ものづくりに生きる (岩波ジュニア新書 318)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (199ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005003181

感想・レビュー・書評

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  • この春ブックトーク用に読んだ本だが、そんな動機などコロッと忘れて
    何度も何度も読みふけった一冊。
    専門用語もたくさん登場し、技術的な面での著述にはなかなか付いていけなくて、
    身内に職人がひとりもいないことが、これほど残念だったことはない。
    ああ、書かれていることがもっともっと身近に感じられたらと、本当に
    悔しくて。
    これまでの生き方・考え方をガラッと変えさせるほどの力のある本だった。
    本書の一部が中一の国語の教科書に採用されたこともあったらしいが、
    さもありなんの内容で、ブックトークの本番ではこの本だけ妙に力説して
    しまったような記憶もある(笑)。

    著者は旋盤工(そもそもこれを説明しなければならなかった・笑)として
    50年働き、その間に出会った町工場の職人たちの姿を描いたもの。
    学者や教師は聞いたことを伝え、職人はやってみたことを話すというが、
    この本の圧倒的な説得力はつまりそこかと思われる。
    名言・至言が満載で、何から書き出したら良いか分からないほどなので
    ここはもうぜひ読んでいただくしかない。

    働くとは何か、仕事とは何か、もっと言えば生きるとは何かまで考えさせられる。
    ほとんどが中卒で、世間的にはほとんど無名な職人さんたちの、仕事への誇りは
    どこから生まれるのか。そこが読みどころ。
    もう、心をぐぐっと鷲掴みにされること受けあいです。

    一番心に残ったエピソードをひとつ。
    完成した製品の精度を測る「精密機」というものがあり、その精密機の精度を
    測るもの(あるんですよ!)をマスターというそうで、そのマスターを製造する
    「師匠」と呼ばれる職人さんがいる。
    そのマスターの完成度たるや一万分の二ミリだそうで。
    でも「師匠」は満足していない。自分としては一万分の一ミリを目指しているから。。

    ものづくりにかける職人さんたちへの、深い敬意のあふれる一冊。
    こういう人たちの確かな底力で、支えられているニッポンなんだなぁ。

    とうに図書館に返却したのに、レビューを載せたらまた読みたくなってしまった(笑)。
    これはもう、買って手元に置くしかないかな。

  • わたしの地元世田谷に、義肢装具、車椅子などのリハビリ用品の総合メーカーの小原工業があることも知ることができました。

    この本は22年前の本ですが、とても面白かったです。

    与えられた道具を使って、教えられた通りの方法で物を作る人は、単なる労働者に過ぎない。もっと極端にいえば、単なる要員に過ぎない。要員とは、いつでも他の人にとって変えることが可能な役割を担うような人を指して言う。

    器用さにおぼれないで、コツコツ技能を積み重ねることが、いちばんの近道です。

    機械がどんなに進歩したって、やはり人間の手と頭こそが、最高の制御装置。

    いま日本は混迷している。そんな日本で、日本を諦めずに、コツコツとものづくりにはげんでいる人達の姿を見るのは、わたしにはたまらなくうれしい。

    ものづくりを社会の礎にした、地道で実のある暮らしを望む人が多くなった。

    こういったコツコツとものづくりに携わられてきた数多くの日本人たちのおかげで、いままでの日本社会は成り立っていたのです。
    ありとあらゆる機械製品も、地道にものづくりをされてきた人たちが作り出していく色々なものを組み合わされてようやく完成していきます。

    色々と読んでいて面白くて仕方がなかったです。

  • 町工場で働く職人の物語。
    働く姿勢、というのがダイレクトに伝わってきます。
    こういう、本質に目を向けていくことのほうが人間力を育てるように思います。
    生きるということの根本にあるものはなにか、ということを改めて考えさせられます。

    2011/11/30

  • 下町のものづくりがすごい!

    下町ロケットだけじゃないんだよ。

  • 従業員=家族
    工場=住居の1階

    そんな小さな町工場が、実は世界レベルの技術を誇る工業製品を開発、製作している・・・・国内外の大企業が、間口2~3間の小さな工場に、部品の開発の相談に来るんです・・・・かっこいいじゃない!!

    この本は、中1の教科書教材の筆者が、中学生向けに書いた本です。
    工場主たちが、自分の工場自慢の技術や作品を語ります。

    実をいうと、私はこの本に語られている町工場の群れている地域で生まれたんです。毎日、プロテクターを片手に火花を散らして溶接しているおじさんたちを見ながら通学していました。金属やゴムのにおいが漂う町。クラスメートも多くがこういった工場の2階を住まいにしていました。なんだか、個人的思い入れのある本ではありますが・・・・・・^^;)

    日本を支えてきたのは、無数の小さな工場のおじさんとその家族の、ものづくりに対する心と、そのゆるぎない技術。なんで、そんなことできるの!?ってな技のオンパレードをぜひ味わってください。

    小手先のテクニックや、付け焼刃の知識で、なんだか一人前になったような錯覚ばかりしてしまう現代・・・・へらへらした生徒が「デイトレーダーっていいよね」とか聞いてると「けっ」って思っちゃう。
    本当にスゴイものはやはり労せずして手にいれられるものではないのだ、と、職人魂、ばんざ~い。

  • [ 内容 ]
    ビルの屋上から設計図を紙飛行機にして飛ばせば、三日後には製品になってもどってくる―ネジ一つから、最先端のハイテク部品までを造りだす東京大田区の町工場街。
    この町の技術の蓄積と奥深さ、職人たちの生きる姿を旋盤工50年の作家が心をこめて描き、ものを創ることのよろこびと、働くことの意味を考える。

    [ 目次 ]
    1 機械にニンベンをつけるとは、
    2 手で人生を拓く
    3 まぼろしの指
    4 工場の仕事は味気ない?
    5 夫婦工場・夫婦鍛冶
    6 技術の伝達者たち
    7 プロセスが大事
    8 仕事と遊びの境界
    9 教科書のない仕事
    10 わたしの転機
    11 いま町工場は

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • ’10/05/08読了

    旋盤工として50年間ずっと鉄を削り続けてきた大田区の職人が書いた,日本のものつくり観.
    紙面からも伝わる汗と油のにおいが非常に心地よい.
    文明の創生以来,人々の生活を直接的に豊かにしてきた,ものつくりの職人たちの誇りや生き様というものが頭いっぱいに広がり,改めて職人たちへの尊敬の念が強まった.
    しかし,一方でその労働環境の劣悪さも身にしみた.職安や職業訓練校といった自分には全く無縁であるものを,著者のような非常に高い技術を持つ職人であっても利用し,そこで職を得られたとしても,低賃金・低退職金で働かざるを得ない環境は,読んでいていたたまれなかった.
    職人にもっと光を,より自由なものつくりができる環境をつくるために自分がなにを出来るかこれから良く考えていきたいと思う.

  • 情報紙「大森まちづくりカフェ」2面記事執筆のために読む。

    「ビルの屋上から設計図を紙飛行機にして飛ばせば、
    三日後には製品になって戻ってくる」

    自分の大先輩が大田のまち工場の講義をしてくださったときの
    このフレーズが気になっていたのだが、小関氏のこの本から
    引用したことがようやく分かって
    少々ココロのつっかえが取れた感じがした。

    小関氏の何冊か読んだが、この本はその中でも
    まち工場の職人の生き様が丹念に描かれている作品のように思う。
    いつの時代になっても「職人気質」は大切だと思う。
    いくら技術が進んで機械が発達しても、機械を操るのは人間だ。
    機械に人間が操られるのではない。
    機械を使いこなして作り上げた部品によって
    作り上げられた製品は血の通った製品だと思う。

    職種は違うが、自分も「職人」と仕事をしている。
    仕事の現場には「立場」があって、自分は職人を
    「使う側」の人間だけれど
    自分に走らないことを沢山知っているので
    職人達を最大限尊重していい仕事をしてほしい
    と思いながら、いつも接している。
    難しい仕事でも色々と考えてくれて、本気になって仕事をし
    終ると次の現場へ去っていくその潔さもまた、カッコいいと思う。

    そういった人たちによって、日本の社会は成り立っている。
    日本の底辺を支えている。
    職人気質がなくなってしまったら、この国は終ってしまうんでは
    ないか。そんな風にすら思う。

  • なんだか想像以上に面白かった。身体を動かしてお金を稼ぐっていうのは人間の本来のあり方な気がしてうらやましい。

  • ある大学の面接入試の課題図書。これでもかってくらい読んだけど、何回読んでも、作者小関さんの仕事に込める思いから、「働く」ということ・・「生きる」ということについて考えさせられます。最初はなんでこの本が社会福祉学部の面接の課題図書になるのかと不思議だったけど、読むと分かります。

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著者プロフィール

1933年、東京生まれ。
都立大学附属工業高校卒業後、旋盤工として町工場に勤務する。
そのかたわら、執筆活動をつづけ、作品を発表する。
◎おもな著書
『大森界隈職人往来』(朝日新聞社、81年)--第8回日本ノンフィクション賞
『粋な旋盤工』(風媒社)、『春は鉄までが匂った』(晩聲社)、『羽田浦地図』(文芸春秋)ほか

「1985年 『鉄を削る 町工場の技術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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