日本科学の先駆者高峰譲吉: アドレナリン発見物語 (岩波ジュニア新書 375)
- 岩波書店 (2001年6月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784005003754
作品紹介・あらすじ
アドレナリンとタカジアスターゼの発見で、いまなお人類がその恩恵をこうむっている高峰譲吉(一八五四〜一九二二)は、幕末の金沢に育ち、国際結婚、アメリカの学界ではサムライ化学者とよばれた。その独創的な研究生活、常に実用を忘れぬベンチャービジネス精神のおりなす波瀾に富んだ生涯を描く感動的な評伝。
感想・レビュー・書評
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「池田菊苗 うま味の素「グルタミン酸」発見(清水洋美著)」からの流れ読み、図書館で借りた。グルタミン酸を発見して製品化した池田菊苗(1864-1936)とほぼ同時代の科学者兼実業家、高峰譲吉(1854-1922)。
譲吉氏はジアスターゼをアスペルギルス・オリゼに産生させて「タカジアスターゼ」(商品名)として、また結晶精製に成功しアドレナリンを世に出した。残念なのは米麹によるウイスキー製造に挫折したこと、ぜひ飲んでみたかった。
池田菊苗と夏目漱石の交流、高峰譲吉と野口英世の対比、良いものを読ませてもらった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
科学に疎いので、高峰譲吉を知らなかった。
でも、知らない人(あまり有名でない人)の伝記を読むのが好きなので、読んでみた。
高峰博士は幕末、富山の医者の家に生まれ、幼いころより父からエリート教育を受け、また本人にも優れた資質があったため、エリートコースをまっしぐら。アメリカにわたってタカジアスターゼとアドレナリンを発見し、巨万の富を築いたというんだからすごいじゃないの。
じゃあなぜ、野口英世と比べて認知されていないのか、というのは著者が考察しているので省くが、青年期までは超エリートで輝かしかったが、晩年は結構厳しかったのではないかと思う。ずっとアメリカに暮らし、妻はアメリカ人でありながら、最後まで日本文化に執着、国籍も変えなかった。アドレナリンの発見は、助手の手柄なのに横取り。長男はアルコール依存症の末転落死。妻は夫の死後23歳年下のカウボーイと結婚。
著者は博士寄りなので決して非難するような書き方はしないが、これ、うまい小説家が書いたら、結構面白い小説になったと思う。残念だ。
まあ、遺族や三共製薬や金沢市に配慮すれば、こんな本になってしまうのは仕方ないか。