する方法

    ・科学という仕事は、本質的に、「積み上げ」式だといえるでしょう。過去の研究者の成果をもとにして、それを深め、発展させていくわけです。

    ・科学の構造とは、現象⇒物質の運動⇒法則 でしょうか。

    ・科学である限り、どの分野でも考え方や攻め方は共通しています。科学は一定構造のをもっているのです。

    ・観察をより一歩進めたのが、観測です。自然が引き起こす現象を性質をくわしく見るだけでなく、「測る」、つまり何らかの尺度を用いて性質を数値に置き換えるのです。

    ・物質という実体にはたらきかけ、そこで発見された結果が、誰によっても実証ができるいう、科学の客観性を保証しているのが実験なのです。

    ・物理法則の構造 原理・仮説 ⇒ 法則 ⇒ 保存則

    ・科学の方法 実験

    ・一般にモデルには、2種類あって、
     実在モデル:実際の現象を再現するよう物質を組み立てたもの
     分析モデル:現象を理解しやすいよう法則を単純化したもの

    ・数学は科学のことば 物理法則は、すべて数学を用いて書かれています。数学は言語のように国ごとに変わることがありません。

    ・イギリス王立協会がはじめた重要なこととは、論文発表のルールを確立したことです。

    ・現代科学が不得手な問題 カオスとフラクタル

    ・いままで解けなかった非線形問題を、コンピュータを使って、数値的に解くことができるようになった。

    ・バタフライ効果 ほんのささいな空気の変化がいずれ、大変動をおこすこと

    ・フタクタル現象:物理量の間の関数が、ベキで表されること。複雑な相互作用の結果、大から小までさまざまなスケールの現象が混じっているので何が問題なのかがわかりにくい。

    ・奇妙なアトラクターという現象を通じて、カオス運動と、フラクタル概念が結びついている。

    ・技術の方法の多様性:科学の原理や法則は1つでも、技術化の方法は複数あるというもの
     つまり、技術は、その科学的な合理性だけでなく、社会との関係の中で選ばれるので、社会の変化に応じて技術の内容も変化するはず。しかし、長い目でみて正しいのかどうかを考える必要がある。

    ・科学は仮説にすぎない。科学にかかわることで「絶対」はないのです。私たちは、まだ自然現象の一部分しか理解しておらず、未知の部分があるかぎり、「絶対安全」などと、「絶対」に言えないはずです。

    ・科学は技術を通じて社会と、そして人間と強く結びついています。科学は使い方次第で、人を活かしも、殺しもできる恐ろしい力をもっているのです。

    ・現在生じてる環境問題などの地球上の矛盾は、結局科学の力で解決するしかないと考えており、真に科学の力を発揮するためには、科学者がしっかりした倫理を持つべきです。

    ・カオスやフラクタルなど、まだまだ解かれていない謎が周辺に溢れています。新しい手法で研究すべき身近な現象は多くあります。これを私は、「等身大の科学」と呼んでいます。

    ・技術の真の価値を利用するには、それを使う人間の技術レベルも上げなければなりません。そのためには、技術の内容を理解し、論理的な思考や全体のつながりを把握する力を持ってなければなりません。

    ・未来を担う君たちへ。科学の第一線でどのような研究が行われているのかを、やさしく書かれた本で読むのも楽しいと思います。科学に新しい風を吹き込み、転回の時代をよりいっそう大きく展開させるのは未来を担う君たちです。(結論)

    目次

    はじめに
    1 私にとっての科学
    2 科学の考え方
    3 科学はどのように生まれたのか
    4 現代の科学と科学者を考える
    5 21世紀の科学と人間
    6 未来を担う君たちへ
    付録
    あとがき

    ISBN:9784005002726
    出版社:岩波書店
    判型:新書(岩波ジュニア新書 272)
    ページ数:208ページ
    定価:840円(本体)
    発売日:2017年05月25日第31刷

  • 科学の考え方、方法にどのような特徴があるか。どのようにして生まれ、変化してきたか。科学の歴史をエジプトの太陽暦から振り返り、科学技術の進歩と社会の関係も言及されている。
    著者自身が宇宙物理学の研究者ということもあり、取り上げるテーマは、例えば、3章で述べられているニュートン「万有引力の法則」コペルニクス「地動説」ガリレオ「望遠鏡」などである。
    天文学に興味があり、入門書として最適。
    また現代(2000年頃)の科学や科学教育についても随筆的に述べられていて、地球環境問題など、科学者を目指す方への金言が多い。

    ・科学の専門家に任せてしまっては、いけないのです。市民一人一人、自らの頭で意見を述べる、それによって専門家に見えてない側面が明らかになるのです。(はじめに 6ページ)

    ・本当に「科学」と呼べるか疑わしいのですが、必要なのは、決着がつく問題とつかない問題をきちんと見分けることです。(1章 29ページ)

  • 専門の宇宙物理学に限らず科学の多肢にわたる分野について書かれていて、
    これから科学を目指す若者やそうではなくても理解し
    今後、社会での科学の貢献を客観的に見守っていてほしい若者へと願う
    著者のとても誠実な気持ちが伝わってきた
    特に、物理学、化学、生物学と科学を取り巻く周辺の学問についての説明や
    科学の歴史と未来について分りやすく説明している

    また、科学の光と影を正直に伝え、若者に将来の科学について考えてもらう問題提起も行っている

    ただ、高校生ぐらいだと理解できそうにない専門的な内容もあったので
    その辺りは軽く流して読んでもらえると全般的にはとても役に立つ内容だと思う

    工学系の私としては遺伝子工学、生物工学については少し取り上げていたが、
    今後も発展が期待され、若者も注目しているロボット工学、情報工学、
    福祉工学などについても述べてほしかった。

  • 理科教員を志望しているときに、レポート課題として、この本に出会いました。
    理科の教員として働いて16年。
    職員室のデスクに置いて、今でもたまに読み返しています。

  • 著者は「九条科学者の会」とか、「日本学術会議」のような偏向組織に属しているようなので、警戒しながら読み進めてみる。

    素粒子から宇宙論まで、広範をカバーしており、雑学的な部分もあるが、「相対性理論とニュートン力学の関係」等、これまでの疑問を解消してくれる部分もあり、有意義だった!

  • たしかに今まで環境問題の対応について原子時代に戻るべきだという意見があったが、それは不可能なことであり、大規模なことを小規模化して独自の生活を送ることが大事でまた、理系や文系の壁を越えて解決できるんだなぁと思った

  • 科学への「不信」や未来への「不安」を解消するための第一歩は、科学をもっと身近にすること。
    科学の専門家にまかせてしまってはいけない。
    市民一人一人が自らの頭で考えて意見を述べる必要がある。

    これからの環境問題に向かい合うための解決のヒント→「自然にやさしい科学」「等身大の科学」(対象が等身大の大きさで身近な現象であり、多くの人々がさまざまな形で参加できる科学)

    情報革命は、それを使う人間の知的レベルを上げなければ価値がない。
    世界を広い視野で見、将来を深く洞察する能力が不可欠である。



    私たちや自分の子供たちがすべき事を導いてくれています。
    筆者の強いメッセージ性を感じます。
    未来を明るくするために、科学の借金を子孫に押し付けないよう知的レベルを上げて様々なことを判断していきたいです。

  • NDC(9版): 404(論文集,評論集,講演集)

  • 久しぶりに岩波ジュニア新書を読んでみた。やはり、岩波ジュニア新書は良書だ。決してジュニア向けだけではなく、大人が読んでも考えさせられる内容が満載だ。

    ★地球環境問題 解決のヒント
    ・「自然にやさし科学」を
    ・生体反応を利用した技術
    ・電気エネルギーからの脱却

  • 科学は観察から始まり、観測や実験を通じて理論を構築する学問である。また、科学者にはそれらを健全に行うための倫理を求める。

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著者プロフィール

1944年姫路市生まれ。名古屋大学・総合研究大学院大学名誉教授。1967年京都大学理学部卒業、1972年京都大学大学院理学研究科博士課程修了、1975年京都大学理学博士。京都大学理学部助手を皮切りに、北海道大学理学部・東京大学東京天文台・大阪大学理学部・名古屋大学理学研究科を経て、総合研究大学院大学教授・理事の後、2014年3月に定年退職。九条の会世話人、世界平和アピール七人委員会委員。著書に、『科学の考え方・学び方』(岩波ジュニア新書、1996年)、『寺田寅彦と現代』(みすず書房、2005年、新装版2020年)、『科学者と戦争』(岩波新書、2016年)、『物理学と神』(講談社学術文庫、2019年)、『江戸の宇宙論』『江戸の好奇心』(いずれも集英社新書、2022年、2023年)、『姫路回想譚』(青土社、2022年)他多数。

「2024年 『新潟から問いかける原発問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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