近代日本の戦争 20世紀の歴史を知るために (岩波ジュニア新書)

  • 岩波書店 (1998年6月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (230ページ) / ISBN・EAN: 9784005003051

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  • 20世紀は戦争の世紀といわれる。第一次・第二次の両世界大戦に続き、朝鮮戦争、ベトナム戦争、ソ連によるアフガニスタン侵攻、東欧やアフリカにおける内戦、中東諸国ではイラン・イラク戦争、湾岸戦争、そして現在も終わりの見えないイスラエルによるガザ侵攻など、数え挙げたらキリがないほど、多くの戦争が行われてきた。有史以来、人類は様々な理由、例えば食料の奪い合い、領土の拡張、宗教対立などで争いを続けてきたが、20世紀の戦争は正に、総力戦や見えない場所からボタンひとつで敵を殺害するなど、戦争の形も戦争技術も圧倒的に進化変化を遂げてきた。その最たるものは核兵器である。
    日本もこの時代、日清・日露戦争、そして日中戦争やソ連と対峙したノモンハン事件、そして日本のその後の在り方を大きく変えることとなる太平洋戦争と、数多くの戦争を起こし、経験してきた。間接的に関わったと言えば、その後の朝鮮戦争やベトナム戦争、湾岸戦争などにも経済面やアメリカの後方支援などで関わってきたから、これらも日本が加担した戦争と言っても差し支えないだろう。そして、現代社会はグローバリズムの名の下、世界経済は緊密に連携し、力を持った一国が世界から孤立して我が道をゆく的な振る舞いは出来ない。イスラエルやロシアが自国の利益のために戦争を起こせば、日本もまた経済面で圧力をかけるなど、依然として戦争に影響を及ぼすような、関わり合いを持ち続けている。小麦の高騰でパン屋やラーメン屋が潰れるのも、元を辿れば何処かでは戦争の影響を受けているとも言える。ただ、直接的な人的被害を被る事なく、言わば遠い世界の出来事の様に感じるのは、憲法9条のおかげと言えるのかもしれない。
    本書は、そうした日本が経験した戦争、主に太平洋戦争を中心に、その後の日本が昭和と平成をどの様に過ごしてきたか、その間の主要な出来事や、政治体制について振り返る内容となっている。そして、その原因を太平洋戦争に見た日本の国際社会に対する態度に求め、最後にこれからの日本のあるべき姿を述べるものとなっている。日本の歴史教育では太平洋戦争以降の近現代史については多く時間を割いて学習しなかったが、本書はそれを新書サイズで一挙に振り返り、現代日本の歴史の流れを抑えることが出来る。特に戦後55年体制といわれた自民党の振る舞いは、日本の奇跡の復活と言われる戦後復興を成し遂げた功績はあるだろうが、その陰で苦しんできた多数の国民を無視してきたと言えるし、何より戦争中に日本により侵略されてきたアジア各国の苦しみの上に成り立っている事をありありと教えてくれる。これは自国の誤った手抜きの歴史教育ではなく、これこそが我々国民が認識しなければならない真の歴史である事を訴える。
    少し古い書籍ではあるものの、その後の令和に続く日本の有り様を見た時、それが今なお世界史上稀に見る広範囲を侵略した日本という国そのものの考え方や国民性が表れていると言っても差し支えないと言える。我々は歴史を忘れる、見ない様にする事で、その原因から遠ざかろうとしており、それは政府の態度にも今なお垣間見れるようである。アジア各国がその様な「過去を忘れた」日本を批判し、一部保守系議員の過激な発言(南京での虐殺がなかったなどという)や靖国参拝に何故反応するのか、被害者側が学ぶ歴史とのギャップが歴史を学ばない日本人にはわからない事を教えてくれる。多額のODAや相手側国家に対する賠償支払いなどで精算されたと思っているのも歴史を知らない事が原因かもしれない。勿論個々人への賠償にはこれだけの時間が経過してしまった今となっては限界もあるだろう。だが歴史を正しく見つめて、これから先どの様な形で、その戦争責任を取っていくかは、今を生きる我々に課された課題である。親やその親がやってきた責任について、関係ないからと無視する事は、そうした先人達が築き上げた経済発展の上に今の暮らしがある事を忘れてしまっている。
    戦後の日本が占領期というどん底に落ち、街にその日の食べ物すらない人々が溢れかえる中から、必死に生きて経済を復興させ、世界最大の経済国になるその過程を、20世紀の日本の戦争から学び直す必要性を強く感じた。全ては自分の国のした事、自分事である。

  • [ 内容 ]
    日本人にとって20世紀とはいったい何だったのか。
    日清・日露から始まり、朝鮮、ベトナム、湾岸戦争まで…第二次世界大戦を軸に、戦争とかかわってきた日本の現代史を、世界的視野の中に位置づけ、またそこに生きた民衆の視点から見つめることで縦横に語りつくす。
    歴史認識を深め、21世紀への展望を開くために。

    [ 目次 ]
    第1部 第二次世界大戦とは何であったか(第二次世界大戦のなかのアジア太平洋戦争 アジア太平洋戦争―戦局の推移と国民の生活)
    第2部 戦後50年とは何であったか(第二次大戦後の戦争―朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争 敗戦後の日本)

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著者プロフィール

1925年千葉県旧佐原町(現・香取市)生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。東京経済大学名誉教授。歴史家。民衆史・自分史の提唱者。

「2021年 『平成時代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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