勉強法が変わる本: 心理学からのアドバイス (岩波ジュニア新書 350)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784005003501

作品紹介・あらすじ

「いくら勉強してもわかるようにならない」「ちょっとした問題でも間違えてしまう」としたら、勉強法に問題がないかな?心理学の成果をもとに、数学、英語、国語などの問題にそって、なぜつまずいてしまうのか、もっとよいやり方はないか、具体的にアドバイスします。自分にあった効果的な勉強法をみつけよう。

感想・レビュー・書評

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  • ■要約 :『考えることの科学』『勉強法の科学』『勉強法が変わる本』市川伸一著 より、KJ的にひも解いてみた。
     
     『世の中にある問題というのは、初期状態、目標状態、操作がはっきりとは決められないものが数多く』、『どのような手が使えるか…を考え出すことがたいへんなのである』。
     『何らかの認識にいたるというときには、つねに推論がからんで』おり、『考えてアイデアがいきなり湧いてくる…、けっしてそうではない』。これらとどう向き合うかというのはとても重要なテーマだ。
     
     問題を解くには、推論したり、創造したりする必要があるが、この際、『事実を関連づけていくことが決定的に重要な役割を果たす』ようである。
     うまい手は『知っている問題にもちこむ』ことといわれるが、そのためには、『知識を使って「この問題はどんな問題か」を把握』せねばならない。
     知識といっても表面的な知識ではない。『関連をもってつながっている』知識、『構造化された知識』や『スキーマ』でなければならない。
    『公式だけ覚えていても問題が解けるようにはならない』といわれるのも同じことだ。『方略というのは、それ自身を言葉で覚えていてもだめで、使えるようにならないと意味がない』からだ。
     
     また、問題は『解きながらそれがしだいに決まっていくということが少なくない』。解くうえでは、『定義や具体例を通じて意味を理解しておく』ことに加え、『手を使いながら、頭を使う』ことが大切であるとされている。
    『書くということを通じてこそ、人は自分の考えを進めたり、新しい考えを出したりできる』、『何も書かずにうなっているだけの人は、まずいない』、『「考えたことを書く」のではなく「考えるために書く」』ことが大事であると説かれている。『(文章ならば)移動したり、削除したり…、段落の順序を入れかえたり…』、『紙の上に図や式を書きながら考え…』など、『ジタバタしてみなければ解けない』。
     このような行為によって、『もやもやとしていたことがらが形をなしてくる/思いもかけなかったような新しいアイデアに思い至る』こともあるし、『表現するという行為を通して心の中にあるものが変化』していったり、『制作過程を通じて自分自身が変化していくことを感じる』ようだ。
     
     『「思考のツール(道具)」として使える推論に関する学問(論理学、確率論、推測統計学)』の活用も重要だ。人には『確率判断を求められたときに、それを代表性に置き換えて判断してしまうというヒューリスティックス』など、ある『考えに流されやすい心理的な傾向』があるからだ。『ランダム、標本抽出、大数の法則、相関などの確率・統計的な概念を用いたデータを扱い、現象を理解するといった方法論をとることにより洗練された解釈をする』ようになる。
     
    『学習は、量と質』、『量よりも、何が身についたかを気にかける』必要があるのだ。
    『いい仕事をしている人/熟達者/成績がいい人/良い成績の学生』は、『豊かな知識』『豊富な「問題状況のパターン」』をもっている、『トップダウン的な処理をする』、『統計学の訓練を受けている』などの傾向があり、『問題の考え方のセンスがいい』ようである。
      『人はついどのような考えに流されやすいか』ということと、人はどのように認識、解釈(ボトムアップ⇒スキーマ呼び出し⇒トップダウン)し、『考えを進めるかという指針』を知っておいたうえで、『経験から一般的な教訓を引き出し』たり、『自分で学習観や学習方法を作っていく』などしながら、『自分の知識をより完全なものに』していかなければならない・・・これこそが学びだ。
     
     心持ちとしては、『「いつかわかってやるぞ!」という気持ちを秘め』、『何か問題意識を感じて「なんとかしたい」と思うこと』など、『基本的には「理解したい」という方向付けをもつ』必要があるが、『「これをやればいい結果になる」という確信をもてる内容にすると同時に、「これなら自分でもできそうだ」という実行可能性の高いものにしないと、やる気は湧いてこない』。『外発的動機づけの視点からすると、何をめざしてやっているのか、目的・目標が見えにくいときにはやる気が出ない』、『内発的動機づけの視点からすると、知的納得感、達成感、進歩の実感などが満たされなければ、およそやる気になれない』が、『どの動機でもいいので、とにかくやってみることです。やってみたら、できるようになった、おもしろくなった、という経験をつかむこと』も重要であるとある。
     一方、『意味が理解できなくても手続きへの慣れを先行させたほうがいい』ことや、『伝統的な枠組みの中にどっぷりとつかる時期があってもいい』、『わからないことにじっと耐えるというのも、重要な学習』ともあり、とても人間的だ。考えるとはいかなることかについてより理解を深め、人の思考のくせを認めつつ、とにかく四苦八苦し、『自分なりに方略をつくっていく力』をつける・・・ということなのであろう。

  • 2022/05/25
    おもしろいー。

  • 「理解したい」という方向づけをもち、問題を解く過程を重視し、何が身についたのか、を気にかけよう。(p. 28)

  • 大学を受験する高校生を対象にした「勉強法」を改善することを教えてくれる内容。小学生の勉強にも通用する部分は多い。
    子どもを持つ親はこの本を読んで理解しておくことは非常に役立つと感じた。
    (かなりのページに高校生が数学に望むときの勉強法が書かれているので、小学生を考えたときには不要で難しいけどこの部分は飛ばしておけばいい)

  • はじめに
    私は、「勉強法が変わる本」を読んでみて第4章の「問題を解く」について気になったので、それについて書いていこうと思います。
    4章を読んでみて、数学の勉強方法について注目しました。

    私の数学勉強方法
    これまで、計算の求め方の公式を覚えて、後は、テストのときにその公式をあてはめていって他の問題は、その時に対応するという感じだったけどそれは違うと本をよんでわかりました。
     まず、数学の勉強方法は、例題にチャレンジする事ですがそれには注意点があります。それは問題を解いていくだけでは、学力がつかないことです。
    普通の勉強方法では「問題集を何度も解く」・「間違った所は赤ペンでなおし、もう一度解く」ですが、それでは頭の中から落ちてしまいます。頭から落ちないようにするには、このような勉強方法でしていこうと思います。
     それは、「分かりやすく問題を解くための工夫を考える」ことです。
    難しい問題を解いてもいいが、それだと解くのにたくさんの時間がかかってしまいミスが起こってしまうので、そのミスをなくすために常日頃ただ問題を解くだけでなく、どうすれば簡単に解けるかどう考えながら、解く過程を重視して問題を解けるかどうか考えながら解いていく事が数学の勉強方法をするのに大切な事だと分かりました。

     最後につまり、
     「なぜ自分はうまく解けなかったのか」・「この問題を解くことによって 何がわかったのか」という教訓を問題で引き出すことで数学や理科など多くの問題がとけていくと思いました。(ひなた 200115)

  • 勉強方が変わる本

    181111読了
    今年97冊目今月4冊目。

    #読了
    #市川伸一
    #勉強法が変わる本
    #岩波ジュニア新書

    説としては少し古いというか、すでに当然のように使っているものではあるが、お墨付きをもらった感覚。
    生徒の学習法を見極めるのに使えそう。
    書斎で読む、そしてPCにまとめる、という一連の行為自体が快感だった。
    そんな秋の夜長でした。

  • 198円購入2018年11月4日

  • 岩波ジュニア新書ということで、高校生向きに書かれてはいるが、大人が読んでも十分読み応えがある。
    特に長文を理解すること、文書を書くことに関するヒントは自分を振り返るいい機会になった。
    Science Windowと題されたコラム欄も興味深い。
    心理学の専門家としてのアドバイスにとどまらず、自分に合った効果的な勉強法を探そうというスタンスで書かれているのも好感がもてる。この本を読むことで”変わる”ことができるかは、要は自分次第ということかもしれない。

  • まずまず

  • 著者は東京大学の認知心理学(人間の学習・記憶・思考・言語などについて研究する分野)の先生ですが、教育相談などもされており、学習参考書などにもけっこうくわしいようです。勉強の仕方についてはまた別の場所でまとめてみたいと思っていますが、だいたいいままでに自分が考えており、実践してきたこととおおむね違いはなかったようです。ちょっと安心しました。自分が実践していたことが認知心理学からも認めていただけたようで。その中で一つだけ紹介。自分がまだ覚えていないことに時間をかける。漢字テスト前など、すでに覚えてしまっていることも含めて、何度も書いたりしていませんか。1回ですんなり書けた漢字は2回目は飛ばしてしまっていいのです。それで少しは時間的な余裕ができます。そのことでまた、苦手なところに時間をさくことができます。どの教科も時間をかけて、たくさんの問題演習をする必要がありますが、少しでも効率のいい時間の使い方を考えましょう。また、問題の意味が分からず解けないときは、意味の分かっていない言葉はないかをまず考えましょう。次に問題の文章を、いくつかに分解して読みくだし、今までに知っている知識で何とか解決できないかを考えてみましょう。「分かる」は「分ける」作業から始まります。中学・高校生向けに書かれた本です。ぜひ一度読んでみてください。

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著者プロフィール

1953年東京生まれ。東京大学文学部卒業。文学博士。現在,東京大学名誉教授,帝京大学中学校・高等学校校長。中央教育審議会教育課程部会委員として学習指導要領の改訂に関わる。専門は教育心理学。認知心理学を基盤にした個別学習支援や授業づくりなどの実践に携わっている。著書に、『考えることの科学』(中公新書)、『学ぶ意欲の心理学』(PHP新書)、『学力低下論争』(ちくま新書)、『学ぶ意欲とスキルを育てる』(小学館)、『「教えて考えさせる授業」を創る アドバンス編』(図書文化社)など。

「2023年 『これからの学力と学習支援 心理学から見た学び』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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